小学1年生の「暴力」5倍に その意外な「理由」とは

J-CASTニュース 2015年9月17日

文部科学省が2015年9月16日に発表した「問題行動調査」で、国公私立の小学校での「暴力行為」が14年度は1万1468件あり、調査を始めた06年に比べ3倍になった。
ストレスや貧困などが原因であり、「荒れる小学校」などといった報道も出て小学校はとんでもないことになっている印象だが、実は暴力なのかトラブルなのか、その判断基準が変わっただけで「5年前と小学校はさほど変わっていない」と話す専門家もいる。いったい今の小学校の現場はどうなっているのか。

教師の胸ぐらをつかんだり噛み付いたり
「問題行動調査」によれば、14年度に起こった小学生の暴力は、児童間が7113件、教師に対するものが2151件、器物損壊が1997件、外部の人に対するものが207件あった。2010年から増え続けていて調査を始めた06年に比べると3倍に増え、加害人数は小学1年生が5倍、2年が4.3倍、3年が4.2倍で、6年の1.9倍に比べると低学年ほど増えている。一方、中学生は前年度比11・3%減、高校生は同13・6%減とマイナスになっている。
小学生の暴力行動が増えた原因について、突然キレるなど感情を抑えることができなかったり、暴力以外の解決方法を知らない子が増えていたり、親に構ってもらえず貧困などで欲しいものが手に入らないなどがストレスとして表面化しているといった解説が新聞などに出ている。また、教員の指導不足を指摘するものもある。教員に対する暴力には、教員の胸ぐらをつかんだり、足を何度も蹴る、噛み付いたりイスを投げたりする。「死ね」「うぜぇ」と言葉を浴びせるといったものがあるという。こうした報道にネットでは、
「大人たちに絶対的な強さがねぇんだよ…だからガキに舐められるんだ」
「教師の鉄拳制裁を復活させればいい。甘やかしすぎなんだよ」
「教師が暴力児童を抑え込んだだけで、親が人権団体に訴えたり、第三者委員会が学校に責任追及、謝罪、損害賠償したりするから教師は一切手出しできない」
などといった意見が出た。
「暴力を振るう小学生は増えてはいない」という意見も
そうした中で、最近はすぐに警察が出て来るからこれまで見えなかったものが顕在化しただけ、という意見も少なからずある。今回の調査結果は鵜呑みにできるほど単純なものではないらしい。時事通信は15年2月26日に小学生の校内暴力が増加した事についてこんな記事を配信している。 警察庁の担当者の話として、
「いじめ防止対策推進法の施行もあって学校や親の意識が変わったことが考えられる。小学生は特に学校内で解決する傾向が強かったようだが、最近は警察に通報する事案が増えている」
つまり、小学校側が「暴力」のあったことを表ざたにするようになった、というものだ。現場をよく知るある教育関係者は、J-CASTニュースの取材に対し、
「荒れる小学校などと言われていますが、5年前と比べ暴力を振るう小学生が増えたかというと、それほど変わらないのではないでしょうか」
と明かした。暴力行為をする小学生は限られていて、その一人が何度も何度も「事件」を起こす。これまではそうした行動を「トラブル」として処理していたが、
「教育現場では悪い事は悪い事、暴力はいけない、ということを子供にきっちりと教えるべきだというように変わってきました。その際は、警察や地域コミュニティーなど関係各所と連携したほうがいいわけで、結果的に暴力があったという数字が大きくなったのだと思います」
と語った。13年に公布されたいじめ防止法がそれを加速させたのだという。現在はある意味「膿」を出しているような状況で、これからの推移を見守っていきたいと教育関係者は話していた。

