少子化の一方、減らない15歳未満の出生数…何が問題?産婦人科医会調べ

あなたの健康百科 2015年7月27日

女性の晩婚・晩産化に伴い、20~30歳代での出生数は減り続けている。一方、15歳未満での出生数は減っていない―そんなことが、日本産婦人科医会の調べによって分かった。7月8日の記者懇談会では、同医会の安達知子医師(愛育病院副院長)らが、10代の妊娠がもたらす多くの問題を解説。その背景には性教育の不足があり、女性の健康を守るためには早い年齢からの適切な情報提供が必要と強調した。

日本人の性教育レベルは18カ国中17位
「卵子は老化する」という情報が大きなニュースとなる日本。世界18カ国の妊娠希望者を対象に行われた妊娠・不妊の知識に関する国際意識調査では、男性16位、女性17位という”性教育後進国”ぶりだ。
安達医師によると、ある地方の高校生が対象の調査で「月経は死ぬまで続く」との回答が3割に上ったり、女子大学生の「何歳で閉経するか?」の正答率が5割程度だったりと、性教育の不十分さを裏付けるデータは少なくないという。
日本の性教育の不足は、妊娠適齢期や不妊に関する適切な情報提供の不足はもちろんのこと、10代の妊娠・出産が減らないことにも関連しているようだ。

10代妊娠「中絶率が高く、中期以降の中絶が多い」理由
10代の妊娠には「本人たちに十分な性・健康の知識がないのだから、仕方がない」では済まない、多くの問題があるという。2013年度に報告された人口動態統計を見ると、15歳以下の人工妊娠中絶率(中絶数を出生数と中絶数の合計で割った数)は約85%に上る。
さらに、中絶を行う妊娠週数は、20歳未満では他の年代に比べて早期(妊娠7週以前)の中絶が少なく、中期以降の中絶が多い。妊娠12週以降の中絶となると陣痛誘発など出産と同じで、「若い人ほど体に負担の大きい中絶手術を受けていると言える」(安達医師)。
中期以降の中絶が多い背景には、「まさか自分が妊娠すると思わなかった」「つわりがなかった」「膣(ちつ)外射精でうまくいっていた」「月経中しか性交していなかった」「太ったと思っていた」など、月経や妊娠に関する誤った知識や思い込みがあると分析する。

虐待による死亡「生後0カ月・0日」が最多
妊娠の発見がさらに遅くなれば、中絶は不可能となり自分の意思とは関係なく、出産を選ばざるを得なくなる。生まれた子供は経済的な理由などから、乳児院などに預けられることもある。また、出産した当事者は、学業の中断やパートナーとの関係悪化・離別など心身ともにダメージを受ける場合もあるようだ。
さらに、”望まない妊娠”で生まれた子供には虐待のリスクがあると安達医師。児童虐待防止法が施行された2000年から現在まで、虐待の届け出は年間7万3,765件と4倍以上に増加しており、虐待による子供の死亡数も高い水準で推移している。
厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の報告では、虐待によって死亡した子供は生後0カ月や生後0日が圧倒的に多い。その加害者の9割以上は実母で、年齢別では19歳以下が約3割と最も多く、望まない妊娠は約7割、10代で出産した経験がある母親が約4割を占めた。また、妊婦健診を受けていない例や、母子手帳を発行されていないケースは約9割に上っている。

