マナー違反する他人の子供を「叱るべき」か否か、結果は圧倒的

女性セブン 2017年7月9日

「マナー違反をする他人の子供を叱るべきかどうか」──女性セブン読者の男女422名にアンケート調査を行ったところ、86.5%が「賛成」つまり「叱るべき」と回答した。わが子を叱れない親が増えたといわれる一方で、アンケートでは、「叱るべき」と考え、実行している人が多数派に。あなたはどう考えますか──。
東京都教育委員会が2011年に公表した調査によれば、社会のルールやマナーを守れない子供たちが増えた原因として、約8割の人が、「子供が悪い行為をした時に、きちんと叱れる親や大人が減った」などを挙げた。
一方で、東京学芸大学教育学部教授の岩立京子さんは、いじめやひきこもりなどの問題が続出してきた1990年代以降、子供を社会の中で育てようという考えが、再び広まってきていると話す。
「社会のルールを伝え、子供を育てるのは、親だけでなくすべての大人の責任。こういう考えのもと、登下校の見守りなどが一般的になってきています。マナー違反の子供を注意できる大人は増えています」(岩立さん)
しかし、叱るべきだとわかっていても、躊躇するのもわかると、岩立さんは続ける。
「注意したことで、親や子供に反発されたら、という不安はよくわかります。トラブルに巻き込まれる可能性があるなら、無理をする必要はありません」
叱り方に気をつければ、不安も減るのでは、と言うのは、20年以上保育士を務めた、こどもコンサルタントの原坂一郎さんだ。
「“何しているの!”“なんでそんなことをするの!”といった質問調の叱り方では、ただの文句として届くだけ。効果はゼロです」
子供のよくない行動には、“すべきこと”に短い理由をつけて話せばいいという。
例えば、木に登って危ないことをしている子供には、「危ないでしょ!」と叱るのではなく、「危ないから下りなさい」と言う方がいい。
子供は、叱り方ひとつで、成長もすれば、過ちも繰り返す。子供の心に届ける言葉は、きつい叱責である必要はないようだ。
ちなみに、「実際に叱ったり注意したりしたことはありますか?」というアンケート調査では「ある」という回答は72.3%だった。実際に叱った経験のある人の割合は、「するべき」と思っている人よりやや減るが、それでも7割以上。日本の大人も捨てたものじゃない!?

 

なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか? モンスターマザーの精神的・経済的虐待によって心を操られてしまった「居所不明児童」の悲劇

ダ・ヴィンチニュース 2017年7月7日

「居所(きょしょ)不明児童」と呼ばれる子どもたちがいる。住民登録先から姿を消し、居所が不明になった18歳未満の子どもたちだ。6月29日に厚生労働省が発表した調査で、全国に28人(6月1日現在)いることがわかった(6/29時事通信社)という。これらの児童たちは、虐待や事件に巻き込まれているケースもあるため、各自治体は警察や児童相談所と連携し、安否確認を急いでいる。
『誰もボクを見ていない なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか』(山寺香/ポプラ社)に登場する少年(強盗殺人罪で服役中)は、こうした「居所不明児童」のひとりだった。著者は、傍聴した裁判で明かされた少年の生い立ちに驚愕し、こう記している。
少年は小学5年から中学2年まで、母親と義父に連れられ学校にも通わせてもらえないまま、ラブホテルを転々としたり野宿をしたりして生活していた。さらに、少年は両親から度重なる虐待を受け、「生活費がないのはお前のせいだ」と責め立てられて親戚への金の無心を繰り返しさせられていたという。
少年の母は、他人はだれであろうと「金づる」でしかない、恐るべきモンスターマザーだ。少年も幼少期から、金銭の責任を取らされる経済的虐待を受け続けている。そしてついには、自分の両親(少年の祖父母)を殺して金を奪うよう少年に強要する。居所不明になった原因もすべて、この母の病的な浪費癖や破たんしたパーソナリティのせいだった。
本書は、2014年3月に埼玉県川口市で起こった「少年による祖父母強盗殺人事件」を題材にしたノンフィクションだが、単に事件を追うだけではない。本書後半では、「貧困・虐待」もテーマに加え、識者や支援団体などへの取材を通して、問題を抱えた家庭と児童たちを救う道を考察する。
ただ、それでも本書の事例の問題は根深い。実際、少年には行政、支援団体など外部の人に助けを求めるチャンスは何度もあった。しかし「家庭に問題はないか」と聞かれても、いつも決まって口を閉ざしたのである。
「誰かに助けてもらいたいと思ったことはなかった。毎日をどう生きていくか、目の前のことだけ考えるので精一杯だった。自分が母と妹の生活を何とかしなければと必死だった」
著者に宛てた手紙にこう記した少年。本書に登場する脳科学者は少年の心理を、「母と過剰に依存し合う共依存関係にあった」と分析する。そして精神科医は、殺人を断れなかったのは「少年が『学習性無力感』を抱いていたため」と分析する。
学習性無力感とは、「ストレスが自分の力では回避できない環境に置かれると、その環境から逃れる努力すらしなくなり無抵抗にストレスを受け続ける現象」だ。こうした精神状態の少年を外部の人間が助けるには、長期にわたり信頼関係を築くことが必要だ。しかし居所不明を何度も繰り返す少年家庭の場合、その機会を得るのも難しいのである。しかし状況はどうあれ犯した罪は重く、少年には懲役15年の実刑判決が下った(2015年6月17日高等裁判所)。一方、母親の方は「殺人強要」は認められず、「強盗罪」でわずかに4年半の実刑だ。果たして司法の判断は正しいのか、大いに疑問が残る。本書には、出所後の母親の再犯を懸念する識者の声も寄せられていた。
本書を読むと、悲惨な境遇の子どもたちを救う方策だけでなく、メンタルヘルスに問題を抱えた大人の犯罪防止策についても、問題が山積していることがわかる。また、虐待・ネグレクト・居所不明は、身近な社会の片隅で起こっている問題であり、ひとりでも多くの人が関心を持つことが、解決に不可欠なのだと痛感させられた。
もしあなたの周辺で、深夜の公園やギャンブル場など、TPOにそぐわない子どもを見かけたら「どうしたの、大丈夫?」と勇気をもって一声かけてみてほしい。そのほんの些細な一言が、彼らの長い人生を救う一助になるかもしれない。

