養育責任者、里親に限定=ファミリーホームの質確保―厚労省

時事通信 2017年8月12日

厚生労働省は、虐待などさまざまな事情で実の親と暮らすのが難しい子どもたちが生活する「ファミリーホーム」での養育責任者を、来年度から里親登録した人に限る方針だ。
子どもの成長に関する一定の知識を持つ里親が責任者になることで、子どもに家庭に近い安定した環境下で過ごしてもらいたい考え。今年度中に関係機関に周知する。
ファミリーホームの養育責任者は現在、児童養護施設などで一定期間働いた経験があれば、里親でなくてもなれる。NPO法人などがホームを設置することも可能で、養育責任者が交代制だったり、人事異動があったりと、大規模施設の集団生活に近いケースもあるとみられる。
そこで同省は、家庭的な愛情で子どもを育てるというホームの趣旨を深く理解した人に担ってもらおうと、里親登録を求めることにした。

 

 

叱るは暴力に・・・「常に味方の信頼」が大事 臨床心理士が子育てアドバイス

沖縄タイムス 2017年8月13日

沖縄県豊見城市内の認可外保育園「えがお保育園」で7月末、臨床心理士の屋良りかさん(40)による子育て相談会が開かれた。自身の子育てや公的機関での相談支援に従事した経験をもとに、子どもとの関わり方や親自身の精神面へのケアなどを実践的にアドバイスした。(学芸部・座安あきの)
3歳と小学校2年、3年の3人の娘の母親でもある屋良さんは、臨床心理士として12年のキャリアを持つ。母子生活支援施設や県女性相談所、パーソナルサポートセンターなど公的機関でDV被害者やアルコール・薬物依存症患者などの相談業務に携わってきた。仕事を通して感じたのは「大人になって生きづらさを抱えた人は、幼いころ、親の子育てで傷つけられた経験が多い」ということだ。
子どもを叱るのは、基本的に「チャイルドシートに座らないなど自分の命に関わるときや、人を傷つけるなど相手の命に関わる行為をしたときだけ。それ以外は『暴力』や『暴言』にあたることを知ってほしい」と屋良さん。
言葉や体罰で「叱る」行為を受け続けると、「人はいつか無意識に暴力の加害者、被害者のどちらにもなり得る。自分も幼いときに親にされたから、当然たたいたり怒鳴ったりしていいと思ってはいないか」と投げかけ、子どもがやんちゃな行為をした時には「これって怒ることかな、とその都度立ち止まって。違う対応方法を教えることを心がけて」と語った。
テストの点数やいい行いをした時など条件をつけてほめるのではなく、「無条件にありのままの本人を愛してあげることが大事」と説く。「何があってもわが子の味方になる、信じて見守ってあげて」といい、親自身が間違えに気付いたときには「必ず謝ることで、親子の信頼関係が築ける」と付け加えた。
「言うこと聞かなかったら夕ご飯抜きだよ」「片付けなかったら遊びに連れて行かないよ」-。子どもに向けたこれらの言葉は「脅し」や「罰」にあたり、親の子に対する「支配」でもあると指摘する。「一瞬は効果があっても、いつか周りの人を同じように支配する感情が生まれる」と注意を促した。
ほかに、家事に子どもを参加させる工夫や、夫と家事を分担する方法も伝授。親自身が体や心の疲れをほぐすことで子どもと接する際の気持ちの余裕につながるとし、「自己メンテナンスの時間を意識的に確保して」と提言した。
相談会は保育士や保護者のリフレッシュを目的に、えがお保育園が毎月企画するイベントの一環。同園の比嘉順子園長は「日ごろ子育てで悩んでいる保護者の方に、専門家の視点から具体的なアドバイスをいただきたかった。今後も保育士や親が笑顔になれる企画を考えたい」と話した。

 

熱量ある大臣が去った後の社会的養育の世界~養子縁組緊急シンポジウムを終えて~

駒崎弘樹 認定NPOフローレンス代表理事 2017年8月13日

さる8月7日、お辞めになったばかりの塩崎元厚労大臣も参加した、養子縁組緊急シンポジウムの要旨をご報告するとともに、今後の社会的養育の世界について記します。
来たくても来れなかった、全国の関係者の方にお読みいただけたらと思います。

新しい社会的養育ビジョンについて
・塩崎元大臣「社会的養育ビジョンは驚きとともに受け止められたが、児童福祉法改正の内容がまとまっただけ。法改正からの流れからいくと必然」
・塩崎元大臣「施設入所停止等も過激だという意見があったが、『原則』だし、様々な留保条件もある。子どもに被害があるようなことはあってはいけない。」
・塩崎元大臣「社会的養育ビジョンを実現するには、予算や人材育成が重要になる。そこは全力で予算の分捕り合いを乗り越えていかないといけない。大臣は降りたが、自民党内の社会的養護議連からバックアップする」

不正な養子縁組事業者は本当に取り締まれるのか
・山本香苗元厚労副大臣「それができなければならない。許可制の詳細を詰める際に、不正事業者を念頭に、実効性のあるルールを詰めていくことになる」

養子縁組事業者への補助金について
・厚労省成松課長「補助に関しては概算要求していく予定であり、忘れているわけではない。」

民間事業者との連携に消極的な児童相談所について
・音喜多都議「情報公開を進めることで、促進に積極的な自治体とそうでない自治体を可視化していく。東京都はこれまでデータの開示にも積極的ではなかったので、議会からしっかりと求めていきたい」

シンポジウムを終えて
・より詳細と臨場感のあるまとめを、参加した音喜多都議が(何も頼んでないにも関わらず)Twitter実況してくれました。興味のある方は、こちらをご覧ください。
https://togetter.com/li/1138290
・当初懸念されていた事業者補助の検討具合に関しては、一応厚労省も考えているようで、後は具体的に機能する金額が出されるか否か、といったところで、引き続き関係各所はパブコメを出す等、積極的な意思表示をしなくてはいけない状況です
・「新しい養育ビジョン」に関しては、塩崎前大臣の熱い思いがほとばしっていましたが、実現にはしっかりとした予算が必要になるのですが、彼自身が大臣ではなくなってしまったこと、政府の中に彼の志を継ぐ方がいなさそうなのが、最大の懸念点です。議連の会長から積極的に後押しをする、ということですが、やはり政府内にも熱量を持って仕事にあたる人がいないことには、進まないリスクがあるでしょう
・「新しい養育ビジョン」は画期的ですが、質の高い里親が増やせなければ絵に描いた餅ですし、さらには現場の混乱、ひいては子どもたちが犠牲になってしまう可能性もあります。ビジョンを実効性の高いものにするためには、民間がしっかりと後押しをしつつ、政治的に強力に推し進め、ちゃんと予算を獲得できないとダメでしょう
・大きな障壁は、社会的養護業界が、施設派と家庭養護推進派で長年いがみあっていること。本来であれば結束して政治的なパワーを確立できるにも関わらず、第三者から見たら内ゲバやってるようにしか見えず、共感の裾野を広げられないでいます。これは非常にもったいないことです
・施設も家庭養護も、「手法」なんだから、「目的」で合意をして、手法についてはファクトとデータに基づいて現実感のあるラインでバランスとっていくしかありません。そのためには、立場を超えて対話と信頼を重ねていくしかないでしょう。
・というわけで、みんなこういうシンポなり、対話の場をつくっていきましょう。オフィシャルな場だけでなくて、一緒に飯食ったり、現場で話したりしていきましょう。考えは同じになる必要はなく、「俺とお前の考えが違うのは分かった。ただ、そういう考え方もあるな、ということも分かった」となればひとまずは良いのではないでしょうか。