虐待児の「一時保護」に司法関与の方針 現場の児相の声は?

THE PAGE 2016年7月5日

「一時保護」の基準をクリアにしつつ、その判断には司法の関与を――。今年2月の神奈川・相模原市の中学生の自殺問題を受け、厚生労働省は虐待を受けた子どもを親から適切に一時保護する際のより具体的な基準づくりに着手する。さらに中長期的には、一時保護の判断を家庭裁判所に委ねる方針で、7月に検討会を設置して議論することを決めた。こうした国側の方針について東京、横浜、千葉の児童相談所で虐待児の保護に携わる現場担当者の声を聴いた。(フリー記者・本間誠也)

「強制的な(児童相談所の)職権保護をどの段階ですべきだったか。明確な基準を設けていきたい」「厚労省は(相模原市から)提出される報告書をもとに、新たな基準をつくる方針」。相模原市で発覚した虐待による男子中学生の自殺問題を受け、今年3月下旬に同市児相を視察した厚労省の渡嘉敷奈緒美副大臣は報道陣にそう述べた。

親が反対した場合の判断基準は明記されず
男子中学生の自殺問題を振り返ると、この生徒は2013年秋の小学6年当時から「家が怖い」と相模原市側に保護を求めていた。市児相や市中央こども家庭相談課によると、小学校からも虐待通告があったため、市児相は学校などを通じて当初は対応していたという。翌14年6月には生徒が「親に暴行された」とコンビニに駆け込み、警察に保護されたことから、市児相はこれ以降、親と生徒に対して面談指導を続けていたとされる。
児相は同年10月に親に一時保護を提案したものの同意を得られなかったため、生徒の要望に応えることなく職権による保護には踏み切らなかった。同月末には父親から投げ飛ばされて生徒の腹部にあざがでているのを中学校が確認し、市児相に通報したにもかかわらず、担当者は上司への報告を怠り、生徒への聞き取りも行っていなかったという。
そうした中、生徒は翌11月に親せき宅で自殺を図り、今年2月に容態が悪化して死亡。自殺問題が表面化した今年3月、市児相は記者会見で「私たちが関わってから(親子関係に)改善がみられたので、職権保護するべき急迫した状況ではなかった。対応は間違っていなかった」と説明した。
厚労省は一時保護すべきか否かに関する基準として、「子ども虐待対応の手引き」を示し、職権保護に向けての判断マニュアルともいえるフローチャートも公表している。ただ、「手引き」やフローチャートには親が一時保護に反対した際などの判断基準は明記されておらず、最終的にはケース・バイ・ケースで各児相に委ねられている。

児相「過去の実例をもとに明確化して」
相模原市の問題に絡み「短期的な対策」(厚労省)として、一時保護に関する新たな基準が数か月内には公表される予定だが、児相の現場は果たして何を求めているのか。
「一時保護の判断でやはり一番悩むのは子どもの主張と親の主張が対立した場合です」と話すのは横浜市中央児相。「親と子を一時的にであれ、無理やり引き離すのを避けたい思いは、全国どこの児相の担当者も同じはずです。命の危機があるような緊急性の高いケースは別にして、『虐待ではなく、しつけの一環だ』として親が一時保護に強く反対する中でも保護すべきという場合を過去の実例をもとに明確化していただければ」と訴える。
横浜市の場合は「子どもの安全を最優先に」との方針のもと、15年度の虐待相談件数3892件のうち一時保護は1181件と3割以上に達する。
14年度の相談件数8216に対し、一時保護は1915件の東京都児童相談センターも「保護の際に躊躇はないものの、具体的に事例が示されればありがたい」と言い、千葉市児相は「厚労省のマニュアルでは、当事者が保護を求めているケースについて『緊急一時保護を検討』としていますが、さらに細かく具体的に例示してくれれば」と話した。同市児相の14年度の相談件数は786件で、このうち一時保護は68件。「毎年度とも一時保護の割合は約1割」と言う。

