【主張】性犯罪の厳罰化 魂の殺人に法改正必要だ

産経ニュース 2015年7月27日

性犯罪の罰則について議論を進めてきた有識者による検討会が報告書案をまとめた。強姦(ごうかん)罪の法定刑の下限引き上げや被害者の告訴を不要とする意見が多数を占めた。
報告書案にもあるように、強姦は「魂の殺人」として被害が一生続く。卑劣で残酷な犯罪に対する厳罰化は、国の姿勢を示す意味でも必要だ。
強姦罪の法定刑は「懲役3年以上」で、強盗罪の「5年以上」と比べて、その軽さが指摘されていた。裁判員裁判では性犯罪に対して、より重い量刑が選択される傾向がある。国民は強姦などの罪に対して強い処罰意識を持っていることがうかがえる。
有識者の中には、運用上で厳罰化が進んでいるなら法改正は不要との意見もあったとされる。だが法定刑の設定は、いわば国の意志である。強姦が強盗より刑の下限が軽い現状は理解しがたい。
また強姦罪は、被害者の告訴が必要な「親告罪」だが、加害者の報復や、事件が公になることで不利益を被ることを恐れて告訴に至らないケースも多かった。海外の主要国は一様に非親告罪化しており、これにならうべきだろう。
一方で、強姦罪で10年、強制わいせつ罪で7年の公訴時効の撤廃・停止については、慎重派が多数だったという。
幼少期の性的虐待を成人になって訴えようにも、時効が妨げることがある。弱者が法の隙間に埋もれることがないよう、検討を重ねてほしい。
これとは別に、児童買春・ポルノ禁止法の改正により、今月15日から、18歳未満の子供のわいせつな写真や映像を性的な興味で持つこと(単純所持)も処罰の対象となった。
児童ポルノの製造や流通はこれまでも処罰対象だったが、単純所持は対象となっていなかった。改正法は昨年7月に施行されたが、所有者に廃棄を促すため、単純所持罪は1年間猶予されていた。
性的嗜好(しこう)の対象とされた子供は心に長く深い傷を負う。これも「魂の殺人」の一形態であるといえる。にもかかわらず、これまでは野放しになっていた。先進7カ国で単純所持を禁じていなかったのは日本だけだった。
諸外国から、わが国が性犯罪に寛容な国だとみられているとすれば、これは許容しがたい。厳罰化を進めるべきである。

