防げ犯罪、応援警官5000人 空き巣や詐欺

毎日新聞 2016年5月3日

熊本地震の被災地を狙った空き巣などの被害が相次いでいる。熊本県警によると、避難中の留守宅などでの窃盗が未遂を含め36件(3日現在)あり、地震に便乗した不審電話などに関する相談も30件を超えている。届け出をためらう被災者もおり、実際の被害はさらに多いとみられる。貴重品を守ろうと車中泊を選ぶ避難者もおり、体調不良も招きかねない。熊本県警は全国から延べ約5000人の警察官の派遣を受け、警戒に当たる。【宗岡敬介、柿崎誠、今手麻衣】
倒壊した家屋が並ぶ熊本県益城(ましき)町。4月29日未明、人通りの少ない住宅街を福岡、熊本両県警の捜査員3人を乗せた捜査車両が時速5キロほどで巡回していた。3人は24時間態勢で被災地の犯罪捜査を続ける「特別機動捜査部隊」のメンバーらだ。「新聞配達が始まる午前5時ごろまでが特に危険」。空き巣が多発する時間帯だけに、捜査員の表情は険しい。
懐中電灯で被災家屋の窓や車を照らし、不審者がいないか確認を続ける。午前1時半ごろ、3人が捜査車両を飛び出した。視線の先には中年の夫婦がおり、懐中電灯でごみ袋を照らしている。「持ち物を見せてもらっていいですか」。3人は所持品の確認を始めた。盗品とみられるものは見つからなかったが、「金目のものがないか探していた」と話したため、「ごみ袋から物を取っても(条例違反などの)犯罪になる場合がある」と注意した。
熊本県警によると、36件の窃盗事件のうち、24件は避難者の留守宅で発生した。既に窃盗などの容疑で福岡県の男ら3人を逮捕している。福岡県警の久保田清隆警部補(39)は「留守にする場合でも、夜間は部屋の電気をつけたり、ラジオから音声を流したりしてほしい」と注意を促す。
電話でうそを言って金をだまし取る特殊詐欺とみられる電話や、家屋修理や義援金集めを名目にした不審な人物の訪問事例なども4月29日現在、36件あった。性犯罪の発生も懸念されており、女性警官が避難所を巡回するなどしている。
被害申告をためらう被災者もいる。避難所に身を寄せる益城町の吉村八枝(やつえ)さん(73)は留守宅でネックレスが盗まれているのに気づいた。「貴金属まで持って行く余裕がなかった。疲れて警察に相談もしていない」と話した。
盗難を恐れ避難所を出る人もいる。自宅が全壊し、子供2人と車中泊を続ける熊本市南区の女性(49)は「貴重品などの管理が心配になって車中泊に切り替えた」と明かす。
熊本県警生活安全企画課の西橋一裕次席は「被害に遭ったら、すぐに最寄りの警察署に届け出るか、110番をお願いしたい」と呼びかけている。

被災地の留守宅、空き巣が後絶たず…自警団巡回

読売新聞 2016年5月2日

熊本地震で大きな被害を受けた熊本県内で、被災者の窮状につけこんだ犯罪が後を絶たない。
避難した人の留守宅を狙った空き巣だけでも20件確認されており、消防団や住民による自警団が地域の巡回を連日続けている。
「不審車両を見かけたらすぐに教えてください」
甚大な被害が出た熊本県益城町の山あいにある集落。4月29日昼過ぎ、同町消防団の矢野敬介さん(36)と嶋田祐也ひろやさん(34)が消防車両で巡回し、住民に呼びかけた。
損壊した自宅の掃除をしていた女性(71)は「避難生活が続いており、空き巣は心配。顔見知りの団員が見回ってくれるのは安心です」と話す。
消防団は「前震」が起きた14日以降、巡回を開始。五つの分団が管轄区域で昼夜問わず見回っている。近づくと急に速度を上げるなどした「不審車」を見つけたら、ナンバーなどの情報を全分団で共有する。本田寛団長(47)は「パトロールを続けることが防犯につながる。住民の力になりたい」と力を込める。
熊本市では、消防団が分団ごとに赤色灯をつけた消防車で地域を巡回。南阿蘇村の喜多地区では、住民約40人が自警団を結成し、18~27日は深夜と早朝の2回巡回を行った。
県警によると、県内では29日現在、空き巣や避難所での置き引きなど計27件の被害が確認された。28日には、16日の「本震」直後に避難した熊本市の女性宅に盗み目的で侵入したとして、福岡県大牟田市の男2人が窃盗未遂容疑などで逮捕された。2人は「無施錠のまま避難した家が多く、容易に盗みができると思った」と供述しているという。地震直後から自宅に戻れていない人もおり、実際の被害はさらに多いとみられる。
県警は被災地に派遣された全国の警察官と連携し、避難者が多い地域を中心にパトカーや徒歩で巡回している。警視庁の島田恵梨巡査部長(34)は「地域をこまめに回り、卑劣な犯罪を防ぎたい」と話した。

