衝撃の幼児虐待死事件を追った『鬼畜の家』著者が語る、“芯のない人間”を生み出す家庭環境とは

週プレNEWS 2016年12月28日

極限状態に置かれた人間が垣間見せる、むき出しの人間らしさ――作家・石井光太が一貫して持ち続けているコンセプトである。
それは、わが子を虐待し、ネグレクトし、死に到らせ、社会から「鬼畜」と呼ばれることになった人間を描いても同じだ。
今年、最も衝撃的だったノンフィクション『「鬼畜の家」 わが子を殺す親たち』で、石井さんは次の3つの事件を追っている。

「厚木市幼児餓死白骨化事件」
2014年5月、神奈川県厚木市のアパートから幼児の白骨遺体が見つかった。遺体は齋藤幸裕の長男のものだった。04年に妻が家出をして以来、幸裕は電気、ガス、水道が止められたゴミまみれの部屋で長男を育てていたが、やがて外に恋人を作りアパートに帰らなくなった。放置された長男は07年冬、オムツと一枚のTシャツだけを身につけて絶命。幸裕は事件の発覚を恐れ、その後7年間も家賃を払い続けていた。

「下田市嬰児連続殺害事件」
2014年10月、静岡県下田市の民家で、ふたりの嬰児(えいじ)の遺体が発見された。母親の高野愛(いつみ)は、高校2年生の時から10年あまりで8人もの子供を妊娠する奔放な性生活を送っていた。愛は自らが殺(あや)めた嬰児を天井裏と押入れに隠していた。殺害の動機は「中絶費用を用意できなかった」ことだった。

「足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件」
皆川忍と妻の朋美は次男に虐待を繰り返し、ウサギ用ケージに監禁した挙句、2013年3月に死亡させた。遺体を遺棄した後も、マネキンを使用するなどして次男が生きているように見せかけ、児童手当や生活保護費を不正受給。遺体はまだ見つかっていない。

これらの事件の取材を通して、著者は何を感じたのか――。

本作は、物心もつかないような子供が犠牲になった事件のルポルタージュです。取材していて辛(つら)くなったりはしなかったんですか?
石井 正直、犠牲になった子供のことを考えて眠れなくなったことも多々ありました。目を背けたい事実もあった。しかし一方で、マスメディアが報じる「中絶費用がないから殺した」とか「ウサギ用ケージに閉じ込めた」とか、僕には全然理解できなかったんです。しかし、理解できないことにこそ何かがあり、それがノンフィクションを書く動機になる。そこに何があるのか、調べてみようと思ったのが出発点でした。
もうひとつのきっかけとしては、『浮浪児1945―戦争が生んだ子供たち』という本を書いた時、74年間、児童養護施設で働いていたおばあさんから聞いた言葉がありました。彼女は、昔の浮浪児には人間としての「芯」があったけれど、今の子供にはないと言った。昔の浮浪児は空襲で親を失うまでは普通の家庭に育っていたから、極貧生活が何年続いても普通の大人になっていった。
しかし今、児童養護施設で暮らす子供のほとんどは虐待を受けていたので、環境がいくら恵まれていてもうまくいかない。それは生まれた瞬間から親に存在を否定されてきたことで「人間としての芯」がないためだというわけです。それを聞いた時に、どうやって芯のない人間が生まれていくのか知りたいと思ったんです。

本書で取り上げた3つの事件の親たちも、まさに「芯のない人間」と言えます。彼らにはどんな共通点がありますか?

