「しつけ」と「虐待」の決定的な違いとは?

R25 2016年8月27日

親が子どもに対して暴言を吐いたり暴力を振るったりする、いわゆる「虐待」があとを絶ちません。2015年には全国の児童相談所で対応した虐待件数が、統計を開始して以来、過去最多の10万3260件となりました。子育て中の人はもちろん、将来子育てする可能性がある人たちにとって、注視すべき事態であることは間違いありません。
虐待事件のニュースでは「親自身はしつけだと考えてやっていた」と伝えられるケースも少なくなく、その線引きは曖昧にとらえられがちです。しかし、「しつけと虐待はまったく性質が異なるものです」と語るのは、国立成育医療研究センター・こころの診療部部長で、親子関係の問題や児童のメンタルヘルスに詳しい奥山眞紀子氏。
「しつけというのは、当て字として『躾』、つまり『身』を『美しくする』と書くように、美意識を伝承する意味合いが含まれています。その社会や文化の中で美しいとされる『感覚』や『型』を子どもが身につけることがしつけの本分です。一方、虐待というのは『子どもの権利』を侵害すること。子どもの権利とは、子どもが心身ともに健康に、自分らしく育つために、しつけも含めて自身が成長するための適切なケアを受けられることを指します。
一方で、親が行動を改善させたいと思っていても、暴力をふるったり、恐怖を与えるような強い言葉を使ったりしてしまえば、適切な教育には当たらず、子どもの権利を侵害していることになります。したがってそれは『虐待』に当たります」
ただ、なかには「厳しく指導しないと言う事を聞かない」という理由で虐待してしまったケースも。しかし、奥山氏は「そうした指導はまったく効果を持たない」といいます。
「暴力で子どもの行動が望ましい方向に変わったり、また、教育の効果が出たりすることはないと考えた方がよいでしょう。 1979年のスウェーデンを皮切りに、北欧諸国では家庭における体罰禁止を法律に規定し、他の国も追随してきました。結果、体罰を禁止した方が、子どもの行動変容を促すことがわかっています。子どもは『こういうことをして褒められた→嬉しかった→次もやろう』というように前向きな感情によって気持ちが変遷し、行動に表れていくものです。たとえ怒られたとしても、『次は怒られないようにその行動をしない』という思考の流れが必要です。しかし、『叩く』『怒鳴る』という恐怖が与えられると、子どもはそこから逃れることだけに集中してしまうので、行動変容にはつながりません」
何より危険なのは、子どもは恐怖で従っているだけなのに、その様子を見て親が「言う事を聞いた」と思ってしまうこと。
「子どもはその場の恐怖や緊張を何とか乗り切ろうとして、親の希望する言葉を発することになり、本当の意味で行動を変える流れにならないのです。つまり、親の側ではしつけのために仕方なく暴力という手段を取ったと考えていても、『言う事を聞かない→虐待を加える→行動は変わらない→さらに虐待する』という負のスパイラルに陥ってしまうのです」
とはいえ、親も感情を持つ人間。しつけのつもりが子どもに対する怒りやストレスが度を越して、手を上げたり、強い言葉を浴びせてしまったりすることもあるかもしれません。しかし、それがあったから二度と取り返しがつかないというわけではありません。諦めずに親も成長していくことが必要だと奥山氏は言います。
そんな子育てで最も必要なのは“子どものニーズ”に合わせて向き合うことなのだそう。
「子どものニーズに合わせるということは、子育てにおいて一番の基本です。危険を感じて不安や不快になったときに、子どもは泣くなどの行為で“不快”を表現します。それに対して、抱く、優しくゆする、ミルクをあげる、おむつを替えるなどの適切なケアをすることで、子どもは親をいわゆる“安全基地”とみなし、不安なときは親に寄って行くようになります。子どもが安心感を抱けるようになると、遊びや冒険といった探索行動をするようになります。その時には、『一緒に遊びたい』『手助けしてほしい』といった子どものニーズに親が合わせることによって、子どもの達成感や満足感が育ち、発達につながります。子どもの行動には何らかの背景があります。まずは、『この子はなんでこういう行動をしたんだろう』と考え、理解しようとする姿勢が親には必要です」
そのためにも、母親自身が夫をはじめ周囲から育児のサポートを受け、余裕を持っていることが不可欠だと言います。自信がないとき、うまくいかないと感じたときには、保健師さんなどの専門家へ相談することも大切。いま育児をしている人も、これから母親になることを望んでいる人も、まずはしつけと虐待の違いを理解したうえで、子どもと向き合うことが欠かせないといえるでしょう。