避難所で心配される卑劣な「性被害」 熊本市が啓発チラシを配らざるを得ない被災地事情

ライブドアニュース 2016年5月2日

「避難所・避難先では、困っている女性を狙った、性被害・性暴力などが増加します」――。熊本市の男女共同参画センター「はあもにい」が、2016年4月に発生した熊本地震で、いまなお避難所生活を送る女性に向け、こんな内容の啓発チラシを作成し注意喚起を行っている。
チラシの中では、「男の人が毛布の中に入ってくる」「授乳しているのを男性にじっと見られる」など、過去の震災時に起きた性被害の事例を紹介している。実際、こうした災害時の性被害を避けるため、避難所では「ピンクや赤色など一目で女性と分かるような格好は避けるべき」だと指摘する専門家さえいる。

見て見ぬふりをして助けてくれない
避難所で、夜になると男の人が毛布の中に入ってくる(20代女性)
更衣室をダンボールで作ったところ上からのぞかれた(13~16歳女子)
避難所で成人男性からキスしてと言われた。トイレまでついてくる(6~12歳女子)

熊本市男女共同参画センターが熊本地震を受けて作成したチラシの中には、1995年の阪神淡路大震災と2011年の東日本大震災で報告された「避難所での性被害の事例」が紹介されている。
さらに、取り上げられた例の中には、周りの女性が性被害に気づいているにも関わらず、「(男性が)若いからしかたないね」として見て見ぬふりをして助けてくれなかった、というケースもあった。
チラシでは、こうした目を引く実例を取り上げつつ、避難所で生活する女性に対して「単独行動はしないようにしましょう」などと注意喚起。周囲の人間に対しても、「見ないふり・知らないふりをせず助け合いましょう」と協力を求めている。また、チラシの下部には熊本県警や区役所の福祉課など、10か所の相談機関の電話番号も掲載されている。
男女共同参画センターの総務管理課は16年5月2日のJ-CASTニュースの取材に、今回のチラシを作成した理由について、
「女性への注意喚起はもちろんですが、避難所の運営者側に対しても、こうした性被害についての実態を知ってもらい、注意や配慮を行って頂くように訴える意味合いが強いです」
と話す。また、避難所での性被害に目を向けたのは、震災を受けて実施した全国の女性会館等へのヒアリングで、震災後に発生する性被害の実態について説明されたことがきっかけだという。

