里親制度 社会に根付かせたい

毎日新聞 2016年6月6日

子供を育てるのは親の責任である。しかし、親が育てられない場合、その子供はどうなるのか。
虐待や予期しない妊娠などの理由で親と一緒に暮らせない子供は現在約3万9000人いる。ほとんどは児童養護施設や乳児院などで集団生活をしている。プライバシーのない環境でストレスにさらされている子供は多い。
先の国会で成立した改正児童福祉法では、親が養育できない場合は施設ではなく、里親などを優先し、特に就学前の幼い子は原則として「家庭養育」することが明記された。実親との関係を戸籍上抹消する特別養子縁組についても利用促進に向けて制度改正に取り組むこととなった。
わが国の児童福祉の歴史からすれば画期的な転換である。法律上の親権を持たず、都道府県からの委託で子供を育てるのが里親だ。成り手を増やし、社会全体で保護の必要な子を守る文化を育てたい。
戦災孤児の施設収容を目的に児童福祉法は1947年に制定された。施設関連の予算は低く抑えられ、子供が健全に育つ権利について顧みられることはあまりなかった。
近年になって児童虐待は急増し、傷ついた子供たちで満杯状態の施設は多い。施設で育った子の大学や高校の進学率は一般に比べて著しく低い。賃金の低い非正規雇用の仕事しか見つからず、貧困の連鎖に陥っているのが実情なのだ。
先進諸国を見ると、保護の必要な子は里親など家庭的な環境で育てるのが一般的で、里親への委託率が15%しかない日本は特殊な存在だ。
日本でも50年代には里親が8000人以上いたが、80年代になると3分の1以下に落ち込んだ。原則として専業主婦家庭で、自宅もある程度の広さがあることなど、審査は厳しい。国からの生活費の補助は少なく、経済的余裕がないと里親にはなれないのだ。
政府は保護の必要な子の受け皿として、里親・グループホーム・施設を3分の1ずつにすることを打ち出している。里親になるための条件も緩和する傾向にあり、少しずつ成り手は増えている。
自治体間の格差は大きい。委託率が1桁の自治体は多いが、新潟県は44%を超え、福岡市や大分県もこの10年で3倍以上となった。児童相談所に専任職員を配置したり、支援機関の充実、NPOと連携した広報に取り組んだりしている点が共通している。
虐待でトラウマを抱えた子や発達障害児など養育が難しい子供は増えている。経済的援助とともに相談体制や心理面などの専門的な支援も手厚くし、里親制度を社会に根付かせていくべきだ。

海外でもトップニュース「日本の行方不明だった7歳男児が6日ぶりに保護…」海外の反応いろいろ

らばQ 2016年06月05日

北海道の山林で置き去りにされ行方不明になっていた7歳の男の子が、6日ぶりに自衛隊の演習施設にいるところを無事保護されました。
日本中が注目していたこのニュースですが、子供の虐待やしつけに敏感な欧米でも関心は大きく、さまざまなメディアが連日トップニュースとして報じていました。
無事の報を受けての、海外掲示板の反応をご紹介します。

●ああよかった。ただし両親は、しっかり子供の面倒を見ていなかったことから厳罰を受けるべき。
↑山に置き去りがいいよ。

●これは2016年のかくれんぼのチャンピオンだろう。
↑最初に見つけた自衛隊員が発した言葉「!」

●「子供が車や人に石を投げ始めたので…」(両親がしつけとして置き去りにした理由)
きっともう石を投げるのは止めたに違いない。
↑スタジオ・ジブリの作品の冒頭みたいだね。
●ひどいバージョンの「千と千尋の神隠し」かも。
●どうして記事では、まるでそれが最も危険なことのように、クマの生息地であることを強調しているんだい?
山での迷子は、野たれ死にする確率のほうが、クマで死ぬ確率よりも1000倍は高いってのに。
↑野たれ死にはクマの生息地に比べて注目を浴びないからな。
●梅雨の季節もよかったが、水がある建物内にいたらしいよ。
↑5km先の建物を同日中に見つけ、そこには水道があった。幸運な子だ。
↑両親以外は幸運だった。
●この子供は自然淘汰をうまく乗り越えている。
●ホラー映画の完璧な設定だね。子供が1週間も行方不明になるなんて。
●この子はとてつもない大物だ。
「医者の説明では、彼はパニックになっていなかったと述べていた」
そんな子供がいるなんて想像がつかない。
●彼は両親に置き去りにされたんじゃない。彼が両親を置き去りにしたんだ。
●自分が7歳のとき、両親に学校に置き去りにされてお漏らしした、嫌な思い出がよみがえった、くそっ。それにしても発見されて良かった、うれしい!
●この少年は特殊部隊に入るべき。
・救助やクマを回避しながら、5日間食料も水も所持せずにで単独サバイバル。
・GPSも地図もなく、最寄りの避難所にたどり着いた。
まじめに、すごい子だよ。
●ああ神様、すばらしい。この数日間、このニュースをチェックしていたけど、悪天候と手がかりのないことから、悪い結果を予感していた。この結果を聞いて本当に喜ばしいよ。

