日本テレビ:ドラマ「明日、ママがいない」、CMの放送を全8社中止

毎日新聞 2014年01月28日

 児童養護施設を舞台にした日本テレビ系の連続ドラマ「明日、ママがいない」が病院や養護施設団体などから抗議を受けている問題で、番組スポンサー8社のうち、新たに花王、小林製薬、三菱地所の3社が27日、第3話(29日放送)でのCM放送の見合わせを決めた。これで全社がCM放送を中止または見合わせることになった。
 三菱地所は、同局が抗議を受けた後の22日に放送した第2話でもCMを放送し、CM放送継続の意向を示していた。担当者は「視聴者からご意見が寄せられ、他のスポンサーの動向も見て判断した」と話した。

日テレ社長は「ドラマ継続」
 一方、同局の大久保好男社長は27日の定例記者会見で、「(抗議を)重く受け止めている。だが最後まで見ていただければ制作意図はわかってもらえる」と述べ、第3話以降も放送を続ける考えを明らかにした。
 佐野譲顕(よしあき)制作局長は、第2話も内容に変更はなかったといい、今後も「脚本、演出に大きな変更はなく、最後までいけると確信している」と述べた。【有田浩子】

「明日ママ」全社がCM自粛 日テレ社長、放映は続行

朝日新聞デジタル 2014年1月28日

 児童養護施設を舞台にした日本テレビの連続ドラマ「明日、ママがいない」が関連団体などから抗議を受けている問題で、日清食品や花王、小林製薬などが27日までにCM自粛を決定、番組のスポンサー全8社がCMの放映を見合わせることがわかった。
 小林製薬幹部は27日夜、「顧客から提供の是非を考えるべきだという意見が多く寄せられ、今夜、(見合わせを)判断した」と語った。
 一方、日テレの大久保好男社長はこの日夕方の記者会見で、相次ぐ抗議などについて「事態を重く受け止めている」と述べた。ただ、抗議などを理由に予定している脚本や演出を変更したり、ドラマを途中で打ち切ったりすることはないことも明らかにした。
 大久保社長は「抗議は重く受け止めるが、それは必ずしもストーリーを変えることとイコールではない。最後まで見ていただければきちんと理解してもらえると思うし、私もそう現場に指示している」と述べ、全9話を予定通り放送する方針を示した。同席した制作責任者は「子どもたちが困難に立ち向かいながら自分たちの力で幸せや愛情をつかんでいく姿を描いていきたい。3、4、5話と見ていただければ支持者が増えていくのではないかと期待している」と話した。

スポンサー全社がCM中止「明日、ママがいない」
視聴者は「放送を続けるべき」派が優勢?

