被災地の子ども、夜泣きや不眠が増加 心のケア急務

テレビ朝日系(ANN) 2016年5月11日

熊本地震の発生から1カ月近くが経ち、被災地では、「子どもが夜泣きをする」などといった相談が児童相談所などに相次いでいて、子どもの心のケアが課題となっています。
熊本県内の児童相談所には、今も続く余震などの影響で「子どもが眠れない」「夜泣きをする」などの相談が少なくとも約70件寄せられています。こうした症状は、特に大きな被害を受けた地域で多くみられ、熊本県益城町で診療を再開した医師は、心のケアの重要さを訴えています。
はがこどもクリニック・芳賀雄作院長:「大人、一番身近な両親がしっかりそばに寄り添ってあげ、話を聞いてあげたり、それが一番だと思います」
教育委員会も、特に被害が大きかった小中学校を中心にスクールカウンセラーを常駐させているほか、県内のすべての小中学校にアンケートを配って詳しい調査を進める方針です。.

<熊本地震>子供の変調、相談66件 「夜怖い」「乱暴に」

毎日新聞 2016年5月11日

熊本地震による子供たちの変調を訴える保護者からの相談が、熊本県内の3児童相談所で計66件に上っていることが、各児相への取材で分かった。「友人に対して乱暴になった」「夜が怖い」などの相談が寄せられているという。県教育委員会と熊本市教委は実態把握に向け、県内の全公立小中高などの児童生徒約18万人を対象にしたアンケート調査に乗り出した。
県内には児童相談所が3カ所ある。4月14日の地震発生以降、地震と関連がある保護者からの相談は、熊本市児相31件(5月9日現在)▽県中央児相30件(10日現在)▽県八代児相5件(同)--あった。県内では11日から全ての公立学校で休校措置が解除されるが、子供たちの心のケアが課題になりそうだ。
各地の児相によると、「電気をつけたままでないと眠れない」「夜中に泣き出してしまう」など、余震の恐怖による心身の変調を訴える声が多かった。また、「友人にいじわるをするようになった」「きょうだいにきついことを言うようになった」といった相談もあり、長期化する避難生活によるストレスも一因ではとみられる。
こうした状況を受け、県教委は「心と体のチェックリスト」と呼ぶ記名式のアンケート調査を始めた。「涙があふれてくる」「1人になるのが不安である」「誰かに話を聞いてほしい」といった心理状態や食欲などを聞く計20項目の質問があり、児童生徒は「とてもあてはまる」「少しあてはまる」など四つの選択肢から選ぶ。熊本市を除く公立小中高校、特別支援学校の全児童生徒を対象に、6日以降、各学校に調査用紙を送付した。
熊本市教委も、ほぼ同内容の17項目のアンケート調査を市立の幼稚園、小中高校、専修学校で始めた。県教委、市教委とも調査結果を踏まえ、必要に応じてスクールカウンセラーらによる心のケアにつなげる考えだ。
市教委総合支援課は「子供の心のサインを見逃すと、行動や学習に影響する可能性もある。いち早く大人が気づいてケアをすることが重要だ」と話している。【中里顕、井川加菜美】

熊本地震 学校再開 子どもの安全安心は

NHKニュース 2016年5月9日

熊本県では先週末の時点で10の市町村で小中学校が休校していました。9日、このうち7つで学校が再開され、残る自治体も11日までに再開されます。被害が大きかった地域では通学路にがれきなどが残っている所もあり、子どもたちの安全安心に注意を払いながらの再開です。

