「ホームレスになった子や自殺した子も」児童虐待を受けた若者の自立を支援するには?

弁護士ドットコム 2015年10月5日

子どもの虐待を防いだり、虐待を受けた子どもの自立を支援するには、どうすればいいのか。児童虐待の問題について考えるシンポジウムが10月3日、東京・渋谷で開かれた(主催:認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク)。
その中で、虐待などの辛い過去を抱えながら成長した若者たちの「その後」についても語られた。児童養護施設などで育った若者の多くは、退所後も様々な困難に直面している。その問題解決のサポートを行うアフターケア相談所「ゆずりは」の高橋亜美所長は、厳しい現実を紹介した。
「施設を退所した後、ホームレスになって、大晦日に『住む場所がない』と連絡してきたり、女の子の場合は、性産業で働かざるを得なくなっている子や、望まない妊娠をして、産むことも育てることもできず、どうしていいか分からない子もいます。刑務所に服役した子、自殺した子もいます」

「あなたを知っている人はもういないの」
現在の制度では、児童養護施設などで過ごせる期間は基本的には18歳までで、延長したとしても、20歳までしかいられない。そして、18歳や20歳で施設を出た後は、自力で生活を維持していかなければならない。
高橋さんによると、施設の退所者は、虐待などの辛い記憶が突然フラッシュバックして、人間関係がうまくいかなくなったり、就労に支障をきたすことが多々あるという。また、「一般家庭の子どもと比べて低学歴で資格もない」ことも、退所後に困難な状況に陥る要因の一つだという。
では、問題が起こったとき、親や家族、入所していた施設に頼ることはできないのか。親との関係ついて、高橋さんは「児童を虐待していた親が、施設から戻ったら殴らなくなっていたなど、いい方向に変わったケースはほとんどない」と厳しい実情を指摘する。
また、施設についても、「児童養護施設は、職員にとって長く継続して働きにくい環境。退所者が相談しようと思っても、自分の担当者が辞めていることが少なくなく、せっかく連絡したのに、『あなたを知っている人はもういないの』と言われてしまうことがある」と話す。

問題をひとりで抱え込んでしまう人が多い
このような実態には問題があるとして、施設退所者の自立をサポートする取り組みが施設側に求められていると、高橋さんは指摘する。
一つは、施設に在籍した人の情報を職員間で引き継ぎ、退所後に相談があったときにきちんと対応できるような体制を整えることだ。施設に在籍している間に、就労につながる資格や学歴を取得させることも大切だという。
「ひとりで生きているのではなく、誰かに頼ってもいい。助けを求められることが、自立しているということなんだよ」。施設退所者をサポートする中で、高橋さんが彼らに伝えるメッセージだ。「自立したのだから、もう頼ってはいけない」。施設退所者の中には、そう考えて、問題をひとりで抱えこんでいる人が少なくないのだという。

施設退所者の最大の問題は「孤独感」
シンポジウムでは、児童虐待の防止に取り組む「子どもの虹情報研修センター」の川松亮・研究部長によって、2011年に東京都が施設退所者に行ったアンケートの結果が紹介された。
それによると、「施設を出て困ったことは何か」という質問に対して、「孤独感」と答えた人が29.6%で、最も多かった。以下、「金銭管理」「生活費」「職場での人間関係」と続く。また、問題があっても「誰にも相談できなかった」という人が16.8%いた。
さらに、大学に進学したものの中退したという人が21%いた。アルバイトとの両立ができないことや心身のストレス、学費の負担が、主な原因だという。川松さんは「施設の退所者は、心身ともに苦しい状況におかれている。どうアフターケアしていくかが問題だ」と語った。

「待機児童ゼロ」、目標にすると危険 親の思いと乖離

朝日新聞デジタル 2015年10月5日

自民党総裁に再選された安倍首相は、「1億総活躍社会」を目指すとし、子育て支援として「待機児童ゼロ」などの支援策を掲げた。「待機児童ゼロ」を目標にすることについて、一橋大学経済研究所の宇南山卓准教授に聞いた。

