『明日ママ』で脚光の児童養護施設職員 大卒初任給18万円

NEWSポストセブン 2014年1月24日

 芦田愛菜主演のドラマ『明日、ママがいない』(日本テレビ系)の内容が物議を醸している。児童養護施設を舞台に、「ここにいるお前たちはペットショップの犬と同じ」といった煽情的なセリフが登場するストーリーには、一部の児童養護施設関係者から批判の声があがっているが、児童養護施設の職員とは、どんな仕事なのだろうか。
 国が定める児童養護施設の職員の配置基準は以下のとおり。2才児未満の児童1.6人につき1人、2才以上3才未満の児童2人につき1人、3才から小学校就学の始期の児童4人につき1人、小学校就学の始期から18才未満の子供には5.5人につき1人の児童指導員、もしくは保育士が必要とされている。
 施設によって勤務体系は異なるが、一般的な平常勤務は平日の朝6時頃に出勤し、朝食の準備や洗濯、学校に送り出すなどし、一度休憩を挟んで午後4時頃に出勤、消灯の時間の午後10時になるまで勉強を教えたり、食事やお風呂の世話など身の回りの世話を行う。こうした平常勤務は週2~3日で、その他週1日は泊まり込みで午後10時から午前10時まで宿直勤務するのが基本的なサイクルとなる。
 かなりの重労働ではあるが、教員や施設職員、地域ボランティアと連携し、障がい児や児童養護施設・里親・ファミリーホームなどの支援を行うNPO法人「こどもサポートネットあいち」の理事長・長谷川眞人さんはその内情を語る。
「子供相手の仕事のため、必ずしも予定通りにいくとは限らず、残業や急な出勤を求められることも少なくありません。給与体系も施設や地域によって違いはありますが、おおよそ大卒初任給で18万円程度、短大卒でしたら16万円程ではないでしょうか」
 ※女性セブン2014年2月6日号

日テレ「明日ママ」 数社がCM自粛 「騒ぐほど局の思うツボ」の指摘

ZAKZAK 2014年1月23日

 人気子役、芦田愛菜(9)主演の日本テレビ系「明日、ママがいない」(水曜午後10時)の第2話が22日放送された。15日の第1話放送後から抗議を受けている問題作だけに、数社がスポンサーを降りたかCMを自粛したとみられる。
 児童養護施設「コガモの家」を舞台に、親に捨てられた子供たちが友情を育みながら本当の愛情、幸せを模索する物語。人気脚本家の野島伸司氏(50)が脚本監修、脚本はこれがドラマデビューの新人女性脚本家、松田沙也氏。
 芦田演じる主人公は赤ちゃんポストに預けられたために「ポスト」、ポストを慕う幼稚園児は母親がギャンブル中毒だったため「パチ」など、施設の子供たちはそれぞれあだ名で呼ばれている。
 初回同様、第2話でも、三上博史演じる施設長が、子供たちに「前の飼い主を忘れられないペットが好かれると思うか! お前たちはペットショップの犬と同じだ。泣け!」と暴言を吐く過激描写があった。また、「ポスト」の呼び名は引き続き使われた。
 異変は「ACジャパン」のコマーシャルが放送時間中に3度流れたことだ。「ACジャパンのCMが流れるのは通常、スポンサーがCMを自粛した場合」(広告代理店関係者)。第1話で紹介されたスポンサー8社のうち「エバラ食品工業」「エネオス」「キユーピー」3社のCMが放送されず、提供スポンサー各社の紹介もなかった。さらに、自局のドラマの宣伝CMも流されていた。
 このドラマをめぐっては、第1話放送後、国内唯一の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」を設置する熊本市の慈恵病院が放送中止申し入れを表明。21日には全国児童養護施設協議会が、22日には熊本市の幸山政史市長が「施設当事者の声を真摯に受け止めてほしい」と改善を求めていた。
 広がる抗議。だが第2話では放送に合わせて連動するネット上の書き込みをみると、芦田の演技力を中心に番組を評価する意見が圧倒的だった。ドラマに詳しいライターの田幸和歌子氏も「騒げば騒ぐほど日本テレビの思うツボ」と指摘する。
 「差別的言動が確実に問題になることが予想できたのに、制作サイドがほとんど手を打っていなかったようで、むしろあおっている」
 肝心のドラマの質だが、「子役たちのうまさが際立っている。記号的なキャラを演じる大人とリアリティーあふれる子供たち、という演出も狙って作られていると思う」と高く評価する。
 今後は「必ず救いがある内容、構成になっているのでは」と予想。その根拠に、2011年に結婚して父親になった野島氏の変化を挙げる。
 「昔のようなドロドロしたモノを近年書いていなくて、ここ数年はちょっとぬるめのものやコメディーが中心。業界内で『残酷なものを書きたくなくなっているのではないか』と言われている」
 その野島氏。第1話放送後に公式HPから名前が削除されたとされ、“野島隠し”と騒がれたが、日本テレビ総合広報部は「HPにはもとからクレジットされていません。そういったニュースがあるなら誤報」と説明。実際、第2話でも野島氏の名前ははっきりと表示された。
 過激な内容で話題を集めるのは日テレドラマの王道路線。スポンサーの動向を気にしながらの放送が続きそうだ。

