児童福祉の課題

Miyanichi e-press 2017年11月2日
 
里親拡充に地域の理解必要◆
 児童養護施設で育った元プロボクサー坂本博之さん=東京都、SRSボクシングジム会長=が昨年から、県内の児童養護施設を訪問している。幼少時、預けられた家で虐待を受けた末、坂本さん兄弟の命をつなぎとめたのが施設の温かい食事と布団だった。そんな話を交え、子どもたちとミット打ちをする。「言葉にできない気持ちがあるだろう? 楽しかったこと、悲しかったこと、怒ったこと。それを思い出してパンチして!」。中には涙を浮かべ満身の力で打つ子どももいる。大人が受け止め、信頼の瞬間を積み上げていく。人は身体や心の片隅に、寡黙な言葉を沈殿させる。大人もそうなら、子どもはなおさらだ。

高い数値目標に懸念
 親と暮らせない子どもを社会的に育てる社会的養護が必要な子どもは全国に約4万7千人いるとされる。このうち約3万人が約600カ所ある児童養護施設に暮らす。約6割に被虐待経験があるという。被虐待児や愛着や発達に問題のある子どもが増え、子どもの背景や養育者の役割が時代とともに変化。より個別的な対応が必要になり、施設は小舎化や地域分散化に取り組んできた。
 その中で厚生労働省の有識者会議が「新しい社会的養育ビジョン」を発表。家庭養育優先の理念の下、数値目標や考え方を示した。現在の里親等委託率は2割未満だが、小学校入学前の子どもたちはおおむね7年以内に75%以上、学童期以降は10年以内に50%以上の里親委託率を目指す。また、就学前の子どもは原則施設に入所させない。戸籍上、養父母の実子として扱う特別養子縁組をおおむね5年で倍増-なども盛り込んだ。だが、養育現場には懸念が広がる。

施設偏重から脱却を
 「(新ビジョンは)極端な数値目標」「数値目標や財源の根拠が十分検討されていない」として、複数の団体が要望書や意見書を提出する事態になった。
 施設中心の児童福祉政策が戦後展開されてきた歴史もあり、日本では施設と里親委託が約9対1。本県も同様の数字で、2016年度の里親等委託率は12・1%だ。本県は家庭的養護推進計画の最終年度29年度までに施設入所を65%、里親等委託を35%にする目標値を掲げるが、新ビジョンはこれを上回る高いハードル。里親普及促進センターみやざきの坂元貢センター長も「趣旨には賛同するが、課題も大きい」と見る。
 親元で暮らせない子どもたちが安心して生活できる家庭的な養育環境を整えることは必須だ。里親委託率9割超のオーストラリアを筆頭に福祉先進国では5割以上を占め、世界の潮流でもある。着実に進めるには財源と人材注入はもちろん、人々の意識に浸透した「施設お任せ主義」からの脱却を図る必要がある。子どもたちに刻まれた傷をどれだけ手当てできるのか。児童福祉に対する地域の文化と意識が問われてもいる。

 

5歳児の脳を損傷させた「DV夫婦」の末路

小児精神科医 友田 明美 2017年10月28日

 虐待は子どもの脳を萎縮させ、学習意欲の低下やうつ病などの原因になる。だが、夫婦喧嘩など、子ども自身に向けられた暴言や暴力ではなくても、ストレスホルモンによって脳神経の発達が阻害されることがわかってきた。小児精神科医の友田明美氏が、ある夫婦の実例を通じて警鐘を鳴らす――。
※以下は友田明美『子どもの脳を傷つける親たち』(NHK出版新書)を再編集したものです。

「不適切な養育」で損傷する子どもの脳
 厚生労働省によると昨年度、児童相談所に寄せられた「児童虐待に関する相談件数」は、過去最多の12万件(速報値)を超えた。「虐待なんて、自分にも家族にも関係ない」と思っているかもしれない。しかし、児童虐待防止法の第二条「児童虐待の定義」には「児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力」と書かれている。つまり子どもの前で繰り広げられる激しい夫婦喧嘩は「児童虐待」とみなされるのだ。
 この30年、わたしは小児精神科医として、脳科学の側面から子どもの脳の発達に関する臨床研究を続けてきた。その結果、「チャイルド・マルトリートメント(不適切な養育)」によって、子どもの脳機能に悪影響がおよんだとき、生来的な要因で起こると考えられてきた学習意欲の低下や非行、うつ病や摂食障害、統合失調症などの病を引き起こす、または悪化させる可能性があることが明らかになったのだ。

「チャイルド・マルトリートメント(不適切な養育)」
 maltreatment(マルトリートメント)とは、mal(悪い)とtreatment(扱い)が組み合わさった単語で、前述のとおり、「不適切な養育」と訳される。「虐待」とほぼ同義だが、子どもの健全な成長・発達を阻む行為をすべて含んだ呼称で、大人の側に加害の意図があるか否かにかかわらず、また子どもに目立った傷や性疾患が見られなくても、行為そのものが不適切であれば、すべて「マルトリートメント」とみなす。
 わたしが研究や臨床の現場で、マルトリートメントという言葉を使っているのは、虐待という言葉では日常にひそむ子どもを傷つける広範な事例をカバーしきれないと考えるからだ。また、懸命に子育てをしている親に対して「虐待をしている」とレッテルをはることにより、親の人格を否定してしまったら、彼らの育て直しのチャンスを奪うことにつながってしまうからだ。
 子どもと接するなかで、マルトリートメントがない家庭など存在しない。ふたりの娘をもつわたし自身も、数々の失敗を経験してきた。親になった瞬間から完璧な親子関係を築ける人などいるはずがなく、トライ&エラーを繰り返しながら、徐々に子どもの信頼を得ることができるようになるものだ。
 しかし、子育てに懸命になるがあまり、知らず知らずのうちに子どものこころを傷つける行為をしている場合がある。マルトリートメントは強度と頻度を増したとき、子どもの脳は確実に損傷していく。この事実をわれわれ大人は見逃してはいけない。

