ドラマ「明日、ママがいない」に出てくるような小規模グループケアを運営するためには、幾つかの条件をクリアしなければいけません。
 しかし、国が、制度的に推進しているのは事実です。
 国の方針は、下記の通りです。

児童養護施設等の小規模化及び家庭的養護の推進のために」より抜粋

「社会的養護の課題と将来像」(平成23年7月とりまとめ)より、
小規模化と施設機能の地域分散化による家庭的養護の推進
・児童養護施設の7割が大舎制で、定員100人を超えるような大規模施設もあることから、家庭的養護の強力な推進が必要である。
・今後は、施設の小規模化と施設機能の地域分散化を進め、
(a)「本体施設のケア単位の小規模化」を進め、本体施設は、全施設を小規模グループケア化(オールユニット化)をしていく。
(b)「本体施設の小規模化」を進め、当面、本体施設は、全施設を定員45人以下にしていく。(45人以下は現在の小規模施設加算の基準)
(c)「施設によるファミリーホームの開設や支援、里親の支援」を推進し、施設機能を地域に分散させ、施設を地域の社会的養護の拠点にしていく。
・将来の児童養護施設の姿は、一施設につき、小規模グループケア6か所までと小規模児童養護施設1か所を持ち、小規模グループケアは本体施設のユニットケア型のほか、できるだけグループホーム型を推進する。また、1施設につき概ね2か所以上のファミリーホームを開設又は支援するとともに、里親支援を行う。

社会的養護の整備量の将来像
・日本の社会的養護は、現在、9割が乳児院や児童養護施設で、1割が里親やファミリーホームであるが、これを、今後、十数年をかけて、
(a)概ね3分の1が、里親及びファミリーホーム
(b)概ね3分の1が、グループホーム
(c)概ね3分の1が、本体施設(児童養護施設は全て小規模ケア)
という姿に変えていく。

 と、なっています。

 現在本園内にある小規模グループケアを地域に出していくには、多くのハードルが課せられています。
 国は、小規模グループケアの地域出しを推進していますが、現状では「絵に描いた餅」の状態です。
 その意味を具体的に書き出していきます。

小規模グループケアに関する要綱抜粋

[人数]
 小規模なグループによるケア単位の定員は、原則として6人以上8人以下とする。
[設備等]
 (1)小規模なグループによるケアは、各ユニットにおいて居室、居間及び食堂等入所している子どもが相互に交流できる場所その他生活に必要な台所、浴室、便所等を有し、かつ、保健衛生及び安全について配慮し、家庭的な雰囲気の中で、担当職員が入所している子どもに対して適切な援助及び生活指導ができること。
 (2)入所している子どもの居室の床面積は、1人当たり4.95㎡上(幼児については3.3㎡上)であること。

次の場合には認められないこと。
 ① 居室がないもの
 ② 居間・食堂などの交流スペースがないもの
 ③ 居室・居間(食堂)はあるが、その他生活に必要な台所・浴室・便所が欠けているもの

児童養護施設からの条件

 可能な限り、児童養護施設本園小学校校区内が望ましい。(目安として学校から徒歩20分程度圏内)
 *本園との連携を容易にするための措置でもあります。
 原則として、一居室当たり2人までとすること。
 子どもの生活環境として適当である地域性であること。
 子どもの安全を考え、耐震基準をクリアしていること。
家主さんと地域住民のご理解が必要。

具体的な設備条件(4LDK+S)

児童居室
 6畳( 9.93㎡)2名
 6畳( 9.93㎡)2名
 9畳(14.90㎡)3名

職員宿直室兼執務室
 4畳(6.62㎡)以上

リビングダイニング
 9名程度が食卓を囲み+テレビの前にソファーが置ける程度のスペース 23㎡程度?

その他
 キッチン、浴室、脱衣所(洗濯機設置)、トイレ、洗濯物干し場(児童7名の洗濯物)、物置(サービスルーム)、駐車スペース

経済面

 児童が7名未満の場合、小規模グループケア推進加算等の補助金が出ません。
 家賃に対する補助金は、国100,000円、自治体 ?円、計 ?円が限度です。
 敷金・礼金・仲介手数料等については、補助金がありません。
 *もちろん、生活家電品等の購入も補助金はありません。

自治体との調整

 「来月から、本園の2軒が、地域で生活します。」と言うような交渉は不可能です。それは、自治体としても予算編成が絡んでくるからです。
 次年度スタートするためには、今年度秋頃の自治体予算編成に間に合わせなければいけません。
 しかし、単純に考えて、秋頃に、次年度4月からの借家を確保できるわけがありません。つまり、実質的に実現不可能ですね。
 実現する為には、法人が土地と家を財産として入手するしかありません。つまり法人に経済的な余力がないと不可能です。

所感

 国の条件、児童養護施設の条件、設備の条件、自治体の予算編成などなど、ハードルが幾重にも重なり、とても面倒です。
 そのために、児童養護施設側は、躊躇し、先へ進めないのが現実です。それが、冒頭に記載した「絵に描いた餅」の正体です。

 みなさんの、お宅の隣に、グループホームが引っ越してきたら、少なくとも、ドラマ「明日、ママがいない」肯定派のみなさんは、快く受け入れて下さることでしょう。そう、信じています。
 ドラマ否定派のみなさんは、児童福祉への理解が根底にあり、日本テレビの放送姿勢に対して否定されているので、多分、理解し協力的に受け入れて下さることでしょう。
 国が、推進しているのです。近い将来、あなたの隣人が、グループホームになるかも知れません。これは、現実的な話しです。
 しかし、児童養護施設の建設に対して反対運動が起こる地域があることも、現実です。
 ぜひ、児童福祉へのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

 それでも、あなたは、ドラマ「明日、ママがいない」で表現されている児童養護施設を他人事として観ますか。