先進国で最悪水準「子どもの貧困」~ひとりの男の子と統計データが示す厳しい現実

現代ビジネス 2016年5月22日

近年、奨学金の充実化やひとり親家庭への児童扶養手当の充実化をはじめ、家庭の状況によらず子どもたちの権利を社会で保障する動きが少しずつ増えてきています。そんな中でも、「今までやってこなかった本人の責任」という言葉や、「どうせ支援したって無駄なことにお金使われる」という声をいまだに聞くことがあります。
私はこれまで300人近くの、虐待や貧困などで頼れる親や大人が少ない子どもたちを支援してきましたが、その中で意図して悪い方向に行く人は見たことがありません。自分の生い立ち以上に、必死に生きている子どもたちばかりで、いつも自分がいかにのんきに生きてきたか、恥ずかしくなるほどです。
私がいまの活動をはじめるきっかけにもなったひとりの男の子がいます。これは、NPO法人3keysを立ち上げる前、虐待や育児放棄などで親と暮らせない子どもたちがいるクラス児童養護施設(以下、施設)に、個人でボランティアをしていたころの話です――。

学校嫌いは、ただ単に悲観的だからではなかった
私がはじめて彼に会ったとき、彼はすでに学校や勉強への意欲はほとんど残っていない状況でした。その学力は小学校1~2年生レベルですら抜け漏れが多い状況でした。中学校の数学をやろうにも、教科書で公式を見ても小学生のころの四則演算がうまく解けないので人の何倍もかかってしまう……。
そもそも勉強の習慣がないため、長時間、机に座っていることに慣れていない。誰かに勉強を教わったこともほとんどないので、勉強を教えてもらうこと自体がなんだか気持ち悪い。そんな状況でした。5分ほどしたら、顔を伏せて寝てしまいました。おそらく学校でも同じような感じだったのかもしれません。
中学生のときに育児放棄で保護され、施設に入所した彼はひとり親家庭で育ちました。母親は彼を含めた2人の子どもを育てるために朝から晩まで働いていました。
父親のことはよくわからず、まだ家庭にいたときも連絡すら取れない様子だったのでおそらく養育費をもらえなかったのだと思います。子育てと長時間労働を両立させるのは困難なため、母親はパートや夜の仕事をかけもちしながらなんとか生活している状況だったそうです。
幼いころから保育園や小学校にかけて、集団の中の一人として育ち、彼のちいさな成長や、ちいさなつまずきに気づいてくれたり、常に気にかけてくれたりする人はいませんでした。
絵本を読んでもらったり、スーパーに買い物に行って野菜や果物や食べ物のルーツについて親から教えてもらったり、小さな成長をほめてもらったり、学校での悩みに寄り添ってもらったり――彼にそんな経験はなく、自分の未熟な力で見えない壁を乗り越えていくほかありませんでした。
私が会ったとき、彼は中学生で思春期ということもありましたが、子どもらしく大人に甘えたり、頼ったりする姿勢は同世代の子どもたちに比べても全くなく、とても達観していて、小さな大人のようにも見えました。
それでも、まわりの友達と同じ授業を受けているのに「何で自分は解けないんだろう」という疑問が常にあったようです。小学生のころから、自分はまわりよりも長い文章が読めず、ひらがなやカタカナを覚えるのが遅いのを感じていました。
長文に出てくるいろんなシチュエーションがすぐに理解できないこともたびたび。「自分は頭が悪い。勉強に向いてない」――そう思うまでに時間は長くかからず、小学校3年生のとき、学校にいるのが苦痛で仕方なくなりました。
そんな状況が3年間も続けば、不思議ではありません。すでに小学校低学年のときには、家で本を読んでもらったり、習い事をしたり、わからないことを家や塾で教えてもらったりしている友達との大きな差を実感したのでした。
私に向かって彼はいつも「どうせ俺は勉強ができないから教えても無駄だよ」「俺はサッカーをして食っていくんだ」と言っていました。小さいころから親が出かけるときは父が好きだったというサッカー番組を録画したビデオを母親が見せてくれていたこともあり、サッカーが好きだったようです。ひとりでよくサッカーボールで遊んでいたし、クラスでも得意な方でした。
しかし、そんなサッカーでも、放課後にサッカー教室に通っている部活の友達と少しずつ差が開いてきている状況も感じていました。交通費がなくて練習試合等にいけないことも続き、部活でも孤立しつつありました。
口ではサッカーで食っていくと言っていた一方で、その表情からはすでに厳しい現実を悟っていることが伝わってきました――。

