フィフィ 再虐待の可能性も、なぜ子どもを親元へ返すのか

週刊女性PRIME 2016年2月21日

当時16歳の娘に、30匹もの金魚の死骸を食べさせたとして、16日、母親と内縁の夫が逮捕された。また同日には、カップラーメンの麺が伸びていることに腹を立て、11歳の息子を殴ったとしてその父親が逮捕された。後を絶たない児童虐待であるが、今回の2件に共通する点として、虐待を加えた親たちが再犯であるという点にフィフィは注目する。

再び虐待する恐れがあるのに、なぜ子どもたちを親元へと返すのか?
16日に報じられた2件の児童虐待。これらに共通する点として、親たちが過去にも虐待の疑いで逮捕、ないしは子どもが保護されていたことがあるという点が挙げられます。本来なら、もう二度と起きてはならないことが起きてしまっているわけです。
なぜ、再び虐待を行ってしまう恐れがあるのに、子どもたちを親元に返してしまうのでしょうか。
そのひとつの要因として、子どもを親元に返すかどうかの判断を各自治体が下しているというのがあるんじゃないかと思います。
日本はタテ割り意識が強いから、裁判所と警察が自分たちの仕事さえ終われば、児童相談所に引き継いでおしまいです。自治体と情報の共有が継続してできていないんですよね。構造として連携がとりにくい。そして、各自治体それぞれが、そのときの担当者によって「親元に戻す」という判断基準をころころと変えてしまうわけです。
海外の場合は、司法や警察機関が直接的に児童を保護監督しているから、情報も管理しやすく、判断基準もより厳密ですし、法的な手段も容易に行使できるんですよね。
さらに日本は、加害者側へのケア、たとえば加害者の更生プログラムが充実しているわけではありません。虐待を根本的に解決するためには、なぜ繰り返し我が子を叩いたり殴ったりしてしまうのか、加害者である親側とも向き合っていくべきです。
強制的に更生プログラムを受けさせることによって、再び虐待を行うことがないよう親を更生させる必要があります。
そうした取り組みもなく、子どもを親元に返してしまえば、再び虐待が繰り返されてしまうことは目に見えています。

なぜ子どもを返して欲しいというのか?
そして虐待する親は、なぜ子どもを返して欲しいと言うのか。報道される親に“内縁の夫”や“同居する男”が多いのはなぜか。
いずれもこれらは、お金に関わっているケースも少なくありません。おそらく彼らは、可愛い我が子を手放したくなくて返して欲しいと言っているのではありません。子ども手当などのお金が目当てである場合だってあるんじゃないでしょうか。結婚せずにあえて同居というスタイルで、保護されるシングルマザーを選択する女性もいるでしょう。
子どもは利用されているだけで、本来使うべき子どもたちに、そのお金が行き渡っているとは思えません。
選挙の前に、子ども手当などのばらまきを行うのではなく、現行の制度を大きく見直したり、虐待を受けた子どもたちを擁護する施設を整えたり、親の更生プログラム制度を作ったりと、税金は有意義に使って欲しい。
子どもにはまだ選挙権がありませんから、子どもに向き合っても得をしないと政治家さんたちは思っているのかもしれませんが、子どもは国の宝です。
また、日本人に多く見受けられる「子どもは親元で育つべき」という思想が、虐待される子どもたちの救出を妨げていることもあるわけです。「時として親から引き離す必要がある」、そんな厳しい判断を下せる社会が求められていることを忘れてはいけません。

母子家庭の年収減少「200万円未満」3分の2超 5年前より低所得化

佐賀新聞 2016年2月21日

佐賀県内の母子家庭の年間平均収入が減少していることが、県の調査で分かった。2013年は「100万~150万円未満」が30・4%と最も多く、5年前の08年に比べ18ポイント増えた。200万円未満でみると3分の2を超える。県は調査結果を踏まえ、新年度から5年間を計画期間とする「第3次ひとり親家庭等自立促進計画」を策定中。資格取得を目的にした講習会開催など、安定した生活を得るための就業支援に力を入れる。
調査は、ひとり親家庭の現状と課題の把握を目的に、14年8月に実施した。仕事や生活、公的制度の認知状況などを聞いた。母子家庭、父子家庭など2千人に調査票を配布し、81・8%に当たる1635人から回答を得た。
母子家庭に所得を尋ねたところ、100万~150万円未満が18ポイント増えたのに対し、「200万~300万円未満」は前回比17・6ポイント減少し19・5%となった。「常時雇用」が11・4ポイント減の32・5%となる一方、「臨時雇用・パート」が8・7ポイント増の48・1%に伸び、逆転した。母子家庭の悩みのトップ(複数回答)は「生活費」(56・7%)だった。
ひとり親家庭を支援する行政サービスは増えている。しかし、制度や事業について「知らない」と回答した事業の中で、3割以上が知らないと答えたものが35件中20件を数えた。就労のための支援事業や資金の貸付制度などが知られておらず、周知不足が課題として浮かび上がった。父子家庭では、児童相談所、一時保育など多くの母子家庭で知られているものでも「知らない」と答える人が多かった。
母子保健福祉課は「ひとり親家庭はパートやアルバイトなど非正規雇用の割合が多いことから、経済情勢の影響を受けやすく、子どもの貧困率にも影響する。国の施策も充実していくと考えられるので、計画もバージョンアップしながら対応していきたい」とする。

