「日本死ね!!!」に子供を持つママたちは何を思ったのか

NEWS ポストセブン 2016年2月25日

入学、入園、新年度を控えたこの時期、「保育園落ちた 日本死ね!!!」と題した、はてな匿名ダイアリーへの書き込みが話題を呼んでいる。

《何なんだよ日本。一億総活躍社会じゃねーのかよ。
昨日見事に保育園落ちたわ。
どうすんだよ 私 活躍出来ねーじゃねーか。》
(中略)
不倫したり賄賂受け取ったりウチワ作ってるやつ見繕って国会議員を半分位クビにすりゃ財源作れるだろ。
まじいい加減にしろ日本。》(原文ママ)

情報番組『とくダネ!』(フジテレビ系)では、書き込んだ本人に直撃。投稿者は都内に住む30代前半の女性で、3月で1才になる息子がいるという。育児休暇が終わって働こうとしたら保育園に落ち、「理不尽さを感じて」投稿したという。
激しい言葉が並び、一見すると過激な文章にも読める。でも、これを読んだママたちからは続々と共感の声があがっている。都内に住む35才のA子さんは、息子を認可外保育園に通わせている。
「私も保活、大変でした。息子が生まれる直前にいくつもの園に申し込みをして、やっと決まったのが今の保育園。本当は認可保育園がよかったけど、落ちちゃった。ママ友たちは、出産がわかってすぐに保育園選びをしていたみたいです。私も、区役所に申し込みに行ったら、“もうすぐ生まれるんですか? のんびりしてますね”みたいなことを言われました。でもそれっておかしくないですか?」
保活とは、保育園探し活動のことで、熾烈を極める戦いが繰り広げられる。その背景にあるのは、これまでも繰り返し指摘されている、保育士不足、保育園不足による待機児童問題だ。待機児童の数は2009年以降減少していたが、2015年は前年に比べて増加。そもそも、出生数が減少しているのだから、減少は極めて自然な流れだろう。しかも、政府は2001年、待機児童の数え方に大きなカラクリを用いた。
待機児童の数え方の定義について、それまで「認可保育所に入所申請したのに入れなかった人数」だったものを、「認可外保育園に入っている人数は除いてもいい」とした。
するとどうなったか? 2002年、“本来”なら3万9881人の待機児童の数は、2万5447人に“減少”したのだ。
保活の世界は、完全なる“点数制”だ。希望の保育園に入るためには、点数を多く稼ぐ必要がある。子育て・家族問題に詳しい、作家の石川結貴さんが言う。
「実家が遠い、共働きかどうか、フルタイムかパートか、週に何回働いているか、介護をしなければいけない家族がいるか、他に面倒を見なければいけない幼いきょうだいがいるか、など細かく点数がつきます。高得点であることが大前提ですが、点数だけではかれない事情もあるので、自治体によっては申込書には自由記入欄があって、そこに個々の事情を書き込むことができます」
自由業だったり、収入が少しでも高いと減点され、ハードルは高くなる。育休中でも減点されるのだ。メーカー勤務のB子さん(34才)は、“子供と一緒の時間を多く過ごす”か、“保育園に入れるか”を迫られた。
「うちの会社は、娘を産んで1年間は育休を取ることができました。でも、私が育休中だと保育園に入りにくくなる。育休が明けるのを1年待つと、娘は1才になってしまって、それもまた入りにくくなる。結局、育休を半年繰り上げて、都が認可する認証保育園に入れることができました」

児童虐待の相談件数が多すぎて、職員が悲鳴… 大阪府に「効率化が必要」

産経新聞 2016年2月24日

大阪府の予算や事業をチェックする包括外部監査人は24日、平成27年度の報告書をまとめた。今回は児童虐待の対策関連事業について監査。相談件数が急増して職員の負担が増えていることなどを踏まえ、資料の電子化や情報の共有といった効率化を進める必要があると指摘した。
報告書によると、府内の「子ども家庭センター」(児童相談所)などに寄せられた虐待関連の相談件数は、25年度に1万716件にのぼり、20年度比で2倍以上となっている。
府は職員を増やすなどして対策を強化しているが、相談件数が多いため追いついていない現状を指摘。さらに、業務に関する資料などの大半が紙で保存されており、電子化が不十分なことから職員の負荷も大きいという。
このため、虐待例などの情報を電子化して蓄積した上で分析することの重要性を強調。職員の負担が軽減できるだけでく、重大事案となるケースを統計的に把握できるとしている。
また、電子化によって各市町村や警察、教育委員会などとの情報共有をこれまで以上に深めることで、未然防止などの効果が期待できると分析している。

