止まらない「いじめ」 先生たちの「感度」が働かない理由とは

Benesse 教育情報サイト ヘッドライン 2015年10月5日

さまざまな対策が講じられながら、簡単には根絶できないいじめ。学校でも、何がいじめで、どうなれば解消といえるのか、その判断すら迷う場合があるという。最近も、岩手県矢巾町の中学校で担任が生徒のSOSを見過ごし、自殺に至る痛ましい事件が起きた。学校や教員にはどのような対応が求められるのか、ベネッセ教育情報サイトが教育ジャーナリストの渡辺敦司氏に聞いた。

文部科学省は先ごろ、2015(平成27)年度初の「いじめ防止対策協議会」を開きました。その席で行われた、NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事の小森美登里さんによる発表内容を紹介します。小森さんは一人娘をいじめ自殺で亡くしたことをきっかけに、いじめのない社会を目指して活動しています。
小森さんが教員研修などで講演すると、参加者から「自分がしていたことが、どれほど子どもを追い詰めていたかがわかった」といった感想が聞かれるそうです。学校で日々子どもたちと接していても、教員のいじめに対する「感度」が働かない場合があることも事実。小森さんによると、背景には「いじめがあれば気付かないはずがない」との思い込みや、兆候をつかんでも一人で抱え込んでしまうことがあるといいます。
教員が様子を見ている間に、いじめられている子どもが孤立感を深めることも。教員が「いじめられる側にも問題がある」と考えてしまう場合も少なくありませんが、小森さんは「そうした先生に、子どもは二度と相談しなくなる」と注意を促し、「いじめは虐待行為。学校で起きると『いじめ』と呼ばれるだけ」と指摘しました。
いじめた子どもへの対応も欠かせません。同NPOが2012~13(平成24~25)年に小・中・高校で行ったアンケート調査では、いじめをした子どもの7割が「自分もつらかったことがある」と答えました。家庭などでのつらさを、いじめで発散させているのです。再発防止には加害児童生徒の心情に寄り添った対応も不可欠でしょう。

市町村の教育状況は今 いじめと学力向上が二大テーマ

Benesse 教育情報サイト ヘッドライン 2015年9月18日

2015年4月から施行された改正地方教育行政法で、市町村長など首長が主宰する「総合教育会議」の制度が新設された。7月までに約8割の市区町村が開催し、学力向上やいじめ対策、学校統廃合など、多様な問題を首長と教育委員が協議していることがわかった。ベネッセ教育情報サイトでは、教育ジャーナリストの斎藤剛史氏に、解説してもらった。

大津市の中学生いじめ自殺事件などを契機に、教育委員会の責任の曖昧さ、隠ぺい体質などが批判され、教育委員会制度の大きな見直しが行われました。その中で注目されるのが、「民意の代表者」としての首長の意向を教育行政に反映させるため、首長と教育委員会が協議する教育総合会議を新設したことです。この結果、改正法施行の4月から7月までの間に総合教育会議を開催した自治体(予定を含む)は、都道府県・政令指定都市のうち95.5%、市区町村のうち77.5%に上っています。
開催済みの総合教育会議(6月1日時点)の議題を見ると、市区町村では「学力向上に関する施策」がトップで、次いで「学校施設の整備」「いじめ防止対策」「学校統廃合」「子育て支援」などの順となっています。文科省は、首長が策定する教育の「大綱」の中で学校統廃合、少人数教育の推進、学校の耐震化などの方針を記載することができる、と通知しています。改正法施行により、学校統廃合については今後、首長の意向が強く反映されるようになりそうです。
一方、「教材費の充実や学校図書費の充実」「少人数教育の推進」などを総合教育会議のテーマにした自治体は少数でした。多額の予算を必要するような内容は、総合教育会議でもなかなか議題に上りづらいのが実情のようです。同会議を開催済みの自治体の全部が議事録や議事要旨を作成していますが、それをホームページで公開している自治体は市区町村の75.4%にとどまっています。
教育委員会制度の改革では、政治的中立性が必要とされる教育行政に対して、首長が過剰に介入することを懸念する声も一部にあります。保護者などは今後、首長が主宰する総合教育会議の議論の内容に関心を持って注目していく必要がありそうです。