教会立てこもり事件から考える犯罪と相談の心理学:困難を抱える本人と家族支援のために

碓井真史  2016年2月19日

教会立てこもり事件
18日夜発生した事件ですが、19日未明特殊部隊が突入し、人質を無事保護、容疑者を逮捕しました。NHKは事件発生前の状況を次のように伝えています。
千葉県佐倉市の教会で、刃物を持った36歳の男がカウンセラーの51歳の女性1人を人質にして立てこもりました~
当時、教会には小田部容疑者の両親とカウンセラーの女性、それに教会関係者の男性の4人がいて、本人を交えてカウンセリングをする予定でしたが、あとから現れた小田部容疑者がカウンセリングが始まってすぐ、突然、リュックサックの中からバットを出して振り回したということです。~
「~以前は家族で暮らしていましたが、暴れるなどして家族を追い出し、最近は1人で暮らしていたようです。~」
出典:教会で立てこもり NHK NEWS WEB 男の身柄確保し逮捕 女性を保護 2月19日 7時14分
キリスト教会には、様々な人がやってきます。カウンセラーのところにも様々な人がやってきます。時には、他の人たちが受け入れがたい人をも受け入れます。
だからこそ、事件事故は防がなければなりません。善意と共に、知識と技術と細心の注意が求められます。今回の事件で何かが大きく欠けていたとは考えにくい状況ですが、それでもトラブルは起きます。人の行動を予測することは、プロでも難しいことです。
事件解決前のネット上のコメントを見ると、「犯人を射殺しろ」といった意見も多数見られましたが、この事件の関係者一同が、事件の平和的解決を願い祈っていたことでしょう。適切な対応によって、人質保護、容疑者逮捕ができたことは良かったと思います。
事件の舞台となってしまった教会は、普通のプロテスタント教会(穏健な福音派)で、ゴスペル教室を開くなど誠実で活発な活動をしてきました。

相談者の暴力
相談を受ける側としては、相談者を加害者にしてしまってはいけませんから、暴力などが発生しないように気をつけます。
たとえば、気の短い人をイラつかせないとか、物を投げられないように机の上には何も置かないとか、酔っている時には相談に応じないなどです。酔っている人は診察できませんなど、規則を口実に帰ってもらうこともあります。
病院や児童相談所などは、複数の慣れている職員がいて対応できますが、それでも精神科医が患者にけとばされる程度のことは日常的にあるでしょう。その程度の暴力を怖がっていては仕事にならない面もあるでしょうし、刑事事件にはなりません。もちろん暴力はないにことた事はありませんが、プロでも完璧はありません。
学校の相談室での暴力はあまり聞きません。教室、保健室、図書室などで、乱暴な行為が見られれば、すぐに複数の先生が来て、必要があれば暴れる生徒を押さえつけ、興奮している場所から離し、別室で落ち着かせます。少し落ち着いたところで、スクールカウンセラーと面談することもあります。酔っていたり、興奮しすぎていると、会話にならないからです。
教会のようなボランティア的な関わりは、規則に縛られず自由にできる素晴らしさがあります。しかしその一方で、規則やルールの名目で相談のわく(時間や場所の規制)を作りにくいことがあるでしょう。たとえば、「酔っている人の人とは面談できないルールです」とか、「次の面談予定が入っているので今日はこれで終わりにしましょう」といったことが言いにくい面はあるでしょう。

