進学費用1億2000万円寄付 施設の子どもたちへ 80歳女性が50年以上かけこつこつ

西日本新聞 2017年3月31日

大分県別府市の渡邉昭子さん(80)が30日、児童養護施設から大学などへ進学する若者の学費に充ててほしいと県社会福祉協議会に1億2千万円を寄付した。家庭環境が原因で進学を断念する子どもたちの存在を新聞で知った渡邉さんは「貧困の連鎖を止める一助にしてほしい」と話した。
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寄付金は50年以上かけこつこつとためてきた。傘寿を迎えられた天皇陛下が2014年、桜と紅葉が美しい皇居・乾(いぬい)通りを一般公開されたことに背中を押され、自らが傘寿を迎えた今年の寄付を決めたという。県社協は県内9児童養護施設から大学や専修学校に進学する若者の入学金や授業料に充てる方針。約10年間の資金になる見込み。
30日、大分市の県社協であった贈呈式で、渡邉さんは「勉強して資格を取ったり、手に職を付けたりして力強く生きてほしい。資金が無くなるころには教育無償化が実現するといい」。県社協の高橋勉会長は「大きな善意をいただき感謝している」とお礼を伝えた。

17年度先行分、4月中締め切り=給付型奨学金で申請手順―学生支援機構

時事通信 2017年3月31日

政府が新設する大学生らを対象とした返済不要の給付型奨学金に関し、実施主体となる日本学生支援機構は31日、申請手順などを示した案内を公表した。
2017年度の一部先行実施の申し込みは原則的に4月中に締め切られる見通し。
対象は住民税非課税世帯などの大学、短大、専門学校、高等専門学校(4、5年)の学生。給付月額は国公立に通う自宅生が2万円、国公立の下宿生と私立の自宅生が3万円、私立の下宿生は4万円。児童養護施設出身者らには入学金相当の24万円を追加給付する。
17年度は、同年度に入学する私立の下宿生と児童養護施設出身者らを対象に先行実施する。申込書類を在籍大学などで受け取り、出身高校に学力に関する認定書などの作成を依頼。申込書や振込口座届などとともに在籍校に提出する。締め切りは学校によって異なるが、4月中の見通し。早ければ5月中に審査を終え、6月から振り込まれる。

専門医に聞く うつぶせ寝禁止で乳幼児突然死は防げるのか

日刊ゲンダイDIGITAL 2017年3月31日

東京都は「1歳になるまで」とする国の保育指針をより厳しくし、「1歳以上でも必ずあおむけに寝かせる」に変えるという。昨年3月、東京・中央区にある保育施設でうつぶせ寝の1歳2カ月の男児が突然死したことを受け、都の検証委員会が提言したからだ。しかし、うつぶせ寝をさせないだけで年間100人ともいわれる、「乳幼児突然死症候群」(SIDS)は防げるのだろうか。日本SIDS・乳幼児突然死予防学会評議員で川口市立医療センター・新生児集中治療科の山南貞夫医師に聞いた。
「1歳までのうつぶせ寝がSIDSの大きなリスクファクターであることは間違いありません。しかし、1歳以上まで禁止する効果はどうでしょうか。むしろ、禁止期間延長をすればそれですむ、という風潮を警戒すべきです」
SIDSとは、元気にすくすく育っていた赤ちゃんが突然死する病気のこと。1歳未満のとくに生後2~3カ月ごろに多く、男女、人種、経済環境に関係なく起こる。欧米では乳幼児の死亡原因のトップ、日本でも3位とされ、平成27年の厚労省の発表では96人が死亡しているという。
「SIDSと診断されるには、死亡状況調査や解剖検査で他の病気が見つからないことが条件になります。そのため、実際ははるかに多くの乳幼児がこの病気で亡くなっていると考えられています」
SIDSのほとんどが睡眠中に起こっている。とくにうつぶせ寝での発症が目立っているが、その原因はハッキリわかっていない。
「有力なのは、『呼吸をつかさどる脳幹部の発達の遅延だ』との見方です。うつぶせ寝はあおむけに比べて接地面が大きく、赤ちゃんの気持ちが落ち着き、眠りが深くなりやすい。人間は深い眠りに陥ると瞬間、呼吸が止まることがあります。通常は脳幹部の防御反射で覚醒して呼吸を再開しますが、赤ちゃんは脳幹部の呼吸中枢が未熟で防御反射が遅れ、覚醒しないことがあるのです」
一般にはうつぶせ寝だと鼻や口を布団などが覆い、窒息する、と考えがちだが誤解だという。
「あってもマレなケースでしょう。生後間もない赤ちゃんでも呼吸が苦しくなれば顔を左右に変えられます。窒息はふわふわの柔らかいベッドの上でうつぶせになったり、ベッドの柵などで首をつったり、体がはさまったり、親や兄弟が添い寝をして覆いかぶさったりして起こることが多いと思われます」

2つの意外なリスク
問題はSIDS発症のリスク要因はうつぶせ寝以外にもあるということだ。
「たとえば喫煙です。特に妊娠中の喫煙は赤ちゃんの体重を抑え、脳幹にある呼吸中枢の発達に悪い影響を与えます。赤ちゃんの周りで喫煙するのも同じです」
母乳でなく人工乳で育てることもリスクになるというから驚きだ。
「母乳には眠りを致命的なほど深くしないホルモンが含まれています。しかも、人工乳を使っているお母さん方は、寝かせる前に多く飲ませる傾向にあります。母乳と違って人工乳は吸収が遅いので、なんとか吸収しようと睡眠中に胃の周りに血液が一気に集まり、眠りを深くしてしまうのです」
こうした母乳のメリットがわかってきて、母乳育児がしやすい環境が整ったのだが、最近は、それを無視する保育施設が増えている。
「それもSIDSの遠因になっているのではないでしょうか。保護者が望めば保育施設は冷凍母乳の受け入れ体制を整え、母乳育児の継続を支援するよう配慮することが法律の指針など(児童福祉法や食育推進基本計画)で明記されているのに、冷凍母乳拒否の施設が増えてきたのは問題です」
生まれたばかりの子供を失う家庭の悲しみはいかばかりか。少子化を防ぐという意味でも赤ちゃんのうつぶせ寝の禁止期間を延長すればよいという話ではない。