児童養護施設の子どもたちを地域で支援

日本テレビ系(NNN) 2015年12月11日

キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。10日は「社会的共同親」をテーマに、諏訪中央病院・鎌田實名誉院長が解説する。
親と離れて児童養護施設などで暮らす子どもたちを、地域の大人たちが親代わりになって支援する取り組みが今、注目されている。取り組みの背景にあるのは、施設を出た子どもたちを取り巻く現実の厳しさだ。

児童養護施設とは?
児童養護施設というのは、虐待や親の病気、死別などで、親と暮らせない原則18歳未満の子どもが暮らすところ。こうした子どもたちは全国で約2万8000人もいる。

児童養護施設を出た子どもたちの進路は?
NPO法人「ブリッジフォースマイル」の調査によると、2013年度に児童養護施設を退所した子どもたちの7割が就職している。ところが、時間がたつほど「仕事を続けている人」が減り、4年3か月後には、「転職した人」や「離職した人」が半数以上を占めるようになる。現在の状況がわからない「不明」のケースも1割程度あった。退所後の子どもたちをフォローするのは非常に難しい。

京都の中小企業経営者らが始めた取り組み
そこで、京都の中小企業経営者ら約40人が子どもたちを支えようと、3つの児童養護施設などで「社会的共同親」の取り組みを始めた。
「京都中小企業家同友会」の代表メンバーで写真スタジオを営む前川順さん(56)は、児童養護施設を訪れて七五三の写真を撮影するボランティアをしていた。その中で、18歳になって施設を出た子どもたちが仕事をすぐにやめてしまう実態を耳にしたという。
前川さん「自立ありきで、とにかく焦った就職をするので、自分が本当に何がしたいかがわからず就職して、すぐにやめてしまう」
前川さんたちは、夏休みなどに、自分たちが経営する様々な会社で実習させることにした。中には、自信がついて、そのまま実習先でアルバイトを始める子もいるという。

「社会的共同親」名付け親の思い
この活動を「社会的共同親」と名付けたのは、京都府立大学の津崎哲雄名誉教授。イギリスの「コーポレート・ペアレント(社会的共同親)」という制度に似ていたからと話している。
津崎名誉教授「社会の構成員すべての人が、どんな立場でも、子どもたちに、自分の立場から養育の支援をするという考え方」
イギリスでは、この取り組みが1990年代末から広まって、今ではすべての自治体で実施されているという。津崎名誉教授は、日本で「社会的共同親」の取り組みが広がるには、施設の側ももっと門戸を開放して、外部に助けを求めてほしいと話している。

適性や夢を語り始めた子どもたち
児童養護施設の業務には、退所した子どもたちの自立支援も含まれているが、実際には入所している子どもの世話でていっぱいのところが多い。児童養護施設の職員は、この活動が始まってから、「子どもたちが生き生きと、自分の適性や将来の夢を語り始めた」「前川さんたちを“おっちゃん・おばちゃん”と呼び、訪問を楽しみにしている」など、明らかな変化があったと話している。

前川さんへのすてきなプレゼント
児童養護施設で育った子どもたちは、「どうせ自分なんて」と自分を肯定できない場合もあるので、人と関わることが苦手な子どもも多い。そんな中、すてきなプレゼントもあったようだ。
前川さん「割と引っ込み思案の女の子がいて、似顔絵入りのクッキーを焼いてくれた。一生食べずに、棺おけに入れてもらおうと思ってます」
前川さんたちは定期的に施設を訪れて、子どもたちとケーキやお正月の飾りを作ったりもしているという。

地域が親代わりに
きょうのポイントは「地域が親代わりに」。実は私は本当の親を知らない。2歳の頃から養子として、本当の親ではない父と母に育てられた。そして今、大阪に住んでいる親のいない子どもを知人と2人で支援している。地域全体で親代わりとなって子どもたちを見守り、支える取り組みを広げてほしいと思う。

