改正児童福祉法が成立 児相設置広げ、虐待対応を強化

朝日新聞 2016年5月27日

急増する児童虐待への対応を強める改正児童福祉法が27日の参院本会議で、全会一致で可決、成立した。新たに東京23区による児童相談所(児相)の設置を認め、全国に47ある人口20万人以上の中核市にも設置を促す。虐待に関する通告や相談にきめ細かく対応できる体制の整備を図る。
改正法は一部を除き来年4月の施行で、東京23区も児相を設けられるようになる。東京23区と、いまも設置権限がある中核市で5年後をめどに開設が進むよう政府が支援する。厚生労働省は虐待対応にあたる専門人材を育成したり、施設整備費、人件費を自治体に財政支援したりすることも検討している。
虐待が疑われる場合、児相が裁判所の許可を得て強制的に自宅に立ち入る臨検・捜索の手続きも簡素化。より早く子どもの安全を確認できるようにする。親とのトラブルに適切に対応できるよう、児相に弁護士の配置を原則、義務づける。
児相は47都道府県と20政令指定市に設置が義務づけられ、全国に209カ所ある。児相が対応した児童虐待は2014年度で約8万9千件で、00年度の約1万8千件から14年間で5倍に増えた。一方、児相の数は同じ期間に1・2倍程度にしか増えず、対応が追いついていない。(伊藤舞虹)

改正児童福祉法 里親家庭での養育推進…成立

毎日新聞 2016年5月27日

虐待を受けるなどして親元で暮らせない子どもについて里親家庭での養育推進などを柱とした改正児童福祉法などは27日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。児童虐待防止から虐待を受けた子どもの自立支援までの対策を総合的に見直す。一部を除き2017年4月に施行される。
改正法は、親元で生活できない子どもが、家庭と同じような環境で養育されるように国や自治体が対応すると明記した。具体策の一つとして、児童相談所(児相)の業務に、里親の支援や養子縁組の利用促進に向けた相談などを加えた。
虐待の未然防止に向けた早期の対応策として、医療機関や学校などは、出産後の養育に不安のある妊婦や、養育環境に懸念のある子どもの情報を市町村に知らせることが努力義務になる。
増え続ける虐待の通報や相談に対応するためには、児相を設置できる自治体に東京23区を追加。施行後5年をめどに、新設が進むよう政府が必要な支援などを講じると定めた。
一方、児相が専門性の高い虐待対応に専念できるよう市区町村との役割分担を進めることも盛り込んだ。市区町村に対して子どもの支援拠点設置を努力義務として課し、事案によっては児相から引き継ぐ仕組みを設ける。
15歳以上の子どもが働きながら暮らす自立援助ホームの入所条件も見直す。就学中に限り現行の「20歳未満」から「22歳の年度末まで」に拡大。18歳で施設や里親家庭を離れる子どもの大学などへの進学を後押しする。【黒田阿紗子】

母親へDVする娘が増加、発達障害を抱えている可能性も

週刊女性PRIME 2016年5月26日

夫から妻へのDVや親による子どもの虐待は以前から問題視されていたが、最近は娘からの家庭内暴力に苦しむ母親が増えているという。
警察庁の最新データによれば、2014年の未成年による家庭内暴力事案は約2000件で、10年前のほぼ倍。中でも、母親を暴力の対象にしているケースが60%以上を占める。
夫婦・家庭問題評論家の池内ひろ美さんと、母娘関係改善カウンセラーでメンタルケア心理士の横山真香さんに話を聞いた。

母を監視、支配したがる
母親の気を引くため、娘はあの手この手を使う。確認したいのは“私が何をしても本当に守ってくれるのか”という本気度。
「子どもはやはり母親から愛されたいので、悪いことをして気を引こうとします。父親の子育てへの協力が希薄であるという点も、娘の暴走を生み出す土壌になります。日々叱ってくる母親だけがうっとうしくなり、女性は力も弱いので娘はなめてかかる」(池内さん)
なかにはマインドコントロールが上手な子も多い。
「20代の娘さんのお母さんで、ひどい仕打ちを受けていながら、“娘の言うことを聞いていると、自分が悪いような気がしてしまうんです”とおっしゃっていた方がいました。理不尽に責められたときに謝ってしまうと、娘の暴君ぶりを助長します」(横山さん)
娘の中で目覚めてしまったモンスターは、こうなるともう手に負えなくなる。
「私がこんなに苦しんでいるんだから、あんたも一緒に苦しめ!」「お前は1日中、出かけるな」などと言葉責め。肩をつかんだり髪を引っ張ったり、やりたい放題。暴君と化す。
横山さんがさらに続ける。
「母を監視、支配したがるというのも、“モンスター娘”の共通点のひとつです。数か月前に母親が相談にやって来た大学生の場合は、“抱っこして”とせがんだり、“父と弟とは別居して私だけと住んで”と言ったり、飼い犬が母とじゃれていると、犬ごと母を突き飛ばしたりするそうです。
勝手に母のスマホをいじり連絡先をすべて消去したことも。独占欲が強いんですね。家庭環境に夫のDV、物にあたるきょうだいがいたりすると、娘も暴力的になりやすいという共通項もあります」
池内さんも、お手上げの実例を明かす。
「思春期の心身のしんどさを友人とのケンカや外での活動で発散できない子は家で物や妹、弟、ペットなど弱いものにあたるか、母にぶつけてしまう。暴力を1度ふるうと興奮してしまい、中学生の娘が、母を骨折などに追い込んだ例もあります」

ときには警察に通報する覚悟も
モンスターの芽をうまく摘み取る方法はあるのだろうか? 横山さんはこう断言する。
「母ひとりで我慢しても、モンスターをさらに育ててしまうだけです。“母親はどんなときも自分に服従する”というイメージを払拭し、ときには警察に通報してもいいくらいの覚悟を持ちましょう。
それから味方を増やし情報収集をすること。10代のうちの主な相談窓口は、スクールカウンセラーや児童相談所など。“大きくなったら落ち着くだろう”とは思わず、すぐ対処するべきです。小さなころから暴言、暴力が激しい場合は、ADHD(多動性障害)などの発達障害を抱えている可能性も考えられますから」
池内さんは、具体的な対策を打ち出す。
「暴走したらまず、その場から逃げてください。“暴力がなくなったら戻る”と意思を強く持ち、距離を置きましょう。娘の関心をほかにそらすことも重要です。暴力がいちばんおさまるのは、恋人ができたときなんです。もしくは娘が打ち込めるものを積極的に見つけることが効果的です」
そのうえで親として冷静に、“夫婦仲”を見直すこと。
「家庭内暴力が行われている家庭の夫は娘に無関心か母親を悪者にし“おまえが悪い”と責任をなすりつける。子どもが暴力をふるう家庭は、ほぼ夫婦仲が悪いんです」(池内さん)