教育関係者からは「寝た子を起こすな」の意見も
安達医師は、望まない妊娠や出産、それによる子供への虐待を予防するためには、避妊や家族計画を若いときから考えられるような、性や健康に関する教育が重要と強調する。
国際的にも、10代の妊娠・出産は中絶率が高いだけでなく、当事者の社会的・経済的な困窮や将来の見通しの不安につながるとして、各国の保健・公衆衛生当局が思春期の妊娠や出産を減らすための教育の普及に努めている。
ところが、日本では複雑な状況になっている。というのも、社会保障審議会が「思春期からの性に関する正確な情報提供」を提言している一方、文部科学省の諮問機関である中央教育審議会は学習指導要領で、中学校での性教育のレベルに性交・性行為に関する具体的な内容や避妊、人工中絶や異常妊娠があること、若年・高齢妊娠の危険性、妊娠適齢期に関する情報を盛り込んでいない。
学習指導要領の教育現場での運用は厳格で、「書かれていないことはできない」のが”常識”のようだ。ある関係者は「政府あるいは関係団体にも、若年妊娠の実態を踏まえた性と健康教育に関する学習指導要領の見直しを働きかけているが、反応は芳しくない」と話す。同医会が学校関係者に行ったアンケート調査からも、「寝た子を起こすな」「生徒はいつまでもピュア」などの意見が見られ、中学生からの性教育に対する温度差が施策の違いにもそのまま反映されている可能性がある。
安達医師は「日本の社会で、15歳以下で妊娠・中絶または出産している女性が年間1,500人も出ていることは重く受け止めるべき。10代での望まない妊娠をゼロにするためにはどうすればいいかを、みんなが考える必要がある」とした。

自治体との連携で産婦人科医による中学校での「出前講座」も
こうした実態に危機感を持ち、産婦人科医が中学校や高校へ「出前性教育講座」を行う取り組みも始まっている。静岡県では、県教育委員会が2002年から県の産婦人科医会に高校での性教育を委託。講師を担当する日本産婦人科医会の前田津紀夫・常務理事(前田産科婦人科医院院長)らの働きかけで、藤枝市や焼津市では中学校でも出前講座が行われるようになった。出張講座の具体的な内容は以下の通り。
1.分娩(ぶんべん)や命の誕生の尊さ
2.妊娠適齢期の話
3.望まない妊娠、人工妊娠中絶
4.避妊・緊急避妊
5.性感染症
6.性の持つ負の側面

中学生のみなさんの避妊は
(1)セックスをしない!
本当にやむを得ないなら…
(2)避妊効果ならOC(ピル)がベスト
(3)性感染症を見据えるとコンドーム
もう一度言います。
何もしないでセックスすると中学生でも妊娠します!

前田常務理事は「中学生の時期は、性に対する興味や性行動の個人差が大きい。講義内容には配慮が必要」としながらも「引き続き中学生の望まない妊娠、性感染症の予防のため、早い時期からの性教育の必要性を訴えていきたい」と抱負を述べた。

卵子提供:ボランティアから採卵、夫の精子と体外受精

毎日新聞 2015年7月27日

病気で卵子のない女性患者を支援するため、無償ボランティアからの卵子提供をあっせんする神戸市のNPO法人「卵子提供登録支援団体(OD?NET)」は27日、2人の30代のボランティア女性から採卵し、それぞれ提供を希望する患者の夫の精子と体外受精させて受精卵を作製したと発表した。年内にも患者の子宮に移植する。親族や知人以外の見ず知らずの第三者から卵子提供を募り、実施する不妊治療は国内初。
同団体の岸本佐智子理事長らが、厚生労働省で記者会見した。岸本理事長は「夫婦間以外の体外受精には賛否両論あるが、望む夫婦はたくさんいる。無償で卵子提供するボランティアのためにも早急な法整備を求めたい」と話した。
卵子提供者は、匿名や無償を条件に応募した子どものいる女性2人。提供を受ける患者2人はともに30代の既婚者で、早期閉経で卵子がないと診断された。
小児科医や弁護士で構成される「マッチング委員会」で、患者の年齢や血液型などを参考に提供を希望する患者と提供者を組み合わせ、臨床心理士によるカウンセリングなどを経て、倫理委員会が提供を承認した。治療施設、居住地域などは「当事者の特定につながる」として公表しなかった。
同団体は2013年1月に提供者募集を開始。同年5月、ボランティア女性3人からの提供相手が決まったと発表したが、提供者の意思撤回により提供には至らなかった。【阿部周一】