 

赤ちゃんポスト10年「予期せぬ妊娠する人に罪はない」元看護部長が接した母親たち

弁護士ドットコム 2017年7月9日

予期せぬ妊娠や貧困など、諸般の事情で育てられない子どもの命を救おうと、2007年5月、熊本市の慈恵病院に「こうのとりのゆりかご」(通称「赤ちゃんポスト」)が開設された。匿名で子どもを受け入れ、児童相談所を通じて、乳児院や児童養護施設や里親、養子縁組などにつなげる仕組みだ。この10年間での受け入れ数は130人。
赤ちゃんポストに預けられた子どもたちは、熊本市の児童相談所を通じて乳児院に入所し、その後、それぞれ生活する場所が決まる。熊本市の中期検証によると乳児院ないし児童養護施設が29%、特別養子縁組が29%、里親が19%、実親の引き取りが18%、その他が5%となっている。
慈恵病院の蓮田太二院長と共に、開設から妊娠相談、その後の特別養子縁組につなげるまで尽力した、慈恵病院元看護部長、現・スタディライフ熊本特別顧問の田尻由貴子さんに話を聞いた。(ルポライター・樋田敦子)

「130人の命がつながった」
慈恵病院を2015年春に定年退職してからも、一般社団法人スタディライフ熊本などで、妊娠SOS相談を続けている田尻さん。この10年は、看護師人生40年以上の中でも感慨深い10年だったのではないだろうか。
「多いとか少ないとかではなく、130人の命がつながったということですね。その事実を重く受け止めています。ゆりかごがなければ、つながらなかった命かもしれないので、それがつながってよかったという思いです」

開設に当たって蓮田院長とは、どんなことを議論されたのですか
「蓮田院長とは、まず匿名で赤ちゃんを預けられることを大切にしました。この点は、反対派からは『捨て子を助長する』『育児放棄につながる』と批判されましたが、院長は『匿名でなければ、赤ちゃんを預けに来られないんだよ。だから匿名性は守ろう』と頑として譲りませんでした。結果的には、熊本で捨て子や育児放棄が助長された事実はなく、ゆりかごに預けに来たお母さんは、圧倒的に県外の大都市からが多かったのです」