避難所は「女性が性被害を訴えにくい雰囲気」
男女共同参画センターは、「本震」が起きた4月16日の翌日からチラシ作りを開始し、22日までには配布を行っていた。行政と連携して避難所での掲示を進めているほか、センターの職員も15か所以上の避難所を直接訪問し、チラシの配布や声かけ運動を実施しているという。
避難所の性被害について、防災アドバイザーの岡部梨恵子さんは16年4月16日に更新したブログで、「被災してすぐにやってほしいのは、 女を捨てること」だと指摘。性犯罪の被害を受ける確率を減らすため、ピンクや赤色など一目で女性と分かるような格好は避けるべきだと具体的なアドバイスを送っている。
また、NPO法人「女性と子ども支援センター ウィメンズネット・こうべ」の代表者は取材に対し、「避難所では、女性が性被害を訴えにくい雰囲気ができるケースがある」と話す。
続けて、阪神淡路と東日本の2つの震災時に避難所を訪れた経験があると述べ、
「阪神淡路の際には、避難所でのセクハラを報告した女性が『加害者も被災者なんだから、大目に見てやりなさい』と周りに言われたという話を耳にしました。また、東日本の時には、授乳室や更衣室の用意がない避難所があったのですが、食の問題や被災し建物の応急処置などが優先される状況の中で、女性が声を上げることができなかったそうです」
と当時の状況を語る。その上で、こうした災害時の性被害対策については、「避難所や災害支援団体の運営に、女性が携わること」「災害発生前の段階で、女性の視点を加えた防災計画を立てること」の2点が重要だと改めて強調している。
16年5月2日現在、熊本県内の避難所で生活している人は、なお2万557人いるとみられている。

熊本地震デマ四種盛り:朝日新聞からバカッターまで

INSIGHT NOW!プロフェッショナル 2016年5月3日

朝日新聞のマスゴミデマ
『熊本地震の後、水源枯れる 「日本一長い駅名」由来の地』という4月26日の山本奈朱香記者の署名記事。「豊かな水源を多く持つ熊本県南阿蘇村は「水の生まれる里」と呼ばれてきた。その村でも有数な水源の一つが、大きな被害をもたらした熊本地震の後に枯れてしまった。飲み水などに使ってきた住民は落胆し、特産のコメ作りにも影を落としている。」「農家の渡辺敏さん(63)は「水源が枯れたままでは、8~9割くらいの稲田は作付けできない」と危機感を募らせる。」とある。だが、じつは枯れたのは、小さな「塩井社水源」で、大元の「白川水源」ではない。白川の源流のひとつである白川水源の湧水量は、なんと毎分60トン、日量9万トン。地震後もまったく問題なく、むしろこのおかげでみんな救われた。旧白水村ではふつうに田植えが始まっており、周辺のペンションも26日あたりから次々と観光営業を再開。各地の温泉も健在で良好だ。この記事は、白川や白川水源、旧白水村のまともな状況をあえて隠蔽する一方、駅名の「南阿蘇水の生まれる里白水高原」に言及し、きちんと統計も調べずに農家個人の感慨を引用することで、あたかも白川の水源すべてが枯れ、阿蘇全域の米作が壊滅したかのように故意にミスリード。もちろん、塩井社枯渇で影響を受ける農家がないではないが、なんでこんな大規模な地域的風評被害を起こすような印象操作記事を連休前に全国にばらまく? そもそも、この記者、前にも極端な論調の問題記事がいくつかあるようで、地震から10日も立って、こんなヨタ記事を出稿しているところからしても無能。平気でKYな捏造をやるマスゴミは、熊本に来ない方がまし。(こんな中、同じマスコミでも、今回、西日本新聞は、とても丁寧な取材と報道をしているとの印象を受けた。)

中韓嫌いと放射脳のケチガイデマ
4月26日、HARUHIKOBOYというネトウヨが「詐欺には要注意・阿蘇に大学はない 恥を知れ 東海大学阿蘇キャンパスに謝ってほしいです 怪しい以外にありません 被災地では子供達でさえ炊き出しのお手伝いをしているくらいなのに大学生が県外に避難? 募金詐欺で間違いない顔晒せ 反吐が出る」と写真付きでツィート。これが2ちゃんねるやそのまとめサイトに再掲され、4月29日、ネトウヨと敵対するはずの自称ブレーメン在住の反原発運動家emi kiyomizuというおばさんまで「阿蘇には大学は無いそうです。明らかに詐欺です。見つけたら警察に連絡しましょう。」とツィート。かくして、もともとフォローでつながっていた右や左の頭の困った連中がリツィートしまくり、瞬く間に拡散。もともとは、19日から、地震で多大な被害を受けて休講中の東海大学農学部阿蘇キャンパス学生が新宿駅で「私たちは阿蘇の大学に通っている学生です。」 と募金集めをしたのがきっかけ。阿蘇キャンパスの被害は16日朝から連日、テレビでも新聞でも流されているのに、募金についても、少なくとも24日からすでに各メディアで報道されているのに、何日もたって、なんでこんな話が出てくるのやら。実際、熊本地震をネタにしたニセ募金詐欺があるようでもあり、また、右や左の連中は、もともとテレビや新聞はデタラメだと思って、見ていないのかもしれない。募金活動を行っていた学生たちは最初から学生証の拡大コピーまで首から釣下げていたのだが、最初に流布した写真は、そこがトリミングされてしまっていた。「東海大学阿蘇キャンパス」ではなく「阿蘇の大学」という言い方が、「消防署の「方」から来ました」に似たウサン臭さを感じさせてしまったのだろうか。なんにしても、被災者をさらに踏みつけるようなデマは、右でも左でも、頭が弱いでは済まされまい。

