県内児童養護施設出身者、大学・短大進学11%

琉球新報 2014年5月18日

県内の児童養護施設出身者の過去5年にわたる大学・短大への進学率は平均11・2%にとどまり、県全体の平均37%を26ポイント下回ることが、琉球新報の調べで17日までに分かった。3月、県内にある全8児童養護施設を対象にアンケートした。施設出身者の進学率が低い理由について、7施設が学費準備の難しさを挙げた。親の支援が得にくい境遇の中で、経済的な問題が進学の機会を阻んでいる実態が浮き彫りになった。
調査は、県内全8児童養護施設に対して、2009年3月から13年3月までの5年間にわたる中学・高校卒業後の進路状況を聞いた。さらに施設から退所する時の課題、自立に向けた必要な支援などを尋ね、全施設から回答を得た。
5年間で高校卒業に伴い107人が施設から退所し、このうち23人が進学した。進学者の内訳は短大・大学12人、専門学校11人。グループホーム入所などその他は7人だった。就職者は77人だった。
専門学校への進学は10・2%で、県平均25・7%を15・5ポイント下回った。一方、就職は72・0%で県平均(14・4%)を大きく上回った。学費が準備できずに、最初から進学を諦めた人は4人、中途退学は2人いた。
学費の調達方法を複数回答で聞いたところ、「NPOにじのはしファンドの奨学金」(6施設)、大学の減免制度(5施設)や日本学生支援機構(5施設)など奨学金の活用が多かった。4施設は「卒園者本人がアルバイトをして準備」と答えた。(高江洲洋子)

用語 児童養護施設
保護者のいない児童や、親の病気や虐待、生活困窮などさまざまな事情から保護者に養育させることが難しい児童を受け入れて養育する入所施設。生活指導や学習指導を通して、児童の心身の健やかな成長と自立を支援する。児童福祉法では高校卒業後の原則18歳で、施設を退所しなければならない。

DV 傷つけられる妻たち 複数の目で見守り必要

中日新聞 2014年5月19日

配偶者らからの暴力「ドメスティックバイオレンス(DV)」で県警が昨年一年間に相談を受けた件数は六百二十八件と、過去最多に上った。一歩間違えば重大な事件に発展しかねないDV。家庭内の問題ゆえに、危険性の判断に難しさがあり、関係機関の模索は続く。
昨年十一月、鈴鹿市の無職の夫(68)が妻=当時(50)=の頭を金づちで殴った上、包丁で胸を刺して殺害したとされる事件。津地裁で十三日に始まった裁判員裁判では、夫が事件の三年前から暴力を繰り返していたことが明らかになった。検察側によると、妻は鈴鹿署に少なくとも八回、一一〇番などの形で夫の暴力を訴えていた。だが被害届は一度も出していない。昨年三月に頭の骨を折る大けがをした時も、警察や親族の勧めでいったんは夫の元から離れたが、その後、自宅に戻り生活を続けた。
県警が認知するDV被害者の九割は女性だ。捜査関係者は「暴力を受けても報復を恐れて事件化を望まない女性は多い。世間体や子どもへの影響を考えて離婚もできず、我慢を重ねているケースがある」と明かす。
昨年の相談件数のうち、裁判所が接近禁止などの保護命令を出したのは五十四件、傷害や暴行容疑で摘発したのが三十件。残りは指導や警告にとどまった。明確な統計はないが、繰り返し警告を受けている加害者もいる。
県警は二月、DVや、同じく昨年過去最多の相談があったストーカーに対応する「人身安全関連事案対処プロジェクトチーム」を設置した。生活安全部と刑事部を中心に百六十人の体制。同様の組織を全署にもつくり、相談を受けた段階から犯罪性の有無を見極めるという。
県警生活安全企画課の杉谷善明子ども・女性安全対策室長は「被害者の安全確保が最優先だが、加害者の行動分析も重視し、危険性の判断力を磨く必要がある」と話す。DVの背景にはストレスやアルコール依存など外的な要因もあり、カウンセラーや医師など専門職との連携を探る。
夫婦関係という家庭内の問題に立ち入る難しさは、依然として残る。県配偶者暴力相談支援センター(津市)の稲葉友徳所長は「強制的に引き離せる児童虐待と違い、DVでは相談者本人の意思が一番尊重される。加害者の元へ戻ることを止める法的根拠はない」と説明する。
センターでは、警察や市町経由で寄せられた相談に社会福祉士らが対応し、県内にある一時避難所(シェルター)へ保護する必要があるか判断する。昨年度、DVなどでシェルターを利用した女性は九十七人で、うち十七人はその後に帰宅。稲葉所長は「帰宅後も地域による見守りが欠かせない。『複数の目』が必要だ」と関係機関の連携を訴える。
DVの相談は、県や市の社会福祉事務所、県男女共同参画センター「フレンテみえ」でも受け付けている。最寄りの相談先を自動音声で案内する内閣府のDV相談ナビもある。番号は0570(0)55210で、二十四時間対応。
(安藤孝憲)

