「幼児教育無償化」を検討!? 今求められているのは教育の質向上?待機児童解消?

Mocosuku Woman 2015年7月16日

7月13日、安倍首相は、全国私立幼稚園PTA連合会の全国大会で、「将来を担う子ども達は日本の宝だ」と発言し、「幼児教育の振興に取り組んでいく」との意欲を示したうえで、「幼児教育の段階的無償化など」を推進して、「子育て支援の充実を図る」ということが伝えられました。
この発言が幼稚園PTA連合会であったことから、リップサービスの意味合いは拭えぬものの、子育て支援に取り組む姿勢は一定の評価がされたようです。ですが、今、早急に求められている子育て支援とは、「無償化」なのでしょうか?

幼児教育の大切さとは?
文科省「幼稚園教育要領」の総則によると、「幼児期における教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なもの(以下省略)」とされています。小学校入学前の幼児は、言葉というコミニュケーション能力を身につけ、家庭内ルールを通じた社会性の一端を知りはじめる重要な時期です。同時に幼稚園や保育園などに通園すれば、友だちという家族以外の人間関係を構築する時期でもあり、まさに初めの一歩といえるでしょう。
一方、国による「子育て支援」という側面においては、幼児教育に係る教育費(幼稚園代・保育園代)は少なければ少ないほど金銭面での負担を和らげ「子どもを育てやすくなる」という効果が見込まれます。いわば幼児教育の振興は「教育の質」向上を目指すものであり、無償化は家庭の経済状態に左右されずに教育を受けられる「経済的支援策」といえます。

施設の垣根に阻まれている現状
平成18年にスタートした「認定子ども園」は、平成27年4月現在で2836施設と、昨年に比べると倍増しているようです。しかし幼稚園1万2905施設(文科省:平成26年学校基本調査より)、保育園2万4076施設(厚労省:平成25年社会福祉施設等調査の概況より)と比べると、認定子ども園は圧倒的少数に止まります。
役所の言い分では、幼稚園は幼児教育を担い、保育園は幼児を預かる施設、認定子ども園は幼稚園と保育園の両方の機能を持つ施設と位置づけられています。幼児教育の質を向上させるのであれば、施設の垣根(規制)を大胆に撤廃して、すべての子どもに同じような教育の機会を与え、保護者にとって利用しやすいものにすることが求められるでしょう。何より、保育園の待機児童問題もままならない現状では、幼児教育における質の向上というゴールは遠いように思えます。

幼児教育無償化は世界的には当然の流れ?
一方、幼児教育の無償化については、財源の問題もあり、所得制限導入の是非や対象となる施設の範囲の問題(無認可保育園はどうなる?)、幼稚園教諭および保育士の資格要件をどうするのか?など、検討課題は山積しています。一部の保護者には、「無償化はありがたいけど、そもそも待機児童問題の解消のほうが先!」という意見もあるようです。
OECD加盟国の中で、日本が対GDP費で幼児期教育(保育)の公費負担が最低である現状を見ると、公的資金を使って子育て支援と称する無償化を推進するのには、一定の説得力があるとはいえるでしょう。とは言え、財源が乏しいなか「公的資金が多く投入されている」とされる年金や医療費補助を多少なりとも削ってでも子育て支援を行う意気込みがあるのかどうか、今後の行方には注目したいところです。

その発言大丈夫? セクハラ、パワハラ、マタハラ……2015年、上司の禁句集

プレジデント 2015年7月15日

笹山尚人弁護士は「ハラスメントについての相談は年々、内容が複雑化しています」という。問題は、無自覚であることだ。誰もが加害者になりうることを、まず認識しよう。
パワーハラスメントやセクシャルハラスメント、最近ではマタニティハラスメントなど、職場におけるハラスメント(精神的な暴力、嫌がらせ)の事案は増加傾向にある。
ハラスメントとは、法律的には相手の「人格権」を侵害することをいう。人格権とは、名誉や自由といった個人の人格的法益を保護するための権利のこと。つまり、相手の人格を揶揄、侮蔑したとみなされる言動がハラスメントにあたるというわけだ。
パワハラについては、2012年に厚生労働省が定義を公表している。それによれば「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」だという。

