施設の少年との面会、職員立ち会い不要で和解

読売新聞 2015年11月28日

事件を起こして保護処分を受け、東京都立の児童自立支援施設に入所していた少年と面会した際、児童相談所の職員が立ち会ったのは違法だとして、井上侑(たすく)弁護士が都に10万円の損害賠償を求めた訴訟は27日、東京高裁(杉原則彦裁判長)で和解が成立した。
井上弁護士によると、和解は、職員の立ち会いがなくても面会できることを認め、立ち会う場合には、弁護士ら面会を申し入れた側の同意が必要などとする内容。井上弁護士は「少年に、成人と同様の接見交通権を認めた意義のある和解だ」と話している。
今年2月の1審・東京地裁判決は、賠償請求は棄却する一方、「職員を同席させたのは違法だ」とする初判断を示していた。
東京都の話「和解内容に従って適切に対応する」

バスの降車ボタンを押して「うっそでーすw」 小学生の「いたずら」は犯罪になる?

弁護士ドットコム 2015年11月28日

走っているバスの中で、小学生が何度も降車ボタンを押し、バスが停まるたびに「間違えましたーw」「うっそでーすw」とふざけていたところ、運転手から「今ボタン押した人降りて」「降りるまで発車しないから」とお灸をすえられたーー。そんな場面を目撃した人のツイートが2万7000回以上リツイートされ、話題になった。
ツイートによると、運転手と小学生の間で、「ごめんなさい、もうしません」「ええけえ降りろ」「ここ違うんです」「でもボタン押したじゃろ」「ごめんなさい(半泣き)」「早う降りにゃあ他のお客さんに迷惑じゃろ」「ごめんなざい~(本泣き)」「◯◯小じゃろ。学校に言うとくけえの」などのやり取りがかわされたそうだ。
このツイートに対して、「いけないことはきちんと教えないとね」「泣けば許されると思って…悪質な子供ですね」などのコメントが寄せられている。このようないたずらは何らかの犯罪になる可能性はあるのだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。

「偽計業務妨害罪」が成立する可能性がある
「降りる気もないのに降車ボタンを押し、各停留所にバスを停まらせた行為は、偽計業務妨害罪(刑法233条後段)が成立しうる行為です。『偽計』とは、人を欺き、誘惑し、あるいは他人の錯誤または不知を利用することです。降りる気もないのに降車ボタンを押す行為は、欺く行為であるといえます。
降りるつもりなく降車ボタンを押しても、他に降りる乗客がいたのであれば実害はありません。しかし、降車ボタンが押されて停車したのに、降車する乗客がいなかっただけでなく、さらに乗車する客もいなかったのであれば、停車した分バスの運行に遅れが生じるという実害が生じています。
しかもそれを繰り返し行ったのであれば、実害は軽微ではありません。したがって、バスの運転手の運転業務を妨害したと評価できると思われます。なお、法定刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です」
小学生がやった場合でも犯罪になるのか。
「今回のケースは小学生のいたずらとされています。刑法41条で『14歳に満たない者の行為は、罰しない』と定められているため、実際に刑事罰が科されることはなく、このような場合、警察は児童相談所に通告して対処することになります。
もっとも今回のケースでは、運転手がきついお灸を据えたようなので、実際にこれらの手続が踏まれることはないでしょうね」
足立弁護士はこのように話していた。

学校不祥事の顛末-部活動における女子生徒へのわいせつ行為-(1)

教員養成セミナー 2015年11月27日

増加する教職員のわいせつ行為 ―身勝手な「言い分」と児童生徒に残す心の傷跡
【今月の事例】
A市立中学で女子生徒2人に対し、上半身を裸にして背中に患部固定用のテープを貼り、写真を撮影したとして、A市教育委員会は同校の50代男性教諭を懲戒免職とした。また、監督責任などがあったとして、校長を減給、教頭や市教育長らを文書訓告とした。
市教委によると、男性教諭は6月初旬と7月初旬、顧問を務める部活動の女子生徒を上半身裸にさせ、前後から携帯電話やデジタルカメラで撮影。背部の肩から腰にかけてテープを貼り、再度写真を撮った。男性教諭は「腰痛を訴えて部活の練習を休んでいたため、テープを貼った。効果が分かるように撮影した」などと話し、わいせつ目的を否定しているという。