JKビジネス、性被害の入り口 現場の実態、少女の声は

朝日新聞デジタル 2015年10月3日

少女たちの性を売り物にする「JK(女子高生)ビジネス」。警察は労働基準法や児童福祉法、児童買春・児童ポルノ禁止法など様々な法令を使って店や客を摘発するが、店側は形態を変えて営業し、いたちごっこが続く。そこでバイトし、性産業に組み込まれていく少女たちは、どんなことを考え、現場では何が行われているのか。
「こんにちは。どこ行く感じですか」。待ち合わせ場所に白いブラウスにスカート姿の少女が現れた。東京23区内。眉の辺りで切りそろえた前髪の下から、人なつっこい目で笑う。少女がバイトする「30分3千円で一緒に街を探検できる」と宣伝する店に予約を入れ、落ち合った。
「どうしようか」と尋ねると、「お客さんによるんですよね」とはっきりしない。カラオケに誘ってみると、少女は表情を曇らせ、なじるように言った。「うちの店ってエロ目的の人多いんですよ。知らないんですか。私、120分でも1千円しかもらえないんですよ」
「途中で帰ってもいいから」となだめ、カラオケ店に向かった。記者であることを告げ、話を聞いた。
高校3年の17歳。友人と撮った写真がたくさん貼り付けられた手帳を見せてくれた。日付の枠に「20000」「79000」と書き込まれている。「収入」を示す数字だという。「昨日はお客さん4人いて疲れた」。ホテルへ行き、性行為をして1回3万円ほど。「安いでしょ。意外とこういうことをする子、いるんですよ。だから市場価値が上がらない」
昨年4月にバイトを始め、客に頼まれて今年に入って初めて性行為をした。「同僚」は高校生が多く、目的は大体、遊ぶ金欲しさだという。「後ろめたさは感じない。楽に稼げるっていうだけ。肉体的にはつらい時もあるけど」
家族にはカフェでバイトをしていると偽っている。自宅ではことさらに「お金がない」と口に出し、財布を見られてもばれないよう、高額紙幣は手帳に挟んで隠している。学校の友達とは金銭感覚が合わなくなった。「ファミレスのドリンクバーで粘るでしょ。ああいうのはちょっと……」
やめた方がいい。何度か促した。すると「社会的倫理として良くないのはわかるけど、他に稼げる手段がない」。ホストクラブに行くにはお金がかかるし、アイドルのコンサートのチケットはネットオークションで十数万円する……。
ただ、いつまでも続けられるとは考えていない。「JKブランドが使えるのは2、3年。JD(女子大生)ブランドもあるけど、無限には続かない。今ならまだ引き返せるかなって」
別の少女に、週末の夕方に取材した。

保育士の給与はなぜ低いのか 待機児童問題から考える

朝日新聞デジタル 2015年10月6日

認可保育所に入れない「待機児童」が5年ぶりに増えた。その人数は、2015年4月1日時点で2万3167人。2万人を超えるのは7年連続だ。子育てにかかわる現状とは。

少子化にかかわる保育・教育政策などを研究する日本総合研究所調査部の池本美香さんに、保育士の処遇や、海外の保育所事情をきいた。
2015年1月の保育士の有効求人倍率(求職者数に対する求人数の割合)は全国平均で2・18倍、東京都は5・13倍。保育士は引っ張りだこです。保育所に入りたくても入れない「待機児童」が問題になり、新たに保育所をつくろうとしても保育士が足りない状況です。背景には保育士の待遇の低さがあるようですが、そもそも、なぜ保育士の給与は低いのですか。
「まず、保育士不足の現状として、政府が1月に打ち出した『保育士確保プラン』では、17年度末までに新たに6・9万人の保育士確保が必要としています。しかし、保育士の資格があっても保育士の仕事に就かない人も多くいます」
「厚生労働省などが保育士の賃金を調べていますが、13年の調査では、保育士の賃金は月額20万7400円。これは公立も私立も含めた統計なので、もっと低い人もいます。全産業の月額平均29万5700円を大きく下回ります。幼稚園教員は21万9600円で、小学校教員は33万1600円です。保育士を教育の職員としてみている国では学校教員との給与格差はありませんが、日本は福祉職なので、格差が大きいと言えます。それに『ただ子どもと遊んでいるだけ』という保育士に対する誤解もあります」
「さらに制度的な要因もあります。認可保育所の場合、財源は基本的に公的な補助金と、親が払う保育料です。その保育料は公定価格で決まっているので、事業者側が勝手に定めることができません。基本的に、補助金か保育料を上げないと保育士の給料は上がりません」
「また、保育士は長く勤めても昇給しにくいシステムです。日本の保育士資格にはスキルに応じた資格の区分がありません。仮にスキルアップしても保育所に補助金が増えるわけではないため、昇給に結びつきにくい。さらに、株式会社が設立した私立の保育所は、公立にはある退職手当などへの補助がなく、賃金はさらに低くなります」