どこへ相談に行くか
心や行動の問題を抱えている人がどこへ行くべきかは、ケースバイケースです。精神疾患のために通常の会話ができない状態なら病院でしょう。しかしそうでないなら、カウンセラーや宗教指導者という選択はもちろんあります。
医療機関も様々で、精神病院、総合病院の精神科、心療内科、個人のメンタルクリニックなど、いろいろあります。医療機関によっては、初回は30分ほど話を聞いてくれるところもありますが、毎回カウンセリングというわけにはいきません。基本は薬物療法でしょう。
「ドラマでは、しばしば精神科医がカウンセリング的なことをしていますが、現実では多くの場合、精神科医が毎回1時間患者の話を聞くことはありません。病院の中の臨床心理士がカウンセリングを担当することはあります」(心と行動の問題悩んだ時には、どこに相談したら良いのか:Yahoo!ニュース個人有料)。
相談機関も様々で公立の相談機関、大学の心理相談室、個人のカウンエリングルームなどもあります。そこでは、相談が行われることもあれば、心理療法が行われることもあります。内科や外科の対応よりも、心の問題の対応の方がバラエティーに富んでいます(決定打がないとも言えます)。
キリスト教や仏教などでも、心ある宗教家は人々の様々な相談に応えようとしています。医療でも、プロのカウンセラーでもできないことが、できることもあります。宗教を通して癒されることもあります。多くの場合、必要に応じて治療を受けながら宗教家との面談を続けるでしょう。まともな宗教家は一般的な医学的治療を否定せず活用します。理解のある医療関係者は効果があるなら宗教を活用します。

難しい相談内容、困難な事例
たとえば統合失調症は、本人にとても家族にとっても大変な病気です。しかし、精神科医にとっては典型的な統合失調症は治療しやすい病気です。
不登校といった問題は、不登校を治す薬はありませんが、カウンセラーにとっては数多く見てきたケースであり、適切な対応もしやすいでしょう。
精神的なバランスを崩して大暴れしているようなケースは、もちろんとても大変ですが、ただの傷害事件ではなく精神疾患が絡んでいるならば、法律に基づき「自傷他害の恐れあり」で警察官が保護をし、医療につなげます。
さて、今回の事件では「以前は家族で暮らしていましたが、暴れるなどして家族を追い出し、最近は1人で暮らしていたようです。」と近所の話として報道されています。
日常生活はでき、明白な診断名が付きにくかったり(わからなかたり)、外で問題を起こしていないものの家族内で乱暴を繰り返すケース。これは、どこに相談に行ったら良いのか、家族が困り果て憔悴しきることもあります。
今回のように、子どもが暴れ家族が家を出るようなケースも、珍しくありません。

事件は防げなかったか
今回の事件の詳細は分かりませんが、困り果てた家族が、カウンセラーや教会にようやくたどり着いたのでしょう。この相談をきっかけに、事態が改善される可能性もありました。
今までの報道では、容疑者が家庭外で暴力事件を起こしたとは伝えられていません。家族も、家族以外の人間に暴力的なことをするとは、予想できなかったのかもしれません。
凶器になるものを教会に持っていかなければ、おそらく今回の事件は起きなかったでしょう。しかし、それを事前に予測して荷物をチェックすることは難しかったでしょう。
本人とともにどこかに相談に行く場合は、いかに本人を納得させるかが大切です。力づくはできません。嘘をつくことも望ましくありません。なんとか説得し、納得させて連れて行くことが求められます。家庭訪問する場合も同様です。
それは簡単なことではありません。家族だけに押し付けて良い問題でもありません。子どもと言っても大人になり、親も高齢化しているケースも多くあります。
相談や治療に来たら対応するではなく、本人が冷静な状態で相談を受け入れられるように、家族を支援していく必要があります。家族はしばしば孤立します。プロの援助だけでなく、身近な人々による理解と支援が大切です。

追記
20160219,12:40
続報によると、次のように報道されています。
小田部容疑者は両親とは別居し、教会の近くで1人暮らしをしていた。数年前からカウンセリングを受け、教会の牧師らに面倒を見てもらっていたという。
出典:<佐倉立てこもり>家庭で暴力、教会に相談…数年前から 毎日新聞 2月19日(金)Y!
今回が初めての教会訪問ではなく、教会関係者も事情はわかっていたと思われます。今回は、何か予測不能な突発的なことが起きたのでしょう。
20160219,13:10
教会ではカウンセリングの活動行う
教会の中にはカウンセリングルームがあり、カウンセラーの女性が、家庭や職場などで悩みを持つ人たちの話を聞いてアドバイスする活動をしていたということです。また、カウンセリングには時折、教会の牧師も立ち会ってサポートすることもあったということです。
出典:NHK NEWS WEB 2月19日 12:08
教会は、日常的に準備を整え、相談を受けていました。