石井 何か困難に直面した瞬間に思考停止してしまうことです。普通はそれを乗り越えるために考えるものですが、彼らは困難をそのまま受け入れてしまう。非常に受動的なんです。自分ではどうすることもできないのに周囲に助けも求めず、悪循環が続いて結果として子供を死なせてしまう…。この本のテーマとなっているのは、そんな芯のない人間を生み出した家庭環境です。
例えば、下田市嬰児連続殺害事件の高野愛は母親の支配下に置かれていた。母親は未婚のまま3人の子供を生みましたが、子供たちには威圧的で意思を尊重することはなく、特に長女の愛には厳しく当たっていた。そして愛自身も多くの子供を抱えるシングルマザーとなり、生活が困窮し母親の家に転がり込むと、母親は必要以上の生活費を愛からむしりとっていました。
このように、これらの事件を起こした者たちは親に何を言っても聞き入れてもらえなかったため、すべてを受け入れ、聞き流すことしかできない人間になっていったんです。親から愛されたことも信頼されたこともないから、他者の気持ちを考えることができない。親にカネをむしりとられたら、自分も親になったら子供からむしりとっていい、あるいは子供が言うことを聞かないからウサギ用のケージに閉じ込めたっていい…おそらく経験上、そういう考え方しかできなくなっていたのだと思います。

そういう育てられ方をした彼らが自らの子供を虐待する。普通の親は、子供は泣くのが当たり前だと知っていますが、これらの事件の親たちは泣き止まない子供に激高し、虐待を繰り返す…。
石井 幼児を育てている母親の大半は精神的に追い詰められた経験を持っていると思います。ただ、僕はそれ自体はあり得ることだと思うんです。たとえ、子供に手を出してしまったとしても「ごめんね」と謝る。そして、叩いてしまったことを旦那さんに相談する。それを見た子供は、「ママは自分のことを考えてくれているんだ」と理解する。結果的に、叩いたことで生まれる家族の信頼関係もあるでしょう。
しかし、これらの事件の親たちはそうではなかった。理由もなく子供を殴り、「産まなければよかった」などと罵(ののし)り、「おまえなど死んでしまえ」と家から放り出す。こういう子供は親の気持ちを想像する余裕もなく、生きていくために思考を停止して暴力を受け入れるしかなくなる。何を言っても意味不明の理由で暴力を振るわれ続ければ、その場をしのぐためにそうするしかないんです。その結果、その子は他人の気持ちを考えられず、親と同じように感情に任せて暴力を振るう大人に成長するんです。
足立区の事件の皆川夫妻は、メディアでは「生活保護を受けるために子供をいっぱい産んだ」などと書かれていましたが、元々はそんな計算もしていなかったと思います。すでに5人も6人も子供がいて、一家の収入は派遣社員である夫のわずかな給料だけなのに、もうひとりつくったら家計がどうなるのか想像できなかった。他人への共感どころか、自分のことすら考えられないんです。
皆川朋美の母親もまた、粗暴な性格で若い頃からトラブルを起こす人でした。朋美もこの母親に大きな影響を受けたのでしょう。困難な生い立ちを経験しても普通に育っていく人はたくさんいますが、やはり根っこの部分が歪(ゆが)んでしまうと、まともな大人へと成長するのは難しいのだと思います。

先ほど戦後の浮浪児との比較をしましたが、昨今の虐待事件は現代社会が抱えた病とは言えますか?
石井 いや、現代に限ったことではないでしょう。先述の高野愛のケースでは祖母の代からシングルマザーで悪循環は始まっていました。このように、上の世代から続いてきた負の連鎖の終着点がこれらの事件だったのだと思います。親が家庭を崩壊させて、その中で育った子供がこういう事件を起こす…家系の中で爆弾が引き継がれていて、その爆弾がどんどん大きくなっていったのです。
仮に、彼らが事件を起こさなかったとしても、次の代が起こすことになったかもしれない。いわば、時限爆弾を世代から世代へ回しているだけの話。どの世代で爆発するかは誰もわからないんです。だから、これは現代社会に特有の問題ではなく、総合的な家系の問題と考えるべきで、どこかで負の連鎖を断たなければいけないのだと思います。

もう一点、彼らに共通していることは、子供が生まれた時点では、普通の家庭があったということです。皆川一家の手紙や写真を石井さんは見ていますね。そこには本当に幸せそうな家族の姿があった、と。
石井 それは偽りのない姿だったと思います。絶望の中に唯一の救いがあるとすれば、彼らが「それでも愛しています」と言っていることです。「いや、殺してるじゃん。そんなの愛じゃない」という反論もあるでしょうが、彼らからすると「それでも愛している」というのは「うまく愛せなかった」という絶望の裏返しなのです。誰だって、殺したくて殺したわけではない。でも彼らは愛し方がわからなった。

