食卓からバナナが消える?猛威をふるう「新パナマ病」とは

ライブドアニュース 2016年5月30日

普段、何げなく食べているバナナが今、絶滅の危機に瀕している!
4月、国連食糧農業機関(FAO)は「新パナマ病」の発生が、世界中で栽培されているバナナに壊滅的な打撃を与える可能性を指摘した。
日本が輸入するバナナの約9割を占めるフィリピン・ミンダナオ島では、現在、バナナの木の5分の1が感染。新パナマ病には特効薬はなく、国際バナナ会議は、このまま世界中に広がっていけば、「9割のバナナに絶滅の恐れがある」という。
実は、バナナは1960年頃に「パナマ病」によって、一度、ほぼ全滅している。東京農業大学の根岸寛光教授が語る。
「パナマ病は泥の中にすんでいる『フザリウム』というカビの一種が原因で起きる病気です。このカビが根から入り、導管(水を吸い上げる管)を腐らせる。そのため水を吸い上げることができなくなり、枯れてしまいます。
パナマ病は1890年から徐々に広がり1960年頃までに世界の約9割のバナナが感染しました。この病気はパナマ周辺で見つかり、大きな被害を受けたので、パナマ病と呼ばれています」
ではなぜ、世界中のバナナがほぼ絶滅するほど一気に感染したのか。熱帯環境植物館の元山淳一副館長が答える。
「それは当時、『グロス・ミシェル』という単一品種のバナナしか栽培していなかったからです。バナナは世界中に約300種ほどありますが、『甘くて、種がなくて、収穫量が多くて、日持ちするため輸出しやすい』といった条件を備えていたのがグロス・ミシェルでした。
しかし、そのグロス・ミシェルがパナマ病を起こすカビに対して非常に弱かった。そのため、世界中のバナナに一気に感染していったのです」少し専門的になるが、前出の根岸教授がさらに詳しく解説してくれた。
「私たちの食べているバナナは種がありません。それは私たちが食べているバナナが“3倍体”だからです。
多くの生物はオスとメスからゲノム(染色体)をひとつずつもらい2倍体の状態でできています。バナナにも2倍体のものがあり、これには種があります。
しかし、たまに減数分裂を起こさず2倍体と2倍体が合わさって4倍体という状態をつくることがある。4倍体になると、例えば植物なら花が大きくなったりする。そして、その4倍体と2倍体のものが一緒になってできたのが3倍体のものです。
3倍体の細胞は、生殖に際して不可欠な減数分裂の時に2倍体や4倍体のようにきれいに分かれることができず、そのため種ができないのです。種なしスイカはその原理を使って人工的につくられたものですが、今、我々が食べているバナナは自然にできた3倍体のバナナなんです。
人間はたまたま種がなくて食べやすく、しかも食べるとおいしいバナナを見つけてしまった。それで、その品種を栽培してきた。
しかし、種がないので茎を分けて育てるしかない。すると、ひとつのものから育てているわけですから、どのバナナも元は同じ。同じ性質を持つクローンということになる。
これは、ある部分では強みになりますが、ある部分では弱みになる。グロス・ミシェルというバナナにとっては、パナマ病を起こす菌に対する抵抗性が極端に弱かったわけです」
そうした弱みを克服するため、現在はパナマ病に強い「キャベンディッシュ」という品種が主に栽培されている。しかし「新パナマ病」の流行により、こちらも絶滅の危機に瀕(ひん)しているというわけだ。しかも、新パナマ病に耐性のあるバナナはまだ見つかっていない…。
果たして、私たちの食卓からバナナは完全に消え去ってしまうのか?
月曜発売の『週刊プレイボーイ』24号では、フィリピンだけでなく、世界各地へと広がる新パナマ病の現状と対抗策を徹底取材! 甘くて黄色いバナナが消えるかも?という「パナマ文書」より衝撃的な真実を是非お読みいただきたい。

週刊プレイボーイ24号(5月30日発売)「新パナマ病でバナナが絶滅する!?」より

「世界からバナナが消えたなら」~“パナマ” の拡大が世界を震撼させる

ヘルスプレ 2016年05月20日

現在上映中の映画『世界から猫が消えたなら』が、主演の佐藤健さんと愛くるしい癒し猫の競演で話題をよんでいる。
一方、こちらは「世界からバナナが消えたなら……」と世界中の嗜好家を動揺させている話題だ。その原因は震撼の「パナマ文書」ならぬ「パナマ病」である。
パナマ病、別名「萎凋病(いちょうびょう)」とは、カビの一種がバナナの木を枯らせてしまう病状だ。最長で40年間も土壌中に残る可能性も懸念されており、深刻な事態となっている。
1960年代にはバナナ史上「最も美味」と食されたグロス・ミシェル種が全滅に追いやられた。その耐性から台頭してきたのが、現在一般的なキャベンディッシュ種だ。
ところがこのキャベンディッシュ種、世界各地の生産地で「新型パナマ病」に見舞われ、バナナ市場を震撼させている。
先月には国際食糧農業機関(FAO)も「世界で最も破壊的なバナナの病気のひとつ」と指摘し、早急な対策を喚起した。
台湾や中国、フィリピンでも新種の開発は随時試みられているが、いずれも味覚のレベルや長距離輸送に不向きなど、難題をかかえているようだ。
現在危機に直面しているキャベンディッシュ種の年間生産量は5500トン。世界のバナナ輸出市場の95%(FAO調べ)を占めており、“代役”の緊急な登場が待たれている。