保育所の整備は必要だが、「待機児童ゼロ」を政策の目標にすると問題がある、と指摘していますね。
「安倍首相は成長戦略に『女性の活躍』を位置づけ、それを達成するため、2017年度までに40万人分の保育の受け皿を確保して『待機児童ゼロ』を目指すとしています。少子高齢化が進む日本で、労働力の確保という観点からも女性の活躍を目指すことは適切な政策目的です。その目的を達成するために保育所を整備することも大切です。保育所の整備には、女性の仕事と子育ての両立可能性を高める効果があるからです。ですが、『待機児童ゼロ』を目標にしてしまうと危険です」
「待機児童をゼロにするということは、保育所に入りたい人は全員が入れるという状況を達成することです。ですが、『保育所に入りたい人』の定義があいまいで、自治体ごとに数え方が異なります。『育児休業を延長』などの場合、待機児童にカウントしない自治体があると報じられています。これは、当事者の実感としては『入りたいのに入れない』状況です。『希望している』ということは、定義次第でどうにでもなり、すごく危険です」

あいまいな定義、自治体の行動をゆがませる可能性も
「このようなあいまいさがある指標を目標にすると、自治体の行動をゆがませる可能性があります。保育所の定員を増やすより定義を変える方が簡単なので、自治体に見かけ上の待機児童を減らす行動を取らせることにもつながりかねません。恣意(しい)的に待機児童の定義から外すような対応になれば、真の問題が隠され、仕事と子育てを両立できるようにしようという本来の問題解決が遅れる可能性があります」

保育所や定員を増やすことは自治体にとって財政にかかわることです。保育にはどれくらい経費がかかるのでしょうか。
「試算によれば、日々の運営だけでゼロ歳児1人につき1カ月35万円程度の経費がかかるといわれています。保育にかかる費用はゼロ歳児が格段に高く、それ以降は低くなり、4歳では1人あたり1カ月でだいたい8万円くらいになります。これに加えて、保育所を新設するには建物などの固定的な費用もかかります」

待機児童数と保護者の実感、連動せず
「さらに、自治体が現状把握をゆがませるような行動を取らないとしても、『保育所に入りたい人』の数は、保育所の整備状況に影響を受けます。保育所に入れる可能性がとても低いと、そもそも希望することすら諦めるケースが多くなります。つまり、待機児童数の多さ少なさは、保護者が感じる保育所不足とは必ずしも連動しません。つまり、待機児童がゼロだからといって望ましい状態とはいえないのです」

確かに、行政が発表する待機児童数と保護者の実感はかけ離れていると感じます。
「保育所がないせいで起こったことは何かというと、子どもを産まなくなったことではないでしょうか。だから待機児童の問題がこれだけ大きくなったのでは。専業主婦になるのではなく、産まなくなるという方向にきてしまい、おそらくそれが少子化の原因の一つでしょう。待機児童ゼロという目標を掲げると、必ず見栄えのいい結果を出そうとする人がいて、それをやると少子化は抑えられない方向に行ってしまう。だから、別の指標をつくる方がいいのではと考えました」
「なぜそのように発想したかというと、保育所の数自体は1990年代にかけて減っているんです。一方、保育所の定員率といわれる、定員と、未就学児の比率はすごく上がっている。厚労省は『保育所が整備されている』と言います。でも絶対数としての保育所は減っている。何が起きているかというと、子どもの数が減って、分母が減るから比率が上がる現象です。どう理解すればいいかというと、働きたい人がたくさんいて、でも保育所がないから産むのをやめて、すると見かけ上の比率が上がる、という状況です。子どもがいないから、という理由で保育所はどんどん廃止される。そうなると、ニーズのとらえ方が間違っていたんだろうと思いました」

「潜在的定員率」を提案

では、どのような指標がよいのでしょう。
「『潜在的定員率』を提案しています。子どもを潜在的に産むであろう女性の数、例えば20歳前後から40代くらいの女性の人口と、保育所の定員の比率です。子どもや仕事の有無などに関わらず、どれくらい保育所を利用する可能性があるかを表せます。例えば、25歳から44歳の20年間で、1人の女性が子どもを1人、保育所に3年間預けようとすると、20年のうち3年保育所を使うことになります。つまり「20分の3」で15%。潜在的定員率が15%くらいあると、すべての女性が子ども1人を3年くらい保育所に預けられる計算になります。
仕事を続ける女性とやめる女性がだいたい50%ずつだと仮定して、0歳から6年間預ける場合を考えてみましょう。潜在的定員率が15%あれば、子ども1人を6年間預けられる計算です。そのような感覚の数字と理解していただけたら」