やはり両親の行き過ぎた「しつけ」に対する批判が多く見られましたが、6日間をサバイバルした男の子のタフネスぶりが、とても7歳とは思えないと感嘆の声がたくさん上がっていました。

親子関係と叱り方:しつけと虐待の間で悩む人のために:北海道不明男児保護報道から

Yahoo!ニュース 2016年6月5日

男児行方不明と無事発見のニュースによって、日本中でしつけ論争が繰り広げられています。なかなか言うことを聞かない子どもたちに、親はどうすれば良いのでしょうか。

行方不明男児無事保護から考えるべきこと
行方不明だった男の子が無事保護されました。置き去りにされた場所から、直線で6キロも離れた自衛隊演習場の建物の中にいました。親が乗った車が走り去ったのとは逆の、山に向かう林道を進んだようです。
今この子どもと家族に必要なことは、保護と支援だと思います。その一方で、これだけの大捜索と大報道が行われた出来事から、私たちは学ばなければいけないとも思います。日本中で、子どものしつけが話題になっています。
個人を責めてもあまり意味はありませんが、迷っている親、苦しんでいる子どものために、しつけと叱り方について、考えたいと思います。

今回のケース
子どもは、人や車に向かって石を投げていたと言います。どれほどの距離で、どれほどの大きさの石なのか、詳細は分かりません。ただ、前にも同様のことがあったといいます。親は、何とか叱りつけ、こんなことを二度としないように、しつけようとしました。
親は、子どもだけを車から降ろし、置いていこうとします。子どもは、泣きながら追いかけてきて、車に乗せてもらいます。車中で、何かの会話がなされたのでしょう。子どもは再び、車から降ろされます。これが二度繰り返されたとする一部報道もあります。
最終的に、親が乗った車は子どもを残し、走り去ります。その5分後、車は戻ってきますが、子どもは見当たりません。家族で30分探しましたが見つからず、警察に連絡をし、今回の六日間にわたる大捜索が始まりました。

置き去りは虐待かしつけか
今回のことは、父親も深く反省しているように、「行き過ぎ」でしょう。では、「虐待」でしょうか。
虐待には、殴る蹴るの身体的虐待、性的虐待、育児放棄のネグレクト、必要なお金をあげないなどの経済的虐待、そして心理的虐待があります。子どもを5分間一人で置き去りにするのは、可能性があるとすれば、心理的虐待でしょう。
6/4の別のニュースで、「金沢でも小2男児、置き去り=心理的虐待疑い児相に通告」とありました。このケースでは、日常的な問題行動もあったようです。
一方、北海道の件では、日頃の仲の良い様子が報道され、北海道警察は当初虐待とは見ていないと報道されていました。
しかし、6/5夕方のニュースで、道警函館中央署は5日、心理的虐待の疑いがあるとして、3日に北海道函館児童相談所(函館市)へ書面で通告したことを明らかにした(大和君置き去りで児相へ通告 心理的虐待の疑いで道警:朝日新聞デジタル 6月5日)。
心理的虐待は、微妙なところがあり、私たちは詳細を知ることができないのですが、それぞれの警察は日常的な子どもへの態度や、置き去りの結果の重大性など総合的に判断しているのでしょう。
昔は体罰が普通だったのだから今も良いかといえば、それは違います。法律が変わっただけではなく、社会全体が変わり、価値観が変わったからです。
しつけのあり方も、虐待の範囲も、時代と文化によって変わってきます。
子どものしつけ方法としての「置き去り」は昔からよくあるから今でも良いとは言えないでしょうが、同時にまた、おもちゃ売り場の前で駄々をこねる子どもを置いて親が先に行くケースまで、単純に虐待とは考えないでしょう。
ただし、泣きながら親を追いかける子どもの心に、親は決して子どもを捨てない確信があって初めて成立する叱り方、しつけ方法だとは思います。