それは高野愛が、自宅に隠した嬰児の遺体を「押入れの子」「屋根裏の子」と呼んでいたことにも表れていますね。
石井 「外に捨てて犬に食べられたらかわいそうだから、ずっと押入れや天井裏に置いておきました」と裁判で彼女は泣きながら言っていました。押入れや屋根裏に閉じ込めた遺体であっても、やはり自分の子供だと思って愛しているからです。もちろん、歪んだ愛情ですけどね。
厚木の齋藤幸裕はゴミにまみれた暗い部屋に長男を監禁していましたが、「ちゃんと育児していた」という彼の裁判での証言は本心からのものだったと思います。幸裕が帰宅すると、幼い長男はいつも「パパ、パパ」と喜んで近づいてきた。幸裕がポルノ雑誌を細かく千切って紙ふぶきのように宙に散らすと、それを見た長男は喜んでいたそうです。異常な暮らしの中で、少なくともその瞬間にはふたりだけの幸せがあったのでしょう。いや、あったつもりなのでしょう。
しかし、幸裕を含め、これらの事件の親たちは育児に対する常識的なイメージを持っていなかった。そして、彼らの周囲にはお手本となる家庭も、助けてくれるコミュニティもなかった。例えば、出産や子育てで困難を抱えている人のための無料電話相談がありますが、いきなりかけてみるのは抵抗があっても、周囲にこれを利用したことのある人がいれば、じゃあ私も電話してみようかなとなるじゃないですか。ところが、彼らは自らコミュニティを狭め、どんどん孤立していきました。

難しい問題ですが、児童相談所などの公的機関だけではなく、地域社会とのコミットが大事なのですね。
石井 こういった事件が明るみに出るたびに、インターネットには彼らを罵(ののし)る言葉が溢(あふ)れます。しかし、そうやって断罪することは彼らをコミュニティから切り捨てていく行為にほかならない。そして、数週間もすれば事件そのものが忘れられていく。だからこそ、僕はこの本を書きたいと思いました。彼らは子供を愛したかったけど、できなかった人たちです。それは絶望ではあるけれど、かすかな希望でもある。こういった人たちを弾かずに、いかにしてコミュニティに入れていくかという観点が必要なのではないでしょうか。

いじめっ子を訴えられる? 転校させられる?

日経DUAL 2016年12月28日

子育て世代に起こりやすいトラブルの実例とその対処法を、弁護士法人・響の徳原聖雨弁護士に伺う人気企画。第8回は子どもにまつわるトラブルです。いじめ問題、虐待に気づいたら・・・などママ・パパから寄せられた身近な困りごとに、弁護士さんが解決法をアドバイスしてくれました。
CASE1 子ども宛ての手紙は勝手に開封してよいか
Q.自分の子ども宛ての手紙が届いたので、子どもが帰ってきたらすぐに確認できるように開封しておきました(もしくは、開封して中身を確認しました)。すると子どもが、すごいけんまくで怒ってきました。親であれば未成年の子どもの手紙を開封して中身を確認することは問題ないですよね?

A.刑法には、信書開封罪というものがあります。これは、特定の人から特定の人に宛てた封をしていた手紙などを、正当な理由がないにもかかわらず開封してしまうことを罰するものです。他人の手紙はもちろん、家族であっても、無断で開封してしまうと罪が成立する可能性があります。開封すること自体を罰するものなので、手紙の中身を実際に読んだか読んでいないかは罪の成立には関係ありません。
もっとも、信書開封罪は親告罪、すなわち被害者が訴えないかぎり罪にはならないものなので、家族間の場合には実際に訴えることは少ないでしょうし、実際に警察に被害を訴えたとしても事件として扱われない可能性があります。家族のことは家族で解決するように、といった具合です。
では、どのような場合に正当な理由があるといえるのでしょうか。子どもが未成年の場合、ご両親は親権者ということになります。親権者には、子どもが正しく成長するように見守りサポートする義務があります。そのため、親権行使の範囲内ということであれば、正当な理由があるといえます。例えば、子ども宛てに不明な請求書が届いていたので中を確認した、などであれば正当な理由といえるかもしれません。
なお、「親展」と書かれていたとしても、親展は、その人に宛てた手紙だということを明確にしているものなので、他の人の手紙を開けてはいけないということに変わりはありません。未成年の子ども宛てにきた親展でも、親権行使の範囲内、つまり正当な理由があれば、親は開封しても罪に問われない可能性が高いです。