龍田中学校PTAのアマゾンでのコツジキデマ
Amazon欲しいものリストというサイトがある。誕生日のプレゼントなどで、本人の希望をみんなに伝え、ものがかぶらないようにするためのもの。4月22日、今回、40型テレビ6台、譜面台60台、メトロノーム50台、文具700セットなどなどの要望が出され、実際に多くを受け取った。これらの要望を出したのは、龍田中学校PTA会長で熊本大学技術専門職員(教育学部)の清水康孝。PTA(保護者教職員協議会)なのに、他の保護者や校長などとの協議の様子も無く、会長個人の独断専行か。いくら復興後に使うといっても、こんな災害時にどうでもいいもの、火事場泥棒のそしりは免れえまい。そもそもこの中学校、540名ほどしか生徒は在籍しておらず、この清水氏が市内の吹奏楽やジャズの仲間とのかかわりが深かったこともあって、龍田中学校PTA会長の公的な肩書を私的に悪用した疑いがもたれている。ここに輪をかけたのが、龍田中学校の周辺の被災状況。地震の損害が無かったわけではないが、益城町などに比べれば、かなり軽微。それでよけいにネットで叩かれた。では、避難者がいなかったのか、というと、そんなことはない。むしろ当時の状況としては、雨による阿蘇山麓からの土石流が懸念されおり、避難の方が当然だった。このあたりで白川は深く蛇行しており、2012年7月の豪雨でも全壊37棟。雨が降る前から、すでに対岸の崖が崩落し、各所で通行止めになっていた。幸い、現在までは土石流は流れ下って来てはいないが、今後、いつ被災しても不思議のない地域ではある。とはいえ、大量の譜面台だのメトロノームだので土石流が防げるわけがない。そもそも、なんでこんな非常時にこんな問題行動を起こす人物がPTA会長に選ばれていたのやら。

西原小学校での貧乏人向け焼肉デマ
Kawazoe Yoshikazu氏は、4月18日、「明後日4月20日西原小学校にて朝11時より肉100キロ焼きます。料金は無料です。緊急時により栄養が偏ることは仕方がないのですが、良質のたんぱく質を子供達にお届けしたいとの思いがあり、鹿児島の肉屋さんと、造り酒屋さんの協力のもと炭火焼BBQをいたします。大人の方も大丈夫なのですが、子供、お年寄り優先だとお考えください。肉は100キロありますので焼き尽くすまで提供いたします。」と太っ腹な計画を勝手にツィート。熊本出身熊本在住で、まさか地震の被害甚大だった阿蘇のふもとの西原(にしはら)村と、市内でも被害軽微だった(とはいえ57号沿いのビルが1棟全壊)住宅地の中の西原(にしばる)小学校とを間違えたわけではないだろうが、このあたり、やたら校区が広い。流通網が寸断され、まだスーパーが再開していない日の話だったので、学校に問い合わせが殺到。早くも翌日には本人から中止の告知。それで、この焼肉会はデマということになり、焼肉会のデマで留守にさせて集団空巣狙いが地域を襲う、というような二次デマまで発生。本人は「熊本に何かできることはないかと思ったのですが、迷惑をかけてしまって、申し訳ありませんでした。」と平謝りだが、この人、じつは熊本のレストラン「KAWAZOE」のオーナー。2014年12月、「年収2,000万円以上の方向け(貧乏人お断り)」のローストビーフ1キロ56,160円を通販で売り出し、日本全国の話題を浚い、大きな反感を買った方。今回は本当に善意だったのだろうが、浅はかで、懲りないなあ、と思う次第。

