子供を外に放置するのが「しつけ」? 「虐待」との境界を専門家に聞いた

BuzzFeed Japan 2016年5月30日

北海道の山中で、小学校2年生、田野岡大和君が行方不明になり、捜索が続いている。田野岡君はなぜ山中に1人でいたのか。当初、「山菜採りにいき、行方不明になった」と説明していた両親が、一転して「しつけ」のため山中に放置したと説明を変えた。
ウェブ上では「これは明確な虐待」と両親を批判する声のほか、「『置き去り』という躾手段は割とよく聞く」として批判から距離を置く声もでている。(石戸諭)

虐待としつけの境界はどこにあるのか
虐待と社会的支援のあり方に詳しい、北海道・名寄市立大学の山野良一教授(社会保育論)に聞いた。
山野さんは、かつて児童福祉司として、神奈川県内の児童相談所(児相)で働き、アメリカ・ワシントン大学留学中もソーシャルワークの現場経験を積んだ。
山野さんはこう指摘する。
「虐待は子供の権利を侵害するもの。しつけは子供の権利を擁護し、成長のための行為と分けられますが、境界はあいまいです。一概に境界線を引けないから、児相の職員が虐待を疑われる親のところにいっても、『うちの教育に文句があるのか』という問題が起こる。明確に言えるのは、子供の感情を考えずに親の感情に任せて、行動をとるのはよくないということです」
「かつては暴力で押さえつけるしつけが容認されてましたが、いまは容認されない。暴力が子供の発達を阻害するのは明確だからです」
「子供を一人、屋外に放置する」ことが、しつけとして容認される風潮もあったという。
「しつけとして言うことを聞かない子供を外に出すというのは、日本の家庭に見られる行為です。かつては許されてきましたが、いまの時代では明らかに問題がある。寒い冬場に外に出すのは、明らかに虐待です」
長時間の放置は、それ自体がよいことではない、と山野さんは指摘する。
「冬に一人で放置されている子供をみたら、児相に通報したほうがいい。もちろん、夏場ならいいというわけでありません。長時間、放置すること自体が子供の発達にはよくない。この事実をおさえる必要があります」
「私も児相時代に、外に追い出された子供が行方不明になり、警察が捜索することがありました。その時も、親は『しつけであり、虐待だと思われたくなかった』とまったく違う説明していました。こういうケースは珍しくはないのです」
山野さんは社会の問題として捉える、という立場をとる。
「虐待に加担した親を『ひどい』と責めるだけでは、問題は解決しません。虐待だと思われたくなかった、と話す親、家庭の背景に社会的な問題はないのか。自分たちの周囲でも『しつけ』と称して、放置や暴力を肯定していないか。そこまで考える必要があります」

子どもの買春・ポルノ被害、3人に1人が障害ある子

朝日新聞デジタル 2016年5月30日

児童相談所が把握した子ども買春や子どもポルノの被害者の3人に1人が知的障害や発達障害などの何らかの障害があるか、その境界域とみられることが厚生労働省の調査でわかった。被害者の2割は未就学の子どもと小学生が占めた。障害を抱える子どもたちへの性的搾取のリスクが高く、被害が低年齢者に広がっていることが浮き彫りになった。
児相がかかわる子どもたちの性的搾取の被害について調べたのは初めて。
調査は、厚労省の「児童相談所における児童買春・児童ポルノ被害児童への対応状況に関する調査研究事業研究会」(委員長=湯沢直美・立教大教授)が2月、全国の児童福祉司2934人を対象に実施。昨年4~9月に対応したケースのうち買春やポルノの被害が含まれているものを集計した。回収率は78・3%。
調査によると、被害者は計266人。9割超が女の子だった。年齢は13~15歳が43・6%、16~18歳が33・5%を占めたが、6~12歳が18%、1~5歳も6人いた。買春が59%、ポルノが31%、買春とポルノの複合被害が10%だった。

【社会福祉法人】評議員数は収益で判断 「2億円以下」が軸に

福祉新聞 2016年5月30日

社会福祉法人改革に関連し、厚生労働省は20日、全法人に必置の議決機関となった評議員会の評議員数の経過措置について、年間収益が一定額以下の 法人に適用する考えを示した。委員からは「2億円以下」とする案が浮上し、これを軸に検討する。会計監査人の設置は一部の法人に絞り込んでスタートし、そ の後、段階的に広げる方針。2017年4月の施行に向け、6月に結論を出す。
評議員数は7人以上が原則だが、小規模法人については施行から3年間は4人以上とする経過措置がある。
厚労省はその対象を「運営施設が1施設程度の法人」と説明してきたが、年間のサービス活動収益で線引きする考えに改めた。
同日の社会保障審議会福祉部会で明らかにした。具体的な金額は示さなかったが、委員からは「年間2億円以下」とする案が浮上。この案であれば、全法人の半数が該当する。 保育所のみの法人では84%、児童養護施設のみの法人では66%が該当する。

一定規模以上の法人は17年度から会計監査人の設置が義務付けられるが、厚労省はその対象を「年間の収益が10億円以上か負債20億円以上」(全2万法人のうち1636法人)と説明してきた。
同日の会合で厚労省は、1636法人と公認会計士(2万8293人)の都道府県別の分布状況を提示。いずれも東京、大阪など都市部に多いが、公認会計士は数字上は供給可能な状況という。
しかし、17年度は1636法人のうち一部に限って設置を義務付け、その後、段階的に拡大していく考えを示した。準備期間が短いため、法人、公認会計士、所轄する自治体のいずれにとっても一律の導入は、現実的には難しいと判断した。
法人が監査人に支払う報酬を公費で補てんする考えはないこと、「10億円以上」を算定する際に障害者の就労支援に関する事業で得た収入を含めることも明らかにした。
委員からは「まずは年間収益50億円以上の法人に導入してはどうか」との意見が上がった。事務担当者を配置したり、監査人に報酬を支払ったりするには相当の収益がないと無理だという見方が委員の間で支配的だ。