小池知事“子どもファースト”の社会的擁護明言

Japan In-depth 2016年10月16日

去る9月22日に、社会的擁護下にある「すべての子どもたちに温かい家庭を」をテーマに地方議員を中心に、当事者、里親さん、事業者等で運営し、
上田が代表を務める「こども@ホーム」にてレインボーフォスターケア代表・藤めぐみさんを講師に招き、「社会的養護とLGBT」勉強会を開催した。
LGBTカップルに対象を広げることによって、里親の人的資源を確保するのみならず多様な価値観を有する家族は、社会的養護の子ども達が置かれた過酷な状況を理解しやすいということ。何より里親に、若くしてなれるというメリットなど新たな里親の選択肢を共有した。里親推進をさらにLGBTまでに広げようという社会的意識が高まっているといるが、東京都の歩みは遅い。
都では、確かに「家庭“的”養護を推進」としているが、要注意なのが、この中に小規模施設(グループホーム)も含めていることだ。(上田ブログ参照)愛着障がい回避のため重要な赤ちゃん時代、生後一ヶ月未満の乳幼児の里親委託はゼロとなっている。
世界では要保護児童は「施設から家庭へ」が主流となってきていることから、このような市民活動はもとより都議会議員として、議会活動でも質してきた。なぜ施設での養育に東京都が拘るのか…果たしてそれが正しいのか?経費の観点から見てよう。

【施設種別 児童一人あたりの予算額】(注1)(2015年第二回定例会文書質問より)

民間(=社福)児童養護施設
(社会的養護の必要な児童を養育する施設)
予算額※  111億313万円
予算規模  2,803人
児童一人当たりの予算額 396万1千円
(※民間グループホームの一部経費を含む。予算規模には、民間グループホームを含む。)

民間(=社福)グループホーム
(地域の中で家庭的な雰囲気の下、6人程度の児童を養育する小規模施設)
予算額※  22億4千338万3千円
予算規模   852人
児童一人当たりの予算額 263万3千円
(※民間児童養護施設に含まれるものは除く。)

乳児院
(社会的養護の必要な乳幼児を養育する施設)
予算額  34億5千609万7千円
予算規模  507人
児童一人当たりの予算額 681万7千円

ファミリーホーム
(養育者の自宅で5~6人の児童を養育する事業)
予算額  3億5千53万1千円
予算規模  123人
児童一人当たりの予算額 285万円

養育家庭等
(所謂里親・児童を養育する家庭)
予算額  7億6千3百万9千円
予算規模  419人
児童一人当たりの予算額 182万1千円
以下、さらにわかりやすく切り出してみた。

「施設養護」
児童養護施設  約400万円
グループホーム  約260万円
乳児院  約680万円

「家庭養護」
ファミリーホーム 約280万円
養育家庭等  約180万円

ちなみに、
「特別養子縁組」=0円である。

コスト面から考えても、里親や特別養子縁組を推進すべきであることが明確だ。なかなか、東京都から「脱施設・里親推進」について明快な方向性が得られぬままこう着状態が続いていたが、突如として転機が訪れた。平成28年7月31日「都民ファースト」を高らかに掲げ、政党や組織の後ろ盾もなく圧倒的勝利を果たした都政史上初の女性首長、小池百合子知事が誕生したのである。
おりしも、知事の初議会となった第三回定例会は、私が一般質問担当であった。要保護児童、養護施設にいる子どもについて、子どもの権利条約二十条では、「特に、里親委託」と定義され、都の東京都児童福祉審議会は、乳児は里親に委託すべきと答申をしていること。一方、日本の里親委託は主要国最下位の12%、都も12%で全国平均16.5%以下であり、「国の社会的養護の課題と将来像」の里親委託率のグラフ(22P)、「東京都はグループホームと里親・ファミリーホームの合計を60.0%(2,248人)定めているため全国計から除く。」とされていることなどを踏まえ、都における脱施設、里親推進に向けて、早速小池知事の姿勢を問うた。

知事の答弁を全文ご紹介する。
「社会的養護についてのご質問がございました。子どもは皆それぞれ異なる個性や能力を持ち、未来への無限の可能性を秘めております。
全ての子どもたちが生まれ育った環境に左右されずに、個性や創造力を十分に伸ばし、社会の一員として自立できる環境を整備していくことは、むしろこれは社会全体の責務といえましょう。
東京には、さまざまな事情で親元では暮らせない約4000人のお子様がいらっしゃいます。こうした子どもたちの健やかな育ちを支えることが社会的養護の役割でございます。
私は、社会的養護のもとにある子どもたちもできるだけ家庭と同様の環境において養育されることは、まさに望ましいと思います。
子どもにとって家庭は安らぎの場であります。そして、人間形成の行われる最初の場でもございます。こうした考えのもとで、社会的養護の施策展開に当たりましても、養育家庭を初めとした里親制度の活用を中心に進めていきたいと考えております。」
「社会的養護の施策展開に当たりましても、養育家庭を初めとした里親制度の活用を中心に進めていきたい」この一言がどれほど、家庭を求める子ども達と、子ども達を待っている里親さん、そして特別養子縁組を望んでいるカップルに福音となったかわからない。
神は細部に宿るというが、国際派でもある小池知事の言葉の隅々に、子どもの権利条約の理念が行き渡っていることを議場で胸を熱くしながら聞いていた。これまで区議・都議として男性首長と渡り合ってきたが、このような人類愛を感じさせる答弁を聞いたことがなかったからだ。今後も「子どもファースト」な児童・教育政策となるよう、私も二元代表制の議会側の人間として取組んでいく所存だ。
(注1)施設等の種別ごとの児童一人当たりの年間予算については、グループホームの経費や養育家庭を支援する職員を配置する経費を児童養護施設の予算に計上しているため、算出することは困難。仮に、児童福祉法による児童入所施設措置費等の平成27年度予算額を単純に予算規模で除算した額を児童一人当たりの予算額とした。(東京都福祉保健局)

