施設の子に返還義務なしの奨学金 さいたま市の企業・ハーベス、最高750万円を給付へ

The Huffington Post 2015年12月01日

さいたま市の化学メーカー「ハーベス」は、埼玉県内の児童養護施設や里親のもとなどで暮らし、高校卒業後に進学を目指す子供たちに対し、返済の必要がない給付型奨学金を設立した。年間60万円の生活援助金なども含め、4年間で最高750万円まで給付する。
NHKニュースによると、埼玉県内の民間企業が、返済義務のない奨学金を給付する取り組みは県内初。ハーベスの前田知憲社長は取り組みのきっかけについて「やる気があり優秀な学生が経済的な面で勉強する機会を失ってほしくないと思い、支援を始めた」と話しており、12月1日、初めて給付を受けることになった生徒に対し、奨学金の認証書を手渡した。この生徒は保育士を目指しており、2016年春に短期大学に進学する予定だ。
なお、民間企業による返還不要の給付型奨学金は、ジェイティ奨学財団、三菱UFJ信託奨学財団、電通育英会などがあるが、4月22日付・日刊工業新聞の記事によると、ハーベス育英奨学金は、1人当たりの給付額としては全国最高水準だという。

京都市、児相記録流出で告発へ 専門家「通報者が萎縮」

京都新聞 2015年12月4日

京都市は4日、職員が児童相談所の相談記録を市議に漏えいした可能性が高まったとして、容疑者不詳で地方公務員法(守秘義務)違反容疑で、京都府警に刑事告発する方針を明らかにした。議員への情報提供を理由に公務員を守秘義務違反で告発するのは異例とみられる。市は「子どものプライバシー侵害を重くみた」とするが、専門家は公益通報者保護の観点から慎重な対応を求めている。
民間の児童養護施設の施設長が入所者の少女にみだらな行為をしたとされる児童福祉法違反事件を受け、村山祥栄市議(京都党)が10月の市議会で、少女に関する相談記録を根拠に市の対応の遅れを指摘。市は相談記録の流出を重く見て、児相などの職員145人から聞き取り調査を行ったが、全員が村山市議へ渡したことを否定した。
内部告発者への不利益処分を禁じる公益通報者保護法では、議員や報道機関などへの外部通報も保護対象に含まれる。市は調査の結果、外部通報した場合に保護対象となる「急迫した危険がある」などの5要件には該当しないと断定した。
同法で定める「公益通報」は、罰則規定のある法令違反を告発する行為を指すが、児童福祉法では仮に児相職員の対応が遅れても罰則はなく、市は「今回の件は公益通報には当たらず、児相への信頼を大きく裏切る行為」と判断し、刑事告発を決めた。
ただ同法を管轄する消費者庁は「要件を満たしていないから保護しなくても良い、との考えは法の趣旨ではない。守秘義務違反に当たるかは個々の事情を司法が判断する」という。
村山市議は「このやり方では内部告発をするなと言っているのに等しい」と批判し、「通報者の保護に努めたい」と話している。
通報促す運用を
公益通報者保護法に詳しい浅岡美恵弁護士の話 通報者を保護する対象が非常に限られており、法には不備がある。形式的に法の要件に当てはまらないことを理由に持ち出し行為を処分すれば、通報者への委縮効果を及ぼしかねない。法の趣旨を生かし、通報を促す運用が求められる。行政としては通報者が訴えたかったことを調べることが一番大切だ。

育児をもっと楽しなるコツ4つ 「叱る時は、触れ合いながら短時間で…

ラーニングパーク 2015年12月5日

幼児期を中心とした子どもの事情を理解し、育児をもっと楽しくするためのコツとはどのようなものだろうか。ベネッセ教育情報サイトでは、23年にわたる保育士経験を持ち、《こどもコンサルタント》としてご活躍の原坂一郎氏に教えてもらった。
子どもの行動は、保護者が彼らの気持ちを認め、接し方を工夫することで大きく変わります。まずは、ご自身の接し方を見直してみましょう。普段のなにげない行動を少し変えるだけで、子どもの行動が変わり、育児はぐんと楽しくなっていきます。では、そのコツをいくつかご紹介しましょう。
(1)叱る時は、触れ合いながら、短時間で的確に伝える
叱る時は、子どもの手を握ったり子どもを抱っこしたりするなど、触れ合いながら叱ってみてください。そうすれば、子どもは「愛されている感」を覚え、聞く耳を持てるようになっていきます。
(2)あるモノ満足
我が子に対しては、不満点を探すのではなく、子どもに備わっている、たくさんのよい面、かわいい面を見つめ、それに対して満足するよう心掛けてください。
(3)疑問文の言葉は禁句!
「何をしているの!」など、子どもを注意する時に疑問文を使うことは止めましょう。してほしいことを伝えるときは、「早く準備してね」「食べ物で遊んだらダメ」など、伝えたい内容を正確に言いましょう。そのほうが、素直に聞き入れてもらえます。
(4)叱ったら、笑顔を倍返しする
子どもは保護者の笑顔が大好きですから、叱ったあとはその倍の回数、笑顔を見せてあげてください。そうすれば、「叱られても大好きな人」となり、信頼関係も保たれます。
子どもというのは、自分をわかってくれる人が大好きです。保護者に自分の事情を理解してもらい、気持ちを受け入れてもらえたら、安心感が増して保護者をより好きになるでしょう。そうすると、言うことを聞いてくれなかった子どもの行動も変わりだし、育児はやりやすくなります。今一度、初めて我が子を手にした時の気持ちを思い出してみましょう。その時の気持ちさえ忘れなければ、目の前の子どもを丸ごと受け入れることができるはずです。そうすれば、育児はもっともっと楽しくなりますよ。