子どものアレルギーや保護者対応、早朝・夜間勤務も
保育士は今、仕事の負担が増えているそうですね。
「アレルギーの子どもの対応を誤れば生命にかかわりますし、発達の遅れなど特別な配慮が必要な子どももいます。子どもや家庭の状況が様々ななか、保護者への対応もあります。午前7時台に始まり、午後8時以降もあいている保育園も増え、早朝や夜間、土曜日の勤務も増えています。子どもの人数によって配置する保育士の人数が決まっているため、休みにくいこともあります。それにもかかわらず、『子どもと遊ぶだけで、特別な知識もいらない』と認識している人がいるなど、社会的評価が必ずしも高くありません」
「欧州でも『保育士は遊んでいるだけ』という見方が長かったそうです。でも、そうではなく教育者として重要な仕事をしていると理解され、保育士の処遇を上げ、実際に保育が子どもの発達にプラスになっているかをチェックする機関をつくるなどして、保育に税金を投じることに国民が納得するようになった歴史があります」
海外の事例を池本さんが研究しているのはなぜですか。
「海外で『進んでいる』といわれる国だって、お金がないことは同じです。だから海外では『公費をムダにしてはいけない、そのために使われ方や効果をしっかり評価する』というところから始まっています。日本も状況は同じなのに、お金がきちんと使われているかの検証がないことは問題ではないか、という思いがあります」
海外と日本で違いは。保育所のあり方も違うのですか。
「例えば、保育士の給料のための補助金が違う目的で使われてしまわないように、資格にあった賃金を保育士が得ているという証明がなければ保育所の補助金が出ない仕組みにしている国もあります。保育士がレベルアップして賃金も上がる仕組みがあれば、保育士のなり手も増えていきます」

すべての子どもに「保育所に通う権利」がある国
「ほかには、学校教育と同じで、すべての子どもに『保育所に通う権利』を保障することを掲げた国があります。例えばノルウェーでは、以前は1、2歳児を親が家で育てる場合、在宅育児手当といって保育所に配る補助金相当の手当が親に出ました。でも、親が家で面倒を見ることは、親子が地域で孤立することや、仕事をしないことで貧困に陥る可能性が高いことから、09年からすべての子どもに1歳から保育所に通う権利を保障しました。ドイツでも13年から、1歳以上3歳未満の子どもに保育を受ける権利が保障されました。保育所が、働く親のためでなく、子どもにとって必要な施設という考え方で整備される動きがみられます」
「韓国では、以前は日本と同じく保育所を利用するには親の就労などの条件がありました。しかし、04年に、親が働いていなくても保育所が使えるようになり、保育所の利用率が急上昇しました。子どもを預けられるようになったことで、『時間ができたから働こう』という動きも出てきます」
「英国だと、保育所に職業訓練機能をつけて、仕事をしていない親の就労を促す仕掛けも見られます。全員が毎日10時間以上子どもを預けるのでなくて、週3回でも預ける場があって、親同士がつながれる。預けることをきっかけに親も仕事を得る。親が経済的、精神的に安定していることで、税金も納めてもらえるし、子どもも安定します。保育所を、子どもの預け先ではなく、家庭全体を底上げし、地域をエンパワーメントするための拠点にしたわけです」
とはいえ、限られた予算で保育所を増やすことは大変です。
「海外では、多くの子どもに保育所へのアクセスを保障していく一方、予算が膨張しないように、子ども1人あたりの保育時間を見直すことにも力を入れています。例えば、オランダでは男女ともにパートタイム労働の割合が高く、両親いずれも週4日勤務にすることで、保育所の利用を週3日にするケースもあります。ノルウェーのように、育児休業をとりやすくすることで、0歳児の保育は原則しない国もあります。日本も国として、親の労働時間の短縮や働き方の柔軟化、休暇の権利拡大を進める検討が必要です」

