虐待「189番」入電急増の一方、7割通話できず 音声案内最長2分でためらい?

西日本新聞 2015年12月4日

20秒ごとに10円の通話料も…
児童虐待の通報や相談を24時間受け付ける厚生労働省の児童相談所(児相)全国共通ダイヤル「189番」の運用が始まった7月、福岡県内での入電件数がこれまでの8倍に急増した一方、うち約7割が通話できなかったことが関係者への取材で分かった。最寄りの児相窓口に電話がつながるまでの音声案内に、最長で2分間かかる場合があることなどが要因とみられる。九州の他県でも同様の傾向があり、国に改善を求める声が出ている。

【虐待・DV考える】家庭という密室で身体、精神、経済的な「暴力」多岐に
厚労省によると、相談ダイヤルはこれまで10桁だったが、利用を高めてもらおうと3桁に簡略化。189番は「いち早く」の語呂に合わせた番号で、従来通り最寄りの児相に転送される仕組みになっている。
ただ、110番や119番などの緊急通報用電話番号と異なり、ナビダイヤルの仕組みを使っているため、同じ市外局番に複数の児相がある場合や携帯電話利用の場合は、音声案内に従って郵便番号を入力したり、読み上げられる都道府県や地域を番号で選択したりする必要がある。20秒ごとに10円の通話料もかかる。

児相につながるまでに2分間も…
福岡県によると、3桁化前後(6月と7月)で、福岡市では38件が313件、北九州市では8件が99件、県の児相が管轄するその他の市町村では32件が240件に急増。県全体で入電件数は6月の78件から、7月は652件と8・4倍に増えたという。
一方、7月の入電件数のうち、実際に児相に電話がつながったのは、福岡市60件▽北九州市25件▽県管轄地域68件-と、2~3割にとどまり、652件のうち499件は途中で切れた。
長崎県は入電件数を明らかにしていないが「福岡県と同じような状況。3桁化で相談件数が増えたという実感はない。音声案内の長さも要因と考えられる」(こども家庭課)という。
ある児相の職員は「虐待が疑われる子どもの泣き声を聞いて189番に電話しても、児相につながるまでに2分間もかかる場合があり、通報をためらって切ってしまう事例も少なくないのではないか」と話す。

入電件数と通話件数の落差
入電件数と通話件数の落差について、厚労省の担当者は「3桁化で試しにかけてみたという人もいるはず。緊急通報用電話番号にするには予算の制約もある。全国的な分析はできておらず、必要性があれば検討する」と話している。

【ワードBOX】児相全国共通ダイヤル
児童虐待や子育ての相談を受け付ける全国共通の電話番号。厚生労働省が2009年に開設した10桁の共通ダイヤル制度を改善。今年7月から番号を3桁に簡略化した。全国の児童相談所で休日や夜間も職員が常時対応できる体制が整っており、電話は最寄りの児相に転送される。虐待が疑われる子どもを見つけた時だけでなく、子育ての悩みも相談でき、虐待の未然防止や被害の早期発見が狙い。

無理やり牛乳、トイレに閉じこめ…虐待保育士

読売新聞 2015年12月7日

香川県さぬき市の私立岡野松保育園(安部慶成園長)で、女性保育士(23)が1歳未満の園児数人に虐待を繰り返していたとして、県が児童福祉法に基づいて同園に改善を指導していたことがわかった。
園児らにけがはなかった。保育士は近く退職し、安部園長も辞任の意向を示している。
同園は地元の社会福祉法人・岡野松福祉会が運営する県の認可を受けた保育園。県や同園によると、保育士は2014年4月から同園で勤務していた。園に預けられている1歳未満の園児は6人。保育士は牛乳を飲まない園児の首をつかんで無理やり飲ませたほか、言うことを聞かない園児をトイレの個室に閉じこめたり、平手打ちしたりしたという。
市を通じて保護者からの通報を受けた県が1日付で指導。早急に事態を改善するよう求めた。同園の内部調査に対し、保育士は「仕事が忙しくてストレスがたまっていた。申し訳ないことをした」と虐待を認めている。

厚労省の規制緩和策「保育業務 無資格でも従事可」が物議

おたくま経済新聞 2015年12月8日

保育士不足を解消するために厚生労働省が打ち出した「保育業務 無資格でも従事可」の方針が、ネット上で物議を醸しています。
この方針は、認可保育所で子供の世話ができるのは、保育士、看護士、保健師に限られるという条件を緩和して、保育士不足を解消しようというもの。来年4月から導入予定で、子供の少ない朝夕の時間帯などに限り資格のない人でも働けるようにするそうです。もちろん研修を終了するなど、一定の条件は求められます。
ただし、小学校や幼稚園の教諭資格をもつ人は、時間帯を限定せずに保育が行えるようになるそうです。
こうした発表をうけ、保育士を目指している学生らからは「今までの努力はなんだったのか」といった悲鳴の声が上がり、他にも「何かあったときの責任問題はどうなるのか」という不安の声、さらには「保育士不足の抜本的問題は、給与面や待遇面。資格ではないと思う」といった指摘もあがっています。
日本総研が以前発表した資料によると、保育士登録者数は124.6万人(2014年4月時)で、認可保育所の常勤換算保育士数は35.6万人(2013年調査)。さらに、2015年1月時の保育士有効求人倍率は、全国平均で2.18倍、東京都においては5.13倍とされており、資格者不足というわけではなさそうです。
現在保育所の現場では、朝夕や人が少ない時について、保育士資格を有しつつも常勤できない人を中心に、パートタイムでフォローする環境も作られています。そのため、勤務時間が限られるとはいえ、既に資格を持っている人達にとっては、少なからず何らかの影響がでることは間違いなさそうです。

ひとり親家庭、年収200万未満4割超…神奈川

読売新聞 2015年12月5日

神奈川県は4日、ひとり親家庭を対象に初めて行ったアンケート調査の結果を公表した。
年収200万円未満の世帯が4割超となり、厳しい生活の実態が浮き彫りになった。
調査は8月、児童扶養手当の受給資格者約6万人を対象にインターネットで実施。651人から回答を得た。回答者の9割以上が働いており、52%がパートやアルバイトなど非正規職員だった。年収は「100万~200万円未満」が最多で、「100万円未満」を合わせた200万円未満が4割を超えた。預貯金額で最も多かったのは「0円」(34%)だった。
「経済的な理由で、支払いができなかったことや滞ったこと」の設問では、28%が「公共料金の支払い」を挙げた。「支援のためこれから拡充するべきだと思う制度」は、「児童扶養手当の拡充」が最も多く、「学校教育の費用の助成」「ひとり親が働きやすい職場環境の改善」が続いた。
自由記述では、「体も心もギリギリのところで生きている。限界も近い」「頑張って働くほど児童扶養手当の支給額は減る。一人で子供を育てるつらさが出てきた」など生活の厳しさを訴える意見が相次いだ。
国が昨年公表した「子どもの貧困率」(2012年)は、過去最悪の16・3%を記録。ひとり親世帯に限ると54・6%で、過半数が貧困状態にある。県は「ひとり親家庭の生活苦が明らかになり、衝撃的な数値として受け止めている。結果を分析し、対策に取り組みたい」としている。