子育てに税金を投入することの是非

R25 2015年12月5日

[対談]乙武洋匡×安藤哲也「父として、社会を考える」(1)
日本のひとり親家庭の貧困率は、先進国のなかでワースト1となる54.6%。ひとり親家庭等の生活の安定と自立をサポートするための児童扶養手当は、第一子には親の所得に応じて最高月額4万2000円が支給されるが、2人目は所得にかかわらずプラス5000円、3人目以降はプラス3000円しか支給されない。
この手当の増額を目指して署名活動を行ったのが、「ひとり親を救え! プロジェクト」だ。「子どもを5000円で育てられますか?」と問いかけたこの活動は、ネット上でも賛否が分かれた。同プロジェクトに賛同人として名前を連ねる作家の乙武洋匡氏と、ファザーリング・ジャパンやタイガーマスク基金などのNPO代表理事を務める安藤哲也氏が、改めて同活動について意見を交わし合った――。
乙武洋匡:安藤さんの活動については以前からいろんな方を通じてお聞きしていたんですが、10月に開かれた「ひとり親を救え! プロジェクト」共同記者会見の場で、賛同者として同席させていただいたのが初対面でした。このプロジェクトには賛否両論、大きな反響がありましたが、私は思っていた以上に反論が多く寄せられたことにびっくりしました。賛同者の署名がどれくらい集まるかは別にして、主旨自体に反対されるとは考えていなかったんです。
安藤哲也:僕はわりと予想通りの展開でしたね。以前、ファザーリング・ジャパンで父子家庭支援のためのロビー活動をやっていたときも、ネットを見ると「勝手に離婚したシングルファーザーに、なんで税金を使うんだ」というような声は多かった。死別のひとり親はかわいそうだよねってなるんですけど、離別の方に対しては風当たりがきついんです。
乙武:今、安藤さんがおっしゃったような声は本当に多かったんですけれど、私は“勝手に離婚した親のために税金を投入すること”の是非を議論するのは的外れな気がしています。だって、この給付金は、離婚して子育てしている“親への”手当ではなく、あくまで“子供たちへの”手当ですから。
安藤:ええ。だから「児童扶養手当」という名前がついているんですよね。
乙武:そこからもう一歩話を進めると「手当が出ても、それを子供のためではなく、パチンコに使うような親がいるから」という別の反論が出てくる。これ、「不正受給する一部の人がいるから、生活保護は厳しくしろ」という論理とまったく同じなんです。でもね、子供は自分が育つ環境を選べないわけですから、生まれついた境遇によって差が出てしまうのは絶対に避けなければならない。そうした観点から、私はこのプロジェクトに賛同したんです。
安藤:僕は「タイガーマスク基金」というNPOでも児童養護施設の子供たちを見ていますけど、子供にとって不運なことに、親が養育できないというケースがある。できないっていうのはやる気の問題ではなく、経済的に、あるいは精神的に追い詰められてしまったりDVがあったり、いろんな事情があるわけで、こうした家庭に生まれついたことは子供からすれば“不可抗力”。なので国としては、親が養育できない子供は社会がちゃんと育てていきましょうという「社会的養護」の理念や制度があるわけです。
乙武:なるほど。私が二十歳くらいの頃、母から「子供を親の所有物であるかのように育ててしまう人が多いけれども、私は基本的に社会からの預かり物だと思っている」と言われたことがありました。「いつか社会人として巣立っていくまで育てることを担当させてもらっているだけで、そこに自分なりの色は出せるにしても、基本的には社会にお返しするものだと思っている」というんですね。それを聞いてから、私はなんとなく社会全体が子供を育てていくという観点を持てたように思います。
安藤:素敵な考え方のお母さんですね。やっぱり手当を支給する側もされる側も、そういう観点を持たないとただのバラマキになっちゃうんですよ。僕はこういうときに性悪説を出してもしょうがないと思っています。手当を子供のために使わない人がごく一部にはいるかもしれないけれど、その一部がいるから本当に必要としている人にまで支給しなくていいわけではありませんから。
乙武:それに、子育てを社会のものとして考えると、社会にとっての利得も見えてきます。これだけ少子高齢化が叫ばれているなか、今は働き盛りの人たちだってゆくゆくは年を取り、社会保障を受ける側になるわけです。そうなったときに下の世代が多いに越したことはない。子供たちがきちんと自立して、仕事をして、税金を納められるようになることは、社会のためでもあるわけです。つまり、「勝手に子供を作ったくせに」じゃなくて、「社会を支えていく人がまたひとりこの世に誕生してくれた」。そうした可能性を秘めた子供たちを社会全体でどう育てていけばいいだろうという視点が必要だと思うんですよね。