1 わいせつ関連の不祥事
今回の事案はわいせつ行為に対する処分事例ですが、実は、こうした不祥事は増加傾向にあります。文部科学省が全国の教育委員会に対して調査したところによると、2013(平成25)年度における「わいせつ行為等により懲戒処分等を受けた者」は205人であり、調査開始以降初めて200人を超過したとのことです(文部科学省Web サイト「平成25年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」教育職員の懲戒処分等(平成25年度)より)。
不祥事の中でも、児童生徒に対するわいせつ事案は、人生を左右しかねない多大かつ長期にわたる被害を与え続けるものであり、児童生徒や保護者からの信頼を大きく損ねる不祥事として、厳しく戒めるべきものと言えます。

2 わいせつ行為と罰則
(1)わいせつ行為の種類
教師の児童生徒に対するわいせつ行為の例としては、「服の上から胸や尻を触る」「太ももをなでる」「膝に手を置く」「抱きしめる」「教師の膝に座らせる」「キス」「下着の中に手を入れて胸や尻を触る」「服を脱がせる」「教師の下腹部を触らせる」「性行為」など、身体に対する直接的な行為のほか、「わいせつな画像や動画を撮影する」「盗撮」といった身体に直接触れない行為もあります。こうした行為は、行政上の処分対象となるばかりでなく、各種の法律、条例に基づき刑事責任を問われる場合もあります。
(2)罰則の例
例えば、児童生徒の下着に手を入れて胸を触った場合、強制わいせつ罪が適用される可能性があります。

・刑法第176条(強制わいせつ)
13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

生徒との性行為については児童福祉法、淫行条例に罰則があります。

・児童福祉法第34条第1項第六号
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
六 児童に淫行をさせる行為

・青少年の健全な育成に関する条例(東京都)第18条の6
何人も、青少年とみだらな性交又は性交渉類似行為を行ってはならない。

盗撮行為については、各自治体の迷惑防止条例、軽犯罪法、児童ポルノ法などに罰則規定があります。

3 わいせつ目的
今回の事例の男性教諭は、「腰痛を訴えて部活の練習を休んでいたため、テープを貼った。効果が分かるように撮影した」などと、わいせつ目的を否定しています。しかし、女子生徒を裸にしていること、男性教諭がテーピングする必要がないこと、当然ながら撮影の必要もないことなどの客観的事情からすれば、わいせつ目的があったと見るのが合理的判断です。男性教諭の言い分は到底認められるものではありません。

4 被害者の感情
わいせつ行為の被害者は、被害にあったことを誰にも相談できず悩み、加害教員が処罰されて問題が解決したように見えても、その後長年にわたり苦しむことがあります。他方、加害教員の動機を聞くと、「スキンシップだと思っていたが行き過ぎてしまった」「恋愛感情を抑えられなかった」「ストレス発散であった」など、まったく身勝手な軽い動機であるばかりでなく、教師という立場が何ら歯止めになっていない様子が伺えます。
教師や顧問という立場を利用した、児童生徒が被害者となるわいせつ事案は、不祥事の中でも最も許しがたいものの一つです。軽い気持ちからしたことが児童被害者の心に長きに渡る傷跡を残すことを、忘れないでいただきたいと思います。

働く女性「妊娠に不安」が半数以上 マタハラを恐れる悲しい事情

ダイヤモンド・オンライン 2015年11月28日

社会問題化するマタハラ 防止策制定が義務化へ
セクハラ、パワハラが社会問題化して久しいが、第三のハラスメントととしてマタニティ・ハラスメント(マタハラ)が市民権を得てきた。今月17日、マタハラに関するある訴訟に判決が下った。広島市の病院に勤務していた女性が、妊娠を理由に降格されたことを違法として訴えていた裁判だ。判決は、ほぼ原告の請求通りの慰謝料支払いを命じるもので、20日には病院側が上告を断念。原告の5年に及ぶ戦いにようやく決着がついた。
そもそもこの裁判、一審・控訴審と原告の女性が敗訴していたが、2014年10月、最高裁判所は判決を破棄し、高裁に差し戻した。この際、マタハラに関して最高裁が初の判断を行ったということで、大きな話題となった。この判断に対して厚生労働省は素早く動き、全国の労働局に対して企業への指導を厳格化するように指示している。その厚労省だが、今月25日には、マタハラの防止策を企業に義務付ける方針を打ち出した。現行法でもマタハラの禁止は明示されているが、来年の通常国会に改正案を提出する予定のようだ。

