一人親の職業訓練支援=子ども貧困解消へ総合対策―政府

時事通信 2015年12月21日

政府は21日、子どもの貧困解消に向けた総合対策をまとめた。
資格取得を目指す一人親世帯の親に対する専門学校などの入学金貸し付けをはじめ、親の職業訓練支援に重点を置いた。併せて、児童相談所(児相)による支援強化を明記した児童虐待防止策も決定した。
子どもの貧困対策をめぐっては、安倍晋三首相が4月、一人親世帯などを念頭に総合対策をまとめるよう指示していた。
一人親世帯の親に貸し付けるのは、入学準備金50万円と就職準備金20万円。5年間働けば返済を免除する。厚生労働省は2015年度補正予算案に関連事業費85億円を計上。学校に通っている間に月額10万円を給付する事業についても、16年度当初予算案で拡充する方針だ。
加えて、21日の関係閣僚による折衝を踏まえ、一人親世帯が受け取る児童扶養手当の支給額を増やしたり、幼児教育無償化の範囲を拡大したりすることも盛り込んだ。
虐待防止策に関しては、(1)予防(2)発生時の対応(3)虐待を受けた子どもの自立支援―を柱に据えた。児相や子育て世代包括支援センターの体制を強化するとともに、児童養護施設を退所して自活を始める人に生活費や家賃相当額を貸し付けるとした。

中小企業で広がる「子連れ出勤」 人手不足解消、新ビジネスも登場

SankeiBiz 2015年12月21日

中小企業の間で「子連れ出勤」を認める機運が高まりつつある。人手不足の中で労働力を確保したい企業が、働き手の要請を満たす解決策として導入するケースが出てきた。子連れOKのオフィスを用意して企業から業務を受託し「子連れ出勤」をサポートする新たなビジネスモデルも登場。子供の面倒をみながら働くことの難しさもある一方、少子高齢化や待機児童問題がさらに深刻化する中、勤務スタイルの新たな選択肢となり、普及していくだろうか。
体験型ギフト企画販売のソウ・エクスペリエンス(東京都目黒区)は2013年から子連れ出勤を認めた。当時は10人ほどだった従業員の中の女性1人が妊娠したことがきっかけだった。「貴重な戦力が欠けるのは会社にとっても大きな損失」と考え、同社の西村琢社長がこの女性社員に「子連れで来てみたらどうかな」と声をかけた。
同僚社員の反応が気がかりだったが「オフィスの雰囲気が明るくなった」「一緒に働きたいと思う仲間とずっと仕事ができる」など好意的な声が目立つ。いまでは社員30人中、9人が子連れ出勤をしている。
環(たまき)ちゃん(3)とともに出勤する望月町子さん(32)は「子育てが理由でもブランクが長いと、仕事に戻るのが難しい。こういう職場ならずっと働ける」。燈(ともり)君(3)を連れて出勤する辻莉瑛子さん(30)も、「ずっと私にべったりだったのが、ここに来てからは私以外の大人や子供とも接することで、自立心や社会性が身についたと思う」と、子連れ出勤の思わぬメリットも出ている。
同社は15年4月から、「『子連れ出勤』100社プロジェクト」を始めた。子連れ出勤の良さを同社のブログで発信、このブログを読んだ企業から会社見学希望の問い合わせが相次いでいるという。ブログを通じて他社と課題の共有なども可能となった。
子連れ出勤を支える新たなビジネスも登場している。京王電鉄は9月16日、東京都多摩市にある京王線聖蹟桜ケ丘駅前の商業施設に、子育て中の母親向けにキッズスペース付きのオフィス「京王ママスクエア」を開設した。施設の運営はママスクエア(東京都港区)に委託している。
同施設へは、1歳以上、小学校3年生以下の子供を連れていくことができる。例えば、小学校での授業が終わった子供にママスクエアへ来てもらうことも可能だ。こうした点が評価され、300人以上の応募があった。4歳と1歳の子を持つ川崎市多摩区の高岡絵美さん(31)は以前、結婚式場で働いていたが、「書き入れ時の土曜、日曜日は保育園は休みのところが多く、子供を預けられる場所がなかった」。
ママスクエアの藤代聡代表は土日へのニーズに対応するため「週3、4日とか短時間でも働きたいと考える人は多い」と考え、保育を担当する人の勤務シフトをうまく調整し、「ワークシェアリング」も取り入れて子連れ出勤のサポート体制を築いている。京王電鉄沿線価値創造部の平松渉課長補佐も「子育て世代の家族に選んでもらえるまちづくりを進めていけば、沿線価値の向上にもつながる」と、期待を寄せる。
一方で20年近くも前から子連れ出勤を認めている中小企業もある。授乳服製造のモーハウス(茨城県つくば市)は1997年の会社設立時からで、現在は2歳未満の子供を連れて出勤できる。東京都渋谷区の直営店では、子供を抱いたまま女性従業員が接客する。
といっても創業初期には、子供同士で騒いだり、通信販売用に用意した箱に玩具を入れたりといったいたずらもあった。それでも光畑由佳代表は「問題が起これば一つずつ原因を探り、全従業員で話し合って解決策を見つけた」と話す。
首都圏でクリーニング店を展開する喜久屋(東京都足立区)も、草加工場(埼玉県草加市)の2階事務所の一部を、従業員の子供のためのスペースとして用意している。午後、近くの幼稚園から園児バスが工場前に来ると、園児たちはそのスペースで母親を待つ。事務所で働く従業員数人が仕事をしながら、子供の様子に気を配る。
子供の急病や幼稚園・保育園の保護者会といった行事など、シフト制を取る職場では休みを取りづらい。喜久屋は、引き取り日など客先の希望を踏まえた上で操業計画を立てる。このため、事前に休みの希望を出せば、操業計画に影響することなくシフトの調整で対応できる。従業員約220人のうち、女性が約180人を占める。子育てが一段落してからも喜久屋で働き続ける女性も多いという。
都市部を中心に核家族化が進み、子育てについて気軽に相談できる人が身近にいない。子連れ可能な職場なら、子育ての悩みなどもお互いに打ち明けられ、「母親の気持ちも明るくなる」(モーハウスの光畑代表)。
待機児童数は、再就職活動中といった潜在的なものも含めると全国で80万人以上とされる。また2017年までに保育士が7万人不足するとの厚生労働省の試算も公表されている。東レ経営研究所の渥美由喜(なおき)主任研究員は「子連れ出勤は、独身社員にとってもずっと仕事が続けられる環境が整っているという安心感を得られる。子育てをしながら働くということは、必然的に仕事の面でも助け合うことになる」と話す。喜久屋の中畠信一社長も「みんなで支え合うという雰囲気が大切」と、企業も含めた社会全体で子育てに取り組む必要性を訴えた。(松村信仁)