なぜ『明日、ママがいない』は制作されたのか、その背景と今後を読み解く

マイナビニュース 2014年1月23日

 「赤ちゃんポスト」を設置する慈恵病院からの放送中止要請、全国児童養護施設協議会と全国里親会からの改善要求、スポンサーCM自粛、ついに放送倫理・番組向上機構(BPO)が審議へ……。『明日、ママがいない』をめぐる騒動は悪化する一方だ。
 ネットでも賛否両論というより、”否”の声が圧倒的に多い。当初はホメたたえるタレントの声も多かったが、今ではほとんど聞かれなくなった。所属事務所が止めているのだろう。 しかし、「いったい何が問題なのか? 過去の問題作とどう違うのか?」、そして「そもそもなぜこのようなドラマが生まれたのか?」第2回放送を経てなお反響が増している同ドラマを改めて考えてみる。

何が問題? 過去の問題作とどう違う?
 ここでは「ドラマ設定やセリフが人権侵害にあたるか?」は論じず、あくまでドラマ評論家として、ドラマ制作の観点から書いていく。
 まず問題が大きくなってしまった最大の理由は、「グループホームを舞台にしたドラマを作った」ことではなく、「視聴率のためにインパクト重視の脚本・演出をしている」こと。関係者たちは、そのあざとさを感じてしまうから、「良い部分に目が向かない」「ドラマと分かっていても見て見ぬフリができない」のではないか。
 では、子どもが多数出演する過去の問題作はどうだったのか?
 21世紀以降を振り返ってみると……『女王の教室』は鬼のような女教師の悪行を描き、『14歳の母』は中学生の妊娠・出産を描き、『ライフ』はひたすら壮絶なイジメを描いた。 いずれも『明日、ママがいない』同様に”否”の声が多く、悪影響を恐れたPTAに問題視され、BPOにも抗議の声が殺到するなど混乱したが、ここまでの騒動にはならなかった。多少なりとも教育現場での影響や実害はあっただろうが、慈恵病院のような特定施設や子ども個人がそのまま当てはまることがなかったからではないか。フィクションとはいえ、モデルが限定されるほど関係者は穏やかでいられなくなり、この点では配慮不足と言われても仕方がない。
 「21世紀で最も泣ける」とうたっている以上、終盤に向けて怒とうの感動ラッシュが訪れるのは間違いないだろう。しかし、これは「1日で全てを見せる」映画や2時間ドラマではなく、「1クール3カ月間」の連続ドラマ。当事者たちは、感動の終盤まで2カ月以上も待てるはずがなく、序盤の過激な描写に耐えられない。ネットの発達で1話ごとにさまざまな声が飛び交う中、「連続ドラマだからこそ、救いとなる部分が以前よりも求められる」時代になっているのだ。『Woman』で見せたバランス感覚が、今作からは感じられない。
 また、1990年代に『高校教師』『人間・失格』『聖者の行進』など数々の問題作を手掛けた野島伸司に脚本監修を依頼したのも悪い方に出た。「ピュアな人間ドラマも書ける」のに、「あざといドラマを書いてきた」ことを大人の視聴者たちは忘れていない。