家裁関与で一時保護の迅速化に懸念も
「児童虐待の対応における司法関与の在り方、例えば裁判所命令などについて7月に検討会を設置して議論を開始したい」。6月28日の閣議後会見で、塩崎泰久厚労相はこう述べ、児童虐待を受けた子どもの一時保護の判断に家庭裁判所を関与させる方針を打ち出した。
厚労省によると、この方針は相模原市の問題対応とは別物で、「一時保護のシステム強化に関する中長期的な取り組みの一つ」という。厚労相発言のもとになっているのは、5月に成立した改正児童福祉法のたたき台となった「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告(提言)」だ。専門委報告は一時保護への司法関与についてこう記している。
「(児童相談所は職権で一時保護できるものの)一連の行政処分は親権者の権利を制限すると同時に、家族と生活したり地域と交流したりする子どもの権利を制限する行為でもある。(中略)こうした権利の制限は重大な権利侵害に当たり、強制性を含むものである以上、権利制限の判断を行政判断のみですることは本来望ましいことではない」
さらに「児相による行政処分として従来行われてきた親権者や子どもの権利の制限行為は、結果として、児相と保護者・親権者の対立構造を生み出し、その後の安全な家庭への復帰を目標とした支援が進まない事例が多く経験されてきた」と指摘した上で、「司法が一連の親権制限(子どもの権利制限を含む)に対して適切に判断するなど、司法の関与を強化する必要があり、これが適切に行われるためには子ども家庭福祉に関わる者の専門性を高める必要性がある」と結論付けている。

一時保護の判断をめぐる家裁の関与という厚労省の方針について、児相側はどう受け止めているのか。

東京都児相センターは「子どもを確実に危険な状態から保護できるか、という点が担保できれば、家裁という第三者が関与し判断することは妥当なこと」と話す。

横浜市中央児相の担当者は言う。「一時保護の際に大半の親から『児相が何の権利があって』と言われます。そこに司法判断が入ることによって親側の受け止め方も変わってくるのではないでしょうか。私たち行政の本来業務は、初期対応として子どもの安全を確保したうえで、親と子供を『再統合』させて継続支援していくことだと考えています」。だた、家裁の関与によって一時保護の迅速化に支障が出ることを懸念し、「事例によっては先に仮処分のような形で子どもを一時保護して守った上で、司法判断という形でもいいのでは」と話した。

里親制度・養子縁組の現状と5つの対応策

文京学院大学 オピニオンレター 2016年7月6日

すべての子どもに家庭生活を保障するために

提言者:森 和子(人間学部准教授 専門:児童福祉、家族福祉、里親養育)

“家庭”で暮らせない子どもたち
2016年5月、改正児童福祉法が国会で成立し、6月3日に公布されました。本法では虐待等で社会的に保護が必要な子どもに対し、家庭に近い養育環境を提供する里親や養子縁組による家庭養護の優先が盛り込まれました。現状は、乳児院や児童養護施設等の施設養育が中心です。子どもの多くは保護者からの暴力、ネグレクトなどを受け、実親と愛着の絆を結べず恐怖と不安の中で生きてきたともいえます。
児童発達の観点では、乳幼児期の継続した愛着関係の形成が重要であり、家庭的環境で養育されることが望ましいと考えられています。家庭養護では実親に代わり特定の養育者によって子どものニーズは受け止められ、「受け止められ体験」を重ねて安定した愛着と信頼が築かれます。施設職員は大変努力されていますが、特定の大人との愛着関係形成は難しいことが現実です。ゆえに実親と暮らすことができない期間や実親の元へ戻れる可能性がない場合は、永続的な家庭的環境で子どもの発達を保障することが必要です。
永続的に家庭環境で養育するパーマネンシーの保障という理念は、欧米やオセアニア諸国では児童福祉の基本として定着しています。里親委託率は、オーストラリア93.5%、アメリカ77%、イギリス71.1%(2010年前後)です※1。パーマネンシーの保障は子どものアイデンティティ形成の原動力で、自立の基盤となります。日本は厚生労働省によると、社会的養護の対象約4万6千人のうち約85%が施設養護で家庭養護は約15%に過ぎません※2。日本の施設養護の割合の高さは、国連から改善勧告を受けています。2011年3月、国は「里親委託優先の原則」を打ち出し、家庭養護の割合を3分の1まで引き上げることを目指しました。
しかし、家庭養護の割合を単に増やせば良い訳ではなく、里親・養子縁組親子に寄り添った継続的支援が必要です。社会的養護が必要な子どもは、実親や施設養護による養育者の変更を経たことから試しの行動や赤ちゃん返り等を繰り返すため、通常の子育ての数倍大変であると言われています。私は児童相談所で15年間、里親・養子縁組支援に携わってきました。現場の経験も踏まえ、本レターでは親(実親と里親・養親)、子ども、彼らを取り巻く社会の視点から、子どもの最善の利益を目指す5つの対応策を提言します。