<「鬼から電話」の効果と使い方:叱り方の心理学>
<体罰の5つの副作用>

今、反省している親、臆病になっている親
叱りすぎている親はいます。子育ては、思い通りにはいきません。イライラし、ストレスがたまり、つい叱りすぎてしまうことはあります。このような親が、きちんと反省することは良いことです。
一方、今回の報道によって、叱ることに臆病になっている親もいます。どちらの親も、しつけ方、叱り方に迷っている親です。
実は、反省している親は、多くの場合大丈夫なのです。虐待する親たちは、「親が子どもを殴って何が悪い」などと思うからです。反省ができる親は、行き過ぎを防ぐことができるようです。
ただし、反省を超えて後悔し、臆病になっては困ります。子育てに自信をなくすと、ほめることも叱ることも上手くいかなくなります。さらに後悔して自分を責めてしまうと、笑顔と気力を失い、緊張の糸が切れたように虐待の危険性が高まってしまいます。
叱ることは大切です。ただしイライラして叱りつけないことや、親の権威を示さなければなど思いつめて叱らないことが必要です。

叱りすぎるとどうなるか
叱りすぎるとは、長く、多く、強く叱りすぎることです。そうすると、子どもが萎縮するかもしれません。かえって反発するかもしれません。叱り方が下手で、子どもが思ったようにならないと、さらにイライラしておかしな叱り方をしてしまうこともあります。
叱ることは必要です。ただし、心理学的には「罰は何をしてはいけないかは教えても何をすれば良いかは教えない」と言われています。
叱ることだけで、子どもを良い方向に導くことはできません。

叱りすぎのワナ:よく効く薬は副作用も強い
恐ろしい怒鳴り声、体罰、「ママは出て行きます」、そして置き去りにする。それぞれの親子によって違いますが、この叱り方をすれば子どもが言うことを聞くという、よく効く便利な叱り方があるものです。
しかし、よく効く薬は副作用も強いことに注意しましょう。
その時は、子どもが従ったとしても、親子関係が悪くなることがあります。子どもに不安を与えたり、子どもの自主性を奪ってしまうこともあります。
薬も、その時々に良い薬を選ばなくてはならないように、叱り方も、その時々の子どもにあった叱り方を選ばなくてはなりません。

なぜ叱りすぎるのか
一つは、親が感情的に興奮しすぎてしまうからです。
お片づけをしない子どもを叱ります。子どもは渋々お片づけを始めます。ところが、親の興奮がおさまりません。お片づけしている子どもの背中に向かって、さらに叱り続けてしまいます。これでは、子どもにお片づけの習慣は身につきません。
感情的になることが悪いわけではありません。叱る時に、感情のほとばしりが必要なことはあります。ただ、感情で理性がなくなっては、もちろん困ります。
親は子どもを愛するがあまり、焦り、完璧を求めてしまうことも叱りすぎる原因となります。
子どもは少しづつ出来るようになります。だから、一歩進んだことを認めてあげることが効果的です。しかし、しばしば親は一歩しか進んでいないと感じて罰を与えてしまいます。
これでは、子どものやる気はますます下がります。すると親はさらにイライラし、また叱りつけることになります。

イライラしない、怒鳴らないしつけ、叱り方
イライラして怒鳴り散らすのは、感情のほとばしりがある叱り方ではありません。イライラして怒鳴るようなことをしても、しばしば逆効果です。
子育てが上手くいかない→イライラする→怒鳴る→ますます上手くいかない→さらにイラつく→虐待(あるいは行き過ぎたしつけ)。この悪循環を断ち切りましょう。
「ちゃんとしなさい」などあいまいな言葉は使わず、「片付けてね」「時間がないから急ごう」と具体的に話すこと。良いことはほめ、悪いことをしたら「しまった」と思うような体験をさせて気づかせること、などがポイントです。