被災者の早期トリアージュの必要性
今回の熊本地震は、津波でごっそりやられた東日本大震災とは様相が異なる。地震の被害は、ピンポイントで起きている。マスコミの取材が殺到している益城町や西原村、南阿蘇村旧長陽村などだけでなく、市南部の元沼地地帯(ゆめタウンはませんなど)や健軍、嘉島町などでも被害甚大なところが散見される。県北部でも、巨大な落石で要道が寸断されてしまっている。逆に言うと、それ以外のところは、家の中がぐちゃぐちゃになってしまったとはいえ、ライフラインさえ復旧すれば、驚くほど影響を受けていない。だが、住宅被害の有無にかかわらず、心の傷は深い。もっと大きな揺れが実際に来た、そしてまた来るかもしれない、という、終わりのない恐怖心は、東日本大震災よりタチが悪い。
このドサクサに、龍田中学校PTA会長に限らず、売れそうもない自分の文芸映画を宣伝したり、被災者ぶって漁業被害を訴えたり(ふだんよりひどいにしても、もともとあのあたりは昔からヒタヒタの泥の海)、調子づいてマスコミの前で自分に都合よくデマを言うやつらが出てくる。それに乗せられ、そのデマを全国に吹聴拡散してしまうマスゴミや善意の人々。
だが、御近所を含め、見ているやつは見ている。聞いているやつは聞いている。あんひと、こないだ、テレビであぎゃんこつ、言うとったばってん、ウソばつきよってまで欲かいて、あくしゃうったもんねぇ、とか、あのひと、たいした被災もしていないのに、また避難所までオムツをタダでもらいに来てるわ、子供に恥ずかしくないのかしら、とか、あそこんちはうまく地震保険の査定をごまかして、かえって焼け太った、とか、地域共同体の中で、ひそかに憎悪と不信と嫉妬が広がっていく。もともと体質的に古い地方なので、こういうことをやらかすと、その時はともかく、その後、長い目で見れば、いずれその町や村では暮らしていけなくなる。
本当の被災者は、SNSどころではない。デマは半端な自称被災者たちの間で蔓延する。衛星写真でもドローンでもなんでも使って、公的な一元査定で罹災証明を早期発行し、自宅と家財を失って100%の公的な保護が必要な人、公式の一時避難指示を受けている人、心理的な恐怖感から予防的に自主避難している人、の三種で避難所を分離、それぞれのカテゴリごとに必要なケアと物資を分け、便乗で割り込むクレクレコツジキを排除する必要がある。半端な状況が長引けば、内外の誤解を含め、地域の人間関係まで大きく破壊していってしまう。