 

44歳男性と17歳女子高生の「交際」に議論沸騰…「性欲に負けてる」「親に報告を」

弁護士ドットコム 2017年10月30日

 もし44歳男性が、17歳女子高生と交際し、肉体関係を持ったら、それは条例違反の「淫行」なのか、あるいは真剣な交際として容認されるのか。そんな記事(「17歳女子高生に「恋をした」44歳男性、肉体関係に発展…「真剣交際」ならお咎めなし?」https://www.bengo4.com/other/1144/1282/li_159/)を掲載したところ、100を超える賛否両論のコメントが集まりました。
 この記事で、弁護士は「16歳になれば婚姻できる」と定めた民法731条を引き合いに、18歳未満の少女と成人男性との恋愛、交際も想定できると述べています。
 ただ一方で、児童福祉法や各都道府県が定める青少年健全育成条例では、教員が立場を利用して生徒と性行為をしたり、「青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為」をしたりすることが禁止されているとも付け加えました。
 つまり、「真剣な交際」をしていれば問題ないが、そうではない場合には処罰の対象になり得るのが、未成年と成人との交際。
 しかし問題は「真剣な交際」とは何かが曖昧なところではないでしょうか。この点、別の記事(「15歳女子との交際は犯罪なのか」警察に聞いた45歳男性逮捕、真剣交際でもダメ?
→ https://www.bengo4.com/c_1009/c_1406/n_4540/ )で、奥村徹弁護士は、「結婚前提なら許されるが、証明が困難」として、過去の裁判例をもとに、年齢差、性行為の頻度、保護者の承諾など裁判で判断される要素をいくつか紹介しています。
 また「青少年条例違反の淫行・わいせつ禁止規定の逮捕率(逮捕件数/検挙件数)は5~6割になっています。この種の事件にくわしい弁護士に相談」することも呼びかけました。
 読者のみなさんは、この問題についてどう考えたのでしょうか。コメント欄の一部をご紹介します。

「性欲に負けてる時点で誠実ではない」
 主に女性からは、自制を求める声が相次ぎました。
 ある40代女性は「真摯な交際というなら性交しなくてもいいよね?」。また「女性が成人するまで交際や性交を我慢すべき」と書き込んだ30代女性は、未成年に対しては慎重な対応が求められるが故に、「我慢強さと誠実さ」が必要だとしたうえで、「真剣交際なら、成人するまで待ってあげよう」と提案。「誠実にお付き合いするなら性交は我慢できるはず。性欲に負けてる時点で誠実ではない」と厳しい意見を述べていました。
 ある40代女性は、記事で取り上げた男性について「親に隠している男側が良くない」と非難していました。別の30代女性も、「交際するなら親への報告は必要」として「保護者がいる年齢なら保護者に挨拶くらいするべき」と指摘しました。
 確かに、親への挨拶は、「誠実さ」を示す指標となりそうです。

「女性に覚悟が必要」な理由とは
 誰しも年をとりますが、年の差婚の場合には、「介護」の問題に直面するのが早いことがリスクの1つではないでしょうか。
 コメント欄にも「20年後、まだまだ若い奥さんは老いた旦那に耐えられるだろうか?」と心配する40代女性の声や、「老人じゃ家事もろくにできない」として、「男が死ぬまでATM兼家政婦としてやっていく覚悟があるのか」と女性側への覚悟が必要だという声(40代女性)が相次ぎました。
 また、未成年であることを理由に、「将来的に後悔しなければ良いとは思いますが」と判断力を心配する20代男性の意見も寄せられました。
 一方で、許容される線引きが曖昧だと指摘するのは、40代の男性。「お金を渡したらアウト」であるなら「安い服を1着買って上げたら」セーフなのか、「キス」や「背中をポンと叩いたら」どうなのか、と戸惑いを示していました。

熟年「年の差恋愛」の当事者からも
 未成年ではないですが、自身の年の差恋愛体験を語る人も。
 68歳の男性と交際している48歳の女性は、年の差恋愛という側面から「老後、もしも独りになった場合」を心配し、「生活面が大丈夫か」と不安になっているそうです。
 また、28歳の男性と交際している40代女性は「本当に彼が好きで出来れば結婚したい」そうですが、「彼の両親や親類などはやっぱり反対する」と予想しており、「先のことを考えると色々問題がある」と悩みが尽きない苦悩について書きました。

私も「未成年で成人の異性と交際していた」
 一方で、かつて「未成年で成人の異性と交際していた」当事者からも意見が寄せられています。
 年齢は不明ですが、ある女性は「私も高校の頃、主人と付き合い始めました」と明かします。「歳の差(20歳)です。片親(母)だけだったので、かなり反対され、地元の警察署から呼び出されました。卒業し、働き同棲を経て結婚しましたよ」と。
 また、40代の男性は「僕の嫁は中学2年のときから付き合って8年の交際を経て結婚しました。僕と嫁は7歳離れており当時はドライブにいって夜、警察に職務質問を度々受けたり結構めんどくさかったなぁ」と。
 お2人とも真剣交際の末、幸せな結婚生活を送っているようです。
 真剣交際を一律で定義しづらいだけに、「難しい」問題ではありますが、読者の皆さんからの意見を拝見すると、成人の側の「誠実さ」が鍵を握るようです。真剣交際の中に、性交渉を含めるのかどうかなど、結論を急がずにしっかりと誠実に向き合うことで認められる関係になるのではないでしょうか。