<子どもの医療費>独自の助成自治体の補助金減額、見直しへ

毎日新聞 2015年9月23日

厚労省が現行の仕組みを見直す検討を開始
厚生労働省は、子どもの医療費を無料化するなど独自の助成をしている地方自治体に対し、国民健康保険(国保)の補助金を減額する現行の仕組みを見直す検討を始めた。減額措置には、こうした自治体に応分の医療費負担を求める狙いがあるが、少子化対策の観点から、政府の対応に批判も出ていた。医療関係者らによる有識者会議で1年かけて検討し、安易な受診の防止策を含めて来夏までに結論をまとめる。
子どもの医療費は、小学校入学前は2割、入学後は3割を自己負担する。しかし、実際には子育て支援などのため全自治体が独自に医療費を助成している。厚労省の調べでは、2014年4月時点で全国1742市区町村のうち、子どもの医療費の自己負担が無料の自治体は56.6%。残る43.4%も一部を軽減している。
8割弱の自治体は所得制限を設けていない。対象年齢は「15歳まで」が最も多く、通院医療費を助成する自治体では53.4%を占める。「就学前まで」は19.3%、「18歳まで」は11.5%。入院助成では「15歳まで」が66.%に上る。
独自に医療費を助成する自治体に国が補助金を減額するのは、患者の自己負担が減れば病院に行く人が増え、医療費全体も増えるという考え方に基づいている。13年度に減額された補助金は総額114.9億円。都道府県別で最多は東京都の17.4億円で、愛知県9.2億円、千葉県6億円と続く。
これに対し、全国知事会など地方側は減額措置の見直しを要望してきた。厚労省は、軽症でも休日や夜間に安易に救急外来に行く「コンビニ受診」の防止策などをあわせて検討し、医療費増に一定の歯止めをかける方針だ。【細川貴代】

“しない”保育園が増えている? 乳幼児の昼寝、メリット&デメリット

All About 2015年9月24日

午後の昼下がりに小さな子どもたちが、みんな一緒に昼寝をしている。保育園でよくある光景と思われてきた昼寝が、最近は見られなくなりつつあります。平成21年に厚生労働省の保育所保育指針が改定されて、保育園で日課とされてきた昼寝が見直されたからです。
赤ちゃんは、眠ったり目覚めたりを短い時間で繰り返して、成長します。この眠り方を「多相睡眠」といいます。1歳くらいになると、夜にまとめて長い時間眠るようになりますが、昼寝もある程度の時間とります。
睡眠には個性があるので人それぞれですが、3歳くらいになると昼寝をしなくなる子どももいます。小学校に入ると、昼寝をする子どもはほとんどいなくなります。これは昼に眠くならないのではなく、友達で昼寝している子がいないとか、学校には昼寝をする場所がないことが原因です。
1日の眠気の変化から見ると、午後2~4時には眠気のピークが来ます。できればこのときに昼寝をすると良いのですが、社会的な制約から昼寝をしなくなっているのです。

保育園で昼寝をすると夜更かしになる?
昼寝をすることは、多くの子どもにとって自然で健康的なことですが、悪い面もあります。
保育園で1時間半ほど昼寝をした日と昼寝をしなかった日の夜に寝つく時刻を比べると、昼寝をした日が30分遅くなります。また、昼寝をしない幼稚園児に比べて、昼寝をする保育園児は、朝の寝不足感が強く、朝の機嫌も悪く、園への行きしぶりもよく見られます。
一般的に子どもの睡眠は、母親の睡眠に大きく影響されることが知られています。しかし、保育園児の母親と幼稚園児の母親をくらべても、夜に寝つく時刻に大きな違いなく、母親の眠る時刻とその子どもの眠る時刻とのあいだにも、あまり関係がありませんでした。つまり、昼寝をする保育園児の夜更かしの原因は、昼寝にあるとされたのです。
これらのことから、昼寝にはメリットもあるけれどデメリットもあるということで、保育指針から日課としての昼寝がなくなりました。

昼寝が必要な子どもを救え!
それでは、小さな子どもは昼寝させないほうが良いのかというと、それは違います。昼寝が必要な子どもを無理に起こしておくと、夕方以降フラフラになって事故を起こしたり、夕食をとらずに朝まで眠ってしまったりします。
大事なのは、睡眠はとても個性的だということです。3歳の子どもの4割は昼寝をしませんが、6割はまだ昼寝を必要としています。4歳になると昼寝をしない子どもの割合が半分を超えますが、それでも約3割の子どもは昼寝をします。
つまり、保育指針を変えた意味は、「子どもたち全員に、同じ時間だけ昼寝をさせることは良くないので、それぞれの子どもにあった昼寝のとり方に変えましょう」ということです。
昼食後に眠気を訴える子どもには、昼寝をさせてあげてください。子どもが眠くないと言っても、ボーっとしてて活動性が落ちていたり、ふらついたり機嫌が悪かったり、集中力や意欲が落ちたりしていたら、昼寝が必要というサインです。
5歳くらいまでなら、1時間~1時間半の昼寝をとらせましょう。ただし、遅い時刻まで眠っていると夜の睡眠に悪影響が出ますから、午後3~4時までには起こしてください。就学前になったら入学後の準備として、昼寝の時間を短くしていってあげてください。もちろん1日トータルの睡眠時間が短くならないように、夜に寝つく時刻を早くしなければなりません。