新聞・テレビが報じない「“熊本地震”被災地のウラ側」切実現場 震災はあるプライバシーにも影響が…

アサ芸プラス 2016年5月1日

「駐車スペースに布団を敷いて寝る人が増えてきてさ。深夜にカップルが毛布をすっぽりかぶったまま、モゾモゾ動いてるわけよ。そりゃ隠れてシてほしいけど、気持ちもわかるよ」
M6.5の地震が熊本県を襲ったのは4月14日、午後9時26分。16日午前1時25分にはM7.3という、95年の阪神・淡路大震災と同規模の「本震」が襲う。発生から1週間で、死者は関連死を含めて59人に上り、震度1以上の余震は800回を超えた。
熊本市街地は営業を見合わせる店は多いものの、倒壊や大規模なひび割れといった光景は少なかった。しかし、最大震度7を記録した、熊本市の東側に隣接する益城町にさしかかると、景色は一変。民家の1階部分は軒並み潰れ、「圧壊」を指す災害対策本部の「赤紙」がいたるところに貼られている。道路も陥没し、マンホールの管がさらけ出されている──。
益城町にある展示施設「グランメッセ熊本」。2200台収容の駐車場は避難者の車で埋め尽くされていた。14日の余震後に避難所となったものの、本震で建物自体が被害を受けて閉鎖。行き場のない3000人以上の被災者が車中泊を強いられている状態だ。
冒頭の発言の主は、14日からこの地で生活を続けている中年男性。車中泊による「エコノミークラス症候群」で突然死するケースも報告される中、避難者のストレスや不安は日に日に蓄積されていく。そして食料や生活物資配布などと同様に切実なのは、性処理という根本的な問題。11年の東日本大震災時の取材で、避難所の裏に散乱するティッシュ、営業中止のコンビニの駐車場でカーセックスする男女、デリヘルで発散する自衛隊員などの実情を報じた。熊本の被災者もまた同様のようで、
「国が無料のWi-Fiを提供してくれるから、スマホを持ってトイレでエロ動画を見ながらヌクよ」(30代男性)
また別の避難所では、Wi-Fiが入らない人のために、高速回線が利用できるスマホを「ヌキ専用」として「共有」するケースも。だが、こんな声もある。
「益城は顔見知りが多くて、それこそ変なことをしたらすぐ噂になる。同じ避難所にいる彼女にも会ってない。気軽にオナニーもできなくて、正直つらい」(20代男性)
熊本市の複数の避難所では、窃盗多発を伝える注意放送が定期的に行われていた。施設の一部を避難所として開放している熊本刑務所のボランティアが言う。
「ほとんどは金品の被害ですが、女性用のアンダーウェアなど、女性に対しての欲求を満たす目的と考えられる盗難の報告が、市内の避難所から寄せられています」
避難所となっている市内の中学校で生活し、実際に被害にあった女子高生(16)が言う。
「食事の配給をもらいに行っている間に、下着を入れたバッグがまるまるなくなっていて。何日か支給品の大人用オムツをはいていました。でも『上』はなかなか手に入らなくて。周りの視線が気になるけど、それよりこの中に盗んだ犯人がいると思うと怖くて‥‥」
テレビでは性犯罪被害への注意喚起を促すテロップも流されているが、かろうじて避難所暮らしを免れ、熊本市内の自宅で生活する女性(25)は声を震わせて打ち明ける。
「いきなり部屋のドアをガチャガチャして開けてきた人がいて‥‥。悲鳴を上げたら逃げていきましたけど襲われるかもと思うと、本当に怖かった」
性犯罪抑制に一役買っているとも言えるのが風俗街である。熊本市内には約40軒のソープランドが立ち並び、そのサービスの質の高さから、日本各地から訪れる客が実に多い。風俗案内所のスタッフが明かす。
「14日の余震の時にプレイしていた人は女の子を置いて店外に飛び出し、タクシー会社に『10万円払うから福岡まで連れていってくれ』と電話していました」
だが、16日の本震で水道やガスが止まるなど設備に被害が発生して営業を見合わせる店が続出。どうにか営業を続けていたのは10店舗に満たなかった。風俗案内所スタッフが続ける。
「一部のお店(ソープ)は18日から営業していますが、1店舗当たり1日20人ぐらいの客が来ています。地元の人が1割、県外が9割くらいですね。県外は地震被害の保険金支払いで訪れた保険マンや銀行員が多い。割引しての最低料金でご案内しています」
格安で案内するのにはもちろん、理由があった。
部屋中に走る亀裂を指さしながら「次に大きな地震が来たらもたないかも」と不安げに語るのは、現状を確かめるべく記者が訪れた「P」のMちゃん(28)だ。服の上からでも激しく盛り上がるGカップのバストが目を刺激する。
「水はまったく出ないんだ。これ見てよ」
10時間ほど蛇口を全開にしているという浴槽には、時折ポツポツと垂れてくる水滴が1センチほどたまっている。断水中の店舗がどうやって営業しているのか。
「でも、この水が手についたローションを取るために貴重なんです」
お風呂で楽しむことができない代わりに、少しのローションを使ってバリエーションをつけたプレイを模索しているのだ。
「水が出ないので、プレイ前にアルコールティッシュでお互いの乳首と性器を拭いてからフェラして‥‥。最初から最後までベッドで、常に私が責め続けます。体を拭くティッシュの枚数が限られていますので。ただ、プレイするたびに拭くので体中がカサカサに乾燥して痛いんです」
この日も20人ほどの客が訪れたという。
「20人ほどの女の子のうち、震災後も働いているのは4人だけ。避難所暮らしや、怖くて働けないと出勤できない子たちの生活費を稼がなくちゃいけないんです。お客さんも『こんな時にゴメンね』と言ってくれるんですが、逆にこういう時だからありがたいんです。このお金で自分や友達が生きられる。車中生活の被災者も来てくれています。私は胸を張って『震災時、生きるためにソープで働いてました』と言えます」
内装の被害が大きかったキャバクラは、4月20日に一部が営業を再開。さるキャバ嬢(23)は嘆く。
「私の家族は昨年、家を新築したばかり。なのに亀裂が入っちゃった。母は祖父母の介護をしているので、父と私の稼ぎで家を建て直さなきゃいけない」
断水を免れ、震災以降も唯一、休まず営業し続けている熊本市内のスナックのママは言う。
「ボトルが棚から落ちて割れたりしたけど、1人でいるのも怖い。お店を開けばお客さんに会えるからね」
不安渦巻く地で、被災者たちの心と体を癒やしてくれる夜が、そこにはあった。