成犬をしつけ譲渡増目指す 県、児童福祉施設と連携

琉球新報 2016年2月25日

県は犬猫の殺処分を減らす取り組みの一環で4月以降、県内の児童福祉施設と連携して成犬のしつけを行い、譲渡率を上げる取り組みに着手する。県内の犬猫殺処分数は2008年度の約1万頭から14年度には約4200頭まで減少しているが、最終的に殺処分ゼロを目指す。

県議会2月定例会の代表質問で24日、奥平一夫氏(県民ネット)に當間秀史環境部長が答えた。
県動物愛護管理センターに持ち込まれた犬は5日間収容され、殺処分される。同事業はセンターが預かった犬のうち対象とする成犬を別の収容施設に移し、児童福祉施設の子どもたちがトレーナーと共にしつけに関わる機会を設ける。
子犬に比べて成犬は譲渡率が低いため、しつけによって譲渡率を高める。福祉施設の子どもたちにとっても、情緒や社会性を育む効果が見込めるという。
16年度は専門家や関係団体が話し合う場を設け、同事業の仕組みづくりを検討する。県は16年度当初予算案に400万円余を計上しており、17年度以降も継続する。當間部長は「殺処分数ゼロを目指すにはセンターでの引き取り数を減らし、譲渡率を向上させることが課題だ」と述べた。

違いがわかりますか?子どもにさせて良いガマン・悪いガマン

PHPファミリー 2016年2月25日

強い子、あきらめない子にするために 必要な「ガマン」力を育てよう!
ガマンとは、踏ん張る力です。踏ん張るためには、土台が必要です。その土台はまわりの大人との関係から生まれる自己肯定感や信頼、安心感によって築かれます。「自分は大切にされている」とわかれば、子どもは大人の言葉に聞く耳をもち、ガマンできるようになります。でも大人に理不尽なガマンを強いられていると、逆に生きていくために必要な力が育たなくなります。
小さな子どもに必ずガマンさせなければならないケースは、そう多くありません。主に「命や健康に害が及ぶこと」をしようとしたときと、「社会のルールに反する(人に迷惑をかける)こと」をしようとしたときの2つです。
大人の正しいかかわりによって、これらをガマンさせることができれば、やがて子どもは自らの判断で、他のこともガマンできるようになっていくでしょう。

【わるいガマンをさせられていると……】
・無気力になる
子どもは自己主張を受け入れられて初めて、ガマンができるようになります。自分の欲求や思いを聞いてもらえないままガマンを強いられる状態が続くと、子どもは自己主張する意欲がなくなるばかりか、「どうせ聞いてもらえない」と最初からあきらめるようになります。深刻な場合は、「こうしたい」という自分の意思さえもてなくなります。
・人間関係がうまく築けない
「なぜそうしてはいけないのか」という理由を説明されずに一方的にガマンさせられると、子どもの中に善悪の基準ができません。そのため自分の行為によって、まわりの状況がどうなるかや、他人がどんな気持ちになるかなどについて、見通しをもったり想像したりすることができなくなり、人間関係がうまく築けなくなります。
・感情がコントロールできなくなる
いつも理不尽にガマンを強いられ、抑圧されていると、子どもの心の中に抑圧感情や不満が蓄積されていきます。一見大人の言うことを聞くいい子に見えても、いつか、何かをきっかけにその抑圧感情が爆発します。突然キレる、激しく泣きわめく、暴力的になるなど、手のつけられない状態になることもあるのです。