<「怒鳴らない子育て」の心理学:両親がイライラしない効果的な叱り方>

叱っても直らない時
今回の親も、子どもが石を投げることを叱っていました。叱っても直らないので、さらに強い叱り方をしようとしました。それは、親の愛の表れです。しかし、失敗をしてしまいました。
何度か叱っても直らないことはあります。一生懸命な親は、今日ここで直さなければならないと思うと叱りすぎます。今日は今日の分だけ叱りましょう。
お片づけなど日常的なことではなく、とても悪いことなのに何回か叱っても直らないことがあります。
そんな時は、叱り方をエスカレートさせるのではなく、叱る以外の方法を考えてみましょう。北風と太陽です。別の方法もあるはずです。説教や叱責ではなく、相手の気持ちを理解しようとするカウンセリング的なアプローチが効果的なこともあるかもしれません。何か大人がまだ気づいていない問題が潜んでいるのかもしれません。
叱りすぎは、逆効果です。子どもが簡単に良くならないとしても、単純に自分のせいだと自分を責めてはいけません。
子どもは必ず良くなっていくと信じて、あの手この手を考えて、一歩ずつ進めていきましょう。

「誕生日だから」幼稚園お休み?  許せるVS許せないで賛否起きる

J-CASTニュース 2016年6月5日

子供の誕生日に幼稚園を休ませるのは、「アリ」なのでしょうか――。子育て中の母親が集まるネット掲示板に寄せられた、子供の「誕生日の過ごし方」をめぐる投稿が、いまネット上で賛否を呼んでいる。
ツイッターやネット掲示板などを見ると、「何で休むのか理解できない」「確かに嬉しい日ではあるけど休ませるほど?」などと抵抗感を示す意見が目立つ。その一方で、「誕生日はディズニーランドに行くので幼稚園休ませる予定」といった報告も数多く見つかる。

「義務教育じゃないし休ませちゃう」「なんて話聞いたこともない」
母親向け交流サイト「ママスタジアム」に2016年5月26日、子供の誕生日に幼稚園を休ませることの是非を問う投稿が寄せられた。投稿者は、他の母親たちに 「アリ」と「ナシ」の2択を提示しつつ、誕生日当日の過ごし方について意見を募っている。
幼稚園を休む「基準」を尋ねた今回の投稿に対し、他の母親からは、
「誕生日でしょ?確かに嬉しい日ではあるけど休ませるほど?」
「誕生日休ませるなんて話聞いたこともないよ。もしそんな人いたら『あ、このひと合わないわ』って思う」
「べつに、当日どっか行かなきゃならないわけじゃないし幼稚園行かすよ」
などと批判的な声が相次いだ。
一方で、「幼稚園のズル休みは全然オッケーでしょ」「義務教育じゃないし休ませちゃう」と前向きに捉える母親も少なくない。なかには、「(誕生日は)休ませてディズニーランドに行きました」との報告も上がっていた。
ただ、この投稿に集まった反応を見る限りでは、誕生日という理由で幼稚園を休ませることについては「ナシ」と考える母親の方が圧倒的に優勢の様子。書き込みの数は50件を超えるが、うち7割以上の母親が「自分だったら幼稚園に行かせる」という考えを示していた。
「幼稚園を私用で休ませる際の注意点」を紹介するメディアも
ネット上では厳しい意見が目立つが、実際のところ、子供の誕生日など「私的な理由」で幼稚園を休ませる親は珍しくないようだ。ツイッターなどには、「テーマパークに混雑していない日に行きたいから休ませてた」「平日はホテル料金が安いので子供を休ませて行く」といった報告が数多く見つかる。
その一方で、J-CASTニュースが6月3日、複数の幼稚園に問い合わせたところ、担当者は皆口を揃えて「誕生日だからという理由で子どもを休ませる親御さんは、これまでに見たことがありません」と話す。
こうしたギャップについて、ある学校関係者は「『家の都合』などと曖昧に伝える保護者さんが多いんじゃないでしょうか。保育士さんも大人ですから、怪しいと思っても追及することはないですよ」などと推測していた。
実際、子育てに関する話題を扱うネットメディアの中には、「幼稚園を私用で休ませる際の注意点」を紹介する媒体もあった。その中では、
「下手に言い訳をしたり、嘘をついたりせずにシンプルに『私用でお休みします』と簡単に伝えればいい」
といったアドバイスを親に向けて送っている。