卵子提供者が母か、産んだ女性が母か…議論も
神戸市のNPO法人「卵子提供登録支援団体」(OD?NET)が取り組む第三者の無償ボランティアから卵子提供を募る事業で、初めてボランティア女性から卵子が提供され、匿名の第三者の提供卵子を用いた妊娠、出産が近付いた。病気で卵子のない患者の期待を集める一方、「法整備がないままの実施は問題」と指摘する専門家も多い。
国内での卵子提供は、1998年に諏訪マタニティークリニック(長野県)が妹からの提供を受けた女性の出産を発表して以降、一部の医療機関が姉妹や知人を提供者に実施してきた。だが、国内の法整備は進まず、米国やタイ、台湾など海外へ渡航して有償で卵子提供を受ける女性も多い。
一方、卵子提供には課題も多い。遺伝的につながりのある卵子提供者が母か、産んだ女性が母かについて、現在の民法には規定がない。自民党のプロジェクトチームが「産んだ女性を母」と親子関係を定める民法特例法案の今国会提出を目指すが、成立の見通しは立っていない。提供者に排卵誘発剤の副作用など健康リスクが起きる恐れもある。
また同団体の卵子提供では、生まれた子が15歳になり、希望すれば提供者の氏名などの情報が開示される「出自を知る権利」を認める。だが、親が子に治療についてどう伝えるか▽子が事実をどう受け止めるか▽子が卵子提供者と会うことを希望した場合にどう対応するか??など長期にわたる課題が想定される。【阿部周一】

在沖米軍による人権侵害への言及なし 米国務省14年度報告

沖縄タイムス+プラス 2015年7月26日

米国務省が6月末に公表した2014年度の世界各国の人権状況に関する年次報告書で、在沖米軍の活動に伴う県民への人権侵害などに関する言及がないことが23日までに分かった。
沖縄に関する記述は、日本国内の先住民の項目のみで「日本政府は琉球を先住民族とは認めていないものの、独自の文化や歴史は認識し、伝統を尊重し、保存に努めた」と記述している。
同報告書は世界における人権侵害などの被害状況を同省が国別にまとめたもので毎年公表されている。
今年は、「イスラム国」(IS)など過激派組織による人権侵害を強調。日本については、職場でのセクハラの横行や妊娠・出産を機に嫌がらせや差別を受けるマタハラの増加、児童虐待の報告増や女性への家庭内暴力などについて指摘。在日韓国人や朝鮮人に対するヘイトスピーチなどについても言及した。
県内では在沖米軍基地による人権侵害を国際機関に訴えようとの機運が高まっており、翁長雄志知事も9月に国連本部で沖縄の基地問題について訴える可能性を模索している。
今年4月には名護市議会が米軍基地集中と新基地建設強行による県民の人権侵害・差別の調査を求める決議を国連人権高等弁務官に送付。「島ぐるみの会議」の国連部会長を務める島袋純琉球大教授はジュネーブで国連代表部担当者と面談し、新基地建設が沖縄の自己決定権と土地権利、環境権、女性の権利、表現の自由を侵害していると訴えた。

「攻撃指導1万円」 犯罪ツール売る「闇サイト」拡大 お手軽にサイバー攻撃!?

ITmedia ニュース 2015年7月27日

「攻撃指導1万円」「犯罪ツール3千円」「匿名化通信ソフト無料」-。インターネット上で、サイバー攻撃に使える技術が安く提供されている。警視庁が6月末に逮捕したハッカーとして知られる少年も、ネットで簡単に得られる情報やツールを駆使し、不正アクセスなどを実行したとみられている。かつてサイバー攻撃は高度な技術者によるものだったが、ここ数年で攻撃者向けの「闇市場」が急成長。犯罪者の裾野が広がったと指摘されている。