わがままを助長!指示待ちの子に! ダメなガマンのさせ方
大人がかかわり方を間違えると、どんなに「ダメ」と言っても、子どもは言うことを聞かなくなります。少なくとも、次の3つは避けるようにしましょう。
・大人の都合でガマンさせる
あなた自身がイライラしていて、つい何でもかんでも子どもに「ダメ」を連発してしまったり、人から立派なお母さんに見られたくて、いつもは許していることも人前では「ダメ」と言ってしまったり……。こういう経験はありませんか?  親だって人間ですから、気分のいいとき・悪いときはありますし、大人の事情もあります。でも、「あるときは許すけれど、あるときは許さない」とコロコロ対応が変わると、子どもはそれがいいことなのか、悪いことなのかを理解できません。 もちろん、いつもはダメだけれど「今日は特別OKよ」といったメリハリはあっていいのです。でも、その場合も、「どうして今日は特別OKなのか」、その理由がわからなければ、子どもは混乱するだけです。
・威圧的に「ダメ」とガマンさせる
「子どものためだから」「しつけだから」という大人の思い込みで、有無を言わさず「ダメ」と子どもを制するのは考えものです。また、子どもがやりたがらないことを無理にやらせるのもガマンの押しつけです。 子どもは「なぜやってはいけないのか」、または「やらなければならないのか」という理由を理解していないので、何度も同じ行為を繰り返すでしょう。そうなると、毎回ガマンさせなくてはならない大人のほうも大変です。気が弱い子だと、「ダメ」と言われ続けることで、いつも大人の顔を見て行動するようになってしまうこともあります。 それともう1つ、よく考えてほしいのは、子どもに説明できるだけの確固たる理由があるかということです。もし理由が思いつかなければ、それは、今はさせる必要のないガマンです。
・人のせいにしてガマンさせる
「あのおじさんに叱られるよ」「先生が〇〇って言ってたよ」など、あなた自身の思いや願いではなく、第三者の目を気にさせて、子どもにガマンをさせることはありませんか? このような、誰かのせいにしてガマンをさせると、本当にしてはいけないこととして伝わらず、言われなければやっていいということになってしまい、逆効果です。 中には親や先生に叱られるのが嫌でガマンする子もいますが、その子にとっての基準はあくまでも「叱られることの回避」です。ですから叱る人の前ではいい子でいても、その人たちがいない場面ではやりたい放題となり、自己コントロールができるようにはならないでしょう。

ガマンを教えるために大切なこと
ガミガミ叱ったり、命令したりしなくても、ガマンは十分に教えられます。
・まずは子どもの気持ちを受けとめ、わかりやすい言葉で説得する
たとえば、夕方、子どもが公園から帰りたがらなかったら、「ブランコおもしろいものね。いつまでも遊びたいよね」と子どもの気持ちを受けとめ、共感しましょう。その上で「真っ暗になっちゃったら、おうちに帰るときに危ないよね」「ママ、おなかが空いて倒れそう~」など、わかりやすい言葉で帰らなければならない理由を伝えます。 子どもが聞き入れない場合は、時々はとことん遊びに付き合ってみてもよいでしょう。自分の思いを受け入れてくれた人への信頼感が増し、次の時にガマンする力の支えになります。そして、親の提案を受け入れてくれたら、「明るいうちに帰って来られてよかったね」「ママ、ごはんを食べられて嬉しいな。ありがとう」など、子どもがガマンしてよかったと思えるような言葉を添えましょう。この一連のかかわりを積み重ねていけば、自然とガマン力は育っていきます。
・生活の中で大人が見本を見せる
子どもは身近な大人をよく観察しています。普段から大人がガマンしている姿を見せるだけでも、子どもに十分ガマンを教えることができます。たとえば「お菓子を食べたいけれど、夕ごはんがおいしくなくなるからやめておこう」と子どもの前で言ってみましょう。そして夕飯のときに、「ああ、ごはんおいしいな。やっぱりお菓子を食べなくてよかった」とまた言葉にしてください。 もちろん「昨日の夜遅く食べちゃったから、朝、おなかが痛くなっちゃった」という失敗体験も隠さず見せていきましょう。子どもはあなたを見て、「こうするとこうなる」という見通しをもてるようになります。自分が同じ立場になったときに、身近な大人の姿を思い出して、ガマンにつなげていくこともできるようになるのです。
・子どものタイプに合った言い聞かせ方をしよう
自己主張が強い子には、抱っこして「そんなに泣かなくても、ママわかるよ」と落ち着かせてから、「でもね。○○だからガマンしようね」とやさしく説得しましょう。一方、あまり自己主張せず、ガマンしてしまう子には、「○○ちゃんは、どうしたいのかな? ママに教えて」とまず自分の思いを表現させます。言う通りにしてやれないときは「△△は無理だけど、○○ならできるよ、どうする?」と、相談しながら折り合いをつけていくといいでしょう。

「ホームレス」を生み出さない社会を目指して

ニューズウィーク日本版 2016年2月25日

対症療法でなく問題を根本から解決する
「ホームレス」というと、多くの人が自分とは関係のないこと、他人事だと考えるのではないでしょうか。
でも失業したり、病気やけがで働けなくなると、貯金を取り崩すことになり、家族や住まいにまで影響が及びます。結果として居場所を失い、路上生活に追い込まれる人は意外に多いのです。ホームレス状態は誰にとっても無縁ではなく、どんな人でもなり得るということです。

