被虐待児童の成長描く、市民団体が2月に自主上映会/横須賀

神奈川新聞社 2014年1月22日

 親に虐待され、心の傷を抱えながらも児童養護施設で強く生きる子どもたちを描いたドキュメンタリー映画「葦牙(あしかび)~こどもが拓く未来」(小池征人監督)の自主上映会が2月22日、県立保健福祉大学(横須賀市平成町)で開かれる。同市で4月から児童虐待防止活動などを本格化させる市民団体「ハッピーのたろんプロジェクト準備委員会」の主催。
 映画は2009年11月に公開され、全国の劇場で上映された。舞台は、盛岡市の児童養護施設「みちのくみどり学園」。学園には親から虐待を受けて児童相談所に保護され、施設に預けられた児童生徒らが寝食をともにしている。
 親から暴力などを受けたことで人間関係で愛憎が交錯し、感情をうまくコントロールできない子どもたちの葛藤を、インタビューを交えながら丹念に描いている。子どもたちは職員や地域の人々と触れ合いながら、少しずつ心の成長を遂げていく。
 今回、横須賀で上映会を開く準備委員会は、12年11月にNPO70団体、ボランティア約100人が協力し「児童虐待といじめをなくす」をテーマに朗読劇を開いた実行委員会のメンバーが中心だ。児童虐待防止の取り組みを強化するため会員を募るなど準備を進めている。今後は4月にプロジェクト委員会を立ち上げ、市内の養護施設を定期的に訪問し、ボランティアを続ける保健福祉大の学生たちの支援などを計画している。
 20日夜には、関係者を集めた試写会を開催。準備委員会会員で、同大学の山崎美貴子名誉教授は、「(5年前の映画だが)問題は本質的に変わらず、むしろ虐待は増えている。横須賀でも皆で一緒に考えていきたい」と呼び掛けた。当日の上映会後には、学生たちや市児童相談所が活動報告をする学習会が予定されている。
 試写会には数々のドキュメンタリー映画を手掛けた小池監督=平塚市在住=も参加。「お母さんとお父さんからもらえなかった母乳と保護は社会みんなで補うべきだ。横に困っていることを聞いてくれる誰かがいれば、人間は再生できる」と訴えた。
 午前10時~午後1時。入場無料、定員200人。問い合わせは市立市民活動サポートセンター電話046(828)3130。

ロッテ・今江、児童養護施設訪問で「元気もらっている」

サンスポ 2014年1月21日

 ロッテの今江が21日、千葉県君津市内の児童養護施設を訪問し、子どもたちと交流した。以前から千葉県内の施設を回っており「いろんな境遇がある。その中で、子どもたちの元気な姿を見て自分も元気をもらっている」と話した。
 笑顔で写真撮影に応じ、グラブをプレゼントした。子どもたちからはお礼に千羽鶴が贈られるなど触れ合いを楽しんだ。「頑張る姿を見せて『僕も、わたしも頑張ろう』と思ってもらえるように」とシーズンでの活躍を誓った。(共同)

日テレドラマ、子供偏見被害を調査へ 養護施設協、「明日、ママがいない」訴え相次ぎ

MSN産経ニュース 2014年1月21日

 日本テレビ系列で放映中の連続ドラマ「明日、ママがいない」で、児童養護施設や里親と暮らす子供たちが偏見などの被害を受けたとして、全国児童養護施設協議会と全国里親会が21日、都内で会見し、被害の実態調査を始めることを明らかにした。
 協議会によると、番組放映後、施設の子供からは「学校で『お前が主人公か』といわれた」「『お前らもどこか(里親)にもらわれていくの?』と聞かれ、いやな思いをした」などの訴えが相次いだ。番組の途中で「耐えられない」と2階の部屋に駆けこんだ高校生もおり、里親にも不安が広がっているという。
 協議会では子供をペットにたとえたり、職員が暴力をふるったりする番組上の演出が、誤解や偏見を助長していると分析。日テレに内容の再検討を求める抗議文を20日付で提出し、今後、被害の調査を始めるという。
 番組をめぐっては、親が育てられない子供を匿名で受け入れる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を設置する熊本市の慈恵病院が、すでに放送中止を求めて日テレに抗議を行っている。

