アプリで児童施設退所の若者支援 相談先や豆知識提供

京都新聞 2015年10月3日

児童養護施設を退所した若者の自立を手助けするスマートフォン向けアプリ(応用ソフト)を、施設出身の当事者らでつくる日本子ども若者支援協会ジョイア・ミオ(京都府宇治市)が作り、無料配布を始めた。緊急の相談先や生活の豆知識を提供している。
施設に入所する児童は原則18歳で退所後、親や親族と暮らせなければ1人で生活を始めなければならない。出身施設以外に頼る先がない若者も多く、困った時の「駆け込み先」の一つとしてアプリを開発した。
アプリには同協会の代表を務め、0~18歳まで府北部の乳児院と児童養護施設で育った伊達昭さん(35)=宇治市小倉町=の連絡先を掲載。同じ施設出身者の立場から、生活面の困り事や悩みの相談に応じるという。
「生活ハテナ」のページでは電気やガス、国民年金などについて利用や申請の手続きを簡単に解説。今後、情報を充実していく。
伊達さんは「家族も財産もない施設退所者にとって、スマホや交流サイトはライフラインと同じ。社会に出ても相談相手が少なく、困っている若者たちに利用してほしい」と話す。

赤ちゃん捨てた女子中学生が逮捕 「親に話せないなら養護の先生に相談して」と弁護士

弁護士ドットコム 2015年10月3日

自宅で出産した赤ちゃんをビニール袋に入れて遺棄したとして、沖縄の女子中学3年生(14)が「保護責任者遺棄罪」の疑いで逮捕された。
報道によると、女子中学生は9月21日、自宅トイレで出産した赤ちゃんをビニール袋に入れ、沖縄県うるま市内の団地の緑地帯に捨てた疑いがもたれている。赤ちゃんは団地の住人に発見され、命に別条はないという。
女子中学生は、警察の調べに対して容疑を認め、「お母さんにも話すことができず、どうしていいかわからなかった」と、供述したという。
母親には我が子を守る義務があるとしても、現実には、14歳の中学生が赤ん坊をひとりで育てるのは難しいだろう。今回の女子中学生のような状況に陥ってしまったら、どう行動すればいいのだろうか。子どもの問題に詳しい杉浦ひとみ弁護士に聞いた。

弁護士会運営の「子ども110番」に相談する手も
「きっと、すごく不安で怖かったでしょうね。そんな気持ちで何カ月も過ごさずに、早く適切な対応をとってくれる大人に相談することが重要です。
胎児は日々成長し、母体も大切にしなければなりません。そして、将来を見据えた早期の対処が必要です」
ただ、今回逮捕された少女は「親にも話せなかった」そうだ。親以外だと、誰に相談すればいいのだろうか?
「親に話せればいいのですが、家庭環境もさまざまですし、子どもも親には話しにくいでしょうね。
一番身近なのは学校の養護の先生に相談することでしょう。
学校の先生には、子どもを安全に守る職務上の役割がありますので、無責任な対応はできません。そこから、病院や福祉の窓口へと、つないでもらえると思います。
児童相談所や保健所も窓口ですが、少しハードルが高いですね。考えられるのは、学校の先生とか、各地の弁護士会がやっている『子ども110番)です。たとえば、東京の『03-3503-0110』にかけたら地元の窓口を教えてくれると思います。そのほか、DVの法律相談窓口の電話に相談してみると、なんとか次へつないでくれると思います」

早い段階からの性教育が必要
こうした事件を防ぐためには、何が必要なのだろうか。
「こういった事件が起きてしまう背景には、子ども自身が、妊娠や出産に関する、適切な知識を持っていないことが大きいと思います。
子どもが妊娠するケースでは、自分自身が妊娠していることに気づかないまま、長時間が経ってしまうケースもあります。
だから、子どもには、早い時期から適切な性教育が必要です。『寝た子を起こすな』と言う方もいますが、子どもは寝ていません。また、大人が年少の女児に不当に関わることもあります。自分の身を守るためにも、子どもたちには正しい知識が必要です。
性教育では、どういうことをしたら受精をするのか、妊娠とはどういうものなのかなどを、淡々と指導すべきです。
その上で子どもの性的問題に冷静に適切に関われる場所・人を確保し、子どもたちにそれを性教育の一環として教えておくことが必要です。
こうした条件整備が、喫緊の課題となっています。特に、養護の先生を含めた学校の先生方には、対応の心得と守秘義務を学んでおいてもらいたいと思います」
自ら産んだ赤ん坊を捨てることが許されるはずもないが、中学生はまだ、周囲のサポートが必要な存在だ。学校や行政には、一歩踏み込んだ支援が求められているのかもしれない。

厚労省が児童福祉司の「国家資格化」を検討・・・虐待防止の切り札になるか?