中学2年生イジメで列車飛び込み 自殺のSOS見落としでもクラスがかばった「女教師」〈週刊新潮〉

BOOKS&NEWS 矢来町ぐるり 2015年7月24日

またしても、悲劇は繰り返されることになった。岩手県矢巾(やはば)町に住む、中学2年の男子生徒がイジメを苦にして列車に飛び込み、自ら命を絶った。担任の「女教師」が自殺のSOSを見落としたために最悪の事態を招いたのだが、クラスの生徒はなぜかかばうのだ。
往々にして、列車への飛び込み自殺の目的は、社会への報復だと言われる。
7月5日の午後7時半ごろ、JR矢幅(やはば)駅で列車にはねられて死亡した矢巾北中2年の村松亮君(13)は一体、何を訴えたかったのか。
父親の祐亮さん(40)は、涙ながらにこう語った。
「最初、私の父から、“亮が死んだ”という電話がありました。弟にかけ直すと、すぐに刑事が電話口に出て、“急いで、紫波(しわ)署に来てくれ”と。茫然とした状態で、息子の亡骸と対面した。顔はきれいで、手足もあった。でも、お腹には大きな傷ができていて……」
その翌日、調書作成のために紫波署に行くと、刑事から亮君の部屋で押収した“生活記録ノート”を手渡された。
「家に戻って、パラパラと捲(めく)っていたら、その内容に驚きました。これでは、亮は学校に殺されたも同然ではないかと……。ちょうどそこへ、校長先生が訪ねてきて、息子が亡くなったことを生徒たちに伝えたいと言うから、イジメのあったことを明らかにするのならと了承しました。ですが、校長先生はその約束を守ってはくれなかった」(同)
そのため、40代の女性担任教諭との間で交わされた、その“生活記録ノート”を公表することに決めたのだという。
主だった部分を紹介すると、
〈ボクは××(編集部注・同級生の実名)とけんかをしました。ボクはついにげんかいになりました。もう耐えられません〉(6月3日)
〈けんかいらい いじめはなくなりました。しかし ボクはまだおこっています。次やってきたら殴るつもりでいきます。そうなるまえに、ボクを助け……orz〉(6月5日)
さらに、
〈実はボクさんざんいままで苦しんでたんスよ? なぐられたりけらりたり首しめられたりこちょがされたり悪口言われたり!〉(6月8日)
そして、いよいよ自殺を仄めかすようになる。
〈ここだけの話、ぜっだいだれにも言わないでください。もう生きるのにつかれてきたような気がします。氏(ママ)んでいいですか?(たぶんさいきんおきるかな。)〉(6月28日)
それに対し、女性教諭の返答は、
〈どうしたの? テストのことが心配? クラブ? クラス? 元気を出して生活しよう。亮の笑顔は私の元気の源です〉
最後のやり取りは、次のように記されている。
〈ボクがいつ消えるかはわかりません。ですが、先生からたくさん希望をもらいました。感謝しています。もうすこしがんばってみます。ただ、もう市(ママ)ぬ場所はきまってるんですけどね。まあいいか……〉(6月29日)
だが、女性教諭は、
〈明日からの研修たのしみましょうね〉
と、まともに取り合っているようには見えない。
その後、7月1、2日に亮君は学校の宿泊研修に参加し、3日は学校を欠席。週末の4、5日は、部活動に姿を見せることなく、命を絶ったのだ。
結局、女性教諭は自殺のSOSを見落とし、校長や学年主任らに報告することもなかった。
祐亮さんが続ける。
「実は、イジメは1年のときもありました。相手は同じクラスの4人組で、部活動もバスケ部で一緒だった。亮が学校に行くのを嫌がるようになり、部活の顧問の先生に相談しました。その結果、顧問の先生と当時の担任の先生、4人組の主犯格と息子の4人で話し合い、一旦、イジメは収まったのですが……」
しかし、2年生になると再び始まったという。
「今度も、クラスメイトの4人組で、うち2人は1年のときと同じメンバー。最初は、からかう程度だったのに、だんだんエスカレートしていったそうです。髪の毛をつかまれて机に頭を打ちつけられたり、廊下でわざと肩をぶつけられたり、運動会の予行演習中に砂をかけられたりしたこともあった。息子が亡くなったあと、クラスメイトから、そんなふうにイジメられていたと聞かされました」(同)

“校則だから”
為す術なく、イジメを放置し、自殺を招いた女性教諭は昨春、矢巾北中に赴任した。授業は英語を担当し、剣道部の顧問を務めている。
現在、不登校中の娘を持つ母親が明かす。
「私の娘は、イジメに遭い、1年生の1学期に手首を切り、3学期にはまったく学校に行けなくなってしまった。亮君は、娘がひとり寂しく帰宅しているときに声をかけてくれて、時折、ゲームセンターとかで一緒に遊んでいました。2年生で、亮君と同じクラスになった。1年のときの担任の先生は、毎日のように家に来て、“学校に顔出せよ”と娘を元気づけてくれた。ですが、2年の担任の先生は4月に1度、“具合はどうですか?”という電話をかけてきて、そのあと家庭訪問があっただけです」
なおかつ、娘がこの5月に、学校復帰の意思を見せると問題が起こったという。
「まわりの視線が気になってしまう娘は、髪を下ろさずにはいられません。精神科の先生にもそうするように言われていて、校長先生には理解を示していただきました。でも、担任の先生は、“校則だから、髪を結ぶように”の一点張り。そのせいで、未だに娘は学校に通えずにいるのです」(同)
イジメの対象になる生徒には無情に接していても、その一方で、女性教諭は他の生徒からは慕われていたようなのである。
ある男子生徒の話。
「先生は、身近な友だちのように気楽に話ができるので、クラスのみんなから人気がある。この問、生徒の1人が“先生は間違ってないから、頑張って!”という手紙を出した。担任代行の先生がそれを見て、“みんなも書こう!”と、クラス全員に声をかけたのです。僕も、“早く戻ってきてほしい”と書きました」
言うまでもなく、女性教諭が生徒への説明の義務を果たさなければ、その信頼を裏切るだけでなく、亮君も浮かばれないのだ。

