児童養護職員の給与2%増…厚労省、新年度中に

読売新聞 2017年2月27日

厚生労働省は、民間の児童養護施設の全職員に対し、2%の給与改善を行う。
保育、介護職員の給与改善に足並みをそろえる措置で、2017年度中に開始する。役職や業務に応じた手当などの増額も行うことにしており、人手不足の緩和を目指している。
児童養護施設は、児童福祉法に基づき、家庭での養育が難しい子を受け入れている。施設には親などから虐待を受けたり、障害の疑いがあったりする子供もいる。職員は夜勤や泊まり勤務もあるため、人材の確保が難しい状況が続いている。
15年10月時点で全国に602か所あり、約2万8000人の入所者に対し、職員は約1万7000人。施設の運営費の多くは、国などが支出しており、施設側に支払う基準を引き上げることで、職員の処遇改善を実現する。

「赤ちゃんの命を救う」特別養子縁組あっせん法の今後の流れ

駒崎弘樹 認定NPOフローレンス代表理事 2017年2月25日

2月24日、私も呼びかけ人として参加している「日本こども縁組協会」が主催で、特別養子縁組あっせん法成立に尽力してくださった国会議員の方々をお呼びして、パネルディスカッションを衆議院議員会館で行いました。
非常に大切な論点や情報が出てきたので、ポイントを箇条書きにしながら、本記事で広く社会的養護にご関心のある皆さんとシェアしていきたいと思います。

【法成立後の流れ】
・野田聖子議員より「超党派議員をつくる」と冒頭で宣言。法律は骨組みだけなので、政省令で詳細部分を詰めていく作業が今後待ち受けているが、厚労省が下案をつくって、議連会合でその進捗をチェックしていく流れに
・一般的によくとられる、厚労省が審議会等を組成し、そこに有識者等を呼んで検討していく形にはならない様子
・2年以内施行ということなので、2018年12月までには施行しなくてはならない。よって、周知や説明なども考えると、2017年中に政省令はほぼ作成される

【大阪の不正事業者は排除を明言】
・現在、ネットで親のスペックだけでマッチングを行い、ソーシャルワーク等を一切せず、かつ「産んだら200万あげます」等と人身売買行為を行なっている不正団体があり、そこに行政指導が8回近く行われているが、逮捕や業務停止には至っていない
・しかし新法が施行されたら、こうした事業者は許可されず、許可なしで営業した場合、刑事罰も与えられる、と厚労省と遠山議員が明言
・(駒崎感想)現在、「両論併記」的なアプローチでSPA等のメディアが取り上げているが、新法施行後は明確に犯罪行為になるので、メディアもしっかりとそれを弁えて報道して頂きたい

【許可された事業者への補助について】
・現在、赤ちゃんの命を救う、大変責任ある児童福祉事業者にもかかわらず、特別養子縁組団体は一円も支援を受けていない
・ここに対し、厚労省及び議員の方々も問題意識を感じており、政省令に基づき、予算に盛り込んでいくと厚労省発言。
・補助単価等は、これから政省令によって規定していく

【里親の年齢基準の見直し】
・現在、特別養子縁組では、養親の年齢をおよそ45歳前後まで、としている団体が多い
・これは厚労省が定める里親のガイドラインにおいて、45歳と定められていることを根拠としている。
・45歳なのは、「子どもが成人した瞬間に介護の負担を負うことになるのは、子どもの人生を考える上で適切とは言えない」ということであったため。
・しかし、健康寿命の伸び等から、現在65歳以上としている高齢者の定義を変更する必要があるのではないか、という議論が出始めているため、それに合わせて里親年齢基準も変更していくかどうかを厚労省が検討している
・里親年齢基準が変わると、特別養子縁組年齢基準も変わっていくので、より多くの人たちに養親の門戸が開かれる可能性が出てくる

【産科病院との接続】
・産科において、課題を抱えた特定妊婦のケアや、特別養子縁組への理解があるとは言い難い現状
・厚労省の方から、通知等で産科病院への理解を求めていく方向性
・また、会場の大学病院の医師から「不妊治療とセットで特別養子縁組の選択肢を医療側も提示していくべきでは」というご意見もあり、野田聖子議員も大いに賛同
・現在分断されている、特別養子縁組を含めた家庭養護と、産科医療を繋いでいく必要性があることが、強く認識された

【最後に】
赤ちゃんの虐待死を防ぐ、特別養子縁組制度の今後を占う上で、非常に重要かつ濃密な機会になったかと思います。
日本こども縁組協会では、今後も超党派議連と厚労省に対し、現場で手を動かす立場から、実態に即した提言を行なって参りたいと思います。
そして、あるべき制度づくりに貢献していこうと思っています。10年後には、赤ちゃんの虐待死なんて過去の野蛮な遺物になっているように。

赤字の特養3割も 全国経営協が報酬改定に向け調査

福祉新聞 2017年2月27日

全国社会福祉法人経営者協議会が、今春に議論が始まる2018年度介護報酬改定に向けた提言の基礎資料とする目的で行った調査結果(暫定)で、赤字の特別養護老人ホームが3割を超えることが分かった。
加中英喜・高齢者福祉事業経営委員長(社会福祉法人眉丈会理事長)は20日、横浜市で開いたセミナーで「まだ調査結果を分析している段階だが、データを整理してどう訴えていくか検討したい」と説明した。提言は3月中にもまとめ、厚生労働省などに提出する予定。
調査は16年9~11月、3997の会員法人を対象に行い、特養について614法人・918施設から回答を得た。
このうち718施設のデータでみると、平均要介護度は3・95、定員は70・1人、看護・介護職員(常勤換算)1人当たり利用者数は2・1人。
また、15年度介護報酬改定はマイナス2・27%だったが、収入の増えた施設の81・1%が日常生活継続支援加算額が増えた。ほかに看護体制加算1.・2.、栄養マネジメント加算、夜勤職員配置加算の収入額が増えた施設も多く、4加算とも取得した施設では67・8%で収支差額がプラスだった。
待機者数は15年と16年を比べると全国的に減少した。1施設平均で150人から139人になり、要介護度3以上に限っても109人から105人に減った。
また加中委員長は同日、介護の質の評価に関する検討を行っていることも報告。「介護報酬改定にも関連していることであり、一度考え方を整理したい。厚労省は心身機能に着目しているが、福祉サービス的観点からも評価指標を設定する必要がある」と述べた。
評価指標を検討する流れとして評価対象、評価軸、評価項目、評価手法を挙げ、例えば、評価対象に施設の機能だけでなく地域拠点としての機能を含めること、利用者の入所期・減衰期・看取り期など生活ステージごとに評価軸を設けることなどを説明した。
セミナーは2日間行われ、約300人が参加した。地域共生社会の政策、外国人介護人材の動向、介護保険制度の改正について厚労省の講義などがあった。