里親「さよならも言えず」 委託解除され、行政と訴訟も

朝日新聞デジタル 2015年9月3日

虐待や貧困などで実親と暮らせない子どもを家庭で預かる「里親制度」をめぐり、里親と行政との間でトラブルになるケースが各地で起きている。厚生労働省は里親による養育の増加を目指し、里親の支援拡大も進めるが、関係者からは抜本的な対策を求める声も出ている。

「突然引き離され、精神的苦痛」
山口県内の児童養護施設にいた小学2年生の男児は2006年、同県長門市の50代の夫妻の里子になった。夫はこの施設の施設長や児童相談所(児相)の職員、妻はソーシャルワーカーなどの経験があり、虐待された経験や障害などで特別な支援が必要な子どもを育てる「専門里親」に登録されていた。
夫妻によると、男児は実家庭で虐待を受け、人との適切な関係を形成しづらい「愛着障害」があった。夫妻宅に来てからも、暴れたり自傷行為をしたりしていたが、徐々に落ち着いてきていたという。
男児が6年生になった10年10月、萩児童相談所が男児を夫妻宅から施設に一時保護した。男児が学校でいじめにあっていると訴えており、男児の気持ちをきちんと聞いて対応したいというのが理由だった。だが、そのまま男児を別の施設に移すため、里親委託が解除された。
夫妻は11年、男児を突然引き離され、精神的苦痛を受けたとして、山口県を提訴。「委託を解除するほど関係が良くないと判断する十分な調査がされていない」「解除の理由説明が不十分だ」などと主張し、損害賠償を求めた。
これに対し、県は委託解除の理由について「男児は学校で同級生と問題があり、専門の施設に転校させる必要があった」「里親と里子の関係がうまくいっていなかった」などと主張。男児と学校への聞き取りや、男児が実母に「(実家庭に)帰れないなら死にたい」と手紙を書いていたことなどが判断材料になったと説明した。
山口地裁の判決は今年4月。桑原直子裁判長は「児相は男児が家出などの危険な行動を取る前に緊急対応が必要と判断した。合理的で裁量権の逸脱はない」「委託解除の理由は里親も認識していた上、解除時に男児と里親が共に関係を振り返ること自体難しかった」などとして、訴えを退けた。
夫妻は判決を不服として広島高裁に控訴。妻は「4年も一緒にいたのに、突然連れて行かれて会えなくなってしまった。荷物も置きっぱなしで、さよならも言えなかった」と無念そうに語る。

「細胞シート」販売承認へ、重症の心臓病患者向け

読売新聞(ヨミドクター) 2015年9月3日

厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の部会は2日、脚の筋肉を使って心臓病を治療する細胞シートの製造・販売を、条件付きで承認する意見をまとめた。月内にも承認が決まる見通し。
昨年11月に導入された、再生医療製品を早期に承認する制度が初めて適用された。従来5~8年かかった臨床試験(治験)から承認までの期間が3年半に短縮された。
承認されるのは医療機器メーカー「テルモ」(東京都)が申請した「ハートシート」。心筋梗塞などで機能が低下した重症の心臓病患者が対象で、年20~30人の利用が見込まれる。患者の太ももの筋肉細胞を培養して、直径5センチのシート状に加工。患者の心臓に5枚張る手術をする。
治験では2012年から2年間で患者7人を治療。5人で心機能の悪化が抑えられた。死亡例はなかった。この製品の承認は5年間の期限付きで、その間、約60人の患者を治療し、有効性を確かめる。
細胞シートで心臓病を治療する手法は、大阪大の澤芳樹教授が開発。澤教授は心臓が大きくなる拡張型心筋症でも治験を始めた。
一方、製薬会社「JCRファーマ」(兵庫県)が承認申請していた、骨髄移植などで免疫細胞が患者自身の臓器を攻撃する病気を、培養細胞で治療する製品については、条件が付かない通常の承認となった。
再生医療製品は、やけどを治療する皮膚と傷ついた軟骨を治療する軟骨の2製品が既に承認されている。
再生医療製品を早期に承認する制度=安全性を確認したうえで有効性が推定できれば、厚生労働省が条件・期限付きで承認する仕組み。メーカーは承認後、患者に製品を販売しながら有効性を確かめる。患者に早く製品が届くメリットがある。