田尻さんの中で、心に残る事例はありましたか
「預けた後、実親が引き取りを申し出たため、児童相談所の判断で、子どもを親元に送り返したことがありました。ところが育てられなくなり、親子無理心中になってしまいました。非常に悲しかったです。育てられると判断した行政の責任ですよね。一度は救えた命なのに、残念でなりません。
そしてショッキングだったのは、亡くなった赤ちゃんの遺体が、ゆりかごに入っていたことです。お母さんは逮捕され、死体遺棄罪で懲役1年、執行猶予3年を言い渡されました。熊本県のお母さんでしたし、妊娠中から相談してくれていたら、助けられたのではなかったかと思います。
また130人には入っていませんが、慈恵病院に赤ちゃんを預けに来る途中の車中で出産してしまったお母さんもいました。ゆりかごのすぐ側には、預ける直前の相談用インターフォンがあって、それを鳴らしてくれたので、スタッフがお母さんに接触しました。彼女は赤ちゃんを置いてすぐに帰るといったのですが、体調不良で帰れず、結局母子の今後のことについて相談して支援につながりました」

「予期せぬ妊娠をしたら、まず相談して欲しい」
在籍当時、田尻さんは他2名の相談員の方と、24時間態勢で電話相談に当たり、入浴中も携帯電話を脱衣かごに入れて待機していたそうですね。病院に寄せられる妊娠相談件数は、10年前はわずか501件だったのに、今では6565件(2016年)に上ります。この相談件数の増加は、どのように思いますか。
「『慈恵病院に来たら助かるんだ』という考えが広がり、一定の役割を果たせるようになったのではないでしょうか。
孤立している母親は行政にも民間の相談にも行きません。友人知人にも言えないでいます。誰かに相談できなかった人たちが、ゆりかごを利用しているということが分かっています。
必ずしも祝福されて生まれてくる子どもばかりではないのです。相談してくれたら、いろいろな選択肢があることをわかってほしいです。予期せぬ妊娠をしたら、まず相談して欲しいと思っています」

電話相談を続けて行く中で、田尻さんの考えに変化はありましたか
「予期せぬ妊娠する人に罪はないと思うようになりました。人それぞれに背景がある。そうせざるをえなかった背景があるのです。多くは母親自身の育ち方に問題がありました。
ある風俗の仕事をしていた女性が、出産予定日直前に関東から熊本にやって来ました。親にも友人にも相談できず、思い余って慈恵病院で出産したのです。子どもの出生届を出す段階で住民票がありませんでした。
経緯を聞いていくと、母親は家出し、その親が勝手に手続きをしていたようで住民票や保険証などの登録がないことが判明しました。母親は実母が亡くなり、義父との関係もすでに切れていました。
それを聞いて、子どもを育てられないのは、彼女の責任だけではない、と思いました。育てられない事情があったのです。彼女の子どもは、特別養子縁組で里親に引き取られていきました。彼女は生活保護を受け、職を得て生活を建て直しましたが、結局は続きませんでした。風俗に戻り、今では連絡は付かなくなってしまいました。
私はゆりかごのない社会になることが理想だとは思いますが、そこには厚い壁があるのです」
次回は、10年後だから出て来た、子どもたちの出自を知る権利について言及したいと思う。
【取材協力】田尻由貴子(たじり・ゆきこ)

 

赤ちゃんポストの子どもに伝えたい「お母さんは不明だけど、あなたの命を救ったのよ」

弁護士ドットコム 2017年7月9日

2007年、熊本県熊本市の慈恵病院に、親が育てられない子どもを預かる「こうのとりのゆりかご」(通称「赤ちゃんポスト」)が開設されて、10年となる。初期に預けられた子どもたちの中には、中学生になった子もいる。思春期になれば「私の母親はどんな人だったの」と疑問を抱く子も出てくるだろう。
赤ちゃんポストの設置をめぐっては、子どもの「出自を知る権利」を奪うことになるのではないかという批判が根強く存在している。病院側はこの権利について、どのように考え、対処しているのか。また今後、慈恵病院以外でも赤ちゃんポストの試みは広がっていくのだろうか。慈恵病院元看護部長の田尻由貴子さんに聞いた。(ルポライター・樋田敦子)

「出自を知る権利」
出自を知る子の権利については開設前から、議論になっていました
「預ける親の匿名性を尊重することは、ゆりかご(赤ちゃんポスト)のもっとも大切な考え方でした。設立前から、匿名であるがゆえに、その子の出自が分からなくなる問題については、蓮田太二院長と話し合い、まずは命を救うことを優先させようということになりました。
そこで、ゆりかごのベッドの上にはお母さんへのメッセージを託した手紙を置き、それを取らなければ預けられないシステムにしました。命を守るだけではなく、母と子の絆も守りたかったからです」

