警視庁が公開した「容疑者画像」が女子中学生と判明…少年法の観点から問題ない?

弁護士ドットコム 2017年4月18日

警察が窃盗事件の容疑者画像をネットで公開したところ、その日のうちに本人が出頭。東京都内の中学2年の女子生徒(事件当時13歳)であることが分かり、波紋が広がっている。警察は「20代と考えていた」と説明しているという。
この女子生徒は、特殊詐欺の「出し子」だったとみられ、2月17日に都内のコンビニATMで、70歳代の女性名義のキャッシュカードを使い、84万円を引き出した疑いが持たれている。
警視庁滝野川署は4月12日、防犯カメラに映った少女の画像を公開。警視庁のツイッターアカウントなどで情報提供を呼びかけたところ、その日のうちに女子生徒が出頭したという。警視庁は事実確認した上で、児童相談所へ通告することなどを検討しているそうだ。現在、画像は削除されている。
ネットでは画像公開当初から、「犯人がギャル」などと話題になっていた。中には、つけまつ毛など化粧が濃いだけで「高校生ぐらいかと思う」といった指摘もあった。警察が未成年の顔写真を公開してしまったことは、少年法などとの関係でどう考えるべきなのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。

公開捜査は少年法で直接規制されているわけではないが…
「公開捜査」とプライバシーの関係はどう考えたらよいのか?
容疑者段階での公開捜査については、容疑者の検挙や再犯の防止といった必要性がある一方、容疑者とされた人のプライバシーの問題があります。その両者のバランス次第で、許される場合、許されない場合が出てきます。
軽微な犯罪や社会的な影響の小さい事件についてまで、個人の顔をさらして捜査をすることはプライバシー侵害の不利益の方が大きくなるので、許されないということになるでしょう。
また、公開捜査によって、氏名や容ぼうが公開されてしまうと、本人のあずかり知らないところであたかもその犯罪の犯人であるかのように認識されてしまうという、無罪推定との関係や冤罪被害の問題もあります。

未成年の写真公開は、少年法に抵触しないのか?
まず、少年法は61条で、少年事件や少年の時に犯した犯罪に関して報道する場合、氏名や住所、容ぼうなど個人を特定できるような記事や写真などを掲載してはならないとしています。
犯罪に関する報道は、国民の知る権利や報道の自由にこたえる重要なものですが、これもプライバシー権との衝突が避けられません。少年の場合には、知る権利よりも少年のプライバシー権をより保護しようというのが、この少年法の規定です。
公開捜査は、知る権利に答えるという報道とは異なりますので、少年法が直接規制するものではありません。とはいえ、この少年法の規定の趣旨から、公開捜査でも少年のプライバシーに対する配慮が必要になってきます。

悪いことをしたのに、少年だけが保護されるのはおかしいという論調もあるが…
確かに昨今、ネットなどで、少年は罪を犯しても匿名でしか報道されず不公平だ、少年であっても公開するべきだといった論調が目立ちます。
しかし、少年の健全育成と非行少年の矯正、保護という少年法の目的のため、少年の事件においては、審理の仕方や罰則が通常の刑事裁判とは異なる手続きが予定されています。特にプライバシーに関しては、今後の社会復帰に大きく影響するため、少年審判は非公開であったり、通常の刑事裁判であっても一定の配慮が求められたりしています。
また、犯罪に関する報道は、あくまでも国民の知る権利に答えるものであって、それ自体が懲罰や制裁を目的とするものではありません。少年のプライバシー保護のため、少年を特定できる情報の報道を自粛したとしても、国民の知る権利はある程度は確保できます。報道の目的をはき違えない理解が重要だと考えます。
効果があるからこそ、公開捜査は慎重であるべき