大阪・中1遺棄:深夜外出、怖さ知って

毎日新聞 2015年9月2日

大阪府寝屋川市の中学生が遺体で見つかった事件は、深夜に出歩いた2人が犠牲になった。まだ人通りが少ない早朝に車で連れ去られたとみられている。身を守るために心がけておくことは何か。事件に衝撃を受けている中学生らへのメッセージを、子供との関わりが深い3氏に聞いた。【安高晋】

スマホ、防犯にならない 尾木直樹さん
中学生の皆さんは、「オール(夜通し)」でスマホのやり取りをすることに慣れてしまい、危険の多い深夜の街の中でも、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で親や友人とつながっていれば安心と思っていることでしょう。「何かあれば連絡取ればいいや」って。でも、悪い人に取り上げられてしまったらそれまで。スマホは防犯には何の役にも立たないんです。
スマホ依存は考える力を奪います。でも、自分から友人に「深夜はやらない」なんて言えないですよね。愛知県刈谷市の全小中学校はスマホの使い方のルールを保護者に提案しました。親ばかりか子供からも好評です。「深夜にラインしてはいけないってルールで決まってる」と互いに言い合えるから。皆さんも考えてみてください。
亡くなった2人はとても悔しいはず。それを拭うには、皆さん一人一人がしっかり全力で生きること、そして幸せになることです。

「やめよう」言う勇気を 松井典夫さん
「知らない人にはついていかない」。学校ではそう教わります。でも頭では分かっていても、実際は一つ一つ状況が異なり、マニュアル通りにはいかないものです。こんな声の掛けられ方をしたらどう対応すればいいか。学校で場面を想定しながら、みんなで意見を出し合うことが大切です。例えば「約束の時間に遅れそうになった時、親切そうなおじさんが車で送ると声を掛けてくれたら」とか。自分の命は自分で守るという強い気持ちを持って、想像を膨らませてみてください。
中学生になると、自分の足だけで歩くことが増えます。大人への一歩ですが、楽しさだけではなく怖さも広がっています。深夜の外出を友人に誘われると、気軽に応じたり、断りにくかったりするかもしれません。でも、どんな危険があるかを、2人の悲しい死から君たちは想像することができるはずです。「もうやめよう」と勇気を持って言い合えてこそ、本当の友達です。

味方の大人はいるよ 石川結貴さん
深夜に外出するのは、家に居場所がなかったり、中には暴力を受けていたりするからという人もいるでしょう。そういう子供たちからたくさん話を聞いたことがありますが、気持ちを誰にも言えずに抱え込み、追い詰められてしまう子が多いと感じます。私は「どこかに必ず、あなたの味方になる大人はいるよ」と言いたいです。
今通う学校の先生でなくても、小学校や保育園の時の先生でもいいし、電話相談の「チャイルドライン」でもいい。交番に駆け込むことだってアリです。児童相談所には3桁の番号「189(いち早く)」でつながり、「おなかがすいて動けない」といった相談にも応じてくれます。自分からSOSを出せば受け止めてくれる人がいることを忘れないでください。
事件で「世の中は怖い」と不安に思っている人もいるでしょう。自分が「助けて」と言える人や場所を探しておけば怖くはありません。ただし、それは夜の街にはないのです。

子どもの医療制度、自己負担減免など論点に-厚労省の検討会が初会合

医療介護CBニュース 2015年9月2日

子どもの医療制度について議論する厚生労働省の検討会の初会合が2日に開かれ、医療費の自己負担や医療提供体制などのあり方について検討を始めた。市町村の助成で自己負担が減免されていることについて、頻回受診など「医療資源の無駄遣い」につながる可能性を指摘する委員がいた一方、「自己負担がなくなったことで、受診行動が変化したという認識は持っていない」との見解を示す委員もいた。【新井哉】
検討会では、子育て支援や地域包括ケアなどの観点から、医療提供体制だけでなく、自己負担や国保の国庫負担のあり方などについて議論し、来夏をめどに報告書をまとめるという。
この日の検討会では、子どもの医療費の自己負担額分について、厚労省の担当者が、すべての都道府県が市町村に補助を行い、市町村が助成を行っている状況を説明。委員からは、自治体の判断で負担割合を下げる場合でも、低所得者など支援が必要な人に限って引き下げることが適当とする意見が出た。
こうした意見に対し、現場で診療に携わっている委員は「コンビニ受診や不適当な受診はないと思う」と指摘。別の委員も「多くの方々は、本当に困って病院に来ている」とし、まずは受診行動から分析する必要性があるとした。
今後、月に1回程度、検討会を開催し、委員以外の有識者からもヒアリングを行う見通し。検討会が来夏にまとめる報告を踏まえ、社会保障審議会の医療保険部会などでも議論するという。

