児童養護施設で暮らせる期間 22歳まで延長へ

NHKニュース 2016年2月26日

虐待などのため親元を離れた子どもたちが暮らす児童養護施設について、厚生労働省は、原則18歳までとされている施設で暮らせる期間を22歳まで延長し、支援を強化する方針を固めました。

虐待や経済的な事情で児童養護施設で暮らす子どもたちは、18歳になると原則、施設を出て自立しなければなりません。
しかし、福祉の専門家などで作る厚生労働省の委員会では、進学を諦めたり転職を繰り返したりして生活に困窮するケースもあり、継続した支援が必要だと指摘されていました。
このため厚生労働省は、原則18歳までとされている施設で暮らせる期間を22歳まで延長し、支援を強化する方針を固めました。
合わせて、大学などへ進学し施設を退所する子どもには最大で4年間、家賃や生活費を実質的に支給する制度を新たに設けるほか、施設を退所した子どもたちが低料金で暮らせる自立援助ホームについても、退所年齢を20歳から22歳に引き上げることにしています。
厚生労働省は近く専門家の委員会で、こうした対策を取りまとめることにしています。

児童養護施設の子供、親同意なくても予防接種

読売新聞 2016年2月23日

児童養護施設の子供たちへの定期接種について、厚生労働省は4月以降、保護者の同意が取れない場合でも施設側の判断で円滑に接種を行えるよう、省令を改正する。
養護施設は、子供たちの入所の際、保護者から予防接種について同意を得ることを原則としてきた。しかし、児童虐待などが原因で子供を保護した場合や、保護者が精神的な疾患を抱えている場合など、同意が取れず、裁判所に親権停止を申し立てるなどの対応が必要で、接種までに時間がかかるケースがあった。
京都府では2013年、女子中学生が予防接種を受ける際、保護者に繰り返し連絡したが、結局、京都家裁に保護者の親権停止を申し立てた。申し立ての準備から実際の接種までに約1年かかった。
島根県でも、保護者が面会を拒否したり、留守がちで連絡を取るのに苦労したりするケースが近年3件あった。
国が昨年、地方分権改革への提案を募った際、両府県を中心に、「速やかに接種を行うための法的な後ろ盾が必要」との声が上がっていた。
保護者が行方不明や入院中などで、連絡自体が不可能な場合については、同省が昨年12月、施設長の権限で予防接種ができるという通知を出している。

元児童養護施設職員が開いたカフェ 児童福祉の便利屋めざす

福祉新聞 2016年2月26日

ドンドン! お昼過ぎ、準備中の札が下がったカフェの扉をたたく音がする。扉の向こうではランドセルを背負った小学1年生2人が、にこにこしながら店内をのぞいていた。「おかえり」と店長の武石由貴子さんは声を掛けにいく−。
東京都世田谷区の世田谷代田駅からすぐのカフェ「シモキタトナリ」でおなじみの光景だ。一見普通のカフェだが、実はちょっと違う点は、オープンさせたのが元児童養護施設職員たちだということ。2015年5月設立の一般社団法人「SHOEHORN」(シューホーン)代表の武石和成さん(32)が施設の子どもや退所者、職員らの役に立ちたいと同年6月に開いた。武石夫妻の他に3人のスタッフがいる。
営利の事業として、福祉活動の場になるカフェの運営と店頭で野菜の販売を行う。地域の親子連れや仕事帰りのサラリーマンらがよく訪れるという。
福祉関連の活動は、例えばカフェの準備中に、地域の不登校気味の子どもに勉強を教えている。また、アルバイトで失敗し、自信をなくした児童養護施設の子どもに次の就職へのステップになるよう、カフェを職場体験の場として使ってきた。
事業の委託や助成金は受けていない分、自由に子どものニーズに合わせて支援を提供できる。カフェの売り上げは人件費や運営費を賄うので精いっぱいのため、福祉活動はボランティア。ケースによるが、利用者には飲み物などの注文をお願いし、間接的に利益を得ている。
和成さんが思い描くのは、このカフェが例えば▽多忙な施設職員の手が届きにくい、不登校になった入所児童の日中過ごす場▽施設を退所した人がふらりと寄れる場−などになること。
和成さんは児童養護施設で働いていた際、退所した子どもが路上生活に陥るケースに直面。衣食住の確保のほかに“話を聞いてくれる存在”が求められていると気付き、それに専念するためにこのカフェを立ち上げた。
また、利用する子どもが「自分はできる」と感じる体験を提供したいという。具体的には、ポップづくりに興味のある子が来れば制作を任せ、「おかげさまで売れたよ」などと声を掛ける〝協働〟に取り組んできた。
和成さんは「施設職員は子どもにしてあげたいことのアイデアを持っていても、時間やルールの制限で、できないことがある。私が児童福祉職員の便利屋さんになって実現したい。職員のように濃密ではないが、子どもと細く長くつながる場をつくりたい」と願う。