「保育士無資格OK」報道に怒りの声

R25 2015年12月10日

厚生労働省は、深刻な保育士不足を解消するため、一定の条件をクリアすれば、保育士の資格がない人も保育所で子どもの世話ができるよう、一部基準を緩和する方針であることが判明。保護者や保育士を目指す女性から、不安や怒りの声が相次いでいる。
このニュースは、12月4日付の日本経済新聞が報じたもの。同紙によれば、現行では常時保育士2人以上の配置が義務付けられているが、新ルールでは子どもの少ない朝夕の時間帯に限り、「保育士1人+研修を受けた保育ママなど資格を持たない人」での保育も許可するという。これにより保育士の有資格者の過度な負担が減り、子どもが多い日に多くの保育士を配置して、手厚い保育が期待できるようになる。
保育士の深刻な人手不足は、データ上も明らかだ。今年9月の保育士の有効求人倍率は全国平均が1.85倍で、東京都に限っていえば5.44倍。昨年厚生労働省が発表した「保育分野における人材不足の現状」というレポートでは、保育士養成施設卒業者のうち約半数が保育所に就職していないこと、早期離職の傾向が顕著なこと、賃金が安いこと、休暇が少ない・取りにくいことなどが、人手不足の理由としてあげられている。
ただ、そんな状況にあるとはいえ、「場合によっては無資格でもOK」という案に賛成する声は少数だ。ツイッターには、
「有資格者は少し負担が減るのではなかろうか?必要なことは有資格者と無資格者のはっきりとした賃金の差別化だと思う」
などと、方針を評価する人は一部であり、
「無資格の人がいる所に子どもあずけたくないんだけど」
「事故が起きないか心配です。安全性が低下しないでしょうか」
「んー…子供をあずける親の立場となったら(´・・`) 深刻だなぁ・・・・」
と不安を感じるコメントがほとんど。また、このニュースについては、「無資格者でも保育士の代わりができる」と誤解した人も多いようで、同じくツイッターには、
「無資格でも保育士できるって国が思ってる時点で保育士のこと馬鹿にしてるんだよなぁ…」
「へ?馬鹿じゃない?子供預ける方としては、資格保持者に保育して欲しいんですけど。なんかあっても遅いんだからね。ほんとに。そして今頑張ってる子達に失礼!」
など、一斉に反発の声があがっているほか、保育士を目指す学生らしきユーザーからも、
「だいぶふざけてるわー 無資格で保育できるとか、なんのために大学行きよんの。 実習して、毎日日誌書いて、指導案考えて、設定保育して、行事に使う物を作成して。 保育士っちただの子守じゃないけん。 医者と同じ国家資格です!」
「なんか言葉にならん この2年間 必死に働いたお金も 学費に全部消えて この大金は資格のためにあるものでって考えてきとったのに。 くっそ辛い実習だって 文字ばっかりの授業だって 資格のために頑張ったのに」
「保育士資格いらなくなる って本当なの?笑 嘘だよね?笑 うちら 何のために学んでるの?笑 どれだけ政府は 子どもをバカにして 蔑ろにする気なの?笑」
と、怒りと失望のコメントまで登場している。
日経の記事によれば、この規制緩和は「緊急的な措置」だそうだが、今年度中には省令を改正し、来年4月からさっそく新ルールを適用するという。ただし、上記のように、無条件で「無資格者が保育士の代わりができる」との誤解を生んでいる部分もあるため、厚労省はこれから十分な説明と周知が必要になるだろう。
(金子則男)

