すべての子どもに温かな家庭を―児童福祉法改正に向けネットで署名呼びかけ

政治山 2016年3月4日

虐待などを受けて、親と一緒に暮らせない子どもたちが養子縁組や里親の元で温かく育つための制度作りを求める署名活動がchange.orgのサイトで行われています。
保育所などを運営するNPO法人の代表や各界で活躍する著名人らが呼びかけて、【すべての子どもがあたたかい家庭で育つ社会へ!児童福祉法の「抜本的」改正を応援しよう!】というタイトルで、広く署名を募集しています。氏名などを入力し、賛同ボタンをクリックするだけなので、署名は数十秒で完了します。
以前、「虐待死を防げ!赤ちゃん縁組立ち上げへ寄付呼びかけ―NPO法人フローレンス」でも記しましたが、日本では2週間に1人、生まれたばかりの赤ちゃんが亡くなっています。また子どもの虐待死は5日に1人と言われます。
虐待防止などのため親子分離した後、親と暮らせない子どもの数は3万7,000人に上り、うち8割以上が施設で暮らしています。乳児院や児童養護施設などで働く保育士は人手が足りないため、子どもへの処遇も低くなってしまいます。東京では保育士の有効求人倍率が6倍を超え、圧倒的な人材難と薄給に対し早急な政策対応が必要であるとして国会でも議論が続いています。
こうした現状を憂慮した塩崎恭久厚労相が昨年、児童福祉法の「抜本的見直し」を指示して、同法改正議論が社会保障審議会(新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会)で始まりました。署名活動では、この議論を後押しすべく、下記の要望を署名簿と共に提出する予定です。
すべての子どもが健やかにあたたかい家庭で育つことができるよう、今国会の改正児童福祉法に(1)乳幼児は原則として家庭養護(特定の大人から愛情と保護を受けられる家庭環境で養育する)、(2)特別養子縁組の推進(子どもに永続的な家庭を保障する)を明記することを要望します。

「189」かけやすく=虐待相談ダイヤル、春に見直し―塩崎厚労相

時事通信 2016年3月4日

塩崎恭久厚生労働相は4日の閣議後の記者会見で、児童虐待に関する電話相談ダイヤル「189(イチ・ハヤ・ク)」について、ガイダンス音声が長いため途中で切ってしまう人が多いとして「(音声の)時間を半分以下にするなどの見直しを春から実施する」と述べた。
ダイヤルは昨年7月に、年中無休、24時間体制で開設。全国共通の3桁の電話番号にかけ、ガイダンスに従って操作すれば最寄りの児童相談所につながるようにした。

「ふつうの家族」じゃないとダメ? 誰もが「2分の1成人式」に悩まずに済む世の中に

大塚玲子   2016年3月5日

定形外家族に「あるある」な定番の悩み
最近いろんなところで話題になったのでご存じの方も多いと思いますが、昨今小学校で「2分の1成人式」というイベントが広まっています。成人の半分=10歳、つまり小学校4年生のとき、児童と保護者が体育館などに集まって、2分の1の成人を祝う、というものです。多くの場合、年明けの1~3月に行われます。
一見楽しげな催しですが、このイベントのため学校が子どもたちに、生まれたときや小さいときの写真を家から持ってくる、当時のエピソードを親から聞いてくる、などの指示を出すことが多かったため、さまざまな家庭環境、生育環境の子どもに対する配慮がないという点で、批判の声があがってきました。
とくにこの1年ほど、Yahoo!個人でもおなじみの内田良先生がこの問題を取り上げていることから、世間でも関心が高まっています。
このように「2分の1成人式」の問題が世に知られてきたことを、筆者はありがたく感じています。
筆者は編集者・ライターとして、ひとり親家庭、ステップファミリー(再婚家庭)、LGBT家族、里親・養親家族などなど、さまざまな形の家族の取材をしてきましたが、実際、それらの家族から共通して聞く「あるある」な悩みのひとつが、この「2分の1成人式」だったからです。
再婚家庭の継母や継父、里親や養親など、子どもの生育の途中から育児にかかわった親は、子どもの小さいころの写真やエピソードを求められても応えようがなく、辛く感じることがあります。
また対外的に「ふつうの家族」として暮らしている場合、このイベントによって真実が周囲に知れてしまうのを恐れる人もいます。
一方では離婚家庭など、子どもの幼少期(の家族の状況)を思い出すのを辛く感じる親もいますし、周囲の「ふつうの家庭」の子どもたちとわが子の違いに、引け目を感じてしまう場合もあります。

いろんな形の家族が、当たり前に受け入れられる社会に
だったら、そんな家庭環境や生育環境に踏み込むような内容はやめれば済むじゃないか、と思われるかもしれません。
確かにその通りなのですが、ただ、それ「だけ」で終わりにするのも、違うと思うのです。
筆者が理想と思うのは、どんな家庭の子どもも親も、自分の家族の形に引け目をもたず、オープンにできるような社会です。
「お父さんと2人で暮らしています」
「おばあちゃんと、いとこのTちゃんと、3人で暮らしています」
「お母さんと、そのパートナーのSちゃんと、その子どものRちゃんと暮らしています。お父さんは別のところに住んでいます」
「お母さんが2人います」
「里親のパパとママと暮らしています」
「児童養護施設で、みんないっしょに暮らしています」
等々、それぞれの家族や環境を、誰もが隠すことなく、当たり前のものとして人に話せる社会になったら一番いいな、と思うのです。
しかし残念ながら、現実はまだまだ、そういう状況ではありません。
学校や社会は、「お父さん、お母さん、血のつながった子ども」という、いわゆる「ふつうの家族」を前提とすることが多く、それ以外の形の家族は「かわいそうな、変わったおうち」とみなされがちです。
そのような状況で、自分の子どもが「変わったおうちの子ども」であることを、わざわざ明かしたいと思う人は、あまり多くはないでしょう。学校のイベントで、そういったプライベートな情報を半ば強制的に開示させるのは暴力的なことと思います。
ですから現時点では、こういった内容はやめたほうがよいと筆者も思うのですが、それと同時に、これからは徐々に「いろんな形の家族が、実際にいるんだ」ということを社会で可視化し、それが当たり前に受け入れられる世の中にしていくことも必要と思います。
そのために、微力ながら情報を発信していけたらと思っています。