多くの子どもには昼寝が必要
「昼寝しなくても大丈夫」と言っている子どもは、本当に昼寝しなくてもよいのでしょうか?
先に紹介した研究では、1時間半昼寝した子どもは昼寝しない子どもに比べて、30分遅く寝ついていました。つまり、夜の睡眠だけでは、毎日1時間ずつ睡眠が足りていないということです。ですから、小さな子どもたちには、平均1時間の昼寝が必要なのです。
これらのことから、小学校へ入学するまでの子どもたちには、毎日午後に1時間~1時間半の昼寝タイムを設けて、眠れる環境を提供することが大切です。しばらくしても眠れない子どもや、途中で目覚めた子どもは、静かに別の部屋へ行って遊ばせましょう。
また、よく眠っている子どもでも、午後3~4時には起こしてあげてください。寝起きが悪ければ、寒冷刺激を与えたり、明るい場所でおやつを食べたり、軽い運動をしたりするとだんだん目が覚めてきます。

「普通の老後」が難しい 年収700万円でも老後は「ギリギリ」〈AERA〉

dot. 2015年9月23日

今、年齢を重ねてからの「貧困」が大きな問題になりつつある。それは「普通」と思われていた人々にとっても、もはや無縁の話ではない。
6月、高齢者の貧困実態を著した『下流老人』(朝日新書)という本が出た。著者で、生活困窮者を支援するNPO「ほっとプラス」代表理事の藤田孝典(33)は、下流老人を「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義。現在推定600万~700万人で、高齢者人口の20%近くに及ぶという。
病気、失業、借金、離婚、介護……。貧困に陥る要因は複雑だ。藤田によれば、以前は日雇い労働者のように若い時から貧困で老後も貧困に陥るケースが多かったが、近年は「普通の人」が増えていると話す。
「無計画で放蕩な暮らしをしていた人ばかりが下流老人になっているわけでは決してない」(藤田)
築30年の2LDKの都営団地に病気の妻(77)と暮らす芝宮忠美(72)は、部屋に上げてくれるとこう話した。
「生活に、まったく余裕がありません」
同志社大学を卒業後、外資系ホテルに入社。アブダビ、イギリス、スウェーデン……。会社員人生の大半を海外で働いてきた。会社員時代の年収は約700万円。当然、「普通の老後を送れる」と思っていた。
しかし落とし穴があった。海外勤務時に国内の年金に未加入だった期間があり、年金受給額は月7万円足らずだったのだ。収入は妻の障害年金(約10万円)とあわせ月約17万円。東京都の2人世帯がもらう生活保護費とほとんど変わらない。
そこに、妻の介護費が重くのしかかる。週2回のデイケアで月3万円近くかかり、食事制限のある妻に特別な献立を作るため食費は月約6万円。収支は毎月ぎりぎりだ。
「家賃が4千円だから、何とかやっていける状況です」
なぜ、「豊か」と思われていた高齢者が厳しい状況に追い込まれているのか。
「昔はこうした親を、子どもや同居家族が支えたが、雇用が崩壊し3割以上が非正規になり核家族化が進んだ状況では、親は子どもたちに頼ることができなくなっています」(藤田)

