児童虐待通報「189」、8割が途中切断 音声案内の長さ一因か

北海道新聞 2016年1月26日

長い場合は2分超 他県でも同様の指摘
児童虐待の通報・相談を児童相談所(児相)につなぐ全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」について、児相に転送される前の音声案内の段階で利用者が切るケースが北海道内で8割以上に上っていることが、道と札幌市への取材で分かった。他県でも同じような実態が報告されており、2分以上かかることもある音声案内の長さが一因とみられる。虐待発見の手がかりを見落とすことになりかねず、改善が求められそうだ。
共通ダイヤルは児童虐待の通報や相談を24時間受け付ける電話窓口で、国が2009年に「0570・064・000」で運用を始めた。だが深刻な虐待事件が後を絶たないことから利用を促そうと、昨年7月に「いちはやく」の語呂に合わせた「189」を導入した。
189導入後の昨年7~11月の道内のダイヤル件数は計3161件で、このうち、道内の九つの児相につながったのは16・7%に当たる529件にとどまった。
「0570―」と「189」の二つの番号の内訳は不明だが、道内の児相関係者は「現在は大半が189経由ではないか」と語る。
利用者が電話を途中で切る理由について、児相を運営する道、札幌市は、共に不明としている。だが、他県には「音声案内が長く、途中でためらって切ってしまう例が多い」(沖縄県)との見方がある。
共通ダイヤルは110番や119番と違い、通報窓口に直接つながらない。個人情報が保護されることや通話料がかかることを伝える音声案内を経て、利用者の地元の児相に転送される。
固定電話から掛けた場合は市内局番で自動的に振り分けられる。携帯電話の場合は利用者の郵便番号を入力するか、郵便番号が分からない場合は音声案内が羅列する児相の番号の中から選んで入力する必要があり、長ければ2分を超えてしまう。
児童虐待防止全国ネットワーク(東京)は「都道府県ごとに通報を受けるコールセンターを設け、内容に応じて責任を持って児相や市町村に転送する仕組みを構築するべきだ」と訴える。
厚生労働省は「音声案内が長いとの指摘は受けている。電話が切られる理由を検証し、必要であれば音声案内の短縮を検討したい」(雇用均等・児童家庭局)と話している。

書き損じハガキ1枚で給食2食分 路上で暮らす子どもへ

オルタナ 2016年1月27日

認定NPO法人アイキャン(愛知県名古屋市)は26日、フィリピン・マニラで運営する、児童養護施設「子どもの家(ICAN Children’s Center)」に5人の子どもを入所させたと発表した。今後は寄付収入に合わせて、50人程度まで子どもの受け入れを目指す。同団体では、書き損じハガキを募集しており、「子どもの家」の運営などに役立てている。ハガキ1枚は子どもたちの給食2食分となる。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
都市化が進むフィリピンでは、路上で暮らす子どもたちが25万人以上に及ぶ。家庭内暴力や育児放棄など様々な理由で路上での生活をよぎなくされている。子どもたちは路上での物乞いや、物売り、性産業などで生きる糧を得ている。
しかし、差別や偏見、空腹や病気に苦しみ、事故や犯罪に巻き込まれる危険性が高い。マニラにはそのような子どもたちを保護する児童養護施設の数は不足しており、受け入れられない状況となっている。
アイキャンが運営する「子どもの家」は、路上での生活を強いられている子どもたちが、愛情溢れた環境で生活し、学校に通学できる児童養護施設だ。路上でカウンセリングを行い、子どもに復学意志があり、入所を希望した場合、速やかに施設に移ることができるよう環境を整えている。通学のための学用品や学費も提供している。
アイキャンでは現在、未投函・未使用の官製ハガキ、未使用の切手・テレフォンカードを募集している。ハガキ1枚で子どもたちの給食2食分となる。同団体は1994年に設立したNGO。危機的状況にある子どもたちの生活改善に取り組んできた。

うつ病患い、娘は児相に保護、夫は服役中…家族離散 見放さずに孤立防ぐ

西日本新聞 2016年1月26日

昨年12月、佐賀県内の公営団地。ベランダ側の窓は割れたガラスをテープでつなぎ合わせていた。カーテンはない。朝晩は冷え込むが、実加さん(46)=仮名=は暖房器具を使わず、万年床で生活している。10年前にうつ病を患い、家にこもる日々。風呂にはもう何日も入っていない。
「家族で、食べ物に困らんで、普通に暮らしたい」。小学生の娘(10)は児童相談所に保護され、夫(56)は刑務所に服役中。自身も無免許運転の罰金30万円を払えず、2カ月間の労役場留置が決まっていた。

周囲に頼れなくなると、年金を担保に借金
「助けて、借金取り立ての電話が怖い」。実加さんから県生活自立支援センターに電話があったのは昨年6月。相談支援員として担当になった松尾玲奈さん(29)は地元の役場に出向いたが、職員は「関わらない方がいいと思いますよ」と口をそろえ、社会福祉関係者からも「あそこは無理、やめたがよか」と一笑に付された。
実加さんは義兄(71)も含めて4人暮らしだった。夫は定職に就かず、収入は自身の精神障害者年金約5万円と、義兄の賃金プラス年金の十数万円。毎月15日の年金支給日には唯一、足が向くという近所の居酒屋で一気に使った。光熱費や住民税の支払いは滞納を重ねた。
自己破産も、生活保護を受けた時期もある。それでも自己管理できず、精神状態は悪化した。
「保護のお金は出せません」。役場職員にたしなめられると「あんたらに人情はないんか」と言い返した。周囲に頼れなくなると、年金を担保に借金し、負債は約200万円になった。
娘は不登校になり、見かねた学校が児童相談所に連絡。昨年春に保護された。

家族が一緒に暮らせる日はまだ遠い
県生活自立支援センターが立てた計画では、夫の就職と浪費をなくす家計支援が予定された。
ところが昨年8月、夫は詐欺容疑で逮捕。後払いで27万円分のガスこんろ3台を購入し、代金を払わないまま転売していた。使途不明だが、金は残っていない。11月に有罪判決を受けた。
10月に義兄が体調不良で仕事を辞め、家計は破綻。義兄は12月から老人ホームに入所している。子ども部屋には今も娘が描いた絵、粘土細工などを飾っているが、娘との面会を果たせないまま、実加さんも今月20日に労役に入った。
労役中は娘や夫と文通でやりとりしたいという。相談支援員の松尾さんは家の郵便受けを時々確認し、夫や娘から手紙が届いていたら届けると約束した。
家族が一緒に暮らせる日はまだ遠い。支援だけでは変えられない現実もある。「せめて、社会で完全に孤立してしまうことを防げたら」と松尾さんは語る。

■自立相談支援
生活困窮者自立支援制度の必須事業で、経済的に困っている人の担当になった相談支援員が福祉、医療、教育などの各機関と連携し、本人も含めた会議で計画を立て、問題の解決を図る。窓口をたらい回しにされることもなく「ワンストップ」対応と呼ばれる。本人とは自宅で面談することもある。短期間で自立が望めないケースは、本人が希望すれば見守りや助言を続け、状況の改善を目指す。