子どもの貧困、社会的損失は15歳の1学年だけで2.9兆円

リセマム 2016年1月5日

日本財団は、「子どもの貧困の社会的損失推計」レポートを公開。推計によると、子どもの貧困を放置することで、現在15歳の1学年でも社会が被る経済的損失は約2.9兆円に達し、政府の財政負担は1.1兆円増加することが明らかになった。

社会的損失の推計結果の概要
日本財団は、貧困対策の重要性に対する理解を広めるために、子どもの貧困の社会的損失を定量的に推計。2015年12月3日にメディア向けに説明会を実施し、今回、レポートの全文を公開した。日本では子どもの貧困が深刻化しているが、主要7か国の子どもの貧困率(2012年)をみると、日本の子どもの貧困率はアメリカの20.8%、イタリアの17.2%についで16.3%となっている。
推計の基本的な考え方として、進学や進路に差が出る中学卒業時を推計の起点とし、現在15歳の子どもを対象とした。子どもの貧困が放置される「現状シナリオ」では生活保護世帯、児童養護施設、1人親家庭の子どもは約18万人と推計。高校・大学等の進学率は、大卒が3.4万人、短大・高専・専門学校卒は2.1万人、高卒は9.3万人、中卒は3.2万人(うち高校中退者2.0万人)となる。学歴別の就業状況割合に沿って人数を配分すると、正社員は8.1万人、非正社員は3.6万人、自営業等は1.5万人、無業者は4.8万人と推計される。
そこで、子どもの貧困に対する教育プログラム(ぺリー就学前教育計画、アベセダリアンプロジェクトを援用)を受けることで、貧困世帯の子どもの高校進学率が非貧困世帯と等しくなり、貧困世帯の高校中退率も非貧困世帯に等しくなると仮定した「改善シナリオ」を推計。大卒は6.2万人、短大・高専・専門学校卒は3.7万人に増え、高卒は7.4万人に減少、中卒も0.8万人までに減少する。さらに、正社員は9.0万人に増加し、非正社員や無業者は減少する。
また、推計対象の貧困世帯に属する18万人が64歳までに得る所得は、現状シナリオでは22.6兆円に対し改善シナリオでは25.5兆円となり、子どもの貧困を放置することで生涯所得の合計が2.9兆円減少する。税・社会保障の純負担は現状シナリオでは5.7兆円なのに対し、改善シナリオでは6.8兆円となり、1.1兆円の社会的損失が発生すると推計する。
考察では、人口減少に直面している日本では労働力の希少性が高まり、質の高い労働力を確保していくことが社会的・政策的な課題となる。推計結果から現状シナリオに対し、改善シナリオでは正社員が約1割増加し、無業者数が1割減少することが見込まれ、子どもの貧困対策は労働力の確保の点からも大きな効果をもたらすと指摘している。
しかし、今回の推計は海外の貧困対策の結果を援用しており、日本ではまだ研究蓄積は少ないのが実情。日本の研究成果を用いた正確な推計が可能になると、効果的な政策の実現ができると期待している。

乳幼児揺さぶられ症候群を防ぐ! – 「泣きやまない時は一旦離れて」と専門家

マイナビニュース 2016年1月5日

虐待死のニュースで時折指摘されることがある「乳幼児揺さぶられ症候群」。赤ちゃんが激しく揺さぶられることによって脳に障害をきたす疾患のことを指す。親たちはどのようなことがきっかけで、赤ちゃんを揺さぶってしまうのか。そしてどうしたら、被害を防ぐことができるのか。同疾患に詳しい国立成育医療研究センター研究所・社会医学研究部部長の藤原武男氏に聞いた。

赤ちゃんが「泣きやまない」ことが引き金に
「乳幼児揺さぶられ症候群」は、赤ちゃんが激しく揺さぶられることによって脳の周りの血管や神経が引きちぎられ、さまざまな障害が起こる疾患のこと。言語障害や失明、最悪の場合には死に至ることもある。
最近では、児童虐待の死亡事故を報じるニュースで耳にするケースも多くなっている。これらの事態を重く受け止め、厚生労働省は2015年から死亡事故事例の検証結果(子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について: 第11次報告)の調査項目に「乳幼児揺さぶられ症候群の有無」を追加した。
検証結果によれば、平成25年4月1日から平成26年3月31日までに発生した児童虐待による死亡事例(心中以外)のうち、最も多かった直接死因は「頭部外傷」。このうちの6割が「乳幼児揺さぶられ症候群」(疑い含む)だった。判明した加害動機のうち多くを占めたのは、赤ちゃんが「泣きやまないことにいらだったため」で、「実母が泣きやまない女児をあやそうと両手で持って揺さぶり、意識障害とけいれんで救急搬送されている」「実母が外出している間、実父が食事中泣きやまない女児にいらだち暴行を加えた」などのケースが報告されている。