今回の件を受けて、公開捜査はどうあるべきか?
警察庁は、公開捜査の基準として、(1)凶悪犯罪、悪質な手口、被害額が大きく反復継続性の高い財産犯、反社会性の高い集団により敢行された犯罪など一定の犯罪に関するものであること、(2)公開する人物が容疑者であると認める根拠が十分であること、(3)原則として成人の容疑者であること、といったものを設けています。
なお、未成年の容疑者に対しては、その必要性を慎重に判断される必要があるものの、一定の必要性がある場合には、例外的に認められると判断しているようです。
公開捜査が容疑者検挙に一定の効果があることは否定できませんが、公開された人に対する影響は非常に大きいものです。本人の言い分を聞く前に公開されてしまうことから、冤罪などの場合には取り返しのつかないことになりかねません。運用に当たってはきわめて慎重な配慮が必要であると考えます。

児童の性的被害対策、政府が基本計画を策定

読売新聞 2017年4月19日

政府は18日の犯罪対策閣僚会議で、児童ポルノや児童買春など18歳未満の児童が受ける性的被害の対策基本計画を策定した。
基本計画は性的被害について、「インターネットを通じ、長期かつ継続的に児童を傷つけることも多い」と指摘。〈1〉ネット上の性的被害に対し各国政府や民間企業が連携する国際枠組みへの参加〈2〉多くの児童が初めてスマートフォンを手にする進学・進級の時期に重点を置いた啓発活動〈3〉女子高生に接客させるビジネスの実態調査〈4〉児童福祉施設や市町村などでの被害児童の相談体制の充実――など88項目の施策を盛り込んだ。首相は会議で「あらゆる対策に強力に取り組み、児童の安全確保に全力で取り組む」と語った。
児童の性的被害者の数は近年増加しており、児童ポルノは1313人、児童買春は577人(いずれも2016年)に上っている。

痴漢被害者を警察官がナンパ!「モンスター公務員」事例集

ダイヤモンド・オンライン 2017年4月21日

私たちの暮らしを支えてくれている公務員。比較的身近な存在である都道府県庁・市区役所の職員だけでなく、警察官や消防士など、直接お世話になる機会が少ない職種も公務員である。さまざまな公務員がいる中、20~40代男女が「ひどい」「おかしい」と感じる、絶対に関わりたくないモンスター公務員の事例を集めた。(取材・執筆/池田園子、編集協力/プレスラボ)

内部に潜む モンスター公務員の実態
皆さんは「公務員」と聞いて、どんなことを想像するだろうか。安定している、お堅い、社会的信用がある……など、いろいろなイメージがあるだろう。そんな公務員は学生から高い人気を誇る”就職先候補”の一つである。
リスクモンスター株式会社が2017年2~3月にかけて、大学3年生の男女500人(2018年3月卒業予定)を対象に実施した、第3回「就職したい企業・業種ランキング」によると、 1位は「地方公務員」(6.8%)、2位は「国家公務員」(3.8%)と3位の「ソニー」を除き、上位を公務員が独占。1位、2位ともに前回調査と同様の結果が得られたという。
文系・理系別の集計では、文系学生の1位は「地方公務員」(9.6%)、2位は「ジェイティービー(JTB)」(4.4%)、3位は「国家公務員」(4.0%)、理系学生の1位は「資生堂」(4.8%)、2位は「地方公務員」、3位は「ソニー」(4.0%)、5位「国家公務員」(3.6%)との結果に。文系・理系に関係なく、公務員になりたいと考える学生は多いのである。
さて、公務員と一口に言っても、いろいろな職種がある。地方公務員なら、都道府県庁・市区役所の職員に、公立の学校や病院、図書館の職員、児童・福祉施設の職員、上下水道や清掃、ごみ処理施設の職員、警察官、消防士など、かなり幅広いことを押さえておきたい。
筆者は、これまでダイヤモンド・オンラインで、「モンスター◯◯」をたびたび取り上げ、実録として紹介してきた。今回は、通常の感覚では理解しかねるような「モンスター公務員」の事例を20~40代男女に聞いて集めてみた。こんなモンスター公務員と関わったことはないだろうか。