「生まれた時の環境で、人生が決まる世の中にはさせない」慎 泰俊さんインタビュー

livedoor 2014年01月22日

 貧困や親の虐待から逃れ、児童養護施設で暮らす子どもたちは全国に約3万人います。原則として18歳で施設を出なければならないのですが、児童養護施設出身者の大学進学率はわずか1割程度。高校中退率は全国平均の約3倍に上ります。そんな彼らにとって、社会の荒波はあまりにも過酷。頼れる身内がいないケースも多々あります。
 「生まれた時の環境で、人生が決まってしまう世の中にはしたくない」とは、児童養護施設の子どもたちを支援する「NPO法人 Living in Peace」理事長の慎 泰俊(しん てじゅん)さん。本業は投資のプロフェッショナル。児童養護施設向けに、国や地方の制度を最大限に利用した画期的な寄付プログラムを考案しました。
 「子育て世代の生命保険料を半額にして、安心して赤ちゃんを産み育ててほしい」という思いで開業し、業界で初めて付加保険料の開示をするなどしてオープンな情報公開につとめているライフネット生命がお話を伺いました。
――児童養護施設の子どもたちへの支援をはじめたきっかけを教えてください。
 日本の子どもの約6人に1人が貧困状態※1で、この問題は徐々に深刻になっています。とりわけ母子家庭の貧困率※2は高く、ここ20年くらいずっと5割以上。児童養護施設に来る子どもの家庭は、ほとんどが経済的な問題を抱えています。また施設にいる子は虐待を受けてきた子が多く、データに表れないものを含めると、7割の子どもが虐待経験を持つともいわれています。絶対ではありませんが、貧困と虐待は強い関連性があります。
 学力と家庭環境はほぼリンクしていますから、普通の家庭に育って勉強して大学に進んで…といったルートを歩んでいると、貧富の格差を実感することはほとんどないかもしれません。けれど確実に、この日本にこの階層は存在します。
 私の育った在日コリアンの社会も貧富の差が激しいんです。高校は朝鮮学校に通っていたのですが、偏差値で区分けされていなかったから、学校のなかにも厳然たる格差がありました。九九にも苦労する生徒がいれば、教室の片側には東大をめざす生徒がいる。家庭環境のせいで学校に来なくなってしまったり、経済的な理由で泣く泣く進学をあきらめたりする友人もいました。こうした高校時代が原体験として残っていて、社会の仕組みを変えたいと考えるようになったんです。
――慎さんの著書「働きながら、社会を変える」のなかで、慎さんが児童養護施設に住み込みをするエピソードがあります。この体験から、投資的な考え方の寄付プログラム「チャンスメーカー」が生まれました。
 投資ビジネスでは直感や現場感を大切にしています。児童養護施設を支援するときも、実際に体験することで必要なものが見えてくると考えました。会社の長期休暇を利用し、1週間、実習生として施設に住み込みをさせてもらったんです。
 児童養護施設の子どもはきめ細かい心のケアが必要ですが、圧倒的に職員さんの数が足りていない現状がありました。私がいた施設では、1人の職員さんが見る子どもの数は平均10人。これは他の多くの施設でも同じ状況です。子どもが何か問題を起こした際、本来はじっくりマンツーマンで話し合うべきなのに、なかなか時間がとれず、慌ただしく日々が過ぎてしまう。
 児童養護施設出身者のなかには、心の傷が癒えないまま大人になり、高校を中退してしまったり、仕事が長続きしなかったりする子もいます。すると、収入の低い仕事しか見つけられないなどして生活は困難を極める。ホームレスのなかには施設出身者が多いといいます。
 人間、生きる意味がわからなかったら努力はできないもの。まれにスポーツや芸術分野などで才能を発揮し、意味を見出す人もいますが、たいていは人間関係から生きる意味を見つけていきます。自分を大切にしてくれる親や大人が周囲にいることが、自己肯定感の礎となって「頑張る力」へとつながるんです。
 住み込みをして何日か後、ある男の子が初めて自分ひとりでシーツをかけられるようになった光景を目の当たりにしました。男の子は、いつもは途中で諦めてしまうのですが、この日は最後までがんばって、ようやくできた。そばで見ていた指導員が「よくやった!」と、すごくほめたんです。本人も心からうれしそうにしていて、ほめることの大切さを痛感しました。成長をきちんと見てあげて、些細なことでもタイミングを逃さずしっかりとほめる。こうした積み重ねが自己肯定感につながるのですが、職員さんの人員が十分でないとなかなかできません。