なぜこのドラマが生まれた?
 まず制作している日本テレビの事情から。水曜22時は、同局の看板ドラマ枠。主に女性をターゲットにしたヒューマン作品が多く、『ラストプレゼント』『14歳の母』『アイシテル~海容~』『家政婦のミタ』など多くの話題作が生まれてきた。 そして、『Mother』『Woman』での好演が光った芦田愛菜と鈴木梨央の「子役ツートップを初共演させるなら今」という発想が生まれる(所属事務所も同じなだけに実現しやすい)。さらに、複数の子役を出演させられるテーマと、今までにない芦田愛菜の魅力を引き出せる役を考えたとき、このドラマに行き着いたのではないだろうか。企画会議の段階であればよくある話だが、コンプライアンスが叫ばれる昨今、ほとんどがつぶされて実現しないだけに、今回だけリスキーな設定が採用された理由はよく分からない。さらに、「綿密な取材」「関係者への根回し」「世論の誘導」が必要なヒューマン作品に若手のプロデューサーと脚本家を起用したことも、不安定要素につながったのではないか。
 また、日本テレビは「『家なき子』以来の素晴らしいものを作る」と宣言していたようだが、これはミスジャッジかもしれない。昨年フジテレビが『ショムニ』や『ビーチボーイズ』をモチーフにした『SUMMER NUDE』のような90年代ドラマのリバイバルで失敗している。
 『家なき子』の初回放送は1994年。20年も前のドラマを引き合いに出し、”人の本性を見抜く大人びた小学生”という主人公のキャラを重ねたところに、やはり「企画書ありきの見切り発車だったのではないか?」という疑いが浮かんでしまうのだ。
 次に、ドラマ業界の事情。ここ1年間で顕著なのが、各局の”初回(序盤)至上主義”。「終わってみたら、初回(序盤)の視聴率が一番高かった」という作品ばかりで、数字はどれも右肩下がり……。だからこそ今作の初回も、深夜の再放送に加え、ネットで無料放送していた。つまり今のドラマは、「初回(序盤)が全てなので、インパクトのある脚本・演出にせざるを得ない」状況にあるのだ。
 さらに、”キャッチーなセリフで口コミ狙い”も目につく。昨年、「倍返しだ」「じぇじぇじぇ」「私、失敗しないので」などのセリフが流行ったが、今作も「親からもらったものは全部捨てたんだ」「お前たちはペットだ」など口コミ狙いのエキセントリックなセリフが多く、それが裏目に出てしまった。

今後ドラマはどうなる?
 よほどの事件がない限り、「”ポスト”というあだ名をやめる」「ペット扱いをやめる」など内容の調整はあっても、放送中止はないと見ている。中止ともなれば、今度は芦田愛菜ら子役たちが深く傷ついてしまうからだ。
 今後の内容で1つハッキリしているのは、「芦田を主演にした以上、(ドラマ内で)時間の経過ができない」こと。大人の演技はできても、見た目はせいぜい2~3歳しか年を取ることができない。そのわずかな年月の中に、仲間との絆、実母や里親とのやり取りなど、「感動のシーンをどれだけ詰め込んでいけるのか」が勝負となる。
 芦田は舌足らずのセリフ回し以外、もはや子役の粋を超えている。表情の強弱は「大人っぽい」というより、昼ドラでも主演を張れる「大人女優そのもの」だ。そんな芦田の幅広い演技力を生かしてか、ドラマは言われているほどシリアス一辺倒になっていない。 子役たちは思った以上に笑うし、ボケもかましまくる。むしろ、大人たちの暗すぎる演技が不自然で、全体を見ても明るいシーンの方が多いくらいだ。数々の抗議を受けた今後は、さらにこのテイストが高まっていくだろう。
 過半数が刑事・医療ドラマに偏るなど、どの局も”守りに入った”作品が多い中、問題点はあれど、その”攻める”姿勢まで非難されるとしたら残念な限り。「子どもの目線から大人を見たドラマ」というコンセプトをより鮮明にすることで、このピンチも乗り切れるかもしれない。『家なき子』をモチーフにしたあざとい脚本・演出に走らないことを願いながら、見続けていこうと思う。

