児童養護施設新設に壁 地域に賛否

山岸玲 久保田一道 2017年9月13日

児童養護施設の新設が、地元住民の反対で進まない例が各地で起きている。子どもに対する中傷まがいの言葉が投げられた例もあった。

「周りの子どもに影響の恐れ」
岐阜県山県市では2年後に予定する施設の新築移転計画の先行きが見通せない状況に陥っている。
「きれいごとで収まる話じゃない」「温かい目で見守れないのか」
6月22日夜、山県市高富地区の公民館。隣接する関市の山間部から移転を予定する児童養護施設「美谷学園」が住民説明会を開くと、地域住民約40人が賛否両論の意見を口にした。
約80人の子どもが入所する美谷学園は老朽化や通学の都合を考慮し、2019年に新築移転する計画だった。だが土地の造成も済んだ昨春、地元で反対の声が上がり、昨秋には約1300人分の署名と移転反対の意見書が市に提出された。
反対の大きな理由が同じ中学校区に別の児童養護施設があること。ある男性は「人口規模からみれば集まり過ぎ。地域で目が届くだけ、受け入れるべきだ」。
署名を呼びかけたビラには「周りの子どもたちに様々な影響を与える恐れ」などとあった。美谷学園の森川幸江理事長はビラの内容に「偏見だ。撤退すれば学園が偏見を認めたことになる」と訴える。学園側は移転後の施設の定員を45人から16人に縮小する案も示したが、反対派住民は認めていない。

「計画時から丁寧に説明を」
全国児童養護施設協議会(東京)の武藤素明副会長は、施設の新設や移転をめぐって「各地の施設から同じような相談を受けている」と明かす。
昨夏、東京都国分寺市で社会福祉法人が6人規模の児童養護施設の新設を計画したが、一部住民の反対で断念した。住民が配っていたビラには入所する子どもを「いじめ、ねたみ、うらみ、つらみの経験 そんな環境を持つ子供」とし、「(地元の)子供に与える影響が不安」とあった。
武藤副会長はこのビラについて、「施設にいる子どもたちに『悪さをする』というレッテルが貼られていると改めて感じた」と憤る。一方で施設側が計画段階から丁寧に説明することも必要だと話した。
関西大の山県文治教授(子ども家庭福祉)も「施設といい関係を築いている地域を反対する人たちにも見てもらうなど、話し合いを繰り返すことが大切だ」と指摘している。(山岸玲)

600施設 入所2万7千人
児童養護施設は虐待や貧困、死別などで親と暮らせない原則18歳未満の子どもを育てる施設。近年は虐待が理由で入所する子どもが増えており、2013年の厚生労働省の調査では、入所者の約6割が虐待を受けた経験があった。
施設は昨年10月時点で全国に約600カ所、約2万7千人が入所する。施設はこの15年で50カ所あまり増えたが、背景の一つが施設の小規模化だ。従来は数十人単位の施設が多かったが、「できるだけ家庭に近い環境で育てるべきだ」という考え方が定着。少人数で生活する施設が増える傾向にあるという。
ただ地元の反対で新設、移設が滞る事例が出ていることについて、同省の担当者は「地域に溶け込む一般家庭のような施設が増える一方、理解が十分に進まず、誤った不安感が広がっているのではないか」と分析している。(久保田一道)

児童養護施設
虐待や死別、貧困などで親が育てられない原則18歳未満の子どもを入所させ、保護・養育する施設。かつては孤児院と呼ばれていた。厚生労働省の調査によると、2013年時点で全国約600施設に約3万人が入所する。虐待が理由で入所する子どもが近年増えて、同年には半数近くに上った。

 

 

施設出身の経験、後輩のため発信 静大生・高橋さんがチーム結成

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS 2017年9月16日

静岡大人文社会科学部3年の高橋未来さん(20)が、児童養護施設で育った自身の経験の発信に本格的に乗り出した。「後輩に道を開きたい」―。施設や里親家庭出身の日米の若者や支援者が協働する児童福祉NPO法人IFCA(イフカ)の全国初の地方チームとなる静岡チームを結成。16日、都内で開かれる同NPOのイベントで活動を発表する。
9歳から都内の施設で暮らしてきた高橋さん。「人生に負い目を感じたくない」と勉強に励んだ。就職後すぐに離職してしまう施設の先輩の存在を知り、大学進学を志した。施設にはそれまで、大学進学者は皆無で、民間の奨学金や、児童福祉法で原則的に退所となる18歳以降も施設に残る制度など、当時は知らなかった。生活費、学費を支払えそうな大学を手探りで絞り込んだ。
高校卒業間近、イフカを知った。国が家庭的環境での養育を推進する中、施設の小規模化を体験。大人数の広い施設から、定員数人のグループホームに移った。一日交代の職員。暴力的な子ども。「形だけ『家庭』に近づいてもやはり『家庭』でなく、しんどかった」。当事者が声を上げる必要性を感じた。
これまでイフカの都内での活動に参加しながら県内で仲間を探してきた。5月に静岡市内の女子大生が加わり、静岡チームを結成。8月には米国研修に参加して海外の児童福祉への理解を深めた。今後は静岡での活動にも取り組む。「社会的養護の静岡モデルをつくりたい」と前を向く。
富士、富士宮両市の里親でつくる「ふじ虹の会」の坂間多加志会長(38)は「静岡の児童のロールモデルになる」と2人を支える。