ホリエモン「貧困問題はやっぱり自己責任だろう」

dot. 2015年4月10日

多くの貧困者が存在している日本社会。生活保護など救済システムはあるが、全面的な解決にはならないと、堀江貴文氏は指摘する。

先日出演した「朝まで生テレビ!」で、私が失業者を擁護するジャーナリストとのやり取りの中で「完全に自己責任じゃん」と発言したことが話題になっているようだ。
貧困者対策を喧伝するジャーナリストは全ての貧困者を等しく助けるべきであるという論理を展開しがちである。日本には生活保護制度などが整備されており、適切に運用されれば、ホームレス生活になったり餓死したりするような事態にはならないはずだ。そういう人たちが存在しているのは果たして行政の責任と言ってしまっていいのだろうか。
この発言の前段階で、ジャーナリストが例としてあげた、横浜のみなとみらい建設に関わった労働者が今は貧困に陥っていることについて、本来であれば景気が良かったころに資産形成をして年老いても収入があるような人生設計をすべきであったと私は思う。
努力して人生設計をして悠々自適の生活をしている人がいる一方、そういうことをしなかった人が貧困に陥っているのは、ある意味自己責任ではないだろうか。
とはいえ生活保護制度があるのだから、それは制度の範囲で助ければいいだろう。それには異論はない。ただし、資産形成をしようとしない人に、それを促したとしても実行するのはごく少数の人だろう。大半は景気が良い時期に散財して、後には何も残らないという状況になるのがオチだろう。しかしホームレスになってしまうというのはそれ以外にも本人たちにも原因があると私は思う。
他人に頼ることができないというプライドの問題も考えられる。義務教育の過程の中で親や先生に「他人に頼ってはダメだ」と教育されるだろう。子どもたちはそれを真に受けて何でも自分で解決しようとする。窮地に陥ったとしても人様に頼るのは良くないことであるという刷り込みを受けているのである。
従ってホームレスになるような事態があっても友達や知人に頼ることができない。見ず知らずのホームレスを家に泊めることができる人は相当な博愛主義者だと思うが、友人が路頭に迷おうとしていたら、少しの間でも支援しようと思うのが人情というものだろう。
しかし、コミュニケーション能力が不足していたり、プライドが高かったりして、他人に頼れない人たちは生活保護を受けることすら拒否、あるいは二の足を踏むのだという。そういった人たちを救うのは果たしてカネの問題なのだろうか?
私は違うと思う。普段から他人の信頼を得るような行動を取り、コミュニケーションを面倒臭がらずに取って、常に困ったときは相互扶助できるような体制を取ったらどうだろうか、と思うのだ。
今や近所付き合いはあまりなくなったようだが、それにかわってソーシャルネットワークがある。趣味や考え方が合う友人たちと簡単に仲良くなることができるのだ。金銭的なセーフティーネットよりも、もっと根源的な人と人との信頼関係のセーフティーネットのほうがよほど強固であるし、長続きするのである。

「正座、白菜、医者」わたしたちが観ていた時代劇は間違いだった!?

TOKYO FM+ 2015年9月17日

戦国時代や江戸時代に偉い人が乗っている馬は、サラブレッドふうのかっこいい馬……ではなく、実際は足の短いポニーふうの馬だった……。こんなふうに、私たちが想像している時代劇ふうの江戸のイメージと、実際の江戸の史実が大きく違っていた、なんていうこともあるようです。そんな「時代劇の間違い」をご紹介します。
私たちが見慣れている時代劇には、「現代用」に変えられているものがたくさんあります。
たとえば、言葉。
一人称などは昔ふうですが、口調はほとんど今と変わりない時代劇。
ですが本当は、江戸と今では大きく言葉が違いました。
同じように、時代劇ではお馴染みのシーンも、実際の江戸の町ではありえなかったことがいくつかあります。
たとえば、戦国時代の室内でのシーン。
女性はきちんと正座をして座っていますよね。
実はあれはウソ!
あの時代、高貴な女性たちは、座る際には立膝かあぐらが普通でした。
実際、多くの肖像画に、女性たちは立膝かあぐらで描かれています。
食事のシーンにも、ちょっとした罠が。
もし、江戸時代のドラマでお鍋の中に白菜が入っていたら……?
それはウソ!
白菜が入って来たのは明治時代。
江戸時代のお鍋に白菜が入っているわけはないんですね。
最後に、もう一つ。
戦国時代にチョンマゲを結ったお医者さんが出てきたら、それはウソ!
実はこの時代、お医者さんはほとんどの場合が「坊主」。
医者は戦場に一緒に行って傷ついた兵士を治療するため、「非戦闘員」の印として坊主にしたのだとか。
その名残で、江戸時代もお医者さんは坊主、というのが普通だったようです。
また、僧侶がお医者さんを兼任することも多かったから、とも言われています。
いかがでしたでしょうか。
実際の風景とはちょっと違う形になっている時代劇。
でも、もしリアルすぎる時代劇を作ったら、思い入れしづらくなってしまうのかもしれませんね。