日本人にもダントツ人気の果物王者
日本人とバナナの関係は1903年(明治36年)、台湾から神戸港への貨客船で初めて商業用バナナが輸入された時まで遡れる。
それが一般大衆の口にも入るようになったのは大正時代の後期、その台湾産も戦後の自由化(1963年)を機に減少し、1970年代以降はフィリピン産の輸入量が日本市場の首位を占めてきた。
その定番のフィリピン産、最近値上りぎみだ。2012年の巨大台風下で生産地の2割弱が大打撃をうけるという直接的理由があるものの、さらに新型パナマ病の被害が早くも広がりつつあるのだ。
日本でのバナナ人気は不動だ。2014年の1世帯(=2人以上)あたりの年間購入量は18㎏で果物中の首位、13kgで2位のミカンを大きく引き離す(数値は総務省統計局「家計調査年報」から)。
価格も半世紀もの間ほぼ安定している。「物価の優等生」といえるバナナだが、「世界からバナナが消えたなら……」が現実化すると価格上昇は必至だ。

皮肉にも“バナナの効用”に再注目
ところが皮肉にも、ここへ来て“バナナの効用”が再注目されている。
4月20日放送のNHK『ガッテン』(特集「結果にコミットー!効果2倍の筋肉UP術)では、トレーニング直後の「タンパク質+糖質」の食事法を伝授。その筋力アップ用の推奨食品としてバナナを挙げていた。
バナナのクエン酸カリウムが血圧降下に効果的だということを発見したのは、セント・ジョージ・メディカルスクールの研究(2005年)。食物繊維の多さが心臓病・糖尿病・循環器疾患を減らすようだとしているのはハーバード大学公衆衛生大学院……。
バナナに含まれる栄養素、その健康効果の報告は枚挙にいとまがない。

値上げには「50度洗い」で応戦?
アジアから豪州の一部、アフリカや中東の生産地にも被害を広げている新型パナマ病。このまま被害が拡大すれば、栄養価に不釣合いな値ごろ感が薄まるのは必至だ。
となれば、庶民の自衛策は、稀少化するバナナを一本も腐らせずに、せめて美味しく完食することくらいだろうか。
近年注目されている「50度(℃)洗い」の効果をこの際、試してみるのも得策かもしれない。野菜、肉、魚……50度のお湯で洗い、本来の食感や鮮度や美味しさを引き立たせ、保存期間を伸ばす効果も絶大なこの方法。
果物類にも有効で、バナナの場合は皮ごと50度のお湯につければ(酸の性質が変わり)甘さが引き立ち、まろやかになるそうだ。
(文=編集部)

新パナマ病って何? バナナが食卓から消える恐れも

The Huffington Post 2016年05月17日

バナナの木を枯れさせる病気「新パナマ病」の感染が世界中に広がっている。日本の最大の輸入元のフィリピンでは、生産量が減少。現地の生産者団体からは「世界中の食卓からバナナが消えてしまう」と懸念する声も出ている。

グロス・ミシェルを壊滅した「旧パナマ病」
生物学者の福岡伸一氏の解説によると、バナナは品種改良の結果、種がなくなったため、株分けで栽培する。その結果、同じ品種のバナナは、どれも同じ遺伝子を持つため、特定の病原体に感染しやすくなってしまったという。
バナナは20世紀半ばまで「グロス・ミシェル」というクリーミーでしっかりした味わいの品種が人気だった。しかし、1960年代までにカビの一種である「フザリウム」という病原体によってバナナの木が枯れてしまう「パナマ病」の感染が広がった。世界中の農園で、グロス・ミシェルは壊滅的な被害を受けて、ほぼ絶滅してしまった。
そこで登場したのが「パナマ病」に強い「キャベンディッシュ」という品種だった。グロス・ミシェルより味が悪く耐寒性も低かったが、パナマ病の病原体の侵入を防ぐことができた。現在、食卓に上るバナナのほとんどは、このキャベンディッシュだ。

キャベンディッシュはパナマ病に強いはずだったが…
しかし、1990年代にキャベンディッシュにも感染するパナマ病が発見された。TR4(Tropical Race 4)と呼ばれる「新パナマ病」は、台湾で最初に見つかり、その後は中国、インドネシア、マレーシア、フィリピンなど東南アジア各国で感染が拡大している。数千ヘクタールのバナナ農園がすでに新パナマ病で壊滅したという。
CNNによると、国連食糧農業機関(FAO)は4月、新パナマ病について「世界で最も破壊的なバナナの病気の1つ」と指摘。この病気に対抗するため、360億ドル(約4兆円)規模のバナナ業界が行動する必要があると強調した。
NHKニュースによると、日本が輸入するバナナの90%近くを占めるフィリピンの最大の産地、南部ミンダナオ島では、ここ数年で「新パナマ病」の被害が急速に拡大。現地の生産者団体によると、島にあるバナナの木の5分の1がすでに感染し、生産量もこの5年で20%以上も減ってた。フィリピン政府は「新パナマ病」に強い品種の開発を進めているが、実用化のメドは立っていない。
フィリピンの生産者団体の幹部は「新たな品種の開発などの対策が進まなければ、5年か10年後には、世界中の食卓からバナナが消えてしまう恐れもある」と話しているという。