保育所内でお酒?保護者も参加する保育
保育への親の参加も提唱していますね。
「保育の質を高める方法の一つです。海外では親のボランティアを活用しています。特技を生かして、ピアノの上手な親がいれば子どもの前で演奏するとか、ちょっとしたペンキ塗りなら業者に頼まず親がやれば予算も有効活用できますよね。絵本を読む、でもいいのです。親にとっても保育への参加は楽しい時間になるはずです。英国では、迎えに来た父親たちが園内でお酒を飲める保育所まであると聞きました。親同士がリラックスして話すなかで、様々な情報交換ができて不安やストレスが解消できたり、園の改善に向けたアイデアが出てくるという効果があり、結果として保育の質向上につながると考えられているからです。親も保育のパートナーとみなされていて、一緒に関わることで情報も共有されますし、支え合うことができます」
「日本で親の参加というと、熱心なバザー、などのイメージで極端です。保育は必要な子どもに提供する、という前提ですし、事故など安全上の観点から保育所側が、親が入っていくことに対して迷惑がることもあるかもしれません。『参加できない自分が後ろめたい』と感じる保護者もいるかもしれません。でも、強制ではなく、できる人ができる範囲で手出し口出ししてもいいのではないでしょうか。クレームとは違います。保育士も保護者も子どもも、満足度を高めるにはどうしたらいいか。それぞれが希望を出して、保育士らの専門知識とあわせながら調整する。これは、お金がなくてもできそうな一つの道ではないでしょうか」(聞き手・大井田ひろみ)

企業が悲鳴を上げる「ココロの健康診断」義務化〈週刊新潮〉

BOOKS&NEWS 矢来町ぐるり 2015年10月6日

〈職場の雰囲気は友好的ですか?〉こんなことを聞かれたら、あなたは何と答えるだろうか。むろん、返答に躊躇する人は少なくないはずだが、早ければ11月からこの質問に答えなければならない。しかも、会社で回答を求められるのだ。
患者数100万人と言われる鬱病。厚生労働省によれば、2014年度に鬱病など心の病が原因の労災申請は、1456件で過去最多だった。そこで職場対策として始まるのが『ストレスチェック制度』だ。全国紙の厚労省担当記者の解説では、
「ストレスチェックは、昨年6月に労働安全衛生法が改正されて12月に施行される“法律”です。従業員50人以上の企業が対象で、調査票を使って社員のストレス検査を年1回実施します。その結果次第で、企業は社員に医師との面談を促したり、職場環境を改善しなければなりません」
調査票には57のチェック項目があり、冒頭の質問はその1つ。スタート前の11月から調査票を配布する企業も少なくないという。
「ウチのような会社で対応するのは難しいです」
こう嘆くのは、社員70人を抱える都内の中小企業社長だ。
「調査票を医師に提出するのにも社員1人あたり数千円かかるが、すべて会社負担。社員のためとはいえ、そんなものにカネを注ぎ込む余裕などありませんよ」
違反しても口頭注意を受けるくらいだが、
「ストレスチェックを行わず、社員が鬱病などで労災申請して、その後裁判沙汰になったら勝ち目はありません。また、企業イメージも著しく低下することは否めないでしょう」(先の記者)
ストレスチェックの結果、社長の危険度が一番だったりして。

医師の面接指導、電話はNG-ストレスチェック開始に向け、厚労省が通知

医療介護CBニュース 2015年10月6日

労働安全衛生法の改正に伴い、12月から「ストレスチェック制度」が始まるのを受け、厚生労働省は情報通信機器を用いて医師の面接指導を実施する場合の留意点について各都道府県や関係団体などに通知した。原則としては対面が望ましいとしながらも情報通信機器を用いた面接指導を「直ちに法違反となるものではない」とし、条件付きで認める方針を示した。その上で、「映像を伴わない電話による面接指導の実施は認められない」など、一定のルールに基づいて実施するよう求めた。【坂本朝子】
従業員50人以上の事業場に対しては、ストレスチェック制度の開始に伴い、検査でストレスが高いと判定された場合、労働者本人が希望すれば医師による面接指導が義務付けられる。しかし、産業医が不足する中、遠隔地からの面接指導も想定されることから、その実施ルールの整備が求められていた。今回示されたルールは、ストレスチェック制度だけでなく、長時間労働者に対する面接指導にも適用される。
通知によると、面接指導を実施する医師は、「労働者が所属する事業場の産業医である」もしくは「少なくとも過去1年以上の期間にわたって、対象労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管理に関する業務を担当している」など一定の要件を満たす必要があるとした。
また、医師と労働者が表情や顔色、声やしぐさなどを互いに確認できるように、映像と音声の送受信が常時安定した状態で、円滑に実施できる体制が必要とし、プライバシーには十分配慮するよう注意を促した。
さらに、面接指導で医師が緊急に対応すべきと判断した場合には、その事業場にいる産業保健スタッフや近隣の医師などと連携し、すぐに対応できる体制を整えておく必要があるとした。