社説[特別養子縁組]家庭養育 根付かせたい

沖縄タイムス 2017年1月15日

子どもの養子縁組をあっせんする事業者の要件を定めた「養子縁組児童保護法」が、先の臨時国会で成立した。
TPP関連法やカジノ法の陰に隠れて大きく報じられることはなかったが、戸籍上も実子となる「特別養子縁組」を根付かせるための重要な法律である。
虐待や貧困などの事情から実の親と暮らせない子どもたちを、血縁関係がなくても愛情を注いで家庭で育てる制度として機能させたい。
新法の柱は悪質業者の排除と、許可を得た事業者の支援だ。
昨年11月、千葉県の業者が養親希望者と現金のやりとりがあったとし、児童福祉法違反容疑で強制捜査を受けた。
大阪市のNPO法人は実親が養親を選ぶサイトで「産んでくれたら最大200万円相当の援助」と呼び掛け、市から「人身売買の誤解を招く」と行政指導を受けた。
新法では、民間のあっせん事業を現在の「届け出制」から、都道府県知事による「許可制」へと規制を強化。無許可であっせんした場合の罰則も設けている。
許可要件は「営利目的でない」「個人情報を適切に管理する」などで、許可を得た事業者には国や自治体からの財政支援も盛り込んだ。
民間で活動する団体の多くは、予期せぬ妊娠をした女性と養育を希望する親を結びつける乳児の特別養子縁組をサポートしている。
専門的な知識に基づいて真面目に取り組む事業者には支援を惜しまず、養子縁組が促進されることを期待する。

虐待などで親と暮らせない子どもが全国に約4万6千人いる。その9割近くが児童養護施設や乳児院などで生活しているという。
先進諸国と比べ「施設偏重」が批判される中、昨年改正された児童福祉法は里親委託や養子縁組の促進をうたっている。「施設から家庭へ」と政策を転換するものだ。
「家庭養育」を重視する背景には、後を絶たない子どもの虐待死がある。特に生まれて間もない赤ちゃんが犠牲になるケースが目立っているからだ。
原則6歳未満の子どもを対象とする特別養子縁組は、児童相談所のほか民間団体や医療法人が仲介し、2015年の成立件数は544件とここ数年急増している。
望まない妊娠をした実親の相談に乗り、出産直後に養親に赤ちゃんを託す特別養子縁組は、子の命を守るセーフティーネットの役割も果たす。

県内では、生後2カ月の長女に暴行を加え死亡させたとし、29歳の母親が傷害致死容疑で逮捕される事件があったばかりだ。
おととし夏、うるま市の団地敷地内で生後間もない女の子が置き去りにされる事件もあった。
中央児童相談所とコザ児童相談所が扱った特別養子縁組は12年度からの3年間で11件にとどまっている。
さまざまな事情で親が育てられない赤ちゃんがいる。子どもを望む夫婦も多い。
特別養子縁組という選択肢をもっと周知すべきだ。

止まらぬ少子化の流れ… 出生数100万割れ 戦略的な人材育成が必要

産経新聞 2017年1月15日

日本の少子化が深刻さを増してきた。厚生労働省の推計では2016年の年間出生数が98万1千人にとどまり、ついに100万人の大台を割り込む見通しとなった。
多くの日本人が少子化を強く意識するようになったのは、前年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に出産する子供の推計値)が丙午(ひのえうま)の年を下回ったことが分かった1990年。いわゆる「1・57ショック」であった。今回の「ミリオン・ショック」も危機を再認識させる機会となるだろう。
だが、真に懸念すべきは100万人割れではなく、その後も出生数減少の流れが止まらないことである。国立社会保障・人口問題研究所によれば40年後には50万人にも届かず、100年も待たずして25万人を割り込むという。
最大の要因は、これまでの少子化の影響で「将来の母親」となる女性の数が減っていくことにある。仮に今後、ベビーブームが到来したとしても、簡単には出生数の増加とはならない。そもそも成熟国家となった日本が「多産社会」に戻ること自体が考えづらい。
それは過去のデータが証明している。2005年と2015年を比較しよう。合計特殊出生率は過去最低の1・26が1・45にまで回復したが、年間出生数を見れば106万2530人から100万5677人へと、5万6853人も減っている。
こうした流れはさらに加速しそうだ。総務省の推計によれば、25~39歳の女性は2035年には現在の4分の3ほど、2060年には半減するという。少子化がさらなる少子化を呼び起こす悪循環である。出生数の減少に歯止めがかかるには相当長い歳月を要するということだ。

