児童虐待・DVを考える<2>子どもの奨学金やバイト代 搾取 少ない防止策 親権停止も

西日本新聞 2015年11月14日

10代後半の子どもたちが、親に奨学金の使い込みやアルバイト代の搾取などをされる「経済的虐待」が問題化している。暴力や暴言もなく、育児放棄で命が危ぶまれるほど被害者が幼くもない。奪われるのは、自分に使われるべき金-。児童虐待防止法に定義はないが、子どもの将来にも大きく関わる事態も多く、関係者は頭を悩ませている。

校納金未納のまま
10月に入ったころから、九州のある公立高校の職員室に、2年生のミノル(17)=仮名=が毎日訪ねてくるようになった。第一声は「振り込まれた?」。
心配しているのは未納が続く校納金だ。授業料は無償だが、毎月約1万円の校納金が必要で、修学旅行の積立金も含む。校納金のために奨学金を借りているはずなのに。このままでは修学旅行に参加できない可能性がある。
ミノルは母子家庭で生活保護を受けている。奨学金が振り込まれるミノル名義の通帳は、自宅には不在がちの母親が管理している。未納が続くため、ミノルが振込日の昼休みに教員と現金自動預払機(ATM)に向かうと、残額は既にゼロだった。家庭訪問で教員が母親と話せても、「払う」と答えて未納のまま。いたちごっこが続く。
ミノルはバイト代も一部は母親に引き落とされ、残額で食いつなぐ。自分のために使われなかった奨学金を、卒業後に自分で働いて返済することになる。
「しょうがない。お母さんはああいう人やけん、直らん」。ミノルは時折、諦めた表情になる。同校の40代男性教諭は「苦しい家計を子がバイトで支える構図ではなく『搾取』。児童相談所も関わりづらく、守る手段が少ない」と苦悩を語る。

子どもが申し立て
福岡県京築地方でスクールソーシャルワーカーを務める野中勝治さん(34)は、義務教育中心に年間130件ほどの事例に関わるが、年に数件、高校生の相談が舞い込む。
2年生のダイキ(17)=仮名=は痩せて、皮膚は疾患でただれていた。奨学金による校納金の未納だけでなく、親が面倒を見ていないのは一目瞭然だった。被害児が10代後半だと、周囲から「自力でSOSを出せる」と思われがちだが、野中さんは「その家庭でしか育っていないので、『親が自分の奨学金を使い込むのは正しくない』と判断する指標を持っていない」と、難しさを指摘する。
教員の説得により、親は奨学金口座の通帳をダイキに渡したが「子に金を使う感覚がなく、今後も健康的に生活していけるとは思えない」(野中さん)と先月、野中さんはある法的措置に乗り出した。「親権停止」だ。
親権は、子の監護権や財産管理権を含む強い権利。2012年4月から民法の改正で、家庭裁判所が認めれば最長2年の親権停止が可能になった。申立人は親族や児相の例が多いが、今回はダイキ本人が申し立てた。
親は今になって、優しい言葉のメールを送ってくる。葛藤もあるだろう。野中さんの「自分の人生を第一に考えよう」という言葉に、ダイキは深くうなずいた。

幼児期の「食育」とは?幼児期の食体験は「心や体」の成長と密接に関係

ラーニングパーク 2015年11月14日

近年、幼稚園や保育園では、「食育」活動に力を入れるようになりました。保護者世代が子どもの頃には食育という言葉はなかったため少しイメージしづらいかもしれませんが、簡単に言うと、食の楽しさや大切さを理解させる活動と言えます。幼児期は、生涯にわたる食習慣や食に対する考え方の基礎が身につく大切な時期です。園での活動内容を知り、家庭でも食育を意識した食生活を送るようにしましょう。

幼児期は特に「食育」が大切! 園でもしっかりと取り組んでいます
健康的な生活を営むうえで「食」は不可欠な要素です。ところが現代日本では、飽食化やライフスタイルの多様化、家族構成の変化などを背景に食生活が乱れやすくなり、生活習慣病の増加や肥満、また若い女性などには食事制限による過度なダイエットといった食にまつわる問題が多く見られるようになりました。そこで2005年に食育基本法、2006年に食育推進基本計画が策定され、いわば国民運動として食育を推進していくことが掲げられました。
特に幼児期の食体験は、心や体の成長と密接に関係し、その後の人生に大きな影響を及ぼすことから、とりわけ幼稚園や保育園では食育活動に力を入れています。今では多くの園が食育年間計画を作成して体系的な食育活動に取り組んでいます。
とはいえ、食生活のベースは、あくまでも家庭にあります。いくら園の食育活動が充実しても、家庭での食生活が乱れていたら、お子さまが食べることの大切さを理解したり、食に対する興味や関心を深めたりすることはできません。食育活動の内容は園だよりなどで発信されますから、それをよく知ったうえで、家庭でも食育を意識した食生活を送るようにしましょう。

食育活動を通じて期待される子どもの育ちの姿とは?
それでは園では、どのような食育活動に取り組んでいるのでしょうか。多くの園の取り組みは、実は決して特別な活動ではありません。たとえば、食事の前に「いただきます」と言えるように指導したり、園の近くにある畑で芋ほりをしたりすることも立派な食育活動です。これまでも行われてきた食に関する遊びや活動をより明確な狙いをもって充実させているとお考えください。
厚生労働省は、食育を通じて子どもに期待する育ちの姿として次の「5つの子ども像」を掲げています。
1.お腹がすくリズムのもてる子ども
2.食べたいもの、好きなものが増える子ども
3.一緒に食べたい人がいる子ども
4.食事づくり、準備にかかわる子ども
5.食べものを話題にする子ども
この子ども像は、保育園を想定して作成されたものですが、基本的な食育の考え方は幼稚園でも変わりません。多くの園では、こうした子ども像に基づいてさまざまな食育活動を展開しています。地域や園の方針によって内容はさまざまですが、次のような活動が多く見られます。