実際の潜在的定員率はどうなっていますか。
「25歳から44歳の女性人口との比率でみると、だいたい10%くらいです。1985年に11・4%で、2005年まではほぼ横ばい。この比率が05年以降少しずつ上がっていて、15年には13~14%くらいになりそうです。保育所の整備が進んだことによると考えます。今、20歳から44歳の女性はだいたい2千万人くらいいます。例えば、安倍政権で40万人分の受け皿を用意すると、潜在的定員率を2%くらい上げられますので、潜在的定員率が15%くらいになり、女性が仕事を続けやすくなるのではと考えています」
保育所の整備は必要だが、待機児童ゼロを政策目標にするのでなく、そもそもの目的やゴールをはっきりさせることが大切ということでしょうか。
「ゴールというのは、政府がやるからには目標を持たないといけませんが、今のように財源も保育士も足りない状態で、何か一つできたらみんなが万々歳、という状況はありえません。常に『ここまでやったらこういう効果が出た、さらに続けるべきか』ということが常に問われるべきです」(聞き手・大井田ひろみ)

家計再生コンサルに聞いた、大学の学費を賢く貯蓄する方法

週刊女性PRIME 2015年10月5日

今年7月、厚生労働省が発表した『平成26年版 国民生活基礎調査』では、児童のいる世帯の生活意識調査で67・4%が「苦しい」と答えている。とは言っても、子どもは大学に進学させたいところ。どうすれば、学費を捻出&貯蓄できる? そこで、家計再生コンサルタントの横山光昭さんにおススメの方法を教えてもらった。

コレが王道!「奨学金」
「奨学金は、各種ローンに比べ低金利で無利子のものもあります」
ポピュラーな奨学金制度は日本学生支援機構(旧・日本育英会)。第一種奨学金と第二種奨学金の2種類があり、前者は無利子だが学力と家計を基準とした厳しい審査があり、後者は上限を3%とする利子がつく。第二種のほうは審査がゆるやかで多くの学生が利用している。
「奨学金は高校3年生で申請ができますが、初年度の費用が工面できれば焦って申し込む必要はありません。2年や3年次でも申し込むことは可能ですからお金がピンチになったら借りるようにしましょう」
奨学金を返済するのは子ども。できれば借入金額は最低限に抑えたい。
「奨学金には、企業や民間団体が行う返さなくていい“給付型”というものもあります。ただし非常に狭き門であることは確かなので、最初からあてにするのはやめましょう」

子どもに負担をかけずに「教育ローン」
「学費の借り入れの優先順位は第1が奨学金、第2が教育ローンです」。
何かの理由で奨学金の申し込みができなかったり、奨学金だけでは足りない場合、次の一手は教育ローン。民間の銀行、信用金庫、JAなどが提供する教育ローンがあるが、「国の教育ローン」と呼ばれる日本政策金融公庫がポピュラー。
「一般的なローンに比べ使い道が決まっているローンは低金利です。とはいえ奨学金の金利に比べると倍以上違うので、あくまでも奨学金の補助と考えましょう」
日本学生支援機構、第二種奨学金の金利は0・82%(平成26年度3月末貸与終了者の利率)、一方の国の教育ローンの金利は2・15%。
「奨学金は募集時期が決まっていますが、教育ローンはいつでも申し込め、最短2週間で入金されるという利点があります。しかし、返すのは親ですから、自分たちの老後のことも考えて利用しましょう」

「祖父母から孫へ贈与」年間110万円までは非課税
「祖父母が孫へ贈与する場合、年間110万円までは非課税です。学費や生活費をその都度、支払う場合なら、税はかかりません」
まとめて先にもらう場合は、2013年に始まった新制度「教育資金の一括贈与非課税措置」を利用するといい。孫や子どもに教育資金を贈った場合、1人あたり1500万円まで贈与税がかからないという仕組み。非課税制度専用口座をもうけ、教育費であることを証明する領収書の提出など手間はかかるが、もらえるものならば利用したい。