弁護士ドットコム 2015年10月3日

厚生労働省は9月上旬、「児童福祉司」の国家資格化など、児童虐待の対応強化策を盛り込んだ報告書を公表した。報道によると、厚労省はこれを受けて、来年の通常国会で児童福祉法の改正案を提出する方針だという。
児童福祉司は、虐待や家庭の不和、非行などに悩む親や子どもから相談を受け、問題解決をはかる児童相談所の職員だ。現在は、大学で心理学や社会学を専攻し、児童相談所で1年以上の実務経験を積むなどすれば資格を得られる。報告書は、児童福祉司の専門性を高め、児童虐待への対応を強化するために、国家資格化を検討すべきだと明記している。
このほか、報告書では、虐待の見落としや対応の遅れなどを防ぐために、関係機関同士の連携強化を提言。また、虐待を予防するためには、妊娠期からリスクに着目して支援につなげるべきだとして、望まない妊娠をした女性の情報を把握することや、妊娠期~子育て期にわたる継続した支援の必要性などを挙げている。
今回、厚労省が出した報告書の内容は、児童虐待を防ぐ切り札になるのだろうか。児童虐待の問題に関わる榎本清弁護士に意見を聞いた。

国家資格化のメリットとは?
「本報告書には、従来から論文や報告書で指摘されてきた問題点が網羅されています。具体的には、児童福祉司の人数不足、関係諸機関の連携の不十分さ等の現行の児童虐待防止の制度面・運用面の当面の問題点、改善点です。
さらに現場の声を踏まえて検討を深めたものとなっており、この報告書にある提言が実施できれば、その効果は十分期待できるものと思われます」
このように榎本弁護士は評価するが、問題点も指摘する。
「報告書の性質上やむを得ないことではありますが、抽象論にとどまっているものが多くなっています。実施するにあたっては、具体化が不可欠なので、さらなる議論の深化が期待されます。
児童福祉司の国家資格化については、児童福祉司の専門性を入口の時点で一定程度確保できるというメリットがあります。
しかし、国家資格化は、その制度設計や運用の仕方にもよりますが、間口を狭めることにもつながりかねません。児童福祉司に関するもう一つの課題である人数不足の解消という面では逆効果ではないかという指摘もあります」
榎本弁護士は、児童福祉司の国家資格化をどう評価するのだろうか。
「現在すでに存在する社会福祉士や精神保健福祉士という資格との関係を考えると、新たに同種の国家資格を創設するのは不経済ともいえます。むしろ既存のそれらの資格を有効活用するほうがより効率的に専門性を向上できるのではないか、という指摘もあります。
児童福祉司の専門性の向上のためには、国家資格化を検討する必要はあります。しかし同時に、児童福祉司の専門職採用や専門研修制度の拡充という点も考慮しつつ、検討する必要があります」

18歳成人に「反対」53%…読売世論調査

読売新聞 2015年10月3日

読売新聞社は、民法で20歳と定められている成人年齢の引き下げについて、全国世論調査(郵送方式)を実施した。
成人年齢を18歳に引き下げることには「反対」が53%で、「賛成」の46%をやや上回った。
反対する理由(複数回答)は「18歳に引き下げても、大人としての自覚を持つと思えないから」の62%がトップで、「経済的に自立していない人が多いから」56%、「精神的に未熟だから」43%などの順だった。
「反対」は20歳代で66%、30歳代で59%、40歳代でも57%となり、若者と子育て世代で高かった。早大法学部の棚村政行教授(民法)は「若者は社会的、経済的に自立していないと感じる人が多く、18~19歳に大人としての責任は期待できないのだろう。子供への関心が高い子育て世代は、まだ保護の必要があると感じているのではないか」と語る。

35市町村で配布中の「おっぱい絵巻」って?