データで見る子どもの貧困と虐待
私が出会った彼が決して特殊なわけではありません。日本のひとり親世帯の貧困率は世界的にみても先進国の中で最悪の水準となっています。
データ1:ひとり親世帯の子供の貧困率
ひとり親世帯の貧困を語るとき、働かないことへの批判も少ないのですが、実は日本のひとり親家庭の就業率は8割と非常に高いものとなっています。
データ2:ひとり親家庭の就業状況
一方で、養育費をもらい続けている割合は2割と世界的に見ても非常に少ない状況です。
データ3:母子世帯の養育費の受給状況
すなわち、日本のひとり親家庭における貧困の特徴として、経済的な面も子育ての面もひとりで背負っていることから、子どもと過ごす時間を確保することが難しい状況にあります。
データ4:世帯別1日に子どもと過ごす時間
日本のひとり親家庭における貧困の特徴として、経済的な面も子育ての面もひとりで背負っていることから、子どもと過ごす時間を確保することが難しく、虐待や育児放棄につながりやすいという現状があります。
またスキルアップや趣味などに割く時間が少ないことからも、貧困や虐待等の負のスパイラルから抜け出しづらい現状もあります。
データ5:児童虐待件数の推移
そんな中、児童虐待の対応件数は毎年最高値を記録しており、その背景には親の孤立や貧困等の問題が垣間見れます。

寝不足園児「増えた」8割 静岡県内100園アンケート

@S[アットエス] by 静岡新聞 2016年5月22日

静岡新聞社が静岡県内の保育園と認定こども園など計100園(回答93園)を対象にこのほど実施した園児の睡眠に関するアンケートで、睡眠不足と推定される園児について、保護者世代が子どもだった約30年前と比べて「増えた」と回答した園は8割を超えた。
睡眠不足と推定される園児の割合は「園全体で1割以下」が40%と最も多いものの、「1割」は33%、「2割」が22%と続いた。ごく少数だが、「3割」が3%、「4割以上」も2%だった。
睡眠不足が園児に与える影響は98%が「ある」と答えた。具体的には「話を聞こうとしない」「1人だけ床でごろごろしている」といった気力不足、「キレやすい」「友達への八つ当たり」といった攻撃性、集中力不足による「けがをしがち」など各園が挙げた行動パターンは似ていた。
寝坊して朝食を十分食べられなかったり、朝食を抜いたりして登園する園児もいるという。結果、午前10時ごろから、体を動かす遊びなどを皆で行う「主活動」に体調のピークを合わせられず、「集団生活になじみにくい」という指摘は少なくなかった。
夜10時以降に園児を寝かせていると推定される保護者の割合は、「園全体の1割」が39%と最も多く、「2割」が31%と続いた。
アンケート対象は県内の人口10万人以上の10市から任意で抽出し、園長や主任保育士らから回答を得た。

成長段階踏みにくい
後藤弘明県保育所連合会長(富士保育園長)の話 0~1歳児は、泣くと大人が反応してくれることで、信頼関係を築く。2歳は少し我慢ができるようになって友達ができる。自発性を育む年長にもなれば、未知の物事に挑戦する意欲を持つ。保育現場はこうした成長の順序を意識している。睡眠不足で気力、体力が万全でないと、意欲が育たず、成長の次の段階を踏みにくくなる。

児童福祉施設職員を懲戒免職 千葉

産経新聞 2016年5月21日

県は20日、生活指導などを担当した当時17歳の少女に昨年11月にみだらな行為をしたとして、児童福祉法違反容疑で先月県警に逮捕された、児童福祉施設「県生実学校」(千葉市中央区)児童自立支援専門員の男性職員(35)を懲戒免職処分とした。
県などによると、八日市場簡易裁判所は先月26日に県青少年健全育成条例違反罪で元職員に罰金50万円の略式命令を出し、元職員は即日納付した。