緊急事態に借りるなら「生命保険の契約者貸付」
大学入試は受験費用だけで一般的に30万円ほど、すべり止めの入学金を支払ったら本命の初年度納付金が足りない!
「そんな時に利用するなら、生命保険を担保にお金を借りる“契約者貸付制度”を利用するのも手」
契約者貸付制度とは払い続けている生命保険で、現在の解約返戻金額に対する一定の割合を限度としてお金を借りることができる制度。貸付利率は保険商品によるが一般的には2~6%。万が一、返済できないときは、保険金や解約返戻金から引かれる。

「借り入れは最小限に!学費が払えないときは大学の学務課に相談」
大学の学費は高額のため、万が一、払えないときがあるかもしれません。そんな時、黙って滞納せず早めに学務課に相談しましょう。一時的に滞納を認めたり、学校独自の救済方法を提案してくれることもあります。無断で滞納すると退学になるところもあるので注意しましょう。
また、子どもにアルバイトをさせて学費を負担させることも大事。すべて親が用意しなくてもいいと思います。せっぱ詰まって消費者金融に手を出すことだけはやめましょう。宣伝を聞くと便利なように思えますが、高額な学費を金利18%で借りたら、あとあと大変なことになるのは明らかです。

米国に殺到する中国人妊婦 「アンカーベビー」問題に〈AERA〉

dot. 2015年9月29日

「生まれくる子に米国市民権という最高の贈り物を」。米国に殺到する中国人妊婦が大統領選で論争の火種になり始めた。
アンカーベビー。この言葉が今、米大統領選の議論の争点になっている。この言葉、元は中南米(ヒスパニック)系の不法移民が米国で出産した子どもの「蔑称」だった。
親の国籍に関係なく、米国内で生まれた子は、自動的に米国市民となる。この出生地主義を使い、米国で産んだ子を船の錨(いかり=アンカー)のようにして、合法ビザを持たない両親までが米国に住み着くことを指す。
しかし、共和党の大統領候補であるジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は8月24日、メキシコとの国境に近いテキサス州での演説で、この定義に疑問をはさんで言った。
「いやむしろ、いま出生地主義を利用して、子どもが米国市民権を得て問題になっているのはアジア人だ」
この発言は、アジア系の怒りを買い、中韓系米国人らの団体が一斉に非難声明を出した。
背景はあった。数年前から、中国人女性が観光ビザで渡米して出産することが社会問題化。年2万人とも3万人とも言われる中国人女性が米国で出産しているとされる。彼女らを引き受けるマタニティーホテルも次々でき、今年3月にはカリフォルニア州で一斉に捜査された。
「子どもに米国のパスポートを与えることは、最高の教育を与える扉になると考える親が多い」
こう話すのは、米国で出産した中国人母親らの担当弁護士ロング・リウ氏だ。リウ氏によると、二重国籍を認めない中国でも、米国市民として生まれた子は中国での永住権を取れ、中国のパスポートも持てるという。一人っ子政策の抜け道にもなる。
ジェ・フェさん(29)は、2年ほど前に娘を米国で出産した。昨年末には、息子を産むために再び観光ビザで渡米。入国審査の厳しいロサンゼルスを避けてラスベガスから入り、1月に出産した。
「彼女は英国のトップ校で教育を受け、世界の有名大学の教育の威力の大きさを知った。だからわが子には米国の最高の教育を与えたいと。彼女は乳母も雇えるほど裕福だ」(リウ氏)
妊娠して渡米し、出産すること自体は違法ではない。だが、渡航の目的について審査でうそをつくのは違法だ。フェさんが赤ちゃんの米国パスポートを取った直後、当局の摘発に遭った。
フェさんは出産後、すぐ帰国するつもりだった。米国に住み着く目的ではなく、十数年後に米国の高校や大学に子どもを通わせるために戻ってくる計画だったからだ。
フェさんは4月、中国の祖母が危篤という理由で子どもを連れて中国に帰国。裁判所の国内待機命令を無視したことで、フェさんが米国に再入国すれば即、逮捕が待っている。