ADHD、アスペルガー症候群、自閉症スペクトラム―薬物治療に頼らず改善する“逆転のコミュニケーション法”

ダ・ヴィンチニュース 2016年10月16日

心理学・児童発達の分野で全米ベストセラーになった、今世界で注目される「NHA」のメソッド『逆転のコミュニケーション法NHA こころを育てるアプローチ 難しさを抱えたすべての子どもたち、おとなたちへ』が2016年10月13日(木)に発売された。
NHAとは、正式名Nurtured Heart Approach。直訳すると、「こころを育てるアプローチ」というアメリカで生まれたコミュニケーション法。アメリカでは、50州のうちほとんどの州にNHAで学んだトレーナーがいる。現在、世界中で活躍しているNHA認定トレーナーはおよそ1,900人以上にも上る。NHAでは、3つの誓いと4つの承認テクニックで問題行動を改善していく。

・3つの誓い
第1の誓い NO!ネガティブなことに反応しません
第2の誓い YES! ポジティブなことに大きく反応します
第3の誓い クリア! ルールは明確に

・4つの承認テクニック
1.ありのままの真実を描写
2.相手の価値を認める
3.起きていないことを指摘
4.承認の機会を作り出す

NHAが活用されている場面は、学区全体での導入や、学校全体ですべての職員が研修を受けたり、家庭、裁判所、児童福祉施設、青少年更生施設、メンタルヘルスクリニック、養子施設、会社など様々。更にアメリカだけにとどまらず、イギリス、オーストラリア、ベルギー、スウェーデン、アイスランド、イスラエル、南アフリカ、オランダ、インド、韓国、ベトナムなど世界各国に広まっているメソッドだ。
考案者であるアメリカの心理学者ハワード・グラッサーは、子ども成功財団創始者としても知られ、テレビ、ラジオなどにも多く出演し注目を集める「子どもが薬物治療に頼らない治療を紹介している最も影響のある人物」と評されている。
NHA(こころを育てるアプローチ)は、今まで何万人もの人生を変えてきました。アメリカだけでなく世界の子育てのやり方、学校教育や療育の方法に影響を与えています。NHAにより、それまで「問題」とされていた子がハッピーな自立した子に変容をとげました。親も、先生も、施設の職員もそれまで無理だと思っていたようなポジティブな変化を見ることができたのです。
本文より
日本でもNHAを実践することで、ADHD、アスペルガー症候群など精神疾患の治療だけでなく、学校や家庭、そして社会における人の指導や教育の仕方が大幅に変わるだろう。

<都内保育所>人件費割合に差 株式会社運営、国想定下回る

毎日新聞 2016年10月16日

毎日新聞は、東京都内の民間の認可保育所と小規模保育所の昨年度の財務状況を東京都に情報公開請求し、計1205施設について調べた。株式会社の運営する保育所では、大半を補助金で賄う事業活動収入に対する人件費の割合が平均で50%程度だった。国や地方自治体は、保育士に十分な待遇を確保するための人件費割合を「70%程度」と想定し、補助している。しかし、企業によっては資金を保育所の新設に回すなど国の想定と実態がかけ離れており、保育士の待遇改善が進まない一因になっているとみられる。
都は昨年度から保育士の処遇改善のため民間を対象に独自の補助制度を開始。助成の条件として各保育所に財務状況の一覧の提出を求めた。毎日新聞は、都の補助対象となる保育所と小規模保育所計1506施設の情報公開を請求し、8月末時点で未提出分や未記載などのあった施設を除いた上で、社会福祉法人の運営する866施設と株式会社の339施設を調べた。社会福祉法人は国の想定並みの69.2%だったが、株式会社の施設は49.2%にとどまった。
補助金は全国共通の制度に加え都道府県や市区町村独自の上乗せがある。全国共通部分は人件費や備品購入費、給食費など使途ごとに積算し、人件費は70%程度としている。これに対し、複数の企業が毎日新聞の取材に「人件費割合70%の想定が実態に合っていない」と答えた。資金を新規開設や本社の管理費に充てる必要があることや、社会福祉法人に比べ自前の土地・建物を持っていない施設が多く、賃貸料がかかるなどと説明している。【桐野耕一、黒田阿紗子】