読売新聞 2015年9月30日

モーハウスが作成した「おっぱい絵巻」なるものを、茨城県や隣接する埼玉県の一部の市町村で、母子手帳交付の際に、妊婦さんに配布していただいています。
2010年の取り組み開始から、配布を希望してくれる市町村はじわじわと増え、今では茨城県ですと全44市町村中、32市町村で配布が行われるまでになりました。
「お母さんになったとき、これを知っていたら悩まなくて済むのにな……?」と思う母乳育児の情報をイラストでわかりやすく説明した、「おっぱい絵巻」。今回はこの「おっぱい絵巻」の取り組みの背景や、行政とコラボするためのアプローチについて、お話ししてみたいと思います。

2010年スタート、現在は35市町村で母子手帳とともに配布
まず「おっぱい絵巻」とは。その正式名称は、「授乳生活が楽しくなる らくらくおっぱい絵巻」。これから授乳生活を送る、マタニティー向けの情報をまとめた小冊子です。時系列で妊娠の経過がわかるカレンダー形式をつけたのも、に嬉うれしい特長。
内容は助産師さんや小児科医など専門家の監修のもと、母乳育児生活をスムーズに送るために知っておいてほしい知識を解説。助産師さんのアドバイスやイラストを織り交ぜながら(だから、絵巻!です)、わかりやすく掲載しています。赤ちゃんが生まれる前から母乳育児への準備を始めることで、産後に起こりうるさまざまな問題を予防することが、この絵巻の大きな役割です。
茨城県を通して、配布希望の市町村を募る形で、10年にスタートした「母子手帳と一緒に『おっぱい絵巻』を配布」の取り組み。当初は20件ほどの市町村からスタートしましたが、じわじわとクチコミで広がり、今ではつくば市や守谷市などの主要都市も含めた茨城県、埼玉県の一部を合わせて全35市町村で配布してもらうまでになりました。

自分を責めないで! 伝えたい母乳育児の正しい知識
そもそもこの「おっぱい絵巻」が生まれた背景は、「お母さんになるなら、これを知っていたら悩まなくて済むよね」と思うような情報が、実際には、妊婦さんたちに伝わるルートがないなぁ……、と感じていたから。
「そういった情報って、実は母子手帳を見ていても得づらいんです」というスタッフからの複数の声も。母子手帳は自治体ごとに内容が異なるので一概には言えませんが、特に授乳のことは掲載していなかったり、載っていても情報が少ないところがとても多いと感じています。
正しい母乳育児の知識が伝わらないと、結果として何が起こるか。例えば、周囲の環境など外的要因で母乳が出ないお母さんたちが、正しい情報がないことで「母乳が出ないのは自分のせいだ……」と、自分を責め、ひとり悩んでしまったりもするんです。これって、実はよくあること。
それなら、マタニティーのママたちに知っておいてほしい情報を、母子手帳を配るときに副読本みたいにして付けられたらいいかもね、と考えました。
そこで、お産関係の雑誌や漫画をつくっていた知人たちに声をかけ、“お産クリエイティブ”のプロフェッショナルチームを結成。お産漫画を描いていた方にイラストをお願いし、お産の雑誌をつくっていた方に冊子の編集をお願いし、内容は助産師さんの監修のもと、「おっぱい絵巻」が生まれたのです。

物事を変えたいなら、対立ではなく“第3の道”を探そう
もちろん、いくら情報豊かな「おっぱい絵巻」を作成しても、母子手帳の副読本として同時配布してもらうには市町村の協力が必要です(作成費用はモーハウスの負担です)。さて、どうしたら協力していただけるだろう……。こんなふうに、自分ひとりの力では現状を変えられなくて、誰かの力をお借りしなければならないなと思うとき、よく思うことがあります。
それは、本当に社会の現状を変えたいなら、一見遠回りにも見える“第3の道”を探すのが、実は一番の近道じゃないかな、ということ。世の中では、社会に対する不満に「どうしてわかってくれないの!」と対立して声を上げるか、またはその逆で、理想論を語るだけで終わり……、という場面を見かけることが多いように思います。でも本当に「変えたい」と思うのなら、対立するだけでも、理想を語るだけでもない、第3の道ってあるんじゃないのかな、と思うんです。
もともと、私の場合、対立のアプローチがどうも苦手なんです。そもそも、赤ちゃんの電車内での授乳問題に、「女性専用車を作ってください!」というアプローチでなく、自分で授乳服を作ってしまえ、というアプローチだったのも、同じ理由です。