親子といえどもお互いのプライバシーを意識しつつ、封を開けたとしても問題とならないような親子関係を普段から作っておくことが大切なのかもしれませんね。

子どものいじめ、訴えられる?

CASE2 子どものいじめで学校や相手を訴えられますか?
Q.小学生の娘が先日、「学校、楽しくない……」と。聞いてみると同じクラスの人に「死ね」などの暴言でいじめられているとのこと。娘は泣きながら訴えてきたので、精神的に相当つらいのだと思います。学校や相手を訴えることはできますか?
A.今のいじめは、暴力などではなく「言葉」によるいじめが圧倒的に多いです。「死ね」「クズ」「ゴキブリ」「キモい」など、本人を前にした悪口やLINEでの誹謗中傷などです。暴力だと身体にアザが残るなどするので、周りに知られてしまうのを避けたいという考えがあるのかもしれません。
いじめがそこまで悪質ではなく、子どもが登校できている場合には、しばらく様子を見るということもあり得るでしょう。ただ、悪質かどうかは親ではなく子ども目線で考えるべきです。決して自分の物差しで考えないようにしてください。登校できていない場合には、子どもの教育を受けるという権利を守る必要がありますので、法的に何かできないかを検討したほうがいいかもしれません。例えば、「いじめ防止対策推進法」という法律に基づいて、弁護士から学校に対して、いじめの事実があったかどうか調査するように求める、などです。
いじめの事実が認められた場合、加害者の生徒に対しては、傷害罪などで刑事告訴と不法行為による損害賠償請求をすることが考えられます。以前は警察も、子どものいじめについての捜査には積極的ではなかったのですが、最近はいじめによる自殺などが報道されるようになったことで、暴力や物を隠されるなどのいじめの場合は、警察も動いてくれることが多くなってきました。それだけ、いじめ問題が深刻化しているということです。
損害賠償額は、被害者生徒が自殺してしまったなど深刻な事態に至っていない場合は、そこまで大きな額にはならない可能性があります。被害者生徒としては、お金よりも、自分のなかで区切りをつけるためや、加害者生徒が何の責任も取らずに大人になるのは許せないから請求したいという気持ちのほうが大きいかもしれませんね。

いじめる側を転校させられる?

CASE3 いじめの加害者は転校・退学させられるか
Q.では、損害賠償請求はしないにしても、いじめの加害者を転校・退学させることはできますか?
A.まず、学校に対しては、いじめの実態をより詳細に調査することを求めましょう。生徒へアンケートをとったり、直接聴き取りをしたり、などです。また、被害者生徒が安心して教育を受けられるよう、別室授業やクラス替えなどを求めてみてもいいかもしれません。
被害者生徒の親御さんの中には、学校に対して「加害者を転校させてほしい」と希望する方が多いでしょうが、法律上はできません。公立の小学校・中学校は、児童生徒に対して退学処分を下すこと自体が法律上、禁止されています。私立の場合であっても、退学処分には強制的に加害者生徒を排除するという側面があることから、退学処分が違法と評価されてしまう危険もあります。学校が退学処分を下すか否かの判断は、学校にとっても非常に難しいです。
代替的なものとして、加害者生徒を出席停止としてもらうように求めるということはあり得るでしょう。

