虐待児保護、家裁の関与強化…改正案提出へ

読売新聞 2017年2月16日

厚生労働省は15日、虐待を受けた子供を保護する際、家庭裁判所の関与を強化する方針を決めた。
家裁が都道府県に対し、養育環境の改善など保護者への指導を勧告する制度を新設する。児童相談所が指導をスムーズに行えるようにするのが狙い。同省は今国会に児童福祉法などの改正案を提出する。
現行制度でも、児相は保護者に対し、養育環境の改善を指導することはできるが、保護者から強い反発を受け、指導が難しくなるケースが少なくない。
新制度では、保護者の同意なく施設に入所させる審判を家裁に申し立てた後、家裁の勧告に基づいて、保護者を指導する。

生後当日の虐待死 どうすれば減らせるか?

YOMIURI ONLINE 2016年9月21日

3歳以下が9割、0歳も半数超え
先週(9月16日)、厚生労働省が2014年度の虐待死の検証結果を公表しました。亡くなった18歳未満の子どもは71人で、無理心中を除くと44人でした。3歳以下が9割近くで、0歳が27人で半数を超えました。そのうち15人は生後0日での虐待死だということです。
加害者は実母が28人で一番多く、実父が3人でした。亡くなった44人の子どもの実母のうち、「望まない妊娠」だったのは24人。生後0日の虐待死15人のうち、14人の母親は「望まない妊娠」で、11人は母子手帳ももらわない「未受診妊婦」でした。
この結果をもとに、「欲しくないのにセックスをして妊娠するからこういうことになる」「妊娠について無知であることが原因だ」という感想を持たれる方も多いと思います。義務教育や家庭教育でバースコントロールについて十分に教えられているとは言えないため、そういう考えも成立します。
ですが、たとえ知識があっても低用量ピルやアフターピルは安価ではなく、医療機関を受診しないといけないため、女性が避妊法にアクセスしやすいとは言えないのが日本の現状です。こちらは1万円は下らないというアフターピルの価格を下げるなど、改善の余地がかなりあると思います。

支援の手にどうつなぐか
望まぬ妊娠をしても、人工妊娠中絶が可能な週数で医療機関を受診したり、間に合わない場合は妊婦健診を受けたりすれば、ソーシャルワーカーや行政へつなぐきっかけとなり、なるべく安全な施設での出産や、育児支援、乳児院への入所、養子縁組など何らかの対処で、虐待死という最悪な結果は免れることができると思います(妊婦さんの社会的背景も問診してフォローするという意識のある医療機関を受診した場合ですが)。でも、医療機関を受診しないままだと、私たち周産期医療がサポートを届けることはできません。
大阪府の にんしんSOS など予期せぬ妊娠をした女性の相談窓口を設け、アクセスしてもらおうという試みもなされていますし、厚生労働省も同様の事業を始めるとのことです。しかし、幅広く周知されるのはなかなか難しい上に時間もかかるでしょう。予期せぬ妊娠をした人が誰かに相談することのハードルの高さもあります。妊娠したことを認めたくないあまり、お 腹なか が大きくなるまで月経が来るのを待っている、ということも珍しくありません。

望まぬ妊娠をさせた男性にも責任を!
避妊へのアクセス、妊娠した女性の相談窓口へのアクセスは必要ですが、妊娠は女性だけでは 出来でき ない以上、いつまでも妊娠した女性だけに責任や罪を負わせていてはいけないと思います。「望まぬ妊娠」や虐待死の影には、セックスして女性を妊娠させた男性がおり、場合によっては妊娠させたことに気付いてもいないか、気付きながら逃げたという事実があるわけです。彼らには、セックスした相手が妊娠したり、自分が養育に関わらなければ孤立して困窮したりするだろうということが想定できないわけはないでしょうから、未必の故意だと言えると思います。
現在の法律では直接、虐待に関わらなかった男性は罪に問えませんが、妊娠する性である女性だけが重い罪に問われるのは不平等ですし、予防の観点からも男性も罪に問えるようにしてほしいです。外来で日常的に「妊娠したけれど、それを伝えたら相手の男性と連絡が取れなくなった」という女性の声を聞く身からすると、法改正をしてDNA鑑定でもなんでもしてほしいですね。そして、セックスとはどういう結果をもたらす行為なのか、思春期の男女に実用的な情報も伝える仕組みが急務だと思います。
今回の厚労省の検査結果は、生後0日の虐待死は「望まぬ妊娠」、未受診妊婦、医療の管理のない出産による赤ちゃんが多かったという結果で、意外性はありませんが、検証結果を今後の予防に役立てるために本気の対策をお願いしたいと思います。

障害児預かる放課後施設、虐待や手抜き横行

読売新聞 2017年2月15日

障害児を放課後や休日に預かる「放課後等デイサービス」事業で、児童や生徒への虐待や、質の低いサービスが横行していることが、明らかになった。
福祉のノウハウを持たず、営利目的で参入する業者が相次いでいることが大きな要因として、厚生労働省は4月から、専門知識を持つ職員の配置を義務付けるなど、運営の条件を厳しくする方針を決めた。

4年で81件
「職員が児童に性的な虐待を加えている」。昨年10月、外部から情報提供を受けた東京都と足立区は、株式会社が運営する同区内の放課後等デイサービス事業所に対し、児童福祉法に基づく立ち入り調査を行った。この事業所によると、昨年夏頃、複数の男性職員が女児のスカートをめくったり、わいせつな言葉をかけたりしたほか、部屋の一角にバリケードを組み上げて児童を閉じこめたこともあったという。都と区は、事業者に改善を指導。事業所の社長は「職員の行動に目が行き届かなかったのは申し訳ない」と謝罪し、今後は定期的に職員の研修などを行い、事業を継続するとしている。

<児童養護施設入居者>22歳まで自立支援 住居や生活費

毎日新聞 2017年2月16日

◇厚生労働省は4月から総合的な支援を実施

18歳で児童養護施設や里親家庭を出なければならない子どもについて、厚生労働省は今年4月から、22歳の年度末まで住居や生活費を提供する総合的な支援を実施することを決めた。大学や専門学校への進学率が約8割となるなど、自立する年齢が上がっていることを受け、虐待や経済的理由から実の親と過ごせない子の金銭面の負担を軽減し、確実な自立を後押しする。
現在、施設や里親家庭で過ごせる年齢は原則18歳まで。自立が難しい場合、例外的に20歳まで認められるが、進学していた場合や病気で仕事をすることが難しくなった場合は、住居や生活費の確保が難しい子も少なくなかった。
昨年5月に成立した改正児童福祉法で、何らかの理由で家庭にいられず、働き始めた15~20歳の子が入居する「自立援助ホーム」について、入居対象を「22歳までの進学した子」に拡大することになった。だが、離職したり学校を中退したりすると、退去しなければならない問題は残っていた。
このため、同省は、就職や進学を条件にせず、それぞれの子の状況に応じて、22歳までは児童養護施設や里親家庭、自立援助ホームで過ごせるようにする。食費など生活費の支援も実施し、本人はアルバイトなどの収入に応じて最大3万円程度の実費を負担する。
また、進学のために施設などを出て1人暮らしを始める場合は、最大月約5万円の家賃貸し付け事業を利用できる。卒業後に5年間働けば、返済を免除する。病気などで学校を中退した場合も、期限付きで貸し付け事業の家賃相当の生活費を支給し、次の生活基盤作りにつなげる。1人暮らしを始めた後は、事前に作成した支援計画に基づき、定期的に支援担当者と面談する。
支援の費用は国が全額負担する。【黒田阿紗子】