社説[熊本地震1週間]ボランティアの出番だ

沖縄タイムス 2016年4月22日

熊本地震は21日午後6時までに、震度1以上の地震発生回数が770回に達した。マグニチュード3・5以上の地震は同午前8時現在、過去最多の200回に上る。気象庁は同日の会見で「全体的に活動は下がっていない」と発表。発生から1週間が過ぎても収束の見通しは付かない。
長期化が予想される被災地では、発生直後に控えていた自治体による災害支援ボランティアの受け入れが、本格的に動き始めた。
被害が大きかった熊本県益城町の社会福祉協議会は21日、救援物資の仕分けや避難所の支援を担うボランティアの受け付けを始めた。雨の中200人の志願者が訪れ、関心の高さをうかがわせた。
菊池市では19日に県内からの参加に限って募集。翌20日には南阿蘇村でも募集開始した。熊本市社協は、22日からボランティアを募集すると発表している。
地震発生から1週間は、災害サイクルで「急性期」と呼ばれ、被災者の救助や安全な場所への避難が最優先される。その後、発生から3週間までの「亜急性期」は避難所での体調管理が中心となる。
しかし今回は、亜急性期に入ろうとする現在も地震活動が活発で、自治体は安全確保を第一とする急性期対応に追われている。そのため避難所の管理が不十分となり、連日、避難所スペースの大幅な不足や衛生環境の悪化が伝えられている。
車の中で寝泊まりする「車中泊」の避難者の増加も特徴だ。

熊本県などは20日、避難生活での過労やストレスが原因の震災関連死とみられる人が10人いると明らかにした。体調不良を訴え救急搬送された人は280人に上る。医療支援として専門家によるボランティアニーズも高い。
1995年の阪神大震災は「ボランティア元年」と呼ばれ、多くの個人が被災地を訪れた。以降はNPOなどの団体ボランティアができ、自治体による受け入れ態勢の整備を経て、その後の被災地で活躍している。
ボランティアは誰でもできる。だが事前の準備が無いまま参加すると、かえって救援活動の妨げとなる。長袖・長ズボン、長靴、飲み物、タオル、帽子、マスク、軍手などで自身の身を守ること。被災地での食事や宿泊先は自分で手配するなど、自己責任・自己完結の姿勢が重要だ。
活発な地震活動や、21日の荒れた天候など被災地の状況を考えると、二次災害を防ぐため自らの安全を第一に考えた行動が何より求められる。

災害で受けた心身の回復には時間と丁寧な関わりがいる。発生から5年の今もボランティアが通う東日本大震災の経験を見れば、熊本地震も息の長い活動が鍵になろう。
被災者が必要としているのは何か。熊本では現在、大雨の影響で避難所の移動や閉鎖があり混乱が続く。避難所格差といわれる物資の偏りも発生している。きめ細かなニーズにあわせ、行政の強みと弱みを的確に把握し、互いに連携してその力を最大限発揮してほしい。

ボランティア、食料・水は自前で 熊本地震

京都新聞 2016年4月21日

熊本地震の発生から1週間を過ぎ、NPO法人「京都災害ボランティアネット」(京都市伏見区)の吉村雄之祐(ゆうのすけ)理事長(43)は「避難所にいる障害者や妊産婦、アレルギー体質の子どもの我慢も限界に達している」と懸念する。
被災地では救援物資が被災者に行き渡らない事態が生じている。「仕分けする人が足りていない。衛生状況が悪いと感染症の問題も出てくる」と指摘。被災自治体がボランティア受け付けを始める中、ボランティアで現地入りする場合は「食料や水、通信手段を自己完結できることが大前提。出発前にボランティア保険に加入し、安全や健康の管理も自分で行い、小まめな休息と給水を」と心構えを説く。その上で、「避難所の便所掃除や段ボールを使ったベッド作りなど需要はある。大工なら女性が下着を干す場所を作れるし、被災者をケアできる団体は支援に入った方がいい」と話す。
東日本大震災で福島県郡山市の避難所運営に携わった経験から「目的を持って行動してほしい。現地に入らなくても義援金や災害ボランティア活動資金へ募金する方法もある」と呼び掛けている。

<熊本地震>サポート情報 避難所運営で大切なことは

毎日新聞 2016年4月21日

小規模自治体を中心に職員が足りず、混乱している避難所が少なくない。避難生活の長期化が避けられない中、被災者も関わる形での運営が重要になる。東日本大震災の直後から避難所運営に携わった岩手県陸前高田市の仮設住宅自治会長、佐藤一男さん(50)に運営のポイントを聞きました。【賀川智子】
まずは避難所の代表者を決めることです。避難所ではいろんなことが瞬間的に連続して起こるから、即断即決を迫られます。落ち着いて判断が下せる、多少高齢の方が周囲の賛同も得やすく適任でしょう。
救援物資が運ばれたら、すぐにその場で分けないこと。避難所では買い物や家の片付けなど日中は外に出ている人もおり、配布時間を「1日1回夕方」などと決めて、一部の人だけに配られることを防ぎます。配布の際に役員は一番に取らないこと。「役得だ」と思われると、その後の不信感につながります。配布時間や方法を周知徹底するなどして、公平な運営を心がけることです。
子育て世帯同士を一つの部屋に集めることも必要です。子育てをしていない世帯にとって、子どもの声はストレスになりかねず、夜泣きの際などお父さんお母さんも周囲を気にしてストレスになりがち。子育て世帯同士なら「お互い様」で気にならず、あやしたり手を差し伸べたり助け合えます。
救援物資に調味料があると便利です。優先度が高いのは脱水症状を防ぐための塩。ごま油や七味唐辛子などがあると、同じ食材が続いてもアクセントがつけられ、避難者の食欲減退を防止できます。
来てもらったボランティア団体には、それぞれの得意分野を聞くと効果的です。学生団体ならば人海戦術など、ニーズとのミスマッチを防げます。