ネット上で「無関係」なのに正義感振り回す人たち…「みんな俺と同じ」と思い込み集中攻撃

Business Journal 2016年5月23日

インターネット上で起きる“炎上”は、「自分の意見は正しい!」と思い込んだ少数の人たちが、同じ意見を何度も書き込むことで引き起こしている――。
当連載前回記事では、『ネット炎上の研究』(勁草書房/田中辰雄・山口真一著)の共著者で国際大学グローバル・コミュニケーション・センター助教の山口真一氏に話を聞き、そんなネット炎上の実態をお伝えした。
では、本書の調査で浮び上がった「子持ちで年収高めの男性が炎上に加担している」というのは、どういうことなのか。山口氏の話は続く。

なぜツイッターで正義感を振りかざす人が続出するのか
–本書内のアンケート結果で、炎上参加者に多い傾向として「子持ちで年収高めの男性」とあります。「男性」はわかるのですが、「子持ち」と「年収が高い」は意外ですね。
山口真一氏(以下、山口) 「年収が高い」については、よく「なぜですか?」と聞かれるのですが、個人的には「頭を良く見せたい型」の人が多いのかなと思います。
「頭を良く見せたい」という願望があり、また政治などの主義主張がはっきりしている。そんな人の多くは、いわゆる知識階級であり、収入が多くなるのだと思います。
「子持ち」については、例えば「保育園落ちた日本死ね!!!」のような話題に敏感に反応するのは、やはり子持ちの人のほうが多いのでしょう。
–「子持ちで年収が高め」が意外に感じるのは、イメージと違うからです。これまで、炎上参加者といえば「非正規雇用あるいは無職などで年収は低く、リアルのコミュニケーション能力が乏しいため友達も恋人もおらず、鬱憤をネットの世界で晴らしている……」という、かなり悲惨なイメージが共有されてきました。そもそも、なぜそんなイメージができ上がってしまったのでしょうか。
山口 「自分たちとは違う人たち」と思いたかったのではないでしょうか。「人生の負け組が、ネットで鬱憤を晴らしている」という固定観念は、少なからずあったと思います。
「炎上に加担しているのは、自分とは違う人たちだ」というのは、炎上に参加しない人にしてみれば受け入れやすいですよね。でも、実際はそうではない。その点が重要だと思います。
–ツイッターで嫌だなと思うのが、「聞かれたことには必ず答えないといけない」という雰囲気です。特に一般人から有名人に対してですが、スキャンダルや不用意な発言で炎上の渦中にいる人に対して、当事者とすれば答えにくい質問をたくさん投げかけて、「今すぐに答えてくださいよ!」「なんで答えないんですか!」と妙に高圧的な態度で詰問する人を見かけます。しかも、その人から直接的な被害を受けているのならまだしも、全然関係ない人が詰問していたりするんですよね。
山口 そうなんです。ポイントは「全然関係ない少数の人が、正義感から暴れ回っている」ということです。震災もそうですが、被害に遭われた方がいて、その人たちは全然別のことを考えているのかもしれないのに、外野が勝手に「あの人たちがかわいそうだ! 政府やマスコミはダメだ!」とものすごく批判するじゃないですか。その正義感が恐ろしいですね。