生命の危険にさらされる過酷な路上生活
ホームレスの人の多くは収入を得るため、廃品回収の仕事をしています。大阪の相場では、アルミ缶は1kgあたり80~130円、段ボールは1kgあたり8~10円で業者に買い取ってもらい、1日平均800~1000円の収入を得ます。
【参考記事】日本の貧困は「オシャレで携帯も持っている」から見えにくい
栄養状態、衛生状態は悪く、過酷な路上生活で凍死や餓死、自殺をする人もいます。また、心ない人からいたずらされたり、場合によると命の危機にさらされるような襲撃を受けることもあります。
寒さや恐怖を取り除くためにお酒を飲み、昼間に仮眠を取ったりもするので、そうした姿を見て「怠け者だ」「ホームレスになるのは自業自得だ」という誤解を持つ人も少なくありません。しかし、こんな過酷な生活ですから、誰も好き好んで路上生活を始めるわけではないのです。
一方で、一度ホームレスになってしまうと、なかなか抜け出すことができません。住所がないので就職活動は困難を極めます。生活保護を受ければ居宅生活はできるものの、負い目や孤独感から3割近くの人が再び路上生活へ戻ってしまいます。身体的・知的・精神的障がいを抱える人、過酷な路上生活で障がいをより深刻化させる人、障がい者手帳を取得できるかどうかのボーダーラインにいる人など、自分で助けを求めることができない人も多くいます。
【参考記事】世界人口の半分と同じ富が62人の富豪に集中

「出口作り」「入口封じ」「啓発」の3本柱
私が理事長を務めるNPO法人「Homedoor(ホームドア)」では「ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造を作る」というビジョンを掲げて、大きく3つの支援を行っています。
①出口作り
②入口封じ
③啓発活動
①の出口作りというのは、ホームレス状態から脱出したいと思った人に就労支援をすることです。例えばホームレスの人々が修理した自転車を一般にレンタルするシェアサイクルシステム「HUBchari(ハブチャリ)」、寄付された不要なビニール傘をホームレスの方や生活保護受給者がリメイクして販売する「HUBgasa(ハブガサ)」といった事業を通じて、中間的就労の場を用意しています。
HUBchariで提供する自転車を修理するための講習も開催。技能に長けたホームレスの人が指導する。
②の入口封じというのはホームレス状態になりたくないと望んだら、ならずに済むようにするための生活支援です。具体的には食事や仮眠、洗濯などができるオープンスペース「アンドハウス」(大阪市北区)の運営、社会的孤立を抱えていたり就労意欲や自尊心が低下していたりする人を対象に、生活支援から就労支援までを提供するプログラム「CHANGE」、大阪市北区にてホームレス状態にある人々への夜回り活動を行う「ホムパト」がこれに当たります。
③の啓発活動はホームレスの人々への偏見をなくし、襲撃事件を根絶するための取り組みです。日本で最もホームレスの人々が多いといわれる釜ヶ崎(あいりん地区)とその周辺で、炊き出しへの参加やワークショップを通して日本の貧困問題を考える「釜Meets」、ホームレス・生活保護受給者への偏見を解消する中高大学生向けの講演やワークショップ、一般社団法人「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」の事務局運営などを手掛けています。

大阪市・梅田駅近くにあるアンドハウス。2階建てビルを借り上げ、ホームレスの人のニーズに応える機能を備えた。
どうしたら自尊心を傷つけることなくホームレスの人たちを手助けできるか
私がホームレス問題に出会ったのは14歳のときです。中学時代、通学電車の窓からあいりん地区が見えて、ホームレスの人の多さに驚いたのが最初ですね。親や友人は「あのあたりは危ない」というけれども、その根拠のない思い込み、ホームレスの人々への偏見に違和感を感じました。
実際のところどうなんだろうと炊き出しに参加して、こんなにも日本にホームレスの人がいたのかと、がく然としました。炊き出しの始まる3時間くらい前から300~400人の人がうつむきがちに行列をなしていて、広い公園をぐるりと1周するほど。そのとき配ったおにぎりは500~600個だったと思いますけど、あっという間になくなってしまった。
それまで見たことのない異様な光景に圧倒されると同時に、何も考えず参加してしまった浅はかさを恥じる思いもありました。いいことをしているつもりで行ったけれども、ホームレスの方々にしたら孫のような年齢の私から命綱であるおにぎりを渡される、その悔しさやつらさにまで気が回りませんでした。