 

32%が3年以内に離職=14年春の大卒者―厚労省

時事通信  2017年9月15日

厚生労働省は15日、2014年3月に大学を卒業し就職した人の離職状況調査を発表した。
それによると、新卒後3年以内に勤務先を辞めた人の割合(離職率)は前年比0.3ポイント上昇の32.2%となり、2年ぶりに増加した。景気回復を背景に、より好条件の職場を求め転職する事例が多いとみられ、3年以内の離職率は5年連続で3割を超えた。
離職率は1年目が12.3%と最も高く、2年目は10.6%、3年目は9.4%。企業規模別では、5人未満の企業で59.1%が3年以内で離職するのに対し、1000人以上では24.3%となり、企業規模が大きくなるほど離職率が低下している。業種別では、宿泊・飲食サービス業が50.2%と最も高く、電気・ガス・熱供給・水道業が9.7%と最も低かった。

100歳以上、6万7824人に…女性が87%

読売新聞  2017年9月15日

「敬老の日」を前に、厚生労働省は15日、100歳以上の高齢者が前年比2132人増の6万7824人に上り、47年連続で過去最多を更新したと発表した。
今年度中に100歳を迎える人は今月1日時点で、前年度比350人増の3万2097人(男性4636人、女性2万7461人)だった。
100歳以上の高齢者の内訳は、女性が2102人増の5万9627人で全体の87・9%を占めた。男性は30人増の8197人。
人口10万人あたりの人数を都道府県別で見ると、最多は島根の97・54人で5年連続のトップ。以下、鳥取92・11人、高知91・26人と続き、上位7県は西日本が占めた。一方、最少は埼玉32・09人で、愛知35・01人、千葉37・83人など人口の多い都市部では人数が少ない傾向にあった。

 

 

年金支給漏れ、問い合わせ殺到 事務ミス最大590万円

朝日新聞デジタル  2017年9月15日

振替加算の支給漏れのおそれがある人は…
約598億円の年金加算金支給漏れ問題で、最大590万円の支給漏れは3人いて、うち2人は日本年金機構の事務処理ミスが原因だった。厚生労働省が15日の民進党の会合で明らかにした。追加払いの作業に税金約7千万円が使われる見通しも報告。日本年金機構には問い合わせが殺到し、専用ダイヤルの回線数を急きょ4倍の40に増やした。
支給漏れがあったのは、厚生年金に加入している人の配偶者が65歳から受け取る基礎年金に上乗せされる「振替加算」。厚労省によると、事務処理ミスによるものは5332人、約89億円分で最大590万円の2人も含まれていた。年金原簿の記入ミスや支給要件の見逃しなどが原因だった。
支給漏れの理由はほかに三つあり、年金機構と共済組合の情報連携の不備が最も多く5万2908人(約260億円)。共済組合のデータを受け取る年金機構のシステムの処理上の不備3万5685人(約122億円)、支給対象者の届け出漏れ1万2038人(約128億円)だった。
年金機構は11月上旬に対象者に郵便で通知し、原則同15日に追い払いする。作業に約7千万円の税金がかかるといい、経費削減などで捻出するとしている。
対応を始めた14日には、各地の年金事務所などに計1358件の問い合わせがあった。そのうち10回線の専用ダイヤル(0570・030・261)には591件で、つながりにくいとの指摘を受けて年金機構は15日昼から回線数を40にした。対応時間も平日午前8時半~午後5時15分を、午後8時までに延長。土日も午前8時半~午後5時15分に応じる。祝日の18日は応じない。
今回の問題を受け、加藤勝信厚労相は15日の閣議後会見で「支給漏れが判明した方にはご迷惑をおかけし、大変遺憾だ」と述べ、再発防止策を講じるよう年金機構に指示するとした。(佐藤啓介)