虐待通報 判断リスト

読売新聞 2014年05月19日

昨年7月に起きた和歌山市の男児虐待死事件などを受け、県と県警は、児童相談所(児相)が虐待の疑いがあると相談を受けた際に、県警への通報を行う判断基準を記したチェックリストを作成した。児相職員から県警への連絡に迷うケースがあるとの声があったためで、県子ども未来課の担当者は「必要な事案での連絡漏れを確実に防ぎ、子どもの安全確保につなげたい」と話している。(村山卓也)
県内の児童相談所に2012年度中に寄せられた児童虐待の相談件数は718件。前年度より9件増え、3年連続で過去最高になった。県警が13年に摘発した児童虐待事件も16件と、11年の6件、12年の8件に比べ、増加している。
児相と県警が連携するケースも増える中、同事件後に児相職員から県警への通報基準を求める声も上がり、昨年11月、県警少年課と県子ども未来課、児相職員ら約10人がワーキングチームを結成。10回ほど基準の内容や連絡方法について協議を重ね、今年4月に完成させたという。
内容は、▽子どもの生命・身体に危険を及ぼす事案▽保護者らの行為が悪質――などの4項目。一つでも該当した場合、県警への通報を義務づけた。
各項目の具体例として、▽頭部外傷や骨折、内臓損傷、やけどなどの重度の傷害や栄養失調などがあり、原因の調査が必要なケース▽子どもの安否確認ができない――などを記載。ただ、具体例にとらわれず通報を検討するよう求めている。
県警に通報する方法として「緊急連絡票」も作成。虐待を受けた疑いのある児童や保護者の氏名、住所のほか、事案の経過表やチェックリストに該当する項目を記入する欄が設けられている。児相職員は、担当の警察署に電話をした上で、ファクスで送るという。
県の担当者は「チェックリストと連絡票を使うことで意思の疎通が図りやすくなり、より迅速に的確な対応ができる」と期待する。
一方、県警は2011年から毎年警察官1、2人を児相に派遣。家庭への立ち入り調査や県警との連絡調整などの業務を担ってきた。
県警はチェックリストの作成などを受け、各警察署に、より一層、児相と積極的に協力するよう指示したといい、県警幹部は「虐待を受けても子どもは声を上げにくい。だからこそ社会全体で取り組むべき問題で、関係機関との強い結びつきが大切だ」と話している。

和歌山市の男児虐待死事件 無職原和輝被告(26)が昨年7月、自宅で長男星涼せりちゃん(当時2歳)の頭を殴るなどし、死なせたとして10月に逮捕され、同11月に傷害致死罪で起訴された。公判に向け、現在裁判所と検察側、弁護側の3者が協議して争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きが進められている。

施設内児童虐待、栃木県「おおむね改善の方向」 県議会常任委

下野新聞 2014年5月17日

2012年秋に野木町の社会福祉法人「延寿会」(正岡太郎理事長)が運営する児童養護施設で起きた施設内虐待事件で、県保健福祉部は16日、同法人が提出した改善計画書に対し「おおむね改善に向けた方向性が出された」との見解を明らかにした。同日の県議会生活保健福祉常任委員会で報告した。委員からは「県は引き続き施設運営に関与を」など今後の対応について意見が出された。
同部によると、今年3月に施設長が職員による検証報告書を改善委員会へ報告。同委員会が改善計画の進捗状況を基に、さらに取り組むべき課題を建議書として法人に提出した。
これを受け、4月22日に正岡理事長が名越究保健福祉部長に改善計画書と建議書で示された課題の対応方針を説明したという。