<自民議連>「受動喫煙防止法案」骨子案 罰則付きの法整備

毎日新聞 2015年9月2日

2020年の東京五輪・パラリンピックまでに、たばこの受動喫煙防止を進めようと、自民党の「受動喫煙防止議員連盟」(会長・山東昭子元参院副議長)は2日、公共空間での受動喫煙防止策を義務付ける「受動喫煙防止法案」の骨子案をまとめた。今秋の臨時国会に議員立法での提出を目指す。
骨子案は、駅など公共空間や人が多く利用する施設での完全分煙、学校や児童福祉施設、体育施設などの敷地内での禁煙を義務化するよう、罰則付きの法整備を行うことを国に求めている。超党派の「受動喫煙防止法を実現する議員連盟」(会長・尾辻秀久元参院副議長)も同様の骨子案をまとめており、両議連は一本化を目指す方針。
国際オリンピック委員会(IOC)は1988年に五輪会場禁煙の方針を決定。これまでの開催都市の大半で屋内施設の全面禁煙など何らかの罰則付きの受動喫煙防止策がとられている。しかし、日本では、健康増進法で多くの人が集まる施設の管理者に受動喫煙防止対策を行う努力義務を課しているが、罰則はない。
受動喫煙防止策を巡っては、東京都の舛添要一知事が条例化に意欲を示し、都は有識者検討会を開催。しかし、都議会最大会派の自民党が一律規制に異議を唱えるなどし、検討会が5月にまとめた提言は、条例化について「18年までに検討」と結論を先送りしている。山東氏は都の動向について「容認されるべき分煙という形で都議などとも話している。都議会とも懇談しながら具体的な話を進めたい」と述べ、理解を求めていく意向を示した。【細川貴代】

<スズメバチ>刺されないで! 巣駆除に補助金ある自治体も

毎日新聞 2015年9月3日

スズメバチに注意が必要な季節となった。厚生労働省の人口動態調査によると、全国で毎年20人前後が蜂に刺されて死亡している。特に野山では対策が必要。住宅地での巣の駆除に補助金を出す市町村も多い。
群馬県高崎市で昨年10月、ランニング中の男子高校生15人がスズメバチに襲われた。命に別条はなかったが、頭を刺された生徒たちは病院で手当てを受けた。2010年10月には同県昭和村糸井の物置で作業中の男性(86)がスズメバチに首など数カ所を刺され、急性アレルギーショックで死亡している。
群馬県立ぐんま昆虫の森(桐生市新里町)の学芸員、筒井学さんによると、県内の山間部には最大4センチ以上のオオスズメバチが生息し、住宅街ではコガタスズメバチやキイロスズメバチが多い。新しい女王蜂が生まれる8~9月ごろに最も活発化し、外部の刺激に対し敏感になるという。スズメバチは臭いの強いものと、黒いものに向かう習性がある。筒井さんは「山に入る際には香水や整髪料を避け、髪を隠すことが予防策になる」と助言する。攻撃前には上下に小刻みに揺れて威嚇してくるため、兆候を確認したらゆっくり立ち去ることが大切という。
一般家庭のスズメバチの巣を駆除する行政サービスは、群馬県内では高崎市や太田市、伊勢崎市が原則無料。前橋市は巣1個につき自己負担1500円。桐生市や藤岡市、沼田市は駆除費用の半額を補助している。前橋市の担当者は「スズメバチは特に毒性や攻撃性が高く、素人が巣を取るのは避けてほしい」と話している。【田ノ上達也、杉直樹】