「被害者基準」で考えよ
どんな言動がパワハラにあたるのか。ある大手保険会社で、上司が部下の業績に関連して「意欲がないなら会社を辞めるべきだと思います。当社にとっても損失そのものです。あなたの給料で業務職を何人雇えると思いますか」といった主旨のメールを、当人を含む職場の十数人に送っていた。東京地裁は、これらの言動について「叱責としては強度だが、ただちに業務指導の範囲を超えているとは言えない」と判断した。しかし、控訴審の東京高裁では「人の気持ちをいたずらに逆撫でする侮辱的言辞であり、本人の名誉感情を毀損し、不法行為である」と認定した。
一方で、言葉の暴力自体は認められても、法的責任までは問えない、というケースもある。私の担当した案件で、上司が部下に「あなたのような受け答えを続けていたら、誰からも必要とされなくなるでしょう」「みんなから嫌われて、どんな気分ですか」「あなたがそんな状態で、家族の生活は守れるんですか」などと発言した事案があった。裁判では、発言自体は「言い過ぎ(パワハラ)」と認めたが、「指導者として叱責する必要があり、法的責任を問うほどのものとは言えない」と、訴えそのものは棄却された。
このように、一言で人格権を侵害する言動といっても、基準はあいまいだ。私としては、「被害者基準」を物差しにするべきだと考えている。

盲点なのは「2人目の予定」
セクハラについても同じだ。セクハラとは「相手方の意に反する性的言動」と定義される。すなわち、分水嶺は「相手側の了解」だ。
よく受ける相談は、「最近の若い女性は……」と女性を一括りにするような発言。女性社員を「○○ちゃん」と呼ぶことも、古典的だがいまもよく聞く。親近感を持って接しているつもりだろうが、女性によっては気分を害することを認識しておこう。
年齢や彼氏の有無、結婚や子どもの予定などについて聞くのももちろんアウト。意外と盲点になっているのは、2人目の予定だ。産みたくても一人しか産めないという女性もいるのだから、そのあたりは踏み込むべきではない。
最近、社会問題化しているのがマタハラだ。これだという定義はないが、私は、「働く女性が妊娠・出産・子育てなどをきっかけに精神的肉体的な嫌がらせを受けたり、解雇や雇い止め・退職強要や降格などの不利益をこうむること」と理解している。
言葉というよりも、妊娠・出産を理由にした、もしくはそれが理由としか考えられない不利益な処遇を受けた、という相談が多い。言動でいうと、妊娠がわかったときに「これでまた人繰りを考えないといけなくなった」などとネガティブな受け答えをしないこと。2人目ができたときに「またできたの? 」などと言うのもご法度。妊娠・出産をマイナス評価にしない、ということが大前提だ。
ここまでの事例を見て、「こんなにNGだらけではコミュニケーションがとれない」と感じた人もいるかもしれない。だが、基本的には「相手の人格を尊重する」ことに尽きる。わかりやすく言えば、相手を“社長の娘”だと思って話すことだ。社長の娘の人格を傷つけるようなことはできないのではないだろうか。共に働く仲間を尊重し合える職場づくりを心がけよう。

●「マタハラ」アウトorセーフ
×アウト
「しんどいだろうし、正社員じゃなくてパートになったら? 」
「困ったな。これでまた人繰りが苦しくなる」
「これだから女は使えない」
「妊娠しても働き続けたいなんて、わがままだね」
「出世したいなら子どもはあきらめろ」

△セーフ
「子どものためを思ったら仕事はやめたほうがいいんじゃない」
「(2人目や3人目ができたときに)またできたの? /また休むの? /何人目? 」
「早く帰れていいね」

