貧困の子どもたち知って=「厳しい環境、伝える役割」―後藤さん、訪問の養護施設で

時事通信 2015年1月26日

「貧しい子どもが世界にいることを、日本の子どもにも知ってもらいたい。それが自分の役割」。過激組織「イスラム国」とみられるグループに拘束されたジャーナリスト後藤健二さん(47)は、2010年10月に長崎市の児童養護施設「明星園」を訪問。施設で暮らす子どもたちに、紛争地などで貧困に苦しむ子どもの様子を伝えていた。
訪問は、同市内で開催された平和をテーマにしたアート展で、園を運営する社会福祉法人の伊東潮理事長(71)と知り合った後藤さんが、「一晩泊めてほしい」と打診したことから実現。数日後に宿泊した後藤さんは、子どもたちと一緒に夕飯のカレーを食べたり、図書室で紛争地での体験を話したりした。抱っこをせがむ子どもたちにも喜んで接していたという。
奥貫賢治園長(66)は「4年以上前のたった一晩の触れ合い。だけど、抱っこしてもらった子たちは、今でもしっかり覚えている」と懐かしむ。
当時中学1年だった高校3年の江川翼君(18)は、見せてもらった紛争地の写真や、取材で使う衛星電話が記憶に残るという。「日本の子どもにも、貧しい国の子どものことを知ってほしいと一生懸命訴えていた」と思い出を振り返った。
後藤さんは、同法人運営の長崎市内の保育園も訪れ、医療や教育を受ける機会を奪われたアフリカ・リベリアの子どもについて、写真や地図を示しながら職員に講話。「こういう厳しい環境にいる子どもたちのことを伝えるのが私の役割だ」と語っていた。
その年の暮れ。「すてきなクリスマスを」などと手書きしたメモを添えた、大量のチョコレートが養護施設の子どもたちに届いた。奥貫園長は「体に気を付けて頑張ってください」とメールでお礼を伝えた。後藤さんとのやりとりは、これが最後となった。奥貫さんは「とにかく命だけでも助けてほしい。子どもたちは心待ちにしている」と、無事を祈った。

貧しい子供の「1人食」改善に尽力する「食堂」の思い…現代の「母子家庭像」

産経新聞 2015年1月24日

家庭の事情から1人で食事をする子供が増えている。母子家庭が多く、昼食を取らず菓子で済ましていたり、夕食がコンビニなどの弁当だったりするという。長期の休みが終わるとやせて学校に戻ってくる児童がいて、「給食がなく家庭に食事を任せると粗食になりがち」と周囲から心配される声も。そんな状況を少しでも改善しようと、ボランティアらによる「食堂」が注目されている。安価に手作り料理を振る舞うが、そうした活動の中から見える現代の母子家庭像とは…。(村島有紀)

1食300円の手作り料理
東京都豊島区の「要町あさやけ子ども食堂」。子供たちが食事をする部屋は2つあり、ちゃぶ台3つの和室と、大テーブルのある洋室だ。定年後に自宅を開放しているのは、山田和夫さん(66)。
現在、第1、第3水曜の午後5時半から午後7時まで、一食300円で手作りの夕食を提供している。30人分の食事を大勢のボランティアが手伝い、児童や幼稚園・保育園児を連れた親子や、誘われた児童らがやってくる。野菜中心でバランスの取れたメニューを心がけているという。
山田さんは「どんな理由でここに来ているか、私たちからはあえて聞かない。誰かとご飯を食べたくなったとき、ふらりと気軽に入れる食堂がいい」と話す。
みな、おいしそうに食べながら会話もはずむ。

離婚で収入激減、娘の高校進学が夢…
1人のシングルマザーに話を聞くことができた。
「昼も夜も働けば、なんとかなると思っていた。だけど40歳も過ぎると夜の仕事は体力的にもきつい。自分でも甘かったと思うが、今はどうしたらいいのか分からない」。豊島区内に住むパート社員、大石美代子さん(43)=仮名=だ。
大石さんは、中学3年と小学5年の姉弟を育てている。自宅を訪れてみると、冷蔵庫にテレビなど一般家庭と同様に物があふれ、一見、生活に困っているようには見えない。
しかし、経済状態はかなり切迫しているようだ。4、5年前に子供たちの父親である内縁の夫(46)が他の女性と交際を始めたのをきっかけに家を出た。その上、自分も13年間、正社員として働いた会社を経営不振と人間関係の悪化から退職し、収入が激減した。
「夫は、家を出てから半年ぐらいは、毎月10万円ぐらい養育費を送ってきた。でも、一度『今月は収入が少ないから待って』とメールが来て『分かりました』と返したら、それっきりになった」と大石さん。探さないのかと問うと、「気持ちがあれば子供のために、数千円でも送金するはず。そんな気持ちがないなら、彼はそこまでの人間。そんな人間と付き合った私がばかだった」と言い切った。今は、どこにいるかも知らず、あえて探す気持ちもないという。
月々の収入は、大石さんが品川区内の運送会社で週5日計40時間、働いて得るパート収入。手取りにして月に16~17万円だ。それなのに3DKのアパートの家賃は約12万円。内縁の夫がいて、自分が正社員として働き、世帯月収が60万円だったときに借りたアパートだ。貯金はなく今は、カードローンや親族からの借金でしのぐが、光熱費を滞納し電気やガスを止められたこともある。パートの勤務は夜勤もあるため、子供だけで食事をすることも週2回ほどある。
「引っ越しをするにも、お金がかかる。家賃が高すぎるのは分かっているけど、動くに動けない状態。生活保護も簡単には受けられない」と大石さん。
今、大石さんの目標は、中3の娘を無事、希望の高校に入学させること。しかし、受験の費用も悩みの種。近所に両親が住むが、両親も障害年金が生活の糧になっているため頼ることはできない。
事実、「子供の貧困」は広がっている。厚生労働省が昨年7月、発表したところによると、最低限度の生活を保てないとされる統計上の境界「貧困線」(親1人、子1人の場合は173万円)以下で暮らす18歳未満の子供の割合「子どもの貧困率」が、16・3%(平成24年)で過去最悪を更新したという。
個人情報とプライバシー保護の意識が高まり、外からは、貧困は見えにくい。友人同士でも、お金の話はタブーになりがちだ。生活が苦しく、手をかけられずに育った子供たちは、栄養ある食事を十分取らないため体力も根気が育ちにくく、勉強にも身が入らないケースが少なくないと想像される。