待遇改善促す支出ルールを
待機児童解消を急ぐ国は、昨年度から多様な運営主体の参入をさらに促進しており、今後、株式会社の保育所の急増が見込まれている。しかし厚生労働省は社会福祉法人と株式会社の経営の実情を把握しないまま税金の投入を続けており、保育士の待遇の改善に十分な効果を上げていないのが実情だ。
厚労省は2012年度に実施した保育所の経営実態調査などを基に人件費割合を70%としている。だが、調査に回答した株式会社の数は極めて少なく、実態を反映しているとは言えない状況だ。
保育システム研究所の吉田正幸代表は、「保育所は保育士のマンパワー中心の産業構造。株式会社でも60%程度にはなるだろう」と指摘する。
ただ、株式会社は配当や税負担などもあり、社会福祉法人とは運営環境が異なる面もある。問題は、貴重な税金が効果的に使われていない仕組みにある。国には、保育所経営の実情を踏まえた上で、待遇改善に確実につながるよう補助金支出の明確なルール作りが求められる。【桐野耕一】

受験生だからといって家族の中で特別視しない<叱らない、ほめない子育ての極意>

幻冬舎plus 2016年10月15日

ミリオンセラー『嫌われる勇気』をはじめ数々の著書を通じて、「アドラー心理学」を日本中に広めた岸見一郎さん。
実は、岸見さんがアドラー心理学と出会ったのは、子育ての悩みがきっかけでした。
当時2人のお子さんの保育園の送り迎えをしていた岸見さんは、大人の思い通りに動かない“子ども”という存在に、戸惑い試行錯誤していたそうです。そんな時、まだ日本語に翻訳されていなかったアドラーの著書を友人から借り、実行してみたところ、自身の子どもに対する考え方が大きく変化しました。
ウィーンに世界で初めての児童相談所をつくるなど、教育に強い関心を寄せていたアルフレッド・アドラー。そのアドラーの哲学を凝縮、現代の子育ての悩みを踏まえた上で、どう「実践するか」を書いた一冊、『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』から、<叱らない、ほめない子育て>の極意を抜粋して紹介いたします。

受験生だからといって家族の中で特別視しない
受験生も家族の一員であることは間違いありません。ですから、受験生という特権を与えられ、ただ勉強だけしていればいい、と子どもが思い、親もそれを認めているというのであれば、そのことによって問題が起こりうるということもあらかじめ知っておいてもいいかもしれません。
もしも勉強しかしない子どもがいるとすれば(実際には受験を控えて勉強しなければいけないのに、親が思うほど子どもが勉強しないことの方が問題かもしれませんが)、それは仕事中毒の大人や、恋愛のことばかりがいつも頭を占めている若い人が、それ以外の他のことにはまったく関心がないのと同じです。
仕事ばかりしている人は、仕事が忙しいので家に帰ってまで家のことをするエネルギーも時間もないというかもしれませんが、本当のところはそうではありません。むしろ、仕事以外のことをしたくないので、仕事が忙しいことを理由として持ち出すのです。
子どもたちも、もしも親が勉強さえしていればいいというようなことをいうと、勉強しなければいけないから、勉強以外のことは何もできないというようになるかもしれません。その上、実際には肝心の勉強もできていないということもありえます。これは困ったことではないでしょうか?
家族の一員として協力できる子どもになることが先決である、と私は考えています。いや、今は勉強さえしていればいいのだ、と親が思い、子どもに協力することを教えず、他の人に貢献する機会を与えなければ、たとえ受験に成功しても、それから先の人生において子どもを待ち受けているであろう様々な──しかもおそらくは受験以上に難しい──課題を前にした時に、たちまち、子どもは勇気を挫かれることになってしまいます。人生における課題は、協力することによってのみ解決できるからです。
私はもちろん、勉強しないでいいといっているのではありません。むしろ、家庭で受験生だからといって、特別視されるのではなく、親や他のきょうだいと良好な関係を持ち、家庭内で家族の一員として協力できるようになって初めて、勉強も進捗する、といいたいのです。なぜなら、協力することで、自分が他の人に役立てると思えた子どもだけが、自分のことを好きになり、勉強も含め、自分の課題を解決できる自信を持てるようになるからです。
しかし、もしも自信を持てなければ、子どもが直面する受験にも最初から挑戦しようとしなくなるかもしれません。そのようなことがないように、親としては何としても子どもが自信を育む援助をしたいところですが、そのためには叱咤激励すればいいというような簡単な話ではありません。
不用意な親の言葉が、子どもの自信と勇気を容易に挫いてしまうのです。そうならないために、具体的に子どもにどんなふうに声をかけていけばいいかを学ぶ必要があります。それを学ぶことは、子どもに勉強できる環境を整えることと同じくらい、あるいは、それ以上に大切なことといえます。
今の年齢の子どもは親の援助が必要です。しかし、その援助が有効であるためには、子どもが親の援助を拒むようなことにならないことが必要であり、そのためには子どもとよい関係を築かなければなりません。