虐待児童、支援手厚く…施設入所18歳以降も 児相「介入」に重点化

産経新聞 2016年3月11日

児童虐待対策や社会的養護に関する厚生労働省の専門委員会は10日、児童福祉法(児福法)の対象年齢を現行の「18歳未満」にとどめる一方、支援は「少なくとも22歳まで必要」とする報告書をまとめた。児童養護施設の入所者は原則18歳で退所する必要があったが、22歳までの入居継続を可能とした。また、新たに児童相談所(児相)の設置自治体を拡充させ、児相の業務を一時保護など強制措置の伴う「介入」に重点化させる方向性を示した。
児童虐待の影響で自立が難しい子供を少しでも長く保護するほか、虐待に対応する拠点を増やし、重大事案を防ぐ体制を作る。厚労省は今国会で児福法改正案を提出し、平成29年度の施行を目指す。
現在の児福法は「児童」の定義を17歳までと規定しているが、民法の規定で、未成年者は住居の契約ができないなどの問題が指摘されていた。一方、民法の成人年齢を「18歳」とする法改正の動きを踏まえ、報告書では児童の定義を変えず、18歳以降も支援を継続できるようにした。
子供を一時保護する機能は児相が、親子への支援は自治体が担当するなど、役割を分担することが望ましいと指摘。周辺住民からの虐待通告への対応に追われる児相の負担を軽減し、子育て家庭からの相談や継続的な見守りなどを市町村が担うこととした。
さらに都道府県と政令市にのみ設置が義務付けられている児相を、東京23区でも設置できるよう認め、設置が進んでいない人口20万人以上の中核市にも促す。

虐待児童、支援手厚く 自立準備に余裕「一定の前進」

産経新聞 2016年3月11日

「進学を含めた選択肢も増え、自立に向けた準備期間に余裕ができる。入所者が抱える重圧も減る」
都内の児童養護施設に勤務する児童指導員の男性(23)は報告書を「一定の前進」ととらえる。
幼少期に両親が離婚。母は兄と妹ばかりをかわいがり、男性だけ別の部屋で寝かされるなど育児放棄を受けた。小学6年生で児童養護施設に入所。「『ここがあなたの家だよ』といわれ、初めて人に認められた気がした」。同じ境遇の子供を救おうと、施設職員になることを決意した。
18歳で退所後、施設出身者の学費が一部免除される山口県の大学に進学。授業後はアルバイトを掛け持ちし、明け方まで働きながら学費を支払った。現在は都内の施設で働く。
「施設には退所年齢を間近に控え、就職や進学が決まらず、金銭管理ができないままの入所者もいる。そうした入所者にとっては、保護年齢引き上げは必要だ」。男性はこう訴える。
居場所を失った子供を受け入れる社会福祉法人「カリヨン子どもセンター」(東京)の石井花梨(かりん)事務局長(33)は「ケアが必要な若者を、一般家庭の若者と同じスタートラインに立ってもらうための環境作りが急務だ」と話した。

22歳まで養護施設OK=児童虐待防止の強化策―厚労省

時事通信 2016年3月10日

厚生労働省は10日、児童虐待防止の強化策をまとめた。
虐待を受けた子どもが児童養護施設で暮らせる年齢を、現行の「18歳未満」から「22歳になった年の年度末まで」に引き上げることなどが柱。社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の委員会に示し、大筋で了承された。
施設の入所期限について、現行制度は18歳未満を原則とし、大学進学などの場合には20歳未満まで延長することを認めている。しかし、未成年者は保護者の同意がないとアパートなどの契約ができず、延長しても20歳になった時点で施設から出なければならないといった事態が生じるため、見直しを検討していた。