偏れば社会が機能せず
少子化は人口減少を招く。厚労省の人口統計で初めて人口減少が確認されたのは2005年で、2万1266人の減だった。昨年の減少幅は31万5千人の見込みとなり、10年余りで15倍に膨らんだ。
少子化スピードを緩めなければ、人口減少に耐え得る社会への作り替えの余裕がなくなる。当面の少子化対策は出生数の回復より、社会を作り替えるための“時間稼ぎ”に力点を置かざるを得ない。
出生数の減少は幅広く影響を及ぼす。その1つが人材の育成・確保を困難にすることだ。子供の絶対数が激減するのだから、今までと同じように各分野に人材を輩出できなくなる。
これまでの人手不足は景況に大きく左右されてきたが、今後は絶対的な後継者不足に陥ることが想定される。人材争奪戦の結果、特定分野に偏れば社会が機能しなくなることもあり得る。

長期計画が欠かせない
問題はそれだけではない。一般的に人数が多いほど人々は切磋琢磨し全体のレベルも向上するが、絶対数が減ればそれもできない。
政府・与党には外国人労働者でカバーしようとの動きもあるが、欧米の混乱ぶりを見れば限度があることがよく分かる。受け入れ困難な職種も存在する。
人工知能(AI)やロボット開発も期待を集めるが、多くはいまだ実用化の段階にない。こうした分野を目指す若者の絶対数も少子化によって減っていく。成果に時間がかかることが予想されよう。
少子社会で社会を機能させるには、どの仕事に、どれぐらい人材を要するかを十分に把握し、長期の育成計画を立てなければなるまい。
国家として必要な人材を確保していくには、まず育成したい分野や人材像を明確にすることだ。給付型奨学金なども一律支給ではなく、優先配分の発想が必要となろう。
日本人でなければならない仕事と外国人に任せる仕事を分けることも求められる。外国から労働者を招き入れるのではなく、任せられる分野は思い切って海外に委ねる国際分業が不可欠となる。
高度な人材を育成する大学も在り方を見直さざるを得ない。「18歳人口」が減少するのに大学数を増やしてきた結果、いまや半数近い私立大学が定員割れしている。
50%を超した進学率をこれ以上伸ばすことは難しい。むしろ、大学に進学せずとも多くの収入を得られるよう、専門の技能や知識が身に付く進路を充実させることだ。
人口減少社会において、子供たちの夢を尊重しつつも必要な人材を育てるには、日本全体として戦略性を持った取り組みが必要となる。(論説委員・河合雅司)

年金、来年度は0・1%減…3年ぶり減額

読売新聞 2017年1月15日

2017年度の公的年金の支給額が、16年度から0・1%引き下げられる見通しとなった。
国民年金(基礎年金)は満額で月額6万4941円(16年度比67円減)、厚生年金は会社員だった夫と専業主婦のモデル世帯で月22万1279円(同225円減)となる。16年の物価下落が影響した。17年4月分(受け取りは6月)から引き下げられる。
年金額は賃金や物価の変動率に応じて毎年度改定され、引き下げとなれば14年度以来、3年ぶりとなる。厚生労働省は今月下旬に17年度の年金支給額を確定する。賃金や物価が上昇した場合に年金の支給額を抑制する「マクロ経済スライド」は、17年度は発動されないことになった。
先の臨時国会で成立した年金改革関連法に基づく新たな改定ルールは、21年度に導入されるため、今回の引き下げには影響しない。

<児童虐待>家裁が早期関与…都道府県に保護者の指導勧告へ

毎日新聞 2017年1月15日

政府は、児童虐待対策として、家庭裁判所が早期に関与できる制度創設の方針を固めた。現在は、親子を強制的に引き離す際に関与しているが、その前段階で、都道府県に対し、児童相談所(児相)を通じて保護者を指導するよう勧告できるようにする。早期の関与によって、家庭で生活しながら親子関係が改善するように促す。
20日開会の通常国会に児童福祉法などの改正法案提出を目指す。
新制度は、子どもと同居している保護者が児相による再発防止のための指導に従わない場合などを想定する。児相による申し立てを受け、家裁は都道府県に対し、児相が保護者を指導するよう勧告する。
現在も都道府県知事が保護者に対して児相の指導に従うよう勧告する制度があるが、権限を児相に委譲している自治体もある。家庭に介入する児相に対して、保護者は不信感を抱きやすいため、指導の実効性に乏しいケースが多かった。中立的な家裁の関与という「お墨付き」で、保護者に指導を受け入れやすくする。
現状の司法は、子どもを保護者から引き離したり、親権を停止したりする際に関与している。昨年成立した改正児童福祉法は「家庭での養育」のために保護者を支援することを国や自治体の責務として明記。新制度は、これを推進する狙いがある。
家裁の勧告があっても保護者が従わなければ、子どもをより良い養育環境に移すことが求められる。しかし、親子を強制的に引き離す必要性を見極める判断は難しく、結果として最悪の事態を招くケースもある。家裁の勧告があっても保護者が指導に従わなければ、児相が施設入所や里親委託などに踏み切る判断材料となる。
政府は当初、家裁が直接保護者に指導を受けるよう「命令」することを想定していたが、「司法の家庭への介入」に対する慎重論は根強く、都道府県を通じた勧告に落ち着いた経緯があり、厚労省内にはより実効性を高める対応を求める声もある。【黒田阿紗子、阿部亮介】