青森浪岡・中2自殺/LINE履歴に仲間外しのトーク

Web東奥 2016年12月22日

今年8月、青森市立浪岡中学校2年・葛西りまさん=当時(13)=がいじめを訴えて自殺した問題で、昨年8月、無料通信アプリ・LINE(ライン)で多数の生徒が閲覧できるグループトークの中で「退会させるか」との投稿があった直後に、葛西さんが一方的にグループから除外させられて仲間外しに遭ったことが21日、遺族への取材で新たに分かった。
葛西さんのスマートフォンに、ラインの履歴を写した画像が残っていた。当時、グループトークは同中の生徒十数人が参加。複数の生徒が葛西さんと特定できる表現で容姿を蔑視したり、「おかしいよね、死んでほしい」などと投稿していた。
さらに「退会させるか」「じゃあね」などの投稿があり、生徒の1人が葛西さんをグループトークから退会させていた。
取材に応じた友人によると、葛西さんはその後、グループトークで自身に関するどのようなやりとりが続いているのか、気に掛けている様子だったという。
ライン上の中傷に関しては、青森県警が調査し、20日には事実無根なうわさを流したり中傷した侮辱や名誉毀損(きそん)の疑いで、女子生徒10人弱を児童福祉法に基づき児童相談所に通告した。葛西さんの自殺との因果関係の有無については判断していない。
捜査関係者によると、葛西さんは1、2年時にわたって中傷を受けていたとみられる。県警はライン上での中傷が反復、継続していた点や、多数の生徒が閲覧できる状態だった点を重くみた。

青森中2自殺、LINEで中傷した同級生を児相に通告…警察介入の先例となる可能性も

弁護士ドットコム 2016年12月22日

青森市立中学2年の葛西りまさん(当時13)がいじめを訴える遺書を残して8月に自殺した問題で、青森県警は12月20日、無料通信アプリ「LINE」上で葛西さんを中傷したとして、同級生数人を名誉毀損や侮辱の非行内容で児童相談所に通告した。
報道によると、同級生らは葛西さんに対して「きもい」「ブス」などと暴言をはいたり、LINEで毎日のように「死んで」「目障り」といった言葉を書き込んだり、事実とは異なる噂を流したりしたという。同級生らは書き込んだ当時、少年法の規定で刑事責任に問われない14歳未満だった。
学校内外での子どもの言葉の暴力に対して、警察が介入するのは異例だという。今回のニュースをどう考えればいいのか。今後のいじめ事件への影響はあるのか。舟橋和宏弁護士に聞いた。

加害者への刑事責任追及には3つのハードルがある
「いじめ加害者に対して刑事責任を追及することは、ハードルが高い場合が多いといえます。いじめ被害者側、警察側、そして学校側の3つのハードルがあるためです。
まず、刑事責任を追及するには、警察による捜査が行われることが必要です。そのためには、いじめの被害者やその家族が警察に被害届の提出などを行う必要があります。
ただ、いじめの被害者やその家族の多くは、警察に被害届などを提出したり、相談をしに行くことに心理的な抵抗があります。『警察に行くことで逆恨みされ、いじめが悪化するのではないか』『学校の内申に響くのではないか』などと考えてしまうためです。
警察側も、14歳以下の事件の場合、少年事件として扱えないと判断し、被害申告を拒絶することもあります。また、学校側がいじめの調査について非協力的なために、警察が介入してもなかなか捜査が進まない場合もあります」
今回、刑事事件化したことによって、今後のいじめ事件に何らかの影響が及ぶ可能性があるのだろうか。
「警察は先例がないと、なかなか被害届などを受理してくれず、従来、学校内部でのトラブルに警察が介入しないことはままありました。しかし、今回の一件を契機に、先例があるとして、今後、警察が被害申告を受けた場合、学校トラブルへの介入を積極的に行う可能性はありうると思っています。
いじめは、もちろん内容にもよりますが、基本的には刑法に反する犯罪に当たることは間違いないのです」

いじめ加害者への今後の処分は?
いじめに関係した同級生数人は児童相談所に通告されたということだが、今後どのような処分を受けることになるのだろうか。
「通告を受けた児童相談所は、いじめ加害児童に対し、成育歴や家庭環境、審理・精神面から、なぜ当該児童が犯罪行為を行ったのか、その背景を調査することになります。その上で、福祉的措置(当該児童、父母への訓戒や児童福祉施設への入所措置)を取ったり、家庭裁判所での審判が相当として家裁送致を行うことが考えられます。
家裁送致の場合には、一般的な少年事件と同様に、家庭裁判所調査官による調査が行われ、児童自立支援施設への送致や少年院送致といった保護処分などが下されることが考えられます」
民事上の責任として、自殺した女子生徒の遺族が、いじめに関係した同級生に対して損害賠償請求をすることはできるのか。
「遺族は、いじめの加害者の生徒たちに対して、女子生徒の逸失利益(生きていたならば得ていたであろう収入など)や娘を亡くしたことに対する慰謝料などを請求することはできます。しかし、いじめ事件はえてして加害者側も十分な資力がないことが多いですから、その賠償が十分になされることは難しいでしょう。
もっとも、公立の場合には行政、私立の場合には学校側に対し、損害賠償を請求できる場合もあります。また、加害者の親がいじめを知っていながらも、自分の子どもの行動を制止などしなかった場合には、親に対して、管理責任を追及し、損害賠償を請求できる場合もあります」
最後に舟橋弁護士は次のように述べていた。
「いじめは、いかなる理由があっても絶対に許されるものではありません。しかし、残念ながらいじめをゼロにすることも困難だといえます。
もっとも、近年、いじめ防止対策推進法が施行され、いじめに対する学校の調査義務などが定められ、少しずつ状況は変わってきています。このような中、大事なことは、いじめが発生してしまった場合、自治体、学校、法律家、警察など各団体、そして周りの大人たち一人一人が適切に対応し、被害者も加害者も含め、誠実に対応することだと私は思っています。
そうすれば、彼女のような痛ましい事件を少しでも減らしていくことができる。私はそう思っています」