IS:少年を戦力化 背景に貧困や教育不足

毎日新聞 2015年7月26日

イラクやシリアの戦闘で家族や学校、地域社会など「よりどころ」を奪われた少年たちが、過激派組織「イスラム国」(IS)に身を投じている。IS司令官らの言葉に従い、自爆に向かう若者たちの背景には、「貧困」や「教育の機会の喪失」があるという。【シャンルウルファ(トルコ南部)で大治朋子】
シリア北部ラッカ出身の元IS戦闘員、ハーレトさん(17)は昨年1月、シリア政府軍の攻撃で親族を失った。父親は失業し、学校も破壊された。混乱の中でISが勢力を伸ばし、友達と14人で共に参加した。
ISでの生活についてハーレトさんは「軍事訓練は厳しく、睡眠時間も十分になかった。極限状態の疲労の中で、(司令官から)『自爆をすれば早く確実に天国に行けるぞ』と繰り返し言われた。自爆は強い意志がないと実行できないから強要はされなかったが、あれは洗脳だった」と振り返る。
だが、ハーレトさんは最後まで自爆を決意できなかった。「上官と一緒にいると『よし、やろう』と思うが、独りになると迷ってしまう。僕が悩んでいるのを察知した母親が泣きながら『死んではだめ。一緒にシリアを出よう』と言ってくれた」。ハーレトさんは今年3月、家族と共にトルコへ脱出した。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(本部・ニューヨーク)は昨年、ISなどシリアの武装勢力に参加した元少年兵25人を対象に聞き取り調査を行った。ISは13歳前後から少年を戦闘に投入。1カ月100ドル前後の報酬を与え、自爆やスパイ、刑務所の警護、囚人の虐待などを行わせているという。
戦闘員だった17歳の少年はこの調査で「自爆するよう促され、プレッシャーを感じて仕方なく志願した」と証言。調査報告書は「親族を殺され、学校を砲撃され、地域を破壊された無防備な子供たちを食い物にしている」と批判した。
住民がISに参加しているとメディアに批判された、トルコの最大都市イスタンブール郊外ディロバス地区のフルーシ・シャヒン区長は「ここからISに渡ったのは数人だけ。シリアとの国境線は900キロと長く、向こう側は武装勢力が支配していて(参加阻止で)協力できない」と状況を説明する。
そのうえでシャヒン区長は、ISに入る若者について「3000〜4000ドルの月給をもらえるとだまされたり、イスラム教の本来の教えとは違う解釈を信じてしまったりするような、教育を十分受けていないケースが目立つ」と指摘。「冒険気分で行くことも多い。ISの実態やイスラム教をきちんと伝える教育を進めている」と語った。

子供への対応急げ
国連児童基金(ユニセフ)のジュリエット・トウマ報道官(シリア担当)の話 2014年にシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)などの武装組織に入った18歳未満の少年は、国連が確認しているだけで計278人。イラクでISに入った少年は67人だった。今年はさらに増える見通しだ。シリアではすでに270万人もの子供が学校生活を奪われている。ユニセフは教科書や学用品を提供し、絵を描くなど「子供が子供らしくいられるスペース」を少しでも確保しようとしているが資金難だ。激しい暴力の中で身体的にも精神的にも傷ついている子供たちへの対応を急がないと、この地域は次世代にさらに大きな課題を抱えることになる。

ネパール:進まぬ復興、不安つけ込む 子供連れ去り多発

毎日新聞 2015年7月24日

マグニチュード(M)7.8の大地震から25日で3カ月を迎えるネパールで、被災した子供らが人身売買や児童労働、避難所での性犯罪などの被害に直面している。被災直後の混乱が収まる中で、貧困や将来への不安につけ込む手口が目立つ。ネパールでは以前から子供を狙う犯罪が問題化していたが、大地震をきっかけに被害の拡大が懸念されている。