「人類滅亡、12のシナリオ」 人工知能の反逆、人類不妊にする超汚染物質……大まじめかSFか

産経新聞 2015年9月24日

「人類滅亡、12のシナリオ」と題したレポートが世界に衝撃を与えている。人類を不妊にする超汚染物質、地球を飲み込む人工ブラックホール…。こんな想像をはるかに超えた内容も含まれるが、発表したのが英オックスフォード大など名だたる研究機関の関係者とあって、ただのSF(サイエンス・フィクション=科学的な空想)と片付けるわけにもいかない。むしろ「リスク管理のヒントに」と評価する専門家もいる。果たして、その気になる衝撃のシナリオとは-。(土塚英樹)
レポートが公表されたのは今年2月中旬。作成者にはオックスフォード大や、傘下のフューチャーヒューマニティ研究所の科学者、スウェーデンのグローバルチャレンジ財団の専門家、ビジネス分野の将来リスク分析などを手掛ける専門職「アクチュアリー」ら錚錚(そうそう)たるメンバーが名を連ねた。
200ページを超える分量の報告書は、人類滅亡の12のシナリオを具体的に4ジャンルに分類。それぞれに詳細な分析を加えている。
まずは「現在進行中のリスク」のジャンルとして、地球温暖化など極端な気候の変化が飢餓を生み、社会崩壊による移民増加などをもたらす「極端な気候変化」や、人の往来の激しさやスピードが増し、発生の可能性が高まっている「世界規模のパンデミック(感染症の大流行)」、世界経済がグローバル化して経済危機や貧富の差の拡大が起こりやすくなり、大きな社会混乱や無法状態をもたらす「国際的なシステムの崩壊」など5つのシナリオを挙げている。
また、「外因的なリスク」のジャンルには「巨大隕石の衝突」と「大規模な火山噴火」の2つのシナリオ、「国際政治のリスク」ジャンルには「政治の失敗による国際的影響」のシナリオを指摘した。
さらに「新たなリスク」ジャンルとして、ゲームや映画になったテーマでもある「バイオハザード」の世界として人工的な病原体の生成など「合成生物学」と、小型核兵器などの開発に転用される可能性がある「ナノテクノロジー」、映画「ターミネーター」のように膨大なロボットが人類に反逆する「人工知能」のシナリオのほかに、「その他の全く未知の可能性」も挙げられた。

レポートの狙いは
この最後にある想定を超えた「その他の全く未知の可能性」とは一体何か-。
報告書では、具体例として「人類を不妊にする超汚染物質の開発」や「人工ブラックホールが開発され、地球を飲み込む」「動物実験により、人類を超える知能をもつ生物が出現」「誰かが地球外生命(ET)にコンタクトし、危険な異星人(エイリアン)の注意を呼び寄せる」などを挙げている。
ここまでくると、もはやSFの世界にすぎないと片付けたくなるが、レポートを詳しく分析したニッセイ基礎研究所研究員、安井義浩氏は「われわれが、ときどき酒場で酔っ払ってする話とは大きく違う」とした上で、「過去には『ばかげている』と考えられていたことが、現実の脅威になっているケースもある。どんな可能性も否定できない」と注意を促す。
そのうえで安井氏は「このレポートの本質的な狙いは、リスクに対処する行動と対話を促すことにある」と指摘する。
実際に報告書はリスクへの対処法として10項目を紹介している。
具体的には、「世界規模のリーダーシップ・ネットワークを構築する」「危険探知システムを構築する」「極度に複雑な社会システムを視覚化する」「地球規模のリスクに対する指標を政府が確立する」などだ。

さまざまな思惑も交錯
12のシナリオが発表されると、たちまち世界に衝撃が広がり、日本でも「(10月に個人番号の通知が始まる)マイナンバー制度が(絶滅シナリオの)布石になる」などと、さまざまな憶測がインターネット上などで早くも飛び交っている。
ただ、安井氏は今回の12のシナリオについて「個人や企業ではどうにもならないものもある」と冷静な対処を促す。
実際、レポートでも「国際政治のリスク」について「人間のやることであって、防いだり、各国が協力したりすることも比較的やさしい」とする一方、「隕石、噴火などは防ぎようがないが、被害を少なくすることはできるかもしれない」と指摘。「もっとも厄介」なリスクとしては人工知能のリスクを挙げ、「いったん暴れだしたら、生身の人間には止められない」としており、数々のリスクを対処可能なレベル別に分類している。
安井氏は、絶滅のシナリオ自体よりは、むしろ10項目の対処法の方に注目しており、「少しスケールを小さくして、自分、あるいは会社などの通常のリスク管理にあてはめて考えれば、何か(解決などの)ヒントになることがあるのではないか」と話している。