イライラしたら赤ちゃんから離れても構わない
死亡事故に至らないまでも、赤ちゃんが泣きやまないことにイライラしてしまった親は少なくないのではないか。藤原氏によれば、イライラしたときに赤ちゃんを激しく揺さぶる衝動をコントロールするために必要なのは「泣き」についての知識なのだという。
「これまでの研究で、赤ちゃんにどのような関わり方をしても、生後1~2カ月頃には泣きのピークを迎えることがわかっている。そのときは何をやっても泣きやまない。1日に合計5時間以上泣くこともあり、それでも正常ということを知ってもらいたい」と話した。「抱っこをする」「授乳する」「おくるみでくるんであげる」「ビニールをくしゃくしゃさせた時に出る音を聞かせる」などを試した上で泣きやまないときには、「自分がイライラする前に、赤ちゃんをベビーベッドなど安全な場所に寝かせてその場を少しの間離れても構わない」とのことだ。

「泣き」の知識があれば被害は予防できる
しかし親たちがこのような知識を持っていることで、本当に虐待は予防できるのか。この点については、藤原氏が行った興味深い研究がある。調査は、千葉県鎌ヶ谷市で生後4カ月の子どもを持つ母親1,594名に対して実施したもの。2010年6月から2012年1月の間に市が開いた乳幼児健診に参加した人を対象とした。
市では、(1)妊娠8カ月のクラスで幼児の泣きの特徴と推奨される行動についてのDVDを見せる、(2)乳児期の家庭訪問の際、幼児の泣きについての情報を載せたパンフレットを配るという2つの施策を実施。藤原氏は、(1)も(2)も体験した母親、(1)(2)のいずれかを体験した母親、(1)も(2)も体験した母親の3グループにわけて分析を行った。
その結果、幼児の泣きの知識に関しては体験した施策の数が多い母親ほど定着が見られた。さらに、「泣きやまないときには赤ちゃんから離れる」という行動をとった回数も、同様に多くなったのだ。公的な施策が、虐待を防ぐための行動を実践するために効果を発揮していることがわかる。
この調査結果に加えて、藤原氏は「周囲が育児に関わることの大切さ」も指摘。「夫の協力も含め、さまざまな人が育児に関わることで日常生活のストレスは軽減される」と話してくれた。赤ちゃんの泣きの特徴や対処の仕方については、母親だけでなく周囲の理解も必要となってくるだろう。

紹介状なしの大病院受診、最低5000円の追加負担へ

TBS系(JNN) 2016年1月5日

厚生労働省は、今年4月から紹介状なしで大病院を受診した患者に、初診料とは別に最低5000円の追加負担を求める方針です。
対象となるのは、大学病院や公立病院など全国およそ250の大病院です。厚労省は、今年4月から紹介状なしでこれらの大病院を受診した場合、患者に初診料とは別に追加負担を求めることにしていて、負担額は最低5000円とする方向で調整しています。
対象となる病院は、5000円以上を請求できることになり、これは軽症の患者は中小規模の病院や診療所を受診するようにしてもらい、大病院が重症の患者を中心に、より高度な医療を提供できるようにするのが狙いです。ただ、救急の患者や近くに診療所などがない場合は、追加負担を求めない方針です。
厚労省は今後、中医協=中央社会保険医療協議会で正式に決めることにしています。(