「逃げないか」言葉巧み
最大規模の地震被害があった中部シンドゥパルチョーク地区のバンデウ。地元政府やNGO(非政府組織)などによる検問所で、ボランティアが行き交うバスを止めて子供がいないか確認していた。「今朝もカトマンズに向かう12歳と15歳の子供を保護した。皿洗いの仕事で賃金は月1000ルビー(約1200円)だそうだ」。スタッフのプロムード・アイヤルさん(27)が吐き捨てるように言った。ペットボトルのミネラルウオーター1リットルが20ルビーはする。
ネパールでは元々5〜14歳の3分の1以上が農業や工場など何らかの児童労働に関わっているとされる。地震で稼ぎ手や生計手段を失った家庭は多く、働かされる子供が増えるのは確実だ。地震後、厳しさを増した労働環境に苦しむ子供が、人身売買のブローカーに狙われる。
「逃げないか」。首都カトマンズのカーペット工場で働いていたプタリさん(15)は6月ごろ「友人の友人」を名乗る男から誘われた。工場で働き始めたのは約2年前。勤務時間は午前4時〜午後10時。工場には60〜70人ぐらいの子供がおり、監督がとげのついた草で子供をたたいた。
4月の大地震後、さらに悲惨さを増した。寮が倒壊し子供2人が死亡したが、工場は無傷だった。翌朝も午前4時から働かされた。余震が続く中、疲労と恐怖が膨らんだ。
「国境で紅茶屋をやっている。そこで働かないか」。逃げ出したい一心で「友人の友人」の誘いに乗った。工場を抜け出し、男とバスで国境の村に向かった。三輪タクシーに乗り換えたところで、初めて隣国インドに向かっていると気づき「売られる」と怖くなった。その直後、検問所で保護された。「本当に助かった。勉強をして自立できるようにしたい」と話す。
ネパールは年間1万2000人以上の子供が国外に売られているとされる。だが、最近は国内で働かされるケースも増えており、表面化するのは氷山の一角だ。政府は6月、両親以外の大人が子供を連れて遠隔地に移動する場合は、政府の許可が必要とする規制を敷いたが、防ぎきれない。
シンドゥパルチョーク地区の政府機関・子供福祉委員会のバルクリシュナ・バスネットさん(37)は「被災者は家も財産もない。『助けてあげる』と言われれば、両親もすぐに子供を渡す」と語る。実際、最近インドでネパールの子供が保護されている。
避難所での性被害も深刻だ。地元警察によると、テント村ではこれまでに複数のレイプ事件が発生。職場が再開され夫らが外出中、テントに残る女性や子供が被害に遭う。
一方、こんなケースもある。首都近郊の村に住む少女(13)は2〜3年前から実父に性的虐待を受けていた。約1年前に発覚し、村内の知人方で保護されていたが、地震で損壊。父のいるテントで暮らすことになったが、すぐに父による虐待が始まった。1週間で飛び出し、現在シェルターで暮らす少女は「家には戻りたくない。父は嫌いだ」と言う。
地元NGO「FPAN」の担当者は「児童労働やレイプなどは以前から深刻だったが、地震をきっかけに被害が拡大している。閉鎖的な社会なので、訴え出ない子供も多い」と指摘する。

山村は今も「支援頼み」
地震発生から3カ月がたち、首都カトマンズでは避難所の数が目に見えて減り、交通量も増えた。だが、郊外には今も無数のテント村があり、山間部では多数の集落が孤立状態にある。政府は軍の緊急輸送などを縮小しつつあるが、山村は今も「支援頼み」の生活が続いている。
22日、世界食糧計画(WFP)のヘリに同乗し、震源地の中部ゴルカ地区にある山村サマガーオンに入った。食料を積んだヘリが着陸すると、周囲に村人たちが続々と集まってきた。「これがなければ生きられない。本当にありがたい」。村の農業、ヌグドゥプ・ラマさん(47)が言った。
サマガーオンは標高3550メートル。住民によると、大地震で約270世帯のうち6割が全壊、4割が半壊した。約2週間、物資は一切届かず、村は完全に孤立。町へつながる道は今もほぼ寸断されており、支援頼みの暮らしが続く。
住民は約1カ月前から、支援物資のトタン板などを使って家屋を修繕しているが、石積みの家はいつ崩れるかわからない。ラマさんは「まだ毎日余震がある。村人はみんなテントで寝ている」と話す。
村の主な現金収入は、漢方薬の原料となるキノコ「冬虫夏草」の販売だった。4〜5月に採集し、中国で販売した売り上げで1年分の衣服や食料などを買う。だが、今年は国境が閉ざされ、販売に行けないという。ネパール側の市場も徒歩で往復14日かかるうえ、途中の山道で地滑りが起きている。
WFPはヘリに加え、ロバで食料を届けており、これまで山間部の被災地に230トン以上を配布した。だが、雨期でいつ地滑りが起きるかも分からず「安全の確保が難しい」(担当者)状況だ。
ネパール政府によると、大地震でこれまでに8898人が死亡。約60万棟の家屋が全壊、約29万棟が一部損壊した。カトマンズで6月、日本とネパール政府が共催した復興支援のための国際会合では、各国が44億ドル(5451億円)の支援を表明したが、政府は復興に67億ドルかかると試算する。主要産業の観光業や農業は深刻な打撃を受けており、経済が元通りになるには相当の時間がかかりそうだ。