“家庭”での暮らしに向けて
血縁によらない親子も含め全ての子どもが家庭環境の中で健全に育つため、どのような対応が求められるのか、海外事例も交えて解説します。

1.実親のサポート支援の充実
まず、望まない妊娠や経済的な理由等で悩む生みの親が、自ら子どもを育てる可能性を模索する支援の充実が挙げられます。厚生労働省でも、実親が自ら養育することの可能性を十分考慮するよう指導しています※3。しかし、日本では実親の養育判断や親子分離の役割を行政機関の児童相談所が担います。近年は虐待の相談件数が増え、実親サポートや里親・養子縁組対応まで児童相談所職員の手が回らず、実親と暮らす支援体制が十分に整っているとは言い難い状況です。児童相談所は実親支援に注力できるよう職員を配置する体制整備が必要です。
カナダのブリティッシュコロンビア州では、地域の子育て支援を担うファミリーソースセンターが、実親家庭で極力暮らせるよう(虐待等の理由を除く)、実親向けカウンセリングを提供し、行政が介入した場合も実親が里親家庭と交流しながら実親が養育方法を学ぶプログラムが実践されています。日本の児童相談所でも実親の人権を尊重しつつ、子どもにとってベストな養育環境となる支援強化を検討することが求められます。

2.法整備の促進
養子縁組仲介機関の質の担保や、里親・養親の立場を保障する法整備も肝要です。日本には、相談支援手順や内容、費用等に関する法的根拠をもった養子縁組あっせん事業のガイドラインがありませんでしたが、今年ガイドラインに資する提言が行われました※4。また、現行法は法律上の子は実子・養子に限られていましたが、特別養子縁組を前提に同居する子どもも法律上の親子関係に準じるとして、育児休業取得を認める旨を盛り込んだ育児・介護休業法が改正され、来年1月に施行されます。
里親に対しても、従来は一方の里親には養育への専念が推奨されてきましたが、里親や児童福祉関係者から共働き家庭も育休を取れるようにしてほしいと国に働きかけています。育休が取れれば、キャリアを失わずに里親を検討する人が増えることが期待されます。子どもにとって家庭養護が当たり前となるよう、法の枠組みを整えていく必要があります。

3.アイデンティティ確立の保障
3つ目は里親委託・養子縁組された子どもへの対応です。特に、子どものアイデンティティの保障は喫緊の課題です。物心がつく前に里親委託や養子縁組をした場合、子どものアイデンティティ構築のためには、生みの親の存在を知らせる「真実告知」を避けては通れません。里親は児童福祉法、養子縁組は民法に準じますが、どちらも真実告知は義務化されておらず、日本では真実告知を行わない家庭も未だ多く存在します。また、出生や委託時からの様子等の情報が蓄積されず、保存場所やアクセスするプラットフォームも規定されていません。そのため、予期せぬきっかけで自分が実子ではないと知って苦悩したり、出自がわからずアイデンティティ形成に深刻な影響を及ぼす事例が多数報告されています。
海外では出自の情報管理を法制化している国が多くあり、カナダでは19歳になると、実親や養子が出自に関する情報が知れ、双方の合意で会うこともできます。イギリスでは生い立ちを整理する一環として、養子が成人した時に自分の境遇を理解し受け入れられるよう、実親や子どもが前向きに捉えられる情報を、委託時の担当職員が記す書類「レーターライフレター(Later life letter)」があります。さらに、2015年の養子縁組法改正で、養子が親になったときの子どもでも情報へアクセスできるよう、記録保存期間が100年に延長しました。子どもは成長するに伴い、境遇を理解し受け入れていかなければなりません。日本でも真実告知を前提として、子どもが自己肯定感をもってアイデンティティを確立できるよう、出自の丁寧な情報収集と長期間の記録保存、いつでも相談に応じられる体制整備が求められます。