ネットで有名、独学少年ハッカー
6月30日、警視庁に不正アクセス禁止法違反容疑で逮捕されたのは、ネット上で「ZeroChiaki(ゼロチアキ)」と名乗る川崎市の無職少年(17)。
逮捕容疑は昨年12月、不正に入手したIDとパスワードで、東京都の出版社が利用するサーバーコンピューターにログイン。同社のホームページを閲覧すると特定の法律事務所のホームページに転送するよう改(かい)竄(ざん)したとしている。
この不正アクセスでは、IPアドレスが特定されないよう、他人宅の無線LANにただ乗りしたうえ、匿名化通信ソフト「Tor(トーア)」を利用していた。無線LANはもちろん、Torもネットで無料ダウンロードでき費用はかからない。IDなどを入手するためにフィッシングサイトも使っていたが、これを作るソフトも一般的にネットで簡単に手に入る犯罪ツールのひとつだ。
ツイッターでサイバー攻撃の結果などを逐一投稿し、一部ではハッカーとして知られていた少年。押収した端末からは、ほかにも多くのサイバー攻撃の形跡があり、日本で初めて身代金要求型ウイルスをばらまいた人物とまでみられているが、「専門的な教育は受けていない」と捜査幹部は話す。「それでもこれだけの攻撃ができたのは、犯罪ツールが簡単に手に入る環境があるからだ」と危機感を示す。

至れり尽くせり「犯罪講座」「商品保証」も
同庁がこれまでに摘発したサイバー犯罪の中にも、出回っている犯罪ツールを悪用した例がある。
無線LANをただ乗りしてインターネットバンキングの不正送金をしていた松山市の男は、離れた場所からでも接続できるよう高出力の海外製のアダプタをネットで3500円で購入。犯罪インフラとなっている中継サーバーの管理業者は、中国人に月2~3千円でサーバーを提供していた。
少年も、ネットでウイルスを30ドルで購入したことやウクライナのサーバーを3カ月48ドルで借りたことを、ツイッターでほのめかしていた。
米国IT大手の日本法人「EMCジャパン」(渋谷区)によると、こうした犯罪ツールを売る闇サイトはここ2年で急成長した。あるツールは、インターネットバンキングのパスワードを記した、銀行から個別に届くメールを盗み見る。別のツールは、悪用したい正規のURLを打ち込むだけで自動的に詐欺サイトをつくり、そのサイトに誘導するスパムメールの配信機能も付いている。また、流出したクレジットカードの情報は1件10ドル前後が相場だ。
ツールを販売するだけではなく、犯罪者をサポートするサービスも充実してきた。犯罪のレクチャーはチャットで1時間100ドルで受けられ、買ったツールが対策が施され使えなくなれば、代わりのツールを提供する“保証”もあるという。

「彼らの文化のなかで、ヒーローになりたかった」
こうした状況を背景に、「サイバー攻撃は高度な技術を持った人物でなくても簡単に実行できるようになっている」(捜査関係者)という。警察庁などによると昨年、不正アクセス禁止法違反で摘発された容疑者の年齢層は4年連続で10代が最多だった。
動機は情報目的が41%、次いで金銭目的が25%を占めるが、「嫌がらせや仕返しのため」(15%)、「好奇心を満たすため」(4%)など、個人の短絡的な考えに基づくものも目立つ。
逮捕された少年も、あらゆる攻撃の一番の目的は金でも情報でもなく、「自己顕示欲」とITジャーナリストの三上洋氏は強調する。少年が改竄したホームページの転送先となった事務所の所属弁護士は、ネットで悪質な書き込みを行ったユーザーの個人情報をサイト管理者に開示請求したことを機に、悪質なネットユーザーの中で標的の対象となっていた。
少年はほかの攻撃でも弁護士の名前や似顔絵を出し、ユーザーらはその都度注目した。三上氏は「彼らの文化の中でヒーローになりたかったのだろう。しかしウイルスをゼロから作成するほどの技術力はなく、まさに他人のツールを借りるだけの『スクリプトキディ』といえる」と切り捨てる。
警視庁関係者の多くも少年の目的について三上氏と同様の見立てだ。捜査幹部は「かつてサイバー攻撃といえば、金銭や情報の窃取を目的として集団で行われていた。攻撃のためのウイルスや技術は集団の中で作られ、集団が使っていた」と指摘する。
EMCのセキュリティー部門であるRSA事業本部の花村実氏は「今は作り手と使い手が分かれている。技術者らが知識のない犯罪組織にツールを提供して利益を得ている」と指摘。そのうえで、「簡単に犯罪を実行できる手段が広がった。今後サイバー犯罪の危険性がさらに高まる可能性がある」と対策の強化を呼びかけている。