 児童養護施設のなかでも経済的に恵まれているところは職員さんの数が多く、その結果、子どもの進学率や就職率が高くなっています。脳科学の池谷裕二先生もおっしゃっていましたが、人間の成長は生来の気質よりも、環境ファクターのほうが遥かに大きく影響するんですね。
 子どものためには職員さんの人員を増やす必要がある。しかし職員さんを1人増やすには人件費として、1年間約600万円かかります。結局はお金がないと始まらないんです。そこで、「Living in Peace」のメンバーとも話し合い、寄付プログラムを立ち上げることにしました。
――「チャンスメーカー」は、施設建て替えから職員増員まで見越した画期的なプログラムだと思います。寄付の仕組みを詳しく教えてください。
 現在ある児童養護施設のほとんどが老朽化していて、施設の8割くらいは、大所帯で暮らす合宿所のような建物です。けれど子どもの心のケアを考慮すると、家庭に近い環境の、少人数で暮らせるグループホーム(集合住宅)のほうがいい。
 で、たとえば50人で暮らしていた大規模施設を、グループホームに建て替えると、国と自治体の制度により職員が自動的に増やせるんです!私も知って驚いたのですが、施設の建て替えにより職員3~4人分の人件費の補助金が毎年おりるようになる。これはとてもレバレッジ効果(※投資用語で少額の資金で大きなリターンを得ること)の大きい制度です。(※補助金の仕組みは、自治体によって異なります。)
 もちろん建て替えには費用がかかりますが、国から7割補助金が出て、残りの3割の部分も「福祉医療機構」という団体から15年満期で無利子借入れができる。つまり借り入れができるだけの原資を集めれば、家庭的な住環境と職員増員が一気に叶う。まさしく一石二鳥の制度です。具体的な数字で説明してみましょう。
 たとえば、集合住宅8軒分をつくるために4億円がかかるとしたら、国からの補助金は2.8億円です。施設側は残り1.2億円を用意すればいいことになります。1.2億円を15年満期で無利子借りるとなると、1.2億円÷15年で、返済額は1年間あたり800万円、1カ月67万円あればいいんです。ただし、返済のあてがなければ、当然、団体からお金を貸してもらうことはできません。そこで、借入の申請時に「チャンスメーカー」に集まった寄付金の一部を返済にあてると約束します。すると審査が通って、建て替えが叶うようになります。
 「チャンスメーカー」の支援先第一号である東京都所管の施設「筑波愛児園」の場合は、施設の建て替えにより、専任職員が3人増えて、15人から18人になる予定です。人件費が年間500万円とすれば、1500万円の支援を毎年得られることに相当します。
――「チャンスメーカー」では、クラウドファンディング(※少額の寄付金を大勢から集めること)の手法をとられています。この理由は何でしょうか?
 僕らのしている資金的なサポートは砂場に水を撒くようなものでしかない。児童養護施設の現状をよくするには、政策が変わることが一番なんです。多くの人に知ってもらって世論へとつなげることが、世の中を変えるアクションになります。
 「チャンスメーカー」は月1,000円からの寄付を呼びかけています。大勢から寄付を集めることは、児童養護施設の課題をPRすることと同じ意味を持ちます。富裕層の善意に訴え、大金をポンと出してもらう方法もありますが、それだと目の前の問題しか解決できません。広がりを持たせることがキーになります。
 現在は月100万円くらい集まるようになりました。私たちがめざすのは世の中の仕組みそのものを変えること。長い時間がかかりそうですが、取り組んでいきたいです。
――子どもの貧困問題への取り組みに、ご自身のスキルを活かしておられるという点に感銘を受けました。子どもの成長には環境・経験が大切であるというお話にも大変共感しました。
 私は教職につく、厳格な父親のもとで育ちました。四人兄弟で決して裕福な暮らしではないなか、母親は困っている人を見ると放っておけない情深い性格だったそうです。「今の私があるのは両親のおかげ。私自身がえらかったわけでも何ともなくて、たまたま環境がよかっただけ」。だからこそ、すべての子どもが、幸せに生きるチャンスを当たり前に得られるような社会をめざしています。
――最後に、ライフネット生命に対する印象をお聞かせください。
 貴社に勤めている知人が数人いるのですが、同じタイプの人間が一人としておりません(笑)。「企業は人なり」と言いますが、個性豊かな社風なのだと思います。創業者のおひとりである、出口CEOの理念もシンプルでまったくブレていません。それがアイディア光る商品設計に表れているのではないでしょうか?