●「セクハラ」アウトorセーフ
×アウト
「○○ちゃん、おはよう(下の名前でちゃんづけ)」
「いくつになったんだっけ」
「彼氏はいるの? 」
「まだ結婚しないの? 」
「今日は生理の日? 」
「若い女性にはわからないよね」
「(子ども)2人目はまだつくらないの? 」
「太ったんじゃない? 」

△セーフ
「どんな男がタイプなの? 」
「その服似合ってるよ」
「髪切ったんだね」
「可愛いね」

●「パワハラ」アウトorセーフ
×アウト
「俺に楯突いたら懲戒免職にしてやるからな」
「おまえは頭がおかしい」
「病院に行ったほうがいいよ」
「使い物にならない人間はうちにはいらない」
「窓から飛び降りろ」

△セーフ
「なんでこんなこともできないんだ」
「何度言えばわかる」
「だからおまえはダメなんだよ」
「そんなこともわからないのか」
「君の給料で派遣社員を何人雇えると思ってるんだ」
「同じミスを何度もやるな」

弁護士 笹山尚人 非正規雇用労働者の権利問題、労働事件などを中心に活動。著書に『それ、パワハラです 何がアウトで、何がセーフか』など。

心の病に陥ったとき…受けられる経済的補助とは?

女性自身 2015年7月15日

うつ病などの精神疾患で、’14年度に労働災害(以下、労災)の申請件数は1千456件。うち、認定されたのは497件で、どちらも過去最多だと、厚生労働省が発表した。いっぽう、脳梗塞や心筋梗塞など脳・心臓疾患での労災申請は763件で、うち認定は277件と、こちらは両方とも前年より減少。比較すると、精神疾患の多さが顕著だ。
「精神疾患で病院にかかっている患者数は、約320万人というデータもあります(’11年・厚生労働省)。心の病への対策が急がれるなか、今年12月より、職場でのストレスチェックが始まります。ストレスチェックとは、仕事の量ややりがい、職場の人間関係、体調などを質問し、ストレスの度合いを測るものです。従業員50人以上の企業は、年1回の実施が義務付けられ、契約社員やパートでも、労働時間などの条件を満たせば対象になります」
そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。ストレスチェックは、これまで受けてきた健康診断の精神疾患版のようなもの。だが、健康診断とストレスチェックには大きな違いがある。健康診断の結果は本人と企業に通知されるが、ストレスチェックの結果は本人以外には知らされないのだ。
「ストレス度が高いとの診断結果を本人から申し出れば、企業は医師の面接を受けさせねばなりません。ですが、そんな申告をすれば、出世に響く、リストラされるかもと不安になる方が多いのではないでしょうか。むしろ診断結果を隠そうとして、ストレスが増えるのではと危惧しています」
ストレスのおもな原因は、長時間労働だといわれている。先の労災データでも、精神疾患で労災認定された人の約4割が、1カ月80時間以上の残業を行っていた。
「ストレスを減らす早道は、労働時間を規制することだと思いますが、昨年11月より施行された過労死等防止対策推進法にも、長時間労働の制限はありません。これでは過労死に歯止めがかかるわけもなく、労働者保護とは名ばかりだと言わざるをえません」
精神疾患は人ごとではない。もし今、あなたや家族が精神疾患に陥ったら、生活はどうなるのだろう……。そこで、荻原さんが心の病に陥ったときに受けられる経済的補助を解説してくれた。
「まず、精神疾患での通院治療費は、自立支援医療費の申請で自己負担が軽くなります。所得によりますが、一般的な所得の方は1割負担です。医師の診断書や所得を証明する書類などを持って、自治体の窓口に申請してください。1年ごとの更新が必要ですが、疾患が重度や長期にわたる場合は、さらに軽減されます」
また、会社員の人なら、精神疾患が理由で会社を休んでも、傷病手当金を受け取れる。病気などで働けず、会社から給料が出ない人は、最長1年半、給料の約3分の2が、傷病手当金として健康保険組合から支給される。
「夫が精神疾患になり、代わって妻が働くなら、妻を世帯主にして、夫の分の配偶者控除を受けることができます。会社員の方は勤め先に、自営業の方は確定申告の際などにご相談を。さらに、精神疾患の治療は長期化しがちです。傷病手当金の支給期間が終わっても、治癒しないときなどは障害年金の申請ができます。主治医や病院のソーシャルワーカーに相談するといいでしょう」