「画像で自慰しまくれば、セックスしなくなる」児童ポルノ禁止法改定問題・院内勉強会に60名が結集

おたぽる 2014年05月16日

5月16日、コンテンツ文化研究会などが主催する「児童ポルノ禁止法・院内勉強会」が、衆議院第一議員会館で開催された。通常であれば午後に行われることが多い勉強会だが、午前9時半という時間設定に、60人あまりが眠い目をこすりながら集まった。
いよいよ佳境に入った児童ポルノ法改定をめぐり、規制強化に危惧を持つ立場から開催されたこの集会。今回は、京都府の児童ポルノ規制条例制定に携わった京都大学大学院法学研究科の高山佳奈子教授を招き、講演が行われた。
冒頭、来賓挨拶に立った、みんなの党の山田太郎参議院議員は、次のように語った。
「(児童ポルノ法改定案について)マンガとアニメは外れてきたが、例えば(18歳未満の)コスプレを撮影すると児童ポルノに該当して被害者と加害者が一緒になるという可能性もある無茶苦茶な法律。児童ポルノという名称も児童虐待を矮小化するとICPO(国際刑事警察機構)からなされている。いずれにしても、ここが山場なので、きちっと質疑をして、なんとか良いかたちで表現の自由を守るような結論にしたいと考えています。皆さんのご意見を全国から頂いている。これをどうしても通したいという人々の意気込みは感じるが、何を今回勝ち取るかを慎重に悩みながらも戦っている。皆様のお力もお借りしたい」
また、自由民主党の山田賢司衆議院議員からも挨拶が来ていることが主催者から告げられた。
続いて演壇に立った高山教授は「表現規制によって児童を守ろうとしているが、逆効果になっているのではないか」として話を始めた。
以前、講演会において自らの子供時代の写真を使い「これが児童ポルノに該当するのか」と問題提起をした高山教授は、今回もざっくばらんに講演を行った。
“自己の性的好奇心を満たすことは違法ではない”という説明の中でスライドに踊ったのは「彼女の写真、オナニー以外に何につかうんでしょうか」という文字。高山教授がここでいわんとしたことは、18歳未満のカップル同士が自己の性的好奇心を満たすために、相手のヌード画像を持っていても犯罪になるとすれば、憲法的に疑義があるということである。
さらに、高山教授は、自己満足的で他者への被害をもたらさない事例として「貴船神社に呪いの絵馬をかけている人は多いが、犯罪にはならない」という話も。
高山教授は、先日大阪地裁で無罪判決が出た大阪府のダンス規制をめぐる裁判も取り上げ、この判決に使われた最高裁の「社会に危険をもたらさない行為は処罰できない」という考えを紹介し、次のように述べた。
「危険が現実に起こりうるものでなければ、処罰はできません。法律が合憲であると判断するためには、危険であることが明らかでなければならないのです」
法律の概念を平易な言葉で解説する講演の中で、参加者の興味を特に引いたのは、”性表現に接すると性犯罪が減る”という研究について触れた部分。さまざまな研究結果を解説した後、結論として高山教授が述べたのは、また驚く言葉だった。
「画像でオナニーしまくれば、セックスしなくなる」
性犯罪への抑止効果についての極めて率直な言葉に、参加者の多くは一様に納得したような表情をしていた。
さて、数多くのトピックスの中で重要だったのは、やはり高山教授が策定に携わった「京都府児童ポルノ規制等に関する条例」だ。
高山教授によれば、当初は実在児童の保護だけを考える法律が目指されたが、京都府の山田知事は「日本一厳しい児童ポルノ規制条例をつくる」というのが公約。その結果、社会的な危険性に対処する方法として合理性がなければ規制は認められないという前提で「有償譲受け罪」の導入と、被害児童から申し出があった場合の廃棄命令が導入されたと説明した。
現在の児童ポルノ法改定問題でも大いに参考にされているという京都府の条例だが、実際にこの条例で権力の濫用、冤罪を完全に防ぐことはできるのか?
高山教授に尋ねたところ、それは十分ではないという。
「濫用を防止する必要はあるのですが、条例ではできておらず、理想的なものではありません。もともとの廃棄命令の趣旨が被害児童の申し出があった時にと考えたのですが、条文にはそれが書かれていないのです。なので、児童ポルノ法改定でも、条例の問題点を補完しなければならないと思います」
朝っぱらから「オナニー」という言葉を何度も聞くこととなるなど、限りなくあけすけな議論が行われたこの集会。権力の濫用と冤罪の発生を防ぎ、実効性がかなりあるものと思われる京都府条例でも、問題点があることが明らかになった。
「京都府条例は試しに、こういうものをやっているに過ぎません」と、高山教授は言う。ゆえに、国家の手による児童ポルノ法改定案には、より法を厳密にするための議論が求められる。眠い目をこすりながら参加した参加者は、文字通り目の覚めた思いで、それぞれの任務に戻っていった。
(取材・文/昼間 たかし)