低所得者ほどカロリー過剰摂取…1日5000kcalな食生活

デイリーニュースオンライン 2016年1月3日

かつて肥満といえば裕福さの象徴だったが、今や肥満は貧困の象徴となった。厚生労働省は2015年12月初旬、「国民健康・栄養調査」で「低所得世帯は高所得世帯に比べて、肉や野菜の摂取が少なく、穀物の摂取が多く、栄養バランスが取れていない」と発表して話題となった。同報告書ではさらに、肥満者の割合でも男女とも低所得層のほうが高い傾向にあるとした。
今や太っていると低所得者だと社会ではみなされるのだ。とりわけ日本、アメリカなどの先進諸国ほどその傾向が顕著だ。生活保護受給率全国ワーストワンを誇る大阪市役所の職員に聞いた。
「刑務所から出所したばかりの人を除けば、たしかに肥満傾向にあるという印象が強いです。気になるのはお子さん連れで来られる場合です。そのお子さんも例外なく肥満している。昔なら栄養状態がいいと我々も気にならなかったのですが……」
1日5000kcalも摂取する生活保護受給者の食生活
貧困だからこそ太る。これはハンバーガーやファミレス、コンビニ弁当にみられるファストフードでの食事ばかり摂っているからだという。
「生活保護受給層の1日の食事を聞いてみました。30代女性ですが、朝、昼、晩と近隣で買ったコンビニ弁当3食、そしてインスタントの味噌汁です。これを毎日続けていたら、それは太りますよね?」(前出の大阪市職員)
成人の男性で建築業や宅配業といった肉体労働をしている者ならば1日3500kal摂取しないと体力的にもきつい。だが丸1日家にいて動くことのない生活保護受給者が3食コンビニ弁当、それに加えてアイスクリームやチョコレート菓子を延々と食べ続ける。摂取カロリーは約3000kalを超える。これだけでも1日のカロリー摂取量は高い。太る原因がここにある。大阪市健康局に聞いた。
「成人男性なら1日に1800kal、成人女性なら1日1500kalも摂取していれば十分です。1日に3000kalの消費は明らかにオーバーです」
先述した生活保護受給の30代女性の場合、コンビニ弁当3食に加えてチョコレート1枚、アイスクリーム1個は必ず1日に一回摂取しているという。消費カロリーは最低3500kalを超える。コンビニ弁当以外ではファミレスでの食事だ。高カロリーであることには違いはない。大阪市健康局関係者が語る。
「食事だけならいざしらず酒も呑み、つまみも摂っていました。1日の摂取カロリーは5000kal強。それでいて運動はしない。就職活動はできない状況だそうで。だから外にも出ない。太って当然です。そして太っているからこそ仕事も出来なくなる。悪循環です」(同)
子どもが過度に太っていればネグレクトとみなす
こうした高カロリー摂取は大人だけでは済まない。生活保護受給者層ではその子どももまた大人と同じくジャンクフードにみられる高カロリー食品を摂取している。肥満傾向は増すばかりだ。大阪市子ども相談センター関係者は次のように証言する。
「小学校5年生児童で身長は140㎝ですが体重は55㎏という子がいました。もちろん虐待とかネグレクトではない。話を聞くと食事はファミレスかマクドナルドのハンバーガーばかりです。まずはカロリー面からのケアが大事と判断しました」
児童相談所では現在、大人とまったく同じカロリーを摂取させるのも、「ネグレクト(育児放棄)」とみなすという。冒頭部で紹介した大阪市役所の職員が“太っている来所者”の印象をこう語る。
「太っている。つまりカロリー計算ひとつしない。これは金銭管理も出来ないことを現します。子どもがいること。これは自分の生活水準を考えず出産する、つまり避妊もしないわけです。すべての生活が無計画ということがわかります」
今、日本、アメリカのホワイトカラー層では肥満、喫煙は、「自己管理できない」ことを現す指標とされている。都市銀行勤務の女性(35)が語る。
「禁煙は当然です。1日の摂取カロリーは1200kalに抑えてます。休日のジム通いはかかせません。健康であること、それが行内、ひいては社会人としての評価につながりますから」
この女性によると、今、都市銀行では太っている男性は管理職に就けず、若くして関連会社に出される傾向があるという。続けて都市銀行勤務女性が語る。
「都市銀行の頭取職を見て頂ければわかります。太っている人はいませんよね? 太っていること、それは自分を律することができないとみなされます。自律していない人を金融機関の管理職には据えられません」
もちろん生まれながらにして肥満体質の人もいる。だがそれでも太っていることは、「自己管理出来ていない」ことを表に出すようなものだ。
「経済的に自立している人は、自分を律することができる。だから太らない。でも、自分を律することができない者は経済的にも自立できていない」(大阪市生活保護担当者)
経済的自立と社会人として自律できているかどうか。ここを見極める鍵が、今、肥満かどうかであることのようだ。太っているだけで社会人としての信用にかかわる時代の到来だ。