<カフェイン中毒死>血中濃度、致死量…短期間に大量摂取か

毎日新聞 2015年12月21日

「エナジードリンク」と呼ばれるカフェインを含む清涼飲料水を大量に飲んだ九州の男性が中毒死した問題で、福岡大(福岡市)は21日、解剖の結果、カフェインの血中濃度が致死量に達していたことが分かったと発表した。胃の中からカフェインの錠剤も見つかり、解剖した同大の久保真一教授(法医学)は記者会見で「短期間の大量摂取は危険だ」と注意を呼びかけた。
同大によると、男性は20代前半。ガソリンスタンドで深夜から早朝まで勤務し、眠気覚ましとして1年以上前からカフェイン150ミリグラム程度を含むエナジードリンクを飲んでいた。亡くなる約1週間前から家族に体調不良を訴え、吐くこともあった。昨年のある日、午前11時半ごろ大量に吐き、寝ていたが、午後4時ごろ家族によって意識を失った状態で見つかり、死亡が確認された。
解剖で男性の血液1ミリリットルから致死濃度(79~567マイクログラム)に当たる182マイクログラムのカフェインを検出した。胃からもカフェイン錠剤の粉末が見つかり、中毒死と結論づけた。
血中濃度から推定される経口摂取による致死量は3000ミリグラム(3グラム)程度。血中濃度が半分に下がるのは3~6時間後で、短期間に大量摂取すると頭痛やめまい、吐くなどの中毒症状が表れる。
カフェイン錠はビタミン剤などと同じ「第3類医薬品」などとして市販され、1錠でコーヒー2杯に相当する100ミリグラムを含んでいるものや、それを超える商品もある。
厚生労働省によると、過去10年間にカフェイン中毒による死亡例はない。久保教授は「自分の知る限り国内初の死亡例。エナジードリンクを大量に飲んだり、カフェイン錠を併用したりすると、知らないうちに血中濃度が高くなり中毒になる可能性がある。アルコールと同時に摂取すると、カフェインを分解する能力が低下し危険だ。注意してほしい」と話した。【関東晋慈】

若者らに人気…エナジードリンク
エナジードリンクに定義はないが、清涼飲料水にカフェイン、ビタミン、アミノ酸などを含有した炭酸飲料で若者らに人気がある。
公益財団法人「日本中毒情報センター」(茨城県つくば市)によると、1本(160~500ミリリットル)当たり14~180ミリグラムのカフェインを含有し、中には眠気覚ましと称して1本(50ミリリットル)に100~150ミリグラムを含有する商品もある。20~30本を一気に飲むと致死量に達する計算だ。
内閣府の食品安全委員会は食品中の摂取許容量を設定していない。
ただ、同委が2011年に発表した資料は「中枢神経系の刺激によるめまいや心拍数の増加、興奮、不眠症などの急性作用をもたらすことがある」としている。【川上珠実】