4.「生い立ちの授業」の見直し
ひとり親や、施設や里親・養親の元で育つ子ども等、社会には多様な家族形態の中で育つ子どもがいます。そのため血縁家族だけでなく多様な家族形態を容認する教育体制も不可欠です。養子縁組、里親家族にとって、血縁の家族観を前提とした学校生活や生活場面で様々な問題に直面します。その1つが小学校生活科の「生い立ちの授業」です。授業の目標は、「自分の成長には様々な人の支えがあったことに気付き、感謝の気持ちをもつと共に、これからの自分に自信をもって意欲的に生活できるようにする」と掲げられています。養子や里子の多くは、妊娠中から生まれた時のことや家庭に来るまでの様子に関する情報が殆ど無く、授業の対応に悩みます。これらの多様な家族に対し、教員が彼らの置かれた状況の困難さを理解した上で、配慮した授業を行うことが必要です。
徐々に改善の動きは見られ、埼玉県志木市では里親・養親を講師に迎えて教員研修を行い、学校で配慮してほしい点を教員に説明しました。教職を目指す学生の教職課程でも、里親・養子縁組など家族形態の多様性、現状や必要とされる支援について学ぶカリキュラムの充実が必須です。あらゆる育ちの子どもが否定されることのない「生い立ちの授業」のあり方が切に望まれます。

5.子どもを養育する受け皿の増加
最後は、家庭養護の受け皿となる里親や養子縁組の増加に向けた提言です。既述の支援拡充や法整備、教育の配慮に加え、受け入れ先の家庭を拡充することも重要です。現在、8組に1組は不妊カップルであると言われており、多くの人々が不妊治療を受けています。不妊治療では妊娠することや子どもを授かることが大きな目的となり、治療に邁進して心身共に疲れ果てる女性が後を絶ちません。不妊治療の先の選択肢として、里親や養子縁組で「親になる」選択肢があることを医療現場でも紹介して欲しいと思います。
具体的には、不妊治療クリニックに里親、養子縁組について書かれたパンフレットを常設し情報提供すること、養子縁組・里親制度の理解を含めた不妊専門看護師を養成し、現場で助言することも有効です。さらに、里親・養子縁組は子どもを家庭に迎えることがゴールではなく、受け入れ後の親子関係構築が求められます。そのためには、子どもの成長に寄り添った長期的な相談支援体制が不可欠となるでしょう。また、実子がいて里子・養子を迎えるケースは国内では少数です。家庭養護が児童福祉の重要サービスであるという社会認識の低さに加え、「親子=血のつながり」という考えが根強い点も要因と考えられます。不妊治療と共に、里親・養子縁組が身近に認識され、将来的に多様な家族形態に欠かせない一部になってほしいと思います。

「子どもの最善の利益」のために
以上のように、健全な環境下で子どもが安全かつ安心して過ごすためには、親(実親と里親・養親)、子ども、学校や社会全体といった幅広い視点での理解や支援が必要不可欠です。里親や養子縁組を普及する一番の推進力は、里親や養親の皆さんが「里親、養親になって子育てをして豊かな人生を過ごしませんか。困難はあるけれどサポートがあるから大丈夫ですよ」と、心から勧められるようになることです。そのためには、里親、養親家族に寄り添いサポートできる相談支援や法整備を行っていくことが、今最も求められているのではないでしょうか。
1994年に日本は、子どもは「幸福、愛情及び理解のある」「家庭環境」で育ち、「個人として生活するため十分な準備が整えられるべき」※5と基本的権利を謳う国連の「子どもの権利条約」を批准しました。今年ようやく児童福祉法が改正され、社会的養護のあり方は転換期を迎えました。あらゆるバックグラウンドの子どもが心身共に健やかに育つ環境が整うよう、今後も尽力していきたいと思います。

「公的年金が頼りないので、個人年金に加入」 これって正解?