「いつまでいられるのか」校舎が避難所、長期化も 学校再開の見通し立たず

西日本新聞 2016年4月21日

熊本市教育委員会は、熊本地震による全市立幼稚園、小中高校など計148校・園の臨時休校を、ゴールデンウイーク明けの5月9日ごろまで延長すると発表した。ただ、全体の8割以上が避難所として使われており「現状が大きく変わらなければ、さらに休校期間が長引く可能性もある」としており、再開の見通しが立たないのが実情だ。
臨時休校は地震発生翌日の15日から。各区のまとめによると、小中高139校中、123校が避難所となり、市内の避難者計約4万300人のうち、約2万500人が身を寄せている。
東区の東町小には約340人が避難し、うち約290人は全21教室で生活を送る。高齢者も多く、ある教室では14人中11人が70~80代で、大半が独り暮らしという。73歳の女性は「自宅に帰っても独り。余震に襲われたら心細くてたまらない。いつまでもここに残るわけにはいかないけど、できるだけみんなと一緒にいたい」と話す。
各校の運動場で車中泊する人も含めれば、避難者数はさらに多いとみられ、被災者からは「いつまでいられるのか」との不安の声も漏れている。
再開の見通しが立たない要因の一つに、校舎の被害の全容が分かっていないこともある。市教委によると、避難所になっている小中学校24校の体育館について、耐震性に問題があると確認。避難者は校舎に移動した。校舎などの危険度判定調査は、24日までに終えるのを目標にしているという。
一方、熊本県教委は21日、同日現在で休校している県立高、特別支援学校計50校のうち、避難所になっていたり建物の被害が大きかったりする計20校の休校を、5月9日まで延長することを決めた。残る30校の休校期間は被害状況などを考慮し、学校長が判断する。

熊本地震 車いす専用の避難所やペット同伴の避難所も開設

フジテレビ系(FNN) 2016年4月22日

熊本地震から、1週間がたった。長引く避難生活。熊本学園大は、車いす専用の避難所を作った。
車いす利用者にとって、一般の避難所は、狭く利用しにくい。
寝静まった避難所では、介助を受けにくいという思いから、大学は、一番広いスペースを確保している。
利用者は、「今はこういう所があって、助かっています」、「ここの学校は、本当にバリアフリーが進んでいて、トイレとかもね、確保されているので、とてもありがたく使わせていただいています」などと話した。
障害者も使いやすい、手すりがついた簡易トイレも運び込まれた。
あるホールでは、運動用のマットを敷いて、その上で、いつでも横になれるようになっていた。
車いす利用者と、その家族が、一緒に過ごすことができる避難所の取り組み。
心の不安を少しでも取り除くことで、体も休まるもよう。

きめ細やかな介助。
車いすの被災者たちに、つかの間の笑顔が戻った。
取材班が、車道をさまようシバイヌを見かけたのは、3日前だった。
そして、避難した人々の生活を取材する中で、常に目撃してきたのが、やむなく避難所の外で、ペットと一緒にいる人たちだった。
多くの人との共同生活は、ペットがいては難しい中で、ペット同伴で避難できる場所があった。
屋内で、安心してペットと過ごせる場所。
熊本市内の動物病院は、ペット関連の専門学校が併設された建物を開放して、避難所にしている。
被災者は、「ここがあったので、本当に助かったんですけど。(なかったら、なかなか入れなかった?)そうですね。もう、どこ行っていいかも、わからなくて」と話した。

いつもとは全く違う生活で、体調を崩すのは、ペットも同じ。
地震直後、200匹以上のペットが駆け込んできた様子が、フェイスブックにアップされていた。
これを見た人たちから、多くの支援が集まった。
だが、学校も病院も、再開しなければならない。
避難所としての開放は、当初、今週末までの予定だった。
そんな中、10匹のペットと暮らす夫婦が、ほかに行き場がないと願い出た。
夫婦は、「ここがですね、23日以降の避難先っていうのが、もう行くところがないので」と話した。
このあと、医院長は、5月の連休明けまで、病院を避難所として開放することを決断した。
竜之介動物病院医院長・徳田 竜之介さんは、「人間と動物の関係っていうのは、もう家族と同じだからね。この絆を切っちゃいけないんですよ。だから、絶対、同行避難っていうのは必要だと、わたしは思いました」と語った。.