働く女性の半数が 妊娠を喜べない悲惨な現状
ここ数年で急激に定着した感のある「マタハラ」という言葉。日本労働組合総連合会(連合)が2013年から行っているマタハラに関する意識調査からもそれが見て取れる。調査は過去5年以内に、在職時妊娠経験がある20代~40代の全国の女性654名を対象に、今年8月に行われた。「マタハラという言葉を知っている」と答えたのは93.6%。13年には6.1%、14年には62.3%だったので、認知度が上昇しているのは間違いないのだが、「状況の変化を感じない」という回答が63.5%となっている。
マタハラの経験があるかという問いには、71.4%がないと答えている。しかし、育児介護法などの法律・制度の認知があまり進んでいないようで、時短勤務や子どもの看護休暇、時間外労働の制限などを理由にする不利益な取り扱いが禁止されていることを認知している人は31.7%だ。ひょっとすると、法律上は禁止されたマタハラにあたるにもかかわらず、本人がそれを意識していない、気づいていないというケースもあるのではないかと考えてしまう。
このアンケート結果、全体的に働く女性の厳しい現状を見せつけられる気持ちになるが、読んでいて悲しくなってしまった項目がある。「仕事をしながら妊娠が分かったとき、『仕事と自分の生き方』や『家計への影響』なども踏まえて、ご自身の心境に近いものをお選びください」という問いに対する回答だ。44.2%は「嬉しくて素直に喜べた」と答えているが、「嬉しかったが、同じくらい不安を感じた」が40.4%に上り、さらには「嬉しかったが、それ以上に不安を感じた」が9.2%、「不安しか感じなかった」という人も6.3%と、決して無視できない数字だ。
さらに育休取得を考えた人のうち、4割の人は取得したかったにもかかわらず、何らかの事情で取得できなかったという結果や、有期契約労働者でも条件を満たせば育休取得ができることを8割の人が知らないという事実を見ると、母親となった女性だけでなく、生まれてきた子どもにとっても、まだまだ困難な状況と言えるだろう。女性が子育てすべしと主張するつもりは毛頭ないが、育休を取りたくても取れない女性がいて、では子どもはどうなるのか、誰が面倒を見てくれるのか。

“男社会”が前提にある 急ピッチのマタハラ対策は功を奏すか
マタハラに対する法整備や企業側の意識改革、国や地方自治体の子育て支援など、さまざまな事柄が急ピッチで進められようとしているが、やはり根幹の部分には、「子育ては女性がするもの」という固定観念があって、そこをどうにかできないかぎりはうまく収まることはないのではというのが私の考えだ。連合のアンケート結果を読んで、その考えはなおさら強くなった。共働きしていても生活が苦しい世帯が少なくない中で、「男は会社で戦ってんだ」的価値観はやはり淘汰されるべきものではないのか。
男の子育てということを考えると、10年以上前に発売されたあるゲームのことを思い出す。重大なネタバレになるので題名を出すのは避けるが、「○○(アニメの題名)は人生」との賞賛の言葉がネット上を飛び交うぐらいに一部で人気を博した作品だ。主人公はヒロインとの間に子どもを授かるが、直後にヒロインは亡くなり、主人公はほとんど廃人のようになってしまう。それから5年もの間、子どもはヒロインの父母宅に預けられる。最終的に主人公と子どもは和解するのだが、長い時間をかけてエンディングにたどり着いた私はどうにも納得ができなかった。
もしも、主人公とヒロインの立場が逆転し、残されたヒロインが育児放棄(と私は断言するが)していたとしたら、この作品の評価はどうなっていただろうか。ヒロインにはあらん限りの暴言がぶつけられ、作品も駄作として片付けられていたのではないか。このゲームはその後、アニメ化もされ、評判は決して悪くなかった。こちらも長い時間をかけて全部見たが、周りの評価に賛同できなかった。「男親だからしょうがない」というような言葉も散見した。今なお、その考え方が現実の問題につながっているように思えて仕方がない。制度以上に、個々人の考え方や捉え方を変える必要があるのではないか。
「公」ばかりに任せていられないと断言できるデータがある。昨年、全国フェミニスト議員連盟が、全国の地方議会の女性議員(現職・元職含む)を対象にアンケート調査を行った。東京都議会セクハラやじ問題を受けてのものだが、目を覆いたくなるような結果だ。回答した143人中、議員や自治体の職員からセクハラを受けたと答えたのは74人。地方議会に限ったことではなく、この国の行く末を議論しているいろいろなところで同じようにセクハラは起こっていることだろう。そこから下りてくる施策だけに、私たちは頼ってはいられないはずだ。