避難所から通学
熊本県内では9日も1万3000人近くが避難生活を続けていて、避難所から再開した学校に通う生徒もいます。熊本市の西原中学校は、避難所になっている体育館でおよそ70人が避難生活を送っています。
このうち中学2年生の川山紗果さんは、自宅の壁がはがれ窓が外れる被害を受けましたが、修理の見通しが立たないことから、母親と小学生の妹と弟の4人で体育館に避難しています。紗果さんは8日に自宅から持ち出した制服に3週間ぶりに腕を通し、9日朝、体育館から隣の校舎に登校しました。そして、音楽室で9日から再開した吹奏楽部の朝練に参加し、さっそく担当のパーカッションの練習に打ち込みました。
部活動の先輩は「川山さんは避難所から通っているので、避難所にみんなで顔を出すなどしてサポートしていきたいです」と話していました。
午前8時すぎになると、川山さんたちはそれぞれの教室に入り、クラスメートと地震後の様子を確かめ合っては互いの無事を喜んでいました。
川山紗果さんは「学校に来て友達にも会えてよかったです。本当は家に帰りたいと思いますが、部活など学校生活を頑張りたいです」と話しています。
母親の智子さんは「鍵が閉まらない、窓が開いたままの状態で子どもたちと夜寝るのは不可能ですし、空き巣とかも多いので、避難所暮らしを続けています。一生懸命頑張って、早く避難所を出たいと思っています」と話していました。

越境して通学も
熊本県南阿蘇村では9日からすべての小中学校が再開しましたが、大規模な土砂崩れで村の中心部につながる阿蘇大橋が崩落するなどの被害が出て、この橋を通学路にしていた立野地区の児童を中心に1年生から6年生までの小学生21人が隣の大津町にある大津小学校に通い始めました。
大津小学校の図書館には村の児童や保護者が集まり、新しい学校での生活のルールや授業の方針などについて説明を受けました。
このあと、大津小学校の吉良智恵美校長が校内放送で600人余りの全校児童に「南阿蘇村のお友達は皆さんと同じように地震でつらい思いをしました。これから仲よく勉強したり遊んだりしてください」と呼びかけました。
南阿蘇村の子どもたちはそれぞれのクラスで先生や児童らに迎えられ、自己紹介をしたり大津小学校の児童から好きなことなどについて質問を受けたりしていました。
南阿蘇村の小学2年生、井野陽生くんの母親、友紀さんは「心配していましたが、学校側の対応がよく安心しました。自分も息子もできるだけ早く今の生活に慣れていきたいです」と話していました。

さまざまな対策も
すべての小中学校が再開した熊本県益城町では、子どもたちに安心して登下校してもらったり学校生活を送ったりしてもらうため、さまざまな対策が取られています。
益城町の広安西小学校では、校区内に傾いた住宅や塀などがあるため、校舎や通学路の安全を確認しようと午後からの登校としたほか、独自のハザードマップを作ってう回路を設定しました。子どもたちは保護者の付き添いを受けて車や徒歩で登校しました。子どもたちは久しぶりに友達と再会すると明るい表情で無事を確かめ合っていました。
通学に付き添った母親は「道がでこぼこだったり、建物が崩れているところが多いので不安です」と話していました。5年生の男の子は「地震のことを思い出すのは嫌だけれど、友達と一緒にサッカーをしたい」と話していました。
学校は子どもたちに地震の恐怖を思い起こさせたくないと、壁のひび割れや床に出来た段差をあらかじめ板で覆い隠す工事を行いました。水道はまだ復旧していないため、仮設のトイレを利用するということです。
また、学校には全国の支援団体などから400個余りのランドセルが届いていて、自宅が崩れるなどして学用品が使えなくなった子どもに配ることにしています。
広安西小学校の井手文雄校長は「疲れた表情の子もいましたが、元気な姿を見られて学校はすてきな場所だと改めて感じました。復旧作業で日々状況が変わっていくので安全確保に努めたい」と話していました。
この小学校では体育館などで引き続きおよそ200人が避難生活を送っています。避難している71歳の女性は「早く授業が始まらないと子どもたちがかわいそうだと思っていたので再開してよかったです。私たちも行くところがなくて、あとどれくらいここにいるか分かりませんが、子どもたちには勉強に励んでもらいたい」と話していました。