田尻さんのもとには、特別養子縁組や里親になった方々からお便りがあるとききます
「ありますね。小学校に入りました。元気で楽しく暮らしています、という手紙をもらったときは、本当に嬉しくなります。養親さんは、実の子どものように大切に育ててくれますが、いつかは真実告知をしなければならないことをご存知です。
預けられた子どもについては、児童相談所を経由して、施設や里親のもので育てられます。このため、私たちは子どもたちがどうしているのかを知ることはできません。
一般的に養子縁組をした養親さんは、子どもが小さい頃から段階を踏んで、実親に関し知りえた情報を告知しています。養親さんや里親さん、愛着が築ける少人数のファミリーホームで育てられているのならいいのですが、1対1で成長することができない児童養護施設にいる子どもたちが、真実にどう反応し、ゆりかごをどう評価するか。それに対して私たちはどうするかが課題でしょう」

「預けてくれたから、いま、生きているの」
ゆりかごに預けられた子は、行政の追跡調査などで、居所が分かるケースは多いのですが、それでも約2割の親の身元が不明だといいます。
「生活困窮や未婚、世間体が悪いなどの理由がほとんどで、どうしても育てられなかったのでしょう。特別養子縁組で養親さんに託された、ある男の子は、自分がゆりかごの中に預けられたときの洋服と靴を今でも大切にしています。
もし預けられた子どもたちが私に会いに来てくれたら、ハグして必ず言おうと思っていることがあります。『産んでくれたお母さんは、日本のどこにいるか、どんな人かは分からないけれど、お母さんがゆりかごに預けにきてくれたから、今、あなたはここにいるんだよ。預けに来てくれたから、いま、生きてるの』と。
ゆりかごで命をつなぐ気がなければ、その辺に捨てたり、極端にいえば、穴を掘って埋めたりしたかもしれない。でも命をすくって、子どもに生きていって欲しいから、ゆりかごにやって来た。そんなお母さんの気持ちを分かってあげてほしい」

「赤ちゃんポスト」が増えない理由
兵庫県神戸市で2例目の赤ちゃんポスト設置を目指していたNPO「こうのとりのゆりかごin関西」が、今年5月、慈恵病院と同じような赤ちゃんポストの設置を断念しました。24時間常駐できる医師が確保できなかったことが理由でしたが、今後は保護者と対面して預かる対面型で実現を目指すようです。なぜ全国に広がっていかないのでしょう。
「そこには行政の高くて厚い壁あるからです。
当初、ゆりかごも、匿名で子どもを受け入れるという仕組み自体の許可を得ているわけではありませんでした。ゆりかご設置のために、新生児相談室の用途変更をするこという設備面での申請について、熊本市の許可が下りたという形なのです。
開設時、厚生労働省は法的には抵触しないといっていましたが、今でもゆりかごは法で定められているものではありません。国や自治体は児童虐待や育児放棄を防ぐには、親への子育て支援強化がよいという方針です。
育てられない子は児童相談所を通して、乳児院や児童養護施設で養育するという自治体がほとんど。ですから命を助けることに直結していても、なかなか次へ踏み出せないのかもしれません。過去にも虐待防止に取り組むドクターが設置を目指しましたが、様々なハードルを理由に阻まれました。
経済的な問題をクリアし、どうしても子どもたちを助けたいと思う熱い気持ちがあっても、ゆりかご設置を認めない行政の壁が立ちはだかっているのです」

慈恵病院が理想とし、ゆりかごのモデルとなったドイツでは、赤ちゃんポスト制度の廃止が勧告され、代わりに2014年から『内密出産』制度が始まっています。母親となる女性は、妊娠相談所にだけ、本名や素性をあかし、医療機関で仮名で出産することができるようなシステムです。
子ども自身が16歳以上になれば、自分の母親のことを聞けるという。匿名性と出自を知る権利。母子の人権を最大考慮した形です。この内密出産は日本にも広まっていくのでしょうか

「なかなか難しいと思います。法整備されていないことが問題です。妊娠相談は、全国でも30か所に広がりつつありますが、24時間体制ではなく、まだまだ限界があります。自治体レベルではなく、国が指針を示すときがきているようです。
この少子化の時代、小さな命を大切にするためにはどうするかを真剣に考えていくべきでしょう」
匿名性と出自を知る子の権利。一見、相反するような人権ではあるが、そこに何か工夫が出来ないものか。赤ちゃんポストの評価は、預けられた子どもたちにかかっている。
【取材協力】田尻由貴子(たじり・ゆきこ)