赤ちゃんポスト名乗る団体「産めば200万円」に人身売買と批判も

女性自身 2015年12月9日

《中絶を考えられている方へ「産んでくれたら最大200万円相当の援助」があります》
大阪の特別養子縁組斡旋団体「NPO法人全国おやこ福祉支援センター」が「インターネット赤ちゃんポスト」と題する自身のサイトでこう呼びかけ、波紋を呼んでいる。団体はネットで特別養子縁組を斡旋。今後はアプリを使い、子どもを育てられない実親と養子を望む養親のマッチングを予定。紹介サイトには“手軽さ”を強調する言葉が並んでいる。
特別養子縁組とは、児童福祉のための制度。実親が事情により育てられない子どもを養親が引き取り、法的にも親子になる。それに伴い、実親と子どもの法的な親子関係は消滅するというものだ。斡旋団体は国内で15団体ほどあり、都道府県に第二種社会福祉事業の届け出が必要。児童福祉法により、営利目的での斡旋は禁止されている。
大阪市は「人身売買と受け止められかねない」として5回もの行政指導を実施。だが改善はされていないという。また「赤ちゃんポスト」といえば一般的には熊本の慈恵病院を指すが、病院のホームページには《無関係です》との言葉が。200万円援助という表現を使っていること、マッチングアプリで年間15億円程度の収益を見込んでいること、3年で事業を売却予定であることを確認したとして問題視。「運営方針にも隔たりがある」として注意に至ったという。“本家”「赤ちゃんポスト」の慈恵病院・蓮田健副院長はこう語る。
「営利目的という印象を強く持ちました。養親はアプリに月額3千円程度を支払う、成立すれば50万円程度を団体に支払うなど、お金の話ばかり。特別養子縁組は、赤ちゃんや実母さんや養親さんの人生を決めてしまうことになります。だからひとりひとりと向き合い、時間をかけて対応してきました。それをアプリで機械的に決めるなんて、おかしいです。さらに養子縁組は成立したら終わりとはいきません。実親さんや養親さんの心のケア、養子へのサポートをずっと続けていかなくてはならないんです。何もわかってないですね」
そうした批判に対し、「インターネット赤ちゃんポスト」側はどう考えているのだろうか。代表理事の阪口源太氏は本誌の取材にこう答えた。
「批判されることは、ある意味計算通りなんです。知人にも『人身売買の大元締め』と言われましたから。でもそれだけ拡散しているということですし、広告費に換算すると数千万円の効果だと思います。“200万円援助”という表現や赤ちゃんポストの名前を使ったのは、検索される確率を上げるため。それで救われる命がありますからね。援助は、実際にかかった費用を養親さんが補てんするという意味です。出産費以外にも働けなかった分の収入保証、交通費なども含まれます。実際、120万円ほど援助したケースもありました」
もとは中古パソコンのネット通販会社を経営していた阪口氏。転機は、橋下徹大阪市長(46)の『維新政治塾』に参加したことだった。スタートは14年3月。児童福祉の仕事に携わったことは一度もなく、当初は届け出が必要なことさえ知らなかったとのこと。そんな阪口氏だが、これまで8件の特別養子縁組を成立させたという。
「営利目的だといいますが、私は一円ももらっていません。利益が出ても団体の内部留保になり、アプリ開発などのサービス向上に使われます。それに3年で売却するとは断言していませんしね。アプリがダメなんてITを知らないバカが言っているだけ。効率化すればコストダウンになるし、人にしかできないケアに集中できる。中絶を考えている人に経済的援助することへの批判も、じゃあ見殺しにすればいいということでしょうか。無料で何もできないより、お金がかかってでも多くを救えた方がいい。費用対効果の問題ですよ」
主張は平行線だが、論争に決着がつくことは、当面なさそうだ。特別養子縁組に関する法律に詳しい、帝京大学の高橋由紀子教授はこう語る。
「日本では特別養子縁組に関する法律が整備されていません。児童福祉法で禁止行為が定められていますが漠然としているし、あとは厚生労働省が各地自体に指導する通知を出していることくらいなんです。こうした取り組みは国がやるべきです。国は児童福祉施設や乳児院にはお金を出しています。そこの子どもたちを成人まで育てるには1人1億円かかるそうです。なのに特別養子縁組については手つかず。大事なのは、子どもたちが幸せになること。大人の論理で、それがないがしろになることだけはさけてほしいです」
国際的にも、日本の無策は問題視されているという。何が子供にとって幸せか、それを社会全体で考えなければならない――。