ふられた腹いせに「リベンジポルノ」被害拡散

読売新聞 2014年5月17日

ふられた腹いせに、交際していた相手のプライベートな画像、写真などをネット上で公開する「リベンジ(復讐(ふくしゅう))ポルノ」の被害が広がっている。
民間団体への相談は、今年3月末までの半年間で172件。前年同期の20倍以上だ。画像をネット上から完全に消し去るのは難しく、自民党は法整備を検討している。

断れず
「ネットに写真が出ているよ」。関東地方の20歳代の女性は3年前、友人からこう知らされた。心当たりはあった。その半年前、当時の交際相手の求めに応じ、スマートフォンで下着姿の写真を撮影して送っていた。1年半後、無料通話アプリのグループ内で画像が出回っていると聞いた。女性は「今もネット上のどこかに画像が出回っているかも」とため息をつく。
ネット上のトラブル相談を受ける「全国webカウンセリング協議会」(東京)によると、リベンジポルノの被害相談は、昨年10月頃から急増。それまでの月1~2件程度から、今年3月までの半年間は月20件を超えるペースに。同協議会の安川雅史理事長は「リベンジポルノ関連の事件が報じられたことで注目が集まり、それまで言い出せなかった被害者が相談するようになった」と推測する。
相談者の約8割は、10代の女性だ。交際中に頼まれ、「秘密だから」「浮気されるのが嫌だった」などと思って裸の画像などを送ったケースが目立つという。

学童保育6年生まで拡大へ 母親が両立諦める「小4の壁」取り払う

産経新聞 2014年5月19日

平成27年4月にも学童保育の対象年齢が引き上げられるのに伴い、近畿圏の自治体が保育時間の延長や人員の増強など受け入れ体制の整備を急いでいる。さらに自治体の委託を受けた業者の運営をサポートする動きが進むなど、官民挙げた支援の輪が広がりつつある。(南昇平)

前倒しで受け入れ拡大急ぐ自治体増える
子ども・子育て関連3法が平成27年4月にも施行されるのに伴う児童福祉法の一部改正により、放課後に留守宅児童を預かる学童保育の対象が「おおむね10歳未満」から「小学生」へと拡大される。母親が仕事と子育ての両立を諦めざるを得なくなる「小4の壁」を取り払う狙いがある。
義務化ではないものの、市町村は学童保育の具体的な事業計画を立てなければならなくなり、前倒しで受け入れ体制の拡充を急ぐ自治体も増えてきた。
堺市はすでに1~6年生を受け入れているが、定員5500人に対し、新興住宅地を中心に約140人の待機児童がいるため、現在18時までの預かり時間の延長を検討している。公設、民設あわせて130カ所で1~3年生を受け入れている京都市は、来年度は場所を増やし、人員増や時間延長など体制を強化する。大阪市は全296校で全学年の児童が無料で午後6時まで過ごすことができる。民間が運営する施設には補助金を支給し、午後7時以降も開所している施設には補助金を加算している。

“出張授業”も
また、学童保育を運営する民間事業者や、自治体の委託を受ける業者にとっては、今回の制度改正が市場の拡大とビジネスチャンスにもつながりそうだ。
企業が社会貢献活動(CSR)の一環で学童保育の運営を支援する動きもある。住友生命保険は6月から第一線で活躍するアスリートなどを派遣する取り組みを始め、今月末まで希望する団体を公募する。心臓外科医の尾頭厚さんと和食料理人の四分一勝さん、スラックライン(綱渡り)選手の福田恭巳さんが先生役を務め、ふれあいながら児童に社会や仕事への理解を深めてもらう。選考にもれた団体にも学童保育の指導員向けの冊子を贈り、印刷して使える紙工作などをホームページで公開する。
神戸市の担当者は「これから学童保育のニーズは間違いなく増加する」とみており、有識者の意見を取り入れ計画を策定するという。働く母親や共働き世帯の支援へ、学童保育の環境整備が加速しそうだ。