・思い切り遊ぶことでお腹が空いて、おいしく食事ができるようにする。
・友だちや保育者と楽しく会話しながら食事ができる環境を整え、食べることの楽しさを伝える。
・遊びの中に食に関わるテーマを取り入れるなどしていろいろな食材に親しみ、食べたいものを増やす。
・「いただきます」というあいさつやマナーを教えて、気持ちよく食事ができるようにする。
・園の畑で野菜を育てるなどして、食材に対する関心を高める。
・料理を作る人に関心を向けたり、配膳などのお手伝いをして、料理づくりへの関わりを持たせる。

園の活動と連携して家庭でも食育を充実させるためには?
家庭でも上に紹介した「子ども像」を意識した食生活を送るようにすると良いでしょう。例えば、次のようなことが考えられます。
1.お腹がすくリズムのもてる子ども
規則正しい生活を送り、できるだけ決まった時間に食事をとる。
早寝早起きを心がけて朝食を抜かないようにする。
2.食べたいもの、好きなものが増える子ども
お子さまと買い物に行って一緒に食材を選ぶ。
食事中に食材の栄養などについて話題にする。
3.一緒に食べたい人がいる子ども
家族が一緒に食事をとるようにする。一人で食事をさせることは避ける。
食事中は会話を楽しむように心がける。
4.食事づくり、準備にかかわる子ども
お子さまに積極的に食事の手伝いをしてもらうようにする。
5.食べものを話題にする子ども
日頃から食事の大切さについて教えるようにする。
旬の食材について話題にする。

幼児期に身についた食習慣や食に対する考え方の基礎は生涯にわたって続きます。保護者自身も食事を楽しみながら、お子さまに食の楽しさや大切さを伝えるようにしましょう。

DV被害:声上げて 女性への暴行、罵声、精神的ストレス 自身追い詰めず相談を /佐賀

毎日新聞 2015年11月14日

20年近く夫からのドメスティックバイオレンス(DV)に苦しんだ佐賀市の女性(49)が「女性に対する暴力をなくす運動」(12?25日)に合わせ、毎日新聞の取材に応じた。精神的に追い詰められる中で抵抗する気力を失っていった経験を語り、「暴力だけでなく、精神的に女性をおとしめていく行為がDV。我慢してはいけない」と訴えた。【岩崎邦宏】
女性が夫と出会ったのは二十数年前。働いていた書店に毎日来て、電話がかかってくるようになり、交際が始まった。だが、やがて性行為を強要されるなどの性的暴力を受けるようになる。家族に相談しても「それだけ好きでいてくれるのだから」と言われ、「自分がおかしいのではないか」と我慢した。
「自分を必要としてくれている」との思いもあって別れられず、2000年に結婚したが、翌01年に長男を出産するまで性的暴行は続いた。その後、カーテンの色などささいなことに言いがかりを付けられた。夫は手を上げることはなかったが、罵声を浴びせたり冷蔵庫や壁をたたいたりした。それでも荒れた翌日には何もなかったようにけろりとしていた。家族や友人との接触を断たれる中でそれが繰り返され、正常な判断ができなくなっていったという。
転機は11年12月末。夫の手土産を開けなかったことで長男が怒鳴りつけられ、自傷行為をするようになった。夫に家庭内別居を申し出、さらに約1週間後には長男を連れて家を出た。被害を市役所に相談してシェルター(一時避難施設)や友人の家を転々とし、長男は児童養護施設に預けた。自身はボランティア活動をしながら佐賀市内で生活保護を受けて暮らしている。
今も背後に男性がいると恐怖心に駆られ、フラッシュバックが起きると体調を崩してしまう。夫とは離婚や長男の親権を巡って係争中で公判の度に傷をえぐられる。
つらい日々が終わったわけではないが、一人になってからは幼い頃から好きだった絵に没頭する時間も持てるようになった。漫画のキャラクターや植物を描き、インターネット上でファンもできた。来春には東京で初個展を開き、同時に女性や子供の権利を訴える予定だ。
最近は少しずつ過去のつらい経験を人前でも話せるようになってきた。「きっかけがないと動けないかもしれないが、相談窓口をたどって声を上げてほしい」と呼び掛けている。

全国で10万2963件 支援団体が昨年度把握
DV被害は増え続けている。警察庁によると、認知した被害件数は2002年の1万4140件から昨年は4倍以上の5万9072件に増えた。全国の「配偶者暴力相談支援センター」には昨年度、02年度の3倍近い10万2963件の相談が寄せられた。
それでもまだ被害は埋もれているとみられる。内閣府が昨年12月、全国の成人男女5000人を対象に実施したアンケート(有効回答3544人)によると、配偶者から被害を受けた女性332人のうち149人(44・9%)が誰にも相談していなかった。
理由(複数回答)は「相談するほどのことではないと思った」が最多の70人。「自分にも悪いところがあると思った」の48人が続いた。「がまんすればやっていけると思った」と答えた人が32人いた。また相談窓口を「知らない」と答えた女性は62・4%に上った。