「地域の子供は地域で育てる」
「要町あさやけ子ども食堂」を運営しているのが、NPO法人「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」(豊島区)だ。経済的困難や親の不在のために、十分な食事を取れない子供たちを支援している。
活動のきっかけは、理事長の栗林知絵子さん(48)が平成23年の夏、「成績が悪く高校に行けないかもしれない」と悩む知り合いの男子中学生に、勉強を教え始めたことだ。母親が遅くまで働いているため、彼の夕食はいつも500円以内のコンビニ弁当。見かねた栗林さんは、栗林さんの自宅で夕食を食べることを提案。手作りの夕食を一緒に食べるようになった。
男子中学生は、勉強を教えてくれる大学生からも支援や、地域住民からの受験費用のカンパなどを受け、なんとか高校に合格。このつながりから、24年にはNPO法人化した。
WAKUWAKUネットのコンセプトは、「地域の子どもを地域で見守り地域で育てる」。栗林さんは「子供の貧困の背景には親の貧困がある。誰もがいつ、貧困に陥るかわからない。子供たちが成長して20年、30年たったときに、自分のことを気にかけてくれた大人がいたと思ってくれたら、それでいい」と話す。ご近所さんは、どこまで子供たちの力になれるのだろう。答えはないが、それでも「ご近所の力」に期待したい。

「デスクで仮眠OK」職場が2割に

web R25 2015年1月25日

ランチ後の昼下がり、デスクでついウトウト…なんて経験がある人は多いだろう。そんな時は目の前の仕事も遅々として進まないもの。たとえ15分でも仮眠ができれば頭がスッキリしてもっと仕事がはかどるのに――。とはいえ、周囲が仕事をしているなか、デスクで寝るのは気がひける…という声も。そこで、20代の会社員200人(男女各100人)に、「デスクでの仮眠」についてどう思うのか、アンケート調査を行った。(調査協力:アイ・リサーチ)

〈仕事中に「デスクで短時間(15分~20分程度)の仮眠」をとることに抵抗感は?〉
抵抗感がある61.5%
抵抗感はない38.5%

やはり「抵抗感がある」人が上回った。だが男女別でみると、女性は「抵抗感がある」人が70.0%と多いが、男性は53.0%と約半数。女性のほうが周囲の目を気にしてしまうのだろうか。それぞれの言い分を紹介しよう。

「抵抗感がある」派の意見
「サボっているように見える」(27歳、女性)
「職場で周りの目がどうしても気になってしまう。どうしても眠気に負けそうな時は、資料を取りに(探しに)行くなどで身体を動かす」(26歳、男性)
「常にデスクワークの仕事なので、全員が机に座っているし、居眠りをしている人はいないから」(26歳、男性)
「他の人は仕事をしているのに、自分だけ寝るのは悪い気がするから」(28歳、男性)
「休んだ気にならない。それならしんどくても頑張ってその分少しでも早く帰宅し熟睡したい」(28歳、女性)
「短時間だけ眠る自信がないから」(24歳、男性)
「女性として見た目が良くない」(25歳、女性)
「寝顔を見られたくない」(26歳、女性)

「抵抗感はない」派の意見
「眠たいまま仕事をするよりも少し休んでさえた頭で仕事をするほうが効率がいいと思うので」(25歳、女性)
「眠たくて集中できないまま仕事してミスをするくらいなら、多少は眠った方がいい」(23歳、女性)
「自分は仕事中に仮眠したことはないですが、外国で昼寝が導入されている会社などを見ると、仕事の効率も上がるし、仮眠はとても良いことだと思った」(29歳、女性)
「何も作業がなければ短時間仮眠をとればいいと思うから」(29歳、男性)
「眠いのは生理現象だから」(26歳、男性)
「(仮眠NGは)何かと時代遅れ」(29歳、男性)
「(会社で)容認されているから」(25歳、男性)

予想どおり、「抵抗感がある」人には「周囲の目」を理由に挙げる人が多い。とくに女性は「寝ている姿を他人に見せる」ことを嫌がる人が目立った。ともあれ、会社が認めてくれるなら、もう少し仮眠もとりやすいところ。最近ではそんな会社も増えているというが、実際、デスクでの仮眠が許される職場はどのくらいあるのだろう?

〈職場で「デスクで短時間(15分~20分程度)の仮眠」をとることは許されている?〉
許されている20.5%
許されていない79.5%

「許されていない」が8割と大多数を占めるものの、OKという職場も2割に及んだ。昨年、厚生労働省が発表した「健康づくりのための睡眠指針 2014」のなかでも、「午後の早い時刻に 30 分以内の短い昼寝をすることが、眠気による作業能率の改善に効果的」と推奨されていたが、そのあたりも影響しているのだろうか。なかには「デスクではなく、トイレで仮眠する」(26歳、女性)という声もあったが、「デスクで仮眠OK」の職場が増えれば、そんなことはせずに済むんですけどね…。
(R25編集部)