マネーの達人 2016年7月7日

公的年金の2015年の運用損失が5兆円を超えるという数字を、GPIFが7月29日に公表する予定です。
公的年金の運用は、一昨年10月に、株式や為替商品での運用比率を上げて、最高で約7割をリスク資産で運用できるようにしました。
それが、今年に入っての円高、株安で裏目に出て、1~3月に大々的な損失が出たので、15年度は5兆円を超える損失ということになりました。
ただ、その後4月以降も円高株安は続き、イギリスのEU離脱ショックなどもあったので、損失はさらに拡大する可能性もあります。
こうした中、公的年金があてにならないなら、個人年金に入ろうと思う方もいると思うので、今回は、個人年金について考えてみましょう。

個人年金には、大きく2つのタイプがあります。
「月々○万円払えば、将来○万円の給付」という、あらかじめ将来もらえる額が決まっているオーソドックスなタイプと、変額個人年金といって、運用次第で将来もらえる金額が変わるタイプです。
オーソドックスなタイプには、一定期間年金をもらう確定年金型と、死ぬまで年金がもらえる終身型があります。
ただし、終身型といっても、年金をもらいはじめてすぐに死んでしまうと掛けた保険料に対してもらう額が少なくなってしまうので、死亡しても一定期間は最低保障されているものがほとんどです。
そこでまず、従来型のオーソドックスな個人年金について見てみましょう。

従来型の個人年金について

物価が上がると、従来型の個人年金は実質目減りする。
たとえば、某大手生命保険会社の個人年金は、30歳から60歳まで月々1万8367円支払うと、払い込み終了後に10年間にわたり年72万円がもらえます。
計算すると、支払い額は
1万8367円×12か月×30年=661万2120円
一方、もらう額は72万円×10年=720万円
差し引き58万7880円のプラス。
低金利なので、金額だけを聞くと良さそうな気がしますが、これをもらえるのは30年後なのです。
厚生労働省の調べでは、1985年の大卒男子の初任給の平均は月13万8900円で2015年は17万円なので、1.23倍。
30年間で給料はこれだけ上がっているので、もらう年金も800万円を超えていないと、実質目減りということになります。
しかも、日銀が設定している2%のインフレ目標が達成され、物価が2%ずつ上がっていくと、30年で物価は約2倍になるので、物価に追いつかない!
なぜ、こんなことになるかと言えば、年金の運用利回りは(予定利率)が1%程度と低いから。個人年金は生命保険同様にどんなに世の中の金利が上昇しても、入った時の運用利回りはずっと変わらないタイプがほとんど。
預金金利が5%になっても、個人年金は最後まで1%程度で運用されるということ。運用利回り1%なら、銀行預金よりもいいと思う人もいるかもしれませんが、そうではないということは、生命保険のところでも書きました。
ちなみに、生命保険同様に、高い運用利回りの時に加入した年金は、最後まで高い利回りで運用されるので、お宝年金です。

変額個人年金について

変額個人年金は、手数料が高い。
従来型の個人年金ではなく、「運用次第で、将来の年金が増える」といわれる変額個人年金はどうでしょう?
変額個人年金は、預かったお金を株や債券などで運用していくので、運用次第では増える可能性もありますが、逆に目減りしてしまう可能性もあります。
こう書くと、チャンスはフィフティー・フィフティーという気がしますが、実は、変額個人年金は、減る可能性のほうが大きいのです。なぜなら、手数料が高いからです。
たとえば、郵便局で販売している某変額個人年金保険は、加入する時点で契約時費用として4%の手数料を支払い、さらに、加入し続けている間は、積立金に対して保険関係費用を年1.4725%、運用関係費用を年0.486%、純保険料を年1%引かれます。合計すると、保険運用中に年約3%の手数料が引かれていきます。
仮に1000万円を預け、損もせずトクもしない状況のまま30年たつと、手数料を魅かれ続けた1000万円は、半額の500万円以下に目減りしています。
公的年金が頼りないので、個人年金をという気持ちはわかりますが、老後までにお金が必要なことはいろいろと出てくるでしょう。
遠い老後のために個人年金に加入するより、いま、なるべく住宅ローンを減らして教育資金を貯めたほうが、家計は健全になるのではないでしょうか。(執筆者:荻原 博子)