合コンでエグい 思い出を語る消防士
まずは、モンスター度・初級(「筆者が集めたエピソードの中では比較的軽度であり、初級と分類してみた」と補足しておく)の事例から見ていきたい。
「若いときに消防士と合コンをしたことがあります。決して嫌なタイプの人たちではなかったんですが、彼らが現場で見たという悲惨な話を事細かにされたときは、けっこう引いてしまいました。
例えば、消防署内で昼食用にハンバーグを作っていたら、急遽現場に出動することになったんだそうです。当然、ハンバーグはそのままにして、現場へ向かいますよね。それから勤務後に戻ってきて、ハンバーグ作りを再開しつつ『これ、さっき(現場で)見たやつじゃん(笑)』みたいな会話をしたね、と懐かしそうに話すんです。
そんな裏話(?)的なものは聞きたくなかったですし、亡くなった人もいたのに不謹慎だなあと、暗くて嫌な気持ちになりました」(30代女性)
合コンという楽しい場にふさわしい話題ではないし、亡くなった方にも失礼な話ではないだろうか。消防士に関連するエピソードは他にもあった。
「救急隊を呼んだところ、先に消防隊がやってきたことがある。そのとき、消防士らが『とりあえず来ました感』を出していて、やる気がないのに驚いた」(30代女性)
救急現場で消防隊と救急隊が連携して救急・救護活動などを行うことを「PA連携」という。119番通報をすると、通常は現場から最も近いところにいる救急隊が出動するが、救急需要は年々増加傾向にあり、救急隊が出払っていて現場付近にいないケースもある。その場合は現場に近い消防隊が救急隊より前に駆けつけ、患者に応急処置を行うのだ。
「消防士は何もしてくれなかったし、むしろ消防隊がきたことで、近所の人に余計な心配をかけてしまったので、来ないでくれたほうが良かった。最終的には救急隊が来てくれましたし」と、前出の女性は語る。

“ノルマ達成”のため? カップルを長時間問い詰める警察官
続いて、モンスター度・中級(筆者独自の判断)の事例を見ていこう。
「建築系の仕事をしていた彼と付き合っていた10代のときの話です。検問にあって『無免じゃないよね?』と、最初からすごく失礼な質問をされました。金髪に近い髪色の彼と明るい茶髪の私は、確かにけっこう派手な外見をしていて、そのせいで偏見を持たれているなあと感じて、不快な気持ちになったのを覚えています。
その後は車内をくまなくチェックされ、彼の仕事道具を見られた後、一つひとつについて『これは何に使うの?』と問い詰めてきたり、『どうして仕事の日でもないのに、こんなものを持ってるの?』と疑いの目で見てきたり、とにかく質問責めにしてくるんです。
さらに無意味な質問は続き、『今までどこにいたの?』『何してたの?』『いつから付き合ってるの?』など、1時間近く拘束されて神経がすり減りました。警察には検挙ノルマがある、という噂を聞きますが、見た目がチャラチャラしているからといって、疑う気満々で接してくるのは不愉快でした」(30代女性)
やや昔の話になるが、2004年に、兵庫県警の自動車警ら隊隊員による捜査書類ねつ造事件が報じられ、警察内部に存在する厳しいノルマの存在が浮き彫りになった。同隊隊員の間では検挙件数が勤務実績の評価に結びつき、成績が表彰や昇任、異動を左右する要素になること、検挙目標を達成するよう強いられていたことなどが明らかになり、隊員らは書類をねつ造することで、検挙実績を水増ししていたという報道だった。
組織内のポストの数は限られている。警察でもそれ以外でも同じだ。その世界の中でサバイブし、出世の階段を上っていくには、1件でも多く検挙することが必要なのだろう。だからといって、身なりの派手な若者をターゲットにして1時間も拘束するのはいかがなものだろうか。