遊び心では許されない…若い女性の中高年盗撮、SNS投稿で訴訟も

産経新聞 2015年7月25日

スマホの普及で、今や誰もがどこでも簡単に写真が撮れる時代。撮った写真をツイッターやフェースブックなどSNSに投稿する人も多いだろう。しかし、無断で撮影した人物の写真の投稿は、訴訟に発展する可能性もある。ちょっとした遊び心では許されないこともあるので、注意が必要だ。(平沢裕子)

女性が盗撮の加害者に
「目の前のおっさん、きもい(笑)」-こんなコメントといっしょにツイッターに投稿された薄毛の男性の写真。電車でだらしなく熟睡しているサラリーマンや熱心にスマホを操作している太った男性の写真もある。いずれも若い女性とみられる人の投稿で、ツイッターが炎上したと週刊誌などで報じられたケースだ。
以前は盗撮される対象といえば若い女性の方だったが、最近は「女性による中高年男性の盗撮→ツイッターなどSNSへの投稿」も多いようだ。
ただ、女性のスカートの中を盗撮するのは明らかな犯罪行為だが、電車内のおじさんの姿を撮影することも犯罪やルール違反に当たるのだろうか。IT関連トラブルの法的問題に詳しい森居秀彰弁護士は「本人の同意を得ずに勝手に撮影すれば、肖像権の侵害に該当する可能性がある。直ちに犯罪行為となるとは限らないが、民事責任として損害賠償請求を問われる恐れはある」と指摘する。

ビール腹だけならOK?
肖像権とは、みだりに自己の容貌や姿態を撮影されたり、撮影された肖像写真を公表されたりしない権利(人格的利益)をいう。つまり、電車内で見かけた人を承諾を得ずに勝手に撮影すること自体が、肖像権の侵害とみなされる可能性があるという。
ただし、肖像権の侵害に当たるのは、撮影した写真で個人が特定できる場合だ。手や足などのパーツや後ろ姿、ビール腹のおなか周りなど、写真を見て「◯◯さんだ」と個人が特定されない場合は、通常、被写体になった人に心理的な負担を与えることはなく、肖像権の侵害に当たらない可能性が高い。だからといって、顔を写さずにミニスカートの女性の足だけを撮るのは、自治体によっては条例違反に当たる可能性もある。
また最近では、朝日新聞記者が新幹線で隣の席で泣いていた女性の足下の写真をツイッターに投稿し、炎上したケースもある。

無断掲載で慰謝料請求も
無断で撮られた写真がネット上にアップされたことで肖像権を侵害されたとして実際に訴訟となったケースもある。これは、街でファッションスナップを撮られた女性が起こした訴訟で、写真を掲載した側に対し、慰謝料として30万円の支払いを命じる判決が確定している。
このケースでは、女性の写真は最先端のストリートファッション情報の発信という目的で撮影・掲載されたものであったが、写真がサイトに掲載されたことで「女性に強い心理的負担を覚えさせ、肖像権を侵害した」などとして、精神的苦痛を与えたことに対する慰謝料が認められた。
このケースは特定の女性に焦点を絞って撮られた写真だったが、人が大勢いる中で自撮りした写真に知らない人が写っていた場合、その写真をそのままSNSに投稿するのはどうだろうか。
「基本的には、被写体となってしまった人に社会生活上、我慢できる限度を超えるほどの肖像権(人格的利益)の侵害かどうかで判断される。一般的に観光地の記念写真などで問題が生じる余地は少ないとみられる。ただ、SNSに投稿する場合は、個人を特定できないよう加工するなど工夫が必要でしょう」と森居弁護士。
SNSは公開範囲が設定できることから、友達だけに公開したつもりで気軽に写真を投稿する人も多い。しかし、一度公開したものは、自身の意図と関係なく外部に拡散する恐れもある。
ネットに上がった写真は不特定多数が見る可能性がある。手軽に個人が情報を発信できる時代。トラブルを避けるためにも、投稿前に自分が同じような写真をさらされたときにどう思うか、考えることが必要といえるだろう。