日本運動疫学会、ポケモンGOなど身体活動を促進するゲームの普及推進へ

エコノミックニュース 2016年8月27日

国民の運動や身体活動と健康に関する研究・促進活動を行っている日本運動疫学会が、位置情報を活用したARゲーム「ポケモンGO」を評価し、こうした身体活動を促進するゲームの開発・普及を期待する旨の声明を発表した。同声明では2016年7月に発表された医学誌「ランセット」から、世界的な身体活動不足が深刻化し健康に悪影響を与えているとの内容を取り上げ、これに対してポケモンGOなどの身体活動を促進するゲームが健康に対してポジティブな影響を与える可能性があるとしてる。身体活動不足については、わが国でも疾患や老化、QOLの低下と関連する危険因子として捉えらえており、13年には政策として「健康づくりのための身体活動基準2013・身体活動指針(アクティブガイド)」が策定されるなど重要視されている。
健康維持促進の観点から評価されているポケモンGOは、外に出て歩くことでゲームを進めていくゲーム内容となっている。運動量の増加により「肥満の予防、骨粗しょう症の予防、更年期障害の改善、筋肉量の増加、意欲向上、睡眠の質向上」など様々な効果が期待できる。アメリカの調査会社によれば、ポケモンGOの平均利用時間は33分25秒と、厚生労働省の推奨する「1回30分の運動を週2回以上することや、1日20分程度のウォーキング」の要件を満たしている。歩くことに加え、ゲームによって脳の報酬系が刺激され「ドーパミン」の分泌が促されるため、意欲が向上することもわかっている。
カナダ放送協会電子版によると、カナダでは社交不安障害で7年間自宅に引きこもっていた女児が、ポケモンGOによって、街に出かけることが可能になったとのこと。これ以外にも鬱病や社交不安障害、強迫神経症や依存症といった精神疾患に悩む人がポケモンGOをやるようになって症状が改善した事例が数多く出てきており、成功体験や目標を得られるツールとしてもポケモンGOが評価され始めている。
ポケモンGOの身体活動及び精神活動を促進する効果は、ゲームをプレイしたことのある人であれば誰もが実感しているだろう。だからこそ同ゲームはこれほどまで爆発的に普及し、高い継続率を維持していると考えられる。ポケモンGOは時間と費用、手間をかけて行われてきた政策や治療などをあっという間に飛び越えた健康効果をもたらしている。日本運動疫学会のみならず、ポケモンGOの成功でその影響力の大きさが世間で認知された。今後こうした身体活動を促進するゲームのさらなる有効活用への動きが起こると考えられる。(編集担当:久保田雄城)

貧困の子供への贈与非課税 子や孫以外にも適用検討

SankeiBiz 2016年8月27日

政府が、祖父母や親が子や孫に教育資金を贈与した際に適用される贈与税の非課税制度について、貧困の状況にある子供に贈与した際にも適用するよう検討していることが26日、分かった。文部科学省、内閣府、厚生労働省、金融庁が8月末にまとめる2017年度税制改正要望に盛り込む。
もともと高齢者に偏る資産の現役世代への移転を促し、少子化対策や消費喚起を狙った措置だが、贈与の対象を貧困の状況にある親戚や血のつながらない子供にも広げることで、生まれ育った家庭環境や貧困の連鎖によって子供たちの将来が閉ざされることを防ぐ効果も見込む。
教育資金贈与の非課税制度は30歳未満の子や孫らに教育資金を一括で贈与する場合、1人当たり1500万円までであれば贈与税が非課税になる。18年度までの措置で学校の授業料や習い事の月謝などが対象。