すべては保身のため? 嫌いな教師を私情で飛ばした校長
「子どもの頃、西日本の某県に住んでいました。多くの地方都市に共通すると思いますが『公立校の教師が一番エラい』とされているふしがあります。公務員=すごい、地元の国公立大学を出て教師になるのがエリートだ、と考えている人はけっこう多いんです。
それもあって、ふんぞり返っている、エラそうな態度をとる教師は少なくありません。私が直接被害を被ったわけではないですが、中学のときの校長が自ら無事に退職したいがために、嫌いな教師を1年だけ他校に飛ばしたことがありました。
きっと、その教師に何か弱みを握られていたか、その教師がいると自分の身が危うくなるかのどちらかで、何かしら都合が悪かったんでしょうね。校長が退職した春から、その教師は戻ってきましたが、今思えばドロドロした世界だなあと嫌になりますね」(30代男性)
身勝手な事情で人材の異動や配置を決めるのは、以前取り上げた「モンスター人事部」で紹介したエピソードに近い部分もあるが、校長という権限をフル活用した、嘆かわしい話である。飛ばされた教師を慕っていた生徒もいたはずなのに。

男ばかりの職場に女子大生 署内で堂々とナンパする警察官
最後に再び、警察官のエピソードを紹介して締めたい。
「大学生のときに痴漢に遭い、加害者をつかまえて、駅で引き渡したことがあります。その後、警察署へ行って被害者供述調書を取られている途中、元気な若い警察官が突然、取調室に入ってきたんです。『ちゃーっす!』みたいな、街中で見かける怖い表情をした警察官らしからぬ、ノリのいい挨拶をされてびっくり。
『痴漢に遭ったんだって? つらかったね。怖かったね。でも大丈夫。僕に任せてよ!』と満面の笑みを浮かべて言う彼に、空腹と緊張、不安でいっぱいになっていた私の心は少し緩んだんです。見た目も爽やかで、ちょっとカッコよかったし、この人、頼りになるかも、と期待したんです。
その後、大学や年齢、住んでいる場所など、いろいろ聞かれたので、さっきも別の警察官に伝えたのにまた必要なのかなと思い、すでに供述調書に取られた内容を馬鹿丁寧に答えていたんです。そんななか、中年のおじさん警察官が戻ってきて『お前、何油売ってんだ。早く戻れ!』とぴしゃり。
若い警察官は『僕、◯◯署の△△ね。◯◯駅出てすぐ右の交番に水・金はいるから、今度遊びにきてよ』と軽いノリで言いながら、取調室から出ていきました。おい、署内でナンパするな! と言いたかったですね」(30代女性)
プライベートのときにナンパするのは勝手だが、勤務中にまさか署内でナンパとは、大胆かつ不真面目な警察官である。しかも、相手は痴漢に遭って傷ついている女子大生に、である。呆れた話だ。

今回はあまり見つからなかったけど… モンスター公務員にあたったら?
実は今回、事例を集めるのに苦戦した。最初は、私たちにとってわりと身近な「公務員」として連想しやすい公務員=都道府県庁・市区役所の職員に焦点を絞って、エピソードを聞いて回っていたのだが、モンスター的な人物の話がなかなか挙がってこなかったのである。
自分自身が都道府県庁・市区役所の職員と接したときの記憶も掘り起こしてみたが、幸か不幸か、やはり一人も思い浮かばなかった。
窓口で私たちに対応してくれる都道府県庁・市区役所の職員は、サービス業に近い業務を担っているからこそ、全員が全員とは言わないが、丁寧で愛想が良く、細やかな人物も多い。
ただ、上記で4つのエピソードを取り上げたように、程度の差はあれモンスター公務員は稀に存在する。できることなら縁を持ちたくない、関わりたくないモンスター公務員だが、運悪く彼らにあたってしまったときは、万一に備えてやりとりを記録しておくのが良いだろう。どんなケースであれ、記録は重要な証拠になる、と意識しておきたい。