変化に気づいてから確定まで平均15か月!認知症早期受診の重要性

nikkanCare.ism 2015年7月15日

「まさか自分が、まさか自分の親が認知症になるなんて」
患者数が年々増加の一途をたどっている認知症を、心のどこかで他人事にしていませんか?
『認知症の人と家族の会 調査研究専門委員会』の調査結果によると、「認知症を疑うきっかけとなる変化に気づいてから認知症と確定診断を受けるまでの期間は平均15か月」であるということがわかりました。
さらに「変化に気づいてから最初に医療機関を受診するまでにかかった期間は平均9.5か月、最初に医療機関を受診してから確定診断までにかかった期間は平均6.0か月」といった調査結果も出ています。
受診するまでの期間も、確定診断への期間も、こんなに時間がかかってしまうのかなと感じた人も多いのではありませんか?
ではなぜこんなに期間がかかってしまうのでしょうか。

受診から確定診断を受けるまでの6.0か月
ひとえに認知症といっても、過半数を占めると言われる神経変性疾患の“アルツハイマー型”認知症のほか、原因は脳梗塞・脳出血などの“脳血管疾患”、“頭部の外傷”、“悪性腫瘍”、“感染症”、“代謝・栄養障害”などさまざまです。
そういった原因疾患の特定をするため、受診から認知症の確定診断を受けるまで平均6か月かかるそう。
最適な治療やその後の対応は原因疾患により異なるため、「認知症の確定診断とは、原因疾患の特定であることが重要」だと言われています。

受診までの9.5か月
何度も同じことを繰り返し話したり、なんだかボーっとしていることが多くなったり……。そんな小さな変化を「認知症ではないか」と疑い、すぐに病院へ受診しようと行動を起こせるでしょうか。
筆者にも認知症を患っている祖母がいますが、祖母の変化を見ても、「ショックなことがあったから今は元気がないだけ」「もともとしっかりした性格だから」と誰も認知症を疑いもしませんでした。病院へ連れて行くことは祖母への侮辱だとさえ感じていました。
認知症という病気を他人事として遠ざけてしまうことが結果として受診を遅らせ、受診までの時間がかかってしまう原因だと筆者は考えます。

確定診断が遅れることによる精神的な負担
認知症の確定診断までの期間について32.9%が、「遅すぎた」と回答しています。
変化に気づいてから確定診断されるまでに時間がかかることによって、精神的負担を感じている人が多くいるのです。やはりできるだけ早期の診断が患者さん本人、ご家族のその後の負担を軽減するために重要となります。
2012年時点で全国の65歳以上の高齢者の認知症患者数は約462万人、軽度認知障害(MCI)の人は約400万人と推計されています。厚生労働省では、早期診断、早期対応をはじめとする認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)を推進しています。

早期診断・治療が大切な理由
「認知症はどうせ治らない病気だから医療機関に行っても仕方がない」という人がいますが、これは誤った考えです。原因によっては、劇的に良くなる場合もあると、厚生労働省でも呼びかけています。
さらに、アルツハイマー病では、薬で進行を遅らせることも可能になっています。早く使い始めると健康な時間を長くすることができます。病気が理解できる時点で受診し、少しずつ理解を深めていけば生活上の障害を軽減でき、その後のトラブルを減らすことも可能です。
私達はまだどこか他人事にしてしまっている現状を考え直さなければいけません。他人事を自分や自分の家族にいつか起こりうることだと受け止めることで、早めに「もしかしたら」を行動へ移せるように準備をしていきましょう。