ホムパト活動の様子。段ボールで囲ったスペースで休むホームレスの人に食事を差し入れている。
どうしたら自尊心を傷つけることなく皆さんを手助けできるだろうと考えて、そこからホームレスについて自分なりに調べていったんです。すると、大阪市内だけでひどいときは年間213人も路上で凍死や餓死しているという。また、ホームレスの人は貧困家庭に育って、勉強したくてもできない環境にあった人が多いんですね。「もっと勉強していたらいい生活が送れたんじゃないか」「路上生活をしているのは自業自得じゃないか」という思いも少しあったのですが、それも偏見だったと気づかされました。家庭環境が複雑な人、児童養護施設や一人親世帯で育った人も多くて、そういう人は頼れる人が世間にいないから、いったん失業したらホームレス状態になりやすいということも知りました。*

ホームレス襲撃を防ぐため同世代への啓発に励むが…
しかも、ホームレスの人の多くは、土木や建設業など危険できつい日雇い労働に従事していた経験を持っています。危険な仕事は誰かがやらなきゃいけないけど、会社側は労災補償のリスクを恐れて非正規雇用になりがちなんですね。自分の生活はそういう人たちの労働の犠牲の上で成り立っている部分もあると、その時初めて社会の構造のゆがみにも気づかされました。
もう1つ、自分と同世代の中高生がホームレスの人を襲撃する事件が相次いで起きたことにもショックを受けました。寝ている人の眼球をナイフで刺したり、格闘ゲームの技をかけ続けて殺してしまったり。しかも犯人の少年には「ホームレスは社会のごみだ。俺たちはごみ掃除をしただけだ」といった供述が残っていたりするんです。
こうした事実を知らなかったということは、ホームレスの人たちに関心がなかったということだし、自分の中に少年たちと同じような差別意識が潜んでいたことを突き付けられたようで無性に恥ずかしくなりました。でも、私は問題を知る機会があったので、ホームレスの人に対する偏見をなくすことができた。それで友だちや同世代にもホームレス問題を知ってもらおうと、具体的な取り組みを始めたわけです。
中学・高校の全校集会のスピーチや新聞の発行といった場を通じて、ホームレスは社会のひずみが生む現象であること、路上生活者がいかに過酷な環境に置かれているかなどを訴えました。でも、みんなには届かなくて「そうはいっても自業自得やん」と言い返されてしまう。ことの本質をうまく伝えきれないもどかしさをずっと抱えていました。
釜Meetsの一コマ。NPO法人「炊き出し志絆会」の炊き出しにも参加している。

パワフルな海外ボランティアに触発されて
転機が訪れたのは高校2年のとき。ホームレス問題についての活動を認められてボランティア・スピリット賞(アワード)を受賞し、米国ボランティア親善大使に選ばれたんです。それまでは自分の活動に自信がなかったのですが、そこで初めて認められたという手応えをつかめた感じですね。
ワシントンD.C.の表彰式では各国の親善大使と交流できましたが、みんなの活動のパワフルさに圧倒されました。同世代の子が1,000万円くらい寄付金を集めていたり、企業を巻き込んで商品パッケージにボランティアの広告を載せてもらったりしている。
同世代でもここまでできるんだと感嘆しつつ、改めてわが身を振り返って、私が本当にやりたかったのはホームレス問題の根本的な解決なんだと思い至りました。それまで私がしていた啓発や炊き出し参加などのボランティアはホームレス状態を改善するだけの対症療法的なものです。もちろんそれはそれで意味のあるものだけれども、私がしたいことは日本の社会構造をホームレス状態を生み出さないものにしたいという、ホームレス問題の根本的な解決です。Homedoorのビジョンが固まったのはこのあたりでしたね。
その後、ホームレス問題の研究が進む大阪市立大学に進学し、2年生のときにHomedoorを立ち上げたというわけです。
自己完結的に小ぢんまりと終わってしまいそうだった活動を転換して、企業や地域と連携して実行性の高い活動へ発展させることができた。世界のボランティア活動家と交流できたことで得られた成果は大きかったです。

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(2015.6.23 大阪・コクヨ梅田オフィスにて取材)
※インタビュー後編は2月26日に掲載予定です。
NPO法人「Homedoor(ホームドア)」は「ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造を作る」ことをビジョンに掲げ、野宿生活者(ホームレス)をはじめとする生活困窮者への就労支援・生活支援、ホームレス化予防事業、ホームレス・生活保護問題に関する啓蒙活動などに取り組んでいる。拠点は大阪市北区。2010年4月設立。http://www.homedoor.org
* 川口氏によれば、日本の労働人口に占める日雇い労働者の割合は1.7%程度だが、ホームレスの人で日雇い労働の経験を持つ人は4分の1に上る。また、ホームレスの人には非正規雇用者も多く、条件の悪い仕事が社会的弱者に押し付けられている状況だと指摘する。