避難所 女性の視点を 更衣室は男女別に トイレに照明と錠 性犯罪防止へ巡回 熊本地震

西日本新聞 2016年04月23日

熊本地震の避難所で、女性であるが故の不便や性犯罪などへの不安が課題となっている。避難所が男性を中心に運営される傾向が強い中で、「女性の視点」を取り入れた支援が求められている。
「避難所のトイレに生理用品を捨てる所がない」(熊本県益城町・16歳女性)
「仮設トイレは体育館の外で、電灯もなくて怖い」(熊本市・16歳女性)
「着替えるときは避難所から歩いて15分ほどの家に戻る」(同市・30代女性)
「女性だけの家族なので防犯面から車で生活をしている」(同町・69歳女性)
現地取材した記者によると、熊本市内では、車中泊をする人が集まった小学校の運動場で、車のドアを開けようとする複数の不審者が目撃され、警察を呼ぶ騒ぎになった。女性が追いかけられる被害もあり、夜間は校門を閉鎖するなど警戒を強めている。
女性たちの不安を和らげようと、NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(広島県)は17日、益城町内に女性専用テントを設置した。20日夜は6組13人の女性が宿泊した。
このような課題は、阪神大震災や東日本大震災でも指摘されてきた。だが避難所では「命があるだけでもありがたい」と、改善を求めにくい状況があるという。
東日本大震災で被災者の集団移転を受け入れた栃木県は、2013年に男女の違いに配慮した防災ハンドブックを作成した。
震災当時は避難所の管理責任者がほとんど男性だったことから、女性や子ども、高齢者、障害者らのニーズも踏まえて、イラストのような避難所設営を提案した。
「異性の視線が気になる」との声を受けて、物干し場や更衣室を男女別に設置。生理用品や下着は女性担当者が配布する。間仕切りも使って単身女性や女性のみの世帯、子育てや介護中の世帯向けのエリアを用意する。
仮設トイレは安全で行きやすい場所に設け、男女別にして照明や錠を取り付ける。入浴設備は利用時間を男女で分け、出入り口に受付係を置く。女性や子どもに複数で行動するよう呼び掛け、就寝場所や女性向けエリアを巡回するなど性犯罪を許さない環境をつくる。
ハンドブックでは、「女性は当然のように、一日中炊きだしや片付けに追われた」との声もあり、「男は仕事、女は家庭」という性別役割分担意識の問題点を指摘。食事の準備や片付け、乳幼児や高齢者の世話、清掃やごみ処理のほか、男性に負担が偏りがちな行政との連絡調整なども、男女を問わず、できる人で共同作業するよう促した。
同県担当者は「避難所では多様な人たちがそれぞれの困難に直面する。性的マイノリティーなども含め、少数派への配慮が必要だ」と話している。