奨学金、悩む利用者 給付型「額少ない」 貸与型「返済不安」

上毛新聞 2017年9月1日

日本学生支援機構が返済不要の給付型を創設したり、所得に応じて返済月額を決める制度を導入するなど、奨学金制度が拡充されている。ただ、給付型の対象となった学生からは「額が少ない」との声が漏れ、卒業後の返済に不安を感じている貸与型の利用者は少なくない。政府は給付型の拡充や「出世払い」の導入を検討しており、行方が注目される。

「どんな家庭でも大学に通えるよう」
群馬県外の母子家庭で育ち、共愛学園前橋国際大に今春入学した女性(19)の月収は、給付型4万円、無利子貸与型6万円の奨学金とアルバイト代。仕送りは望めない状況だ。「給付型はありがたいが、4万円ではとても足りない。どんな家庭でも大学に通えるように増額してほしい」と願う。
本年度始まった給付型の対象は、自宅外から私立大に通学する学生と児童養護施設出身者ら。日本学生支援機構によると、6月時点で約1600人が申請した。来年度以降は自宅通学や国公立大を対象に加え、約2万人に給付する予定だ。
国立大4年の女子学生(24)=群馬県藤岡市出身=は、貸与型奨学金と財団法人の給付金の月18万円を活用し、学生生活を送ってきた。返済は月々3万円で25年かかる計画。「有利子だとこんなに額が膨らむんだと驚いた。卒業後は正社員で働くのが大前提」と就職活動を続けている。
私立大4年の次男の奨学金返済額が約800万円というシングルマザーの女性(52)=前橋市=は、「長男は学費がネックで進学を諦めた。親の収入が子どもの将来に影響してしまうのが悔しい」と漏らす。
奨学金制度に詳しい仲道宗弘司法書士は「家庭の所得は減少しているのに、学費は上がっている。給付型と無利子貸与型の枠を広げると同時に、返済猶予の条件を緩和するべきだ」と指摘する。

 

保育所の「オムツ事情」に迫る 持ち帰り?処分?

神戸新聞NEXT 2017年9月1日

園児ごとに使用済みオムツの回収ケースが並ぶ保育所=西宮市内(画像の一部を加工しています)
秋の気配が漂い始めたものの、まだまだ残暑は厳しい。暑い時季、子育て世代の間でちょっとした話題になっている問題がある。保育所で使ったオムツを持ち帰らなければならず、行政は子どもの健康管理のため帰宅後の“オムツチェック”を呼び掛ける。だが、「臭いが気になる」「荷物になる」といった不満もくすぶる。その一方で、保護者の負担軽減のため認可外保育所などでは施設内で処分してくれるケースもある。持ち帰りか、処分か-。それぞれの園に「オムツ事情」を聴いた。(前川茂之)

西宮市内の公立保育所では、園児たちが使用した紙オムツを保管する部屋を用意。毎朝、保護者から預かったビニール袋などに使用済みのオムツを入れておき、帰宅時に保護者に返す。
紙オムツが普及し始めた数十年前から、市内全園で導入している制度といい、市保育幼稚園事業課は「排尿の回数や便の状態から、子どもの健康状態や体調を知ってもらうため」とその理由を説明する。
保育士歴35年以上の女性園長(56)も「2歳児からはトイレトレーニングもある。保護者とコミュニケーションを取るための貴重な機会にもなっている」と重要性を強調する。ただ、中には帰り道で捨ててしまう人もおり、自宅でのチェックが徹底されているかは不透明だ。
神戸市や姫路市などに尋ねると、公立保育所では、同様の取り扱いをしているところが大勢だった。私立の認可保育所でも同じ運用方法が多く、「使用済みオムツは産業廃棄物に当たり、処分費用がかかる」「廃棄まで数日間、園内で保管することを考えると、衛生面で問題がある」などの背景もあるようだ。
一方で、施設内で処分しているケースが多かったのは認可外の保育所。芦屋市内の施設責任者(62)は「オムツの持ち帰りは保護者の大きな負担になっている」と疑問を呈す。毎日、処分業者が引き取りに来ているといい、保護者とのコミュニケーションは「毎日、連絡帳に記録するなどして知らせており、問題ない」ときっぱり。保育料とは別にオムツ処分料を徴収するところもあった。
布オムツを使う神戸市中央区の「聖ミカエル幼保連携型認定こども園」は、3台の洗濯機をフル活用。担当の職員を雇用し、洗って返すシステムを取る。藤本重美園長(75)は「お迎えに来る保護者はみんな仕事で重い荷物を抱えていて大変。布オムツは経済的だし、好評です」と語る。
持ち帰りの見直しを求める声に対し、西宮市の担当者は「保育所と保護者は事業者と顧客の関係ではなく、子どもを一緒に育てるパートナー。あまりに重い負担にならないよう注視はするが、理解を求めていきたい」としている。

 

 

性同一性障害で通称名記載、すべての健康保険証で可能に

朝日新聞デジタル 2017年9月1日

厚生労働省は、性同一性障害と診断された人が日常で使う「通称名」を、健康保険証の氏名欄に記載することを認めると都道府県や医療保険者に通知した。今も国民健康保険の保険証では使えるとしているが、医療機関の窓口で見た目の性と異なる名前で呼ばれる精神的苦痛などに配慮し、すべての健康保険証で記載できることにした。
通知は8月31日付。本人や家族から希望があり、保険者が認めた場合、裏面に戸籍上の氏名を併記し、表面に通称名を記載できる。
厚労省はこれまで性同一性障害の人の通称名の記載について取り扱いを明示してこなかった。保険者からの問い合わせをきっかけに、昨年7月に国民健康保険の保険証で通称名が使えると決めた。今回は会社員向けの健康保険組合や協会けんぽ、75歳以上が入る後期高齢者医療の保険証でも使えるようにした。(水戸部六美)

 

 

関東中心にO157相次ぐ 同じ遺伝子型を多く検出

朝日新聞デジタル 2017年9月2日

群馬、埼玉両県の総菜店での食中毒など関東地方を中心に腸管出血性大腸菌O(オー)157の患者が相次いで発生しているとして、厚生労働省は1日、都道府県などに対し、患者が出た際は食事や行動などを調査し、国立感染症研究所に報告するよう通知した。両県の患者らから同じ遺伝子型のO157が検出されており、詳しい原因を調べている。
厚労省によると、「VT2」と呼ばれる毒素を出すタイプのO157患者が、8月20日までの1週間で144人報告された。直近5年間で最も流行したピーク時の週当たりの報告数を上回った。感染研で調べた結果、このタイプの中でも同じ遺伝子型が多くの患者から検出されたといい、広域的な調査が必要と判断した。
厚労省は、O157に感染しても下痢や腹痛などの症状が出ない場合もあるため、自覚症状がない人でも手洗いの徹底などで注意するよう呼びかけている。(福地慶太郎)