10%が「ネット上なら強い口調で非難してもいい」と回答
–そういった「正義感に燃えている人」をなんとかするのは難しいのでしょうか?
山口 本書のアンケートの中に「インターネット上なら強い口調で非難しあって良いと思うか」という設問があったのですが、これに「良いと思う」と答えた人は全体の10%くらいしかいませんでした。その10%の人は、それ以外の90%の人よりも炎上に加担する傾向が見られます。
「ネット上なら強い口調で非難しあって良いと思う」というのは、ちょっと特殊な考えですよね。そういう意味では、解消はなかなか難しいのかなと思います。この調査では「年収が高い」や「子持ち」の部分が話題になっていますが、私が本当に気になったのは、この部分です。
対処としては教育があると思います。今年度から、ネットいじめや炎上が教科書に載るようになったと記憶しています。小中学校の教育はその後の人格形成に影響を与えるので、このような地道な対応は必要ですね。
–中高生あたりでは、ネット上の過激な意見にかぶれる人も多そうですね。炎上したら、どういう対策をとればいいのでしょうか?
山口 「無視しろ、ネットを見るな、謝罪しろ」という意見が多いですが、謝罪したり取り下げたりするのは、自分に非があると認めていることにもなります。非がないのに謝ってしまうと、相手は調子に乗りますし、まわりも「あの会社(あの著名人)があの程度で謝罪するなら、うちも……」と、すぐに謝罪や撤退をするという空気になってしまいます。すでに、そういう世の中になってしまっていますよね。
実際問題として、炎上した時には「考えて」とお伝えしています。まず、炎上の規模を考える。小規模な炎上なら、どうでもいいです。規模の大小の判断基準は、まとめサイトに載るかどうか。例えば、ツイッターのリツイート数がどんなに増えても、まとめサイトに載らなければたいしたことはありません。しかし、載った途端に注目度が一気に上がります。
もうひとつは、謝罪したり取り下げたりしないといけないほど自分に非があるのかどうか考える、ということです。この判断材料としては「擁護コメント」があります。ある程度の擁護があれば、謝罪や取り下げをしなくてもいいと思います。
本書でも例に挙げていますが、厚生労働省がネットで公開した年金漫画のケースがあります。これは「年金制度の失策を社会的背景のせいにしている」などと大炎上しましたが、厚労省は今も漫画を公開しています。
–批判が集中しましたが、取り下げることはなかったのですね。
山口 描き方や表現については「まずいだろう」と思いましたが、言っていることは嘘ではないんですよね。「それを、わざわざ取り下げることはない」と厚労省は判断したのでしょう。結局、騒動は沈静化して、今は批判している人はほとんどいません。このように、間違っていないのであれば取り下げる必要はないのです。

厚生労働省やドコモも大炎上した過去
–あの時、厚労省を叩いていた人は、今は別の件を叩いているのでしょうね。ネットで嫌な思いをしないために、気をつけることはありますか?
山口 萎縮してしまってはよくないのですが、あらかじめ炎上しやすい話題を知っておくことですね。「食べ物」「宗教」「社会保障」「格差」「災害」「政治」「戦争」……このあたりは炎上しやすいです。
次にネットユーザーの規範というか、彼らの中の「暗黙の規範」を覚えておくことです。それを知らない企業の広報担当者が間違った対応をして炎上することもあります。
かつて、NTTドコモの“プッシュトーク事件”というのがありました。新サービスの「プッシュトーク」をPRするためにSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のmixiでコミュニティを開設したのですが、コミュニケーション機能を使わなかったのです。
そのため、ユーザーから「mixiでPRをしているのに、ユーザーとコミュニケーションを図らないとは何事だ!」と炎上しました。そのツールならではの規範を理解した上で発信することが必要です。
–「2ちゃんねる」でよく言われる「半年ROMれ(半年間は書き込まず、ほかの人の書き込みを読んで勉強しろ)」というやつですね。
山口 そうです。媒体が変われば暗黙の規範も変わりますので。あとは、アンケート結果でもあったように、「炎上参加者は少ない」と知っておくこと。そうすると、気持ちが楽になります。大多数の人が批判しているように見えますが、実は、ごく少数の人が何度も書き込んでいるだけですから。
–そもそも、炎上していること自体知らない人のほうが多いですよね。ネットの狭い世界の話ですし。
山口 狭い世界の話であることを、つい忘れてしまうんですよね。ツイッターで政治の話をしている人を見ると、「自分のまわりは、みんな俺と同じ意見だ」みたいなことを平気で言う人が多い。狭い世界でつるんでいると、ほかの意見もあることを認識できなくなってしまうのです。
炎上の解決方法は、簡単には見つかりません。しかし、本書内では「閲覧は誰でもできるが、発信は決められた人しかできないようにする」といった、炎上を防ぐ仕組みを提案しています。炎上は、仕方のないことではなく、解決すべき課題であると考えています。