ダイヤモンド・オンライン 2014年1月28日

 日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」が物議を醸している。1月15日のスタートからまだ2話分が放送されただけだが、その内容が児童養護施設やそこで育った子どもに対する偏見を助長するとして批判が殺到。かたや、「表現の自由」という声もあり、日本テレビ側は「子どもたちを愛する思いも真摯に描いていきたい。ぜひ最後までご覧いただきたい」とコメントしている。
 しかし、1月27日夜に報じられた情報によれば、これまでCM放送を見合わせていた5社に加え新たに3社が降板。これで番組スポンサー8社全てがCMを中止・見合わせることになり、しばらく論争は続きそうだ。
 すでにさまざまな意見が出ているなか、実際に視聴者はどう感じているのか。
「偏見助長していない」は42.5%
養護施設出身者の声に注目集まる
 ヤフーの意識調査では、「『明日、ママがいない』は偏見を助長していると思う?」という投票を実施。1月22日の投票開始から、27日14時頃までに12万8744人が投票を行っている。子どもや子育て、教育に関するテーマは女性の投票率が多い傾向があるが、今回の場合は「テレビドラマ」「表現の自由」といったテーマも関わってくるからか、投票数の男女比は約7対3で男性が多い。
 回答は「助長していないと思う」が42.5%、「助長していると思う」が39.9%、「見ていないから分からない」が17.6%となっている(1月27日14時時点)。
 意識調査に寄せられているコメントを見てみよう。
「実際に甥や姪が北九州の養護施設に入所していたが現実としてドラマを見てみても何ら嘘は無いし助長するどころかこういう子供達を増やさないように社会に気付いて欲しいという日テレサイドの意思が伝わるドラマだと思う」(男性)
 今回の件で、多くの人が注視しているのが実際に養護施設で育った人や働く人の声だ。ドラマでは芦田愛菜さんが演じる主人公が「ポスト」というあだ名で呼ばれたり、養護施設の職員が子どもたちを動物のように扱ったりするなど過激な描写がある。こういった描写が「事実に即している」か「いないか」と、表現として「アリ」なのか「ナシ」なのかはひとつの論点だ。上記のコメントは「何ら嘘は無い」というものだが、「事実とかけ離れている」と声をあげる養護施設出身者らもいる。(参考:「児童養護施設出身 ボクサーら『明日、ママがいない』の感想語る」(NEWSポストセブン))
 また、「子供というより、養護施設を取り巻く人達への偏見差別的なものを感じる」(男性)というコメントもあった。
「養護施設で育った子どもへの偏見を助長する」「子どもへのいじめを招く」という声が多いなか、これも重要な指摘だろう。純粋な子どもと対比させるために大人を悪に仕立てることがドラマの筋立てとして必要であったとしても、それはまた、現場で働く大人を傷つける行為にほかならない。
 全国里親会は「もちろん施設でも里親家庭でも残念ながら虐待は発生していますが」としながらも、「都度、専門家を交えて研鑚を積み、児童の最善の利益を図るために努力し、場合によっては、制度面の改革も行ってきているのがこれまでの日本の児童福祉のあり方です」「この番組はそれに対して水を差すようなものとなっており、とても承服できるものではありません」と放送前に第1話のシナリオを確認した時点で抗議を行い、第1話が放送された後にも再度「内容再検討」の要請を行っている。
 また、日本で唯一「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)のある熊本市の慈恵病院は「預けられた子どもの気持ちを傷つけ、人言侵害につながる」と放送中止を求めているほか、全国児童養護施設協議会も抗議文を送付したと報道されている。
「放送を続けるべき」が51.4%
「続けるべき」派、「中止」派の意見は
 ヤフーの意識調査では、同時に「ドラマ『明日、ママがいない』の放送、中止すべき?」という投票も行っている。こちらは27日14時時点で19万2391人が投票。「放送を続けるべき」が51.4%、「放送を中止すべき」が39.5%、「どちらでもない/わからない」が9.1%となっている。
「続けるべき」派と思われる人のコメントは、「社会問題を直視する機会であり、視聴者に問題意識を持ってもらうことが重要だと思う」(男性)、「私は、乳児院で育ったので、ドラマの中の子供たちの気持ち、特に芦田愛菜ちゃんが演じているポストの気持ちが痛いほどに分かる。(略)どのように話が進んでいくのか楽しみなので、最後まで続けてほしい」(女性)、「汚いものを隠し、きれいなものだけを見せる。それだけでいいのだろうか」(男性)など。
「中止すべき」派と思われる人のコメントは、「大人の見識なんて、どうでもいい。このドラマで傷つく子供がいることをわかってほしい」(女性)、「誰でもが特定できる団体をモデルに、取材もなく無断でフィクションを作るという最低なテレビ側の姿勢が批判されているのです。それによって被害を蒙るのは何の罪もない子どもです」(女性)など。
 コメント内にある「取材もなく無断で」について注釈すると、慈恵病院が局側に、児童養護施設や「こうのとりのゆりかご」にどのような取材をしたのか回答を求めたところ、チーフプロデューサーが「こうのとりのゆりかご」には「直接取材はしていないが、文献などで調査し、監修者も設けた」と回答。ほかの児童養護施設については実際に取材したという回答だったという(1月21日朝日新聞朝刊より)。
 放送を続けるべきという人も、中止するべきという人も、「児童虐待や養護施設で育った子どもへの偏見はあってはならない」という気持ちは同じだ。子どもにそれをどのように伝えていくかについてで、意見が異なっている。
 筆者は高校生の頃、公民の授業を担当していた教師から授業中にこんな話をされたことがある。
「私は子どもの頃、誰かに対する偏見や差別をなくすためには、そういった偏見や差別があった歴史を伝えなければいいと思っていました。でもそれは違う。人はどうしても偏見や差別の心をもってしまうもの。偏見や差別があったことを学んだ上で、『それはあってはならないことだった』と理解することが必要です」
 子どもに対して、実際に虐待があること、そして偏見や差別についてどう表現し、どう伝えていくべきか。いま、大人のあり方が試されている。
(プレスラボ 小川たまか)