あざがあるなど、虐待のサインを見つけたら

CASE4 虐待かなと思ったら
Q.子どもの身体や身に着けている服が汚い、顔や足にあざがある、などなど虐待と思われるサインを見つけた場合、どうしたらいいでしょう。
A.あるときネットの動画投稿サイトにて、母親が子どもを蹴り倒す動画が投稿されて話題になりました。実際にこのような場面に遭遇することはあまりないかもしれませんが、子どもを守るために何をすべきかを知っておくのは大切なことです。
虐待にも様々な種類があります。殴る・蹴るなどの「身体的虐待」、性的行為などを強要する「性的虐待」、食事を与えない・家に閉じこめるなどのネグレクト、無視・目の前で家族に暴力を振るうなどの「心理的虐待」などです。
子どもが虐待を受けていると自ら訴えることはまれです。子どもは、「誰かに話したらもっと虐待されるのでは」「自分が悪いからたたかれるのだ」など、恐怖や思い込みのもとにあることが多いです。
法律上、虐待を見つけた人は誰でも児童相談所や福祉事務所へ通告をしなければならない義務を負っています。通告という言葉の感じからすると、仰々しく聞こえるかもしれませんが単に電話で相談することでも大丈夫です。仮に、虐待ではなかったとしても何か責任を負うことはありませんし、犯罪者になるわけでもありません。また、通告した人が誰なのかは人に知らされることもありません。
虐待をなくすためには、上記のように周りからの目が大切であることは間違いありません。ただ、そもそも虐待を減らす社会にするということも大切です。
そこで、子育て中の親御さんに伝えたいことがあります。子育ては本当に大変です。子育てをしている中で、悩んだり苦しんだりすることは自然なことです。思い通りにいかない子どもにいらいらし、手を上げてしまいたくなるかもしれません。ただ、子どもが頼れる大人は親であるあなたです。全部を我慢しなさい、というわけではありません。親であるあなたも、つらいときには誰かに相談してみてください。相談するのが児童相談所や、地域の子育て支援センターでもいいと思います。子どもが1歳なら、あなたも親としては1歳です。無理をする必要はありません。

みんなで支えあいながら、虐待をなくすことができればと願っています。

目指せ 非行の「駆け込み寺」 長崎少年鑑別所の相談事業 専門機関のノウハウ生かす

長崎新聞 2016年12月28日

長崎少年鑑別所(長崎市橋口町)が、子どもや子育てに悩む保護者からの相談事業を活発化させている。昨年6月の法改正に伴い、「法務少年支援センターながさき」を新設。心理や教育の専門職員が相談に応じている。専門機関としてのノウハウを生かし、非行や家庭内暴力などの「駆け込み寺」を目指す。
少年鑑別所は、逮捕されるなどした少年を、家庭裁判所での審判を受ける前に収容する施設。家裁からの要請に応じ非行に至った原因や背景を解明し、更生方法を探る。収容期間は最長8週間。大人の刑務所に当たる「少年院」とは性格が異なる。
鑑別所はこれまでも一般の相談には応じていたが、あくまで非行少年らの収容鑑別業務を優先していた。しかし、昨年6月施行の少年鑑別所法は、一般から相談受け付けなど地域支援活動に積極的に取り組むことを明記。全国52カ所の鑑別所に同月、それぞれ外来相談所「法務少年支援センター」が置かれた。
「開かれた鑑別所」を目指す背景には、少年司法をめぐる昨今の情勢の変化もある。警察庁のまとめによると、少子化に伴い、14~19歳の刑法犯の摘発人数は平成以降でピークだった2002年の約14万2600人から15年は約4万人に激減。鑑別所の入所人員も減っており、長崎では03年は180人を超えたが、今年は56人(27日現在)にとどまる。
長崎少年鑑別所は従来、外来相談室として使っていた隣接地の「浦上青少年相談室」をセンターに衣替え。専門職の心理技官や法務教官らが非行、親子関係、職場や学校でのトラブルなどについて無料で相談に応じている。1~11月末に寄せられた相談件数は96件。例年の50件前後に比べほぼ倍増した。
同鑑別所は、教職員向けの施設見学会を今年初めて実施。子どもの問題の相談機関として児童相談所は広く知られるが、鑑別所の認知度はまだ高くない。浅川重俊庶務課長は「『虐待問題は児童相談所、非行問題などは鑑別所』といった具合にすみ分けができれば」と説明する。幸野豊首席専門官は「鑑別所が持つノウハウを地域に還元し、子どもたちの非行・犯罪防止に貢献したい」と話す。