明日、スポンサーがいない…抗議騒動の『明日、ママがいない』異例の事態で放送中止の危機

楽天woman 2014/01/23

 過激な内容が物議を醸している連続ドラマ『明日、ママがいない』(日本テレビ系)の番組スポンサー3社が、22日に放送された第2話でCM放送を見合わせた。
 児童養護施設を舞台に様々な事情で親と暮らせなくなった子どもたちを描いた同ドラマは、第1話で施設長が「おまえたちはペットショップの犬と同じ」などと暴言を吐き、子どもたちに暴力を振るうなどの過激なシーンが描写された。これに対して、ドラマのモデルになった「赤ちゃんポスト」を設置する熊本市の慈恵病院や全国児童養護施設協議会などが「養護施設や里親制度への誤解や偏見を与えかねない」として放送の中止や内容改善を求めて抗議している。
 同協議会の藤野興一会長は「いかにフィクションとはいえ、当事者の子供たちはこれを見せられたらしんどい。自殺者が出たらどうするんだ、という思いだ」とコメントし、里親会の星野崇会長が「すでに辛い思い出がフラッシュバックするなどして傷ついている子供がいる。改善がなされない場合、番組スポンサーと話すことも考えている」と発言するなど、抗議は熾烈さを増している。
 この事態にスポンサーが動いた。第2話では、エバラ食品工業、JX日鉱日石エネルギー(エネオス)、キユーピーの3社がCM放送を取りやめ、その“穴埋め”としてACジャパンの公共CMが流された。3社とも抗議を問題視しており「視聴者や関係者の意見を考慮し、総合的に判断した」としている。
 第1話で提供スポンサーとして表示されていた花王、スバル、日清食品、三菱地所グループなど5社は第2話でもCMを放送したが、通常はオープニング後に紹介される提供スポンサーのテロップや、おなじみの「この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りします」というナレーションはなかった。
 今回のようなスポンサー対応の前例としては、同じ日本テレビで05年に放送された天海祐希主演の連続ドラマ『女王の教室』がある。過激な内容によってスポンサーに苦情が殺到し、第5話~8話にかけて全スポンサーの提供クレジット表示を取りやめ、その後もクレジット表示が一部スポンサーのみになった。しかし、この時はクレジットはないものの各社がスポットCMのような形で放送しており、完全にCMを見合わせたわけではない。
 一連の抗議について、日テレ側は「子どもたちの視点から『愛情とは何か』を描く趣旨」「最後までご覧いただきたい」と強気のコメントを発表しているが、生命線ともいえるスポンサーが次々とCM自粛する可能性も浮上してきた。
 打ち切りもあり得る緊急事態に、あるテレビ関係者はこう憤る。
「苦情を恐れて誰からも批判されないような番組ばかりになったら、テレビは味気ないものになってしまうでしょう。『実態と違う』といっても、全てのドラマは大なり小なり誇張があるし、あくまでフィクションです。『子どもがイジメられる』という批判もありますが、それはこのドラマに限った話ではなく、昔からアニメやバラエティーなどの影響でも起きていたこと。もしイジメが起きたとすれば、問題の根本は作品ではなく、ドラマの影響で友達をイジメるような子どもが育った家庭や学校の環境の方ではないでしょうか」
 一部では「騒動で話題になったことで視聴率が急上昇するのでは」との推測もあったが、第2話は13.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で第1話から0.5ポイント下がった。しかし、関西地区では13.9%(同)と1ポイント上昇しており、放送中止を要請している慈恵病院がある北部九州地区では14.2%(同)と第1話の10.1%から4.1ポイントの大幅アップを記録している。
 もしスポンサーの意向で内容が変わったり、放送中止になるようなことになれば、これは表現の根幹にかかわる問題ともいえるだろう。その一方で、民放テレビは「お金を出してくれるスポンサーありき」の仕組みであることも事実。果たして、日テレは今後どのような決断を下すのだろうか。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)