そして、例えばこのときも、もし真正面から「今の母乳育児支援は不十分だ! 母子手帳の中身を変えてください!」と、真っ向から反対していたら、最終的にやりたいことは同じだとしても、行政の方々は話を聞いてくれなかったかもしれない、と思うんです。
そうではなくて、あくまで第3の道を一緒に探す。このときは、茨城県知事とお話できる機会に、どんなふうにお話ししたら母乳のメリットを理解していただきやすいかなと考え、「経済効率的にも“母乳”ってお得なんです」という、ちょっと違った切り口でお伝えしたりもしてきました。

知識のシェアで「産後うつ」からの虐待も抑止?
例えば、赤ちゃんが泣きやまないことにイライラし、自分を追い込んで、手が出てしまう……という、産後うつからの虐待という社会問題。そんな可能性のあるお母さんも、もし母乳の正しい知識があり、効果的な育児スキルをもってストレスなくラクに育児ができれば、虐待の抑止力になるかもしれない。つまり、お母さん一人ひとりが正しい母乳の知識を身につけることで、それ以外の問題の対策にもつながる側面もある。それは、限られた税金をより有効に配分することにもつながるのではないですか?と。
対立ではなくて、どうやったら両者で第3の道をつくれるか。どうやったら伝わるだろう、わかっていただけるだろう。そんなふうに考えながら知事や副知事ともお話ししたところ、結果的に快く県のお墨付きをいただいて、県経由でも、各市町村からの申し込みを募ってもらう運びとなりました。
対立関係から一歩ひいて、ちょっと発想を変えてみる。一見、回り道のようにも見えるその道が、本当は実現に向かう一番の近道なのかもしれません。

便利になるとされるマイナンバー制度 特需に沸くのは官僚だけ

NEWS ポストセブン 2015年10月3日

2015年10月から、12桁の個人番号を割り当てる「マイナンバー制度(正式には「社会保障・税番号制度」)」の「通知カード」が各家庭に郵送される。
いま「内閣官房」のウェブサイトを開くと、「国家安全保障戦略」「原子力規制組織等の改革」といった政策の紹介に並んで、目のデザインが数字の「1」になった、なんとも力の抜けるウサギのキャラクターが掲載されている。
このゆるキャラ「マイナちゃん」による「マイナンバー解説」特設サイトにはこう書いてある。
〈マイナンバーは、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平・公正な社会を実現する社会基盤です〉
大嘘だ。
政府は「住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)」の導入時にも同じように利便性をアピールしたが、カードの交付率は5%前後とされる。「便利」どころか、導入費用の約400億円と年間130億円の運用経費が消え、役人の利権拡大につながっただけだった。
マイナンバーでは、その10倍近い予算が必要になり、その恩恵にあずかる省庁や官僚の幅もケタ違いに広がる。
まず、財務省はデータセンターの費用などに3000億円が必要と見込んでいる。
財務省が提案した、マイナンバーによる消費税10%への引き上げ時の「2%還付案」(食品などを購入した際、いったん10%分を支払い、マイナンバーカードを提示して2%分を記録し後で口座に還付する案)は公明党などの反対により潰されたが、がっちりと利権は握っているのである。しかも同省は諦めることなく、マイナンバーカードを使わない“消費税専用ポイントカード”を発行する案まで検討している。別のカードと「ポイント蓄積センター」を作り、さらに多額の予算を獲得しようという戦略だ。
総務省では、マイナンバー導入にかこつけて2016年度予算に向け「自治体支援費」を計上しようと検討が進められているという。総務省の中堅キャリア官僚がこう明かす。
「日本年金機構の個人情報流出が“いいきっかけ”になった。全国の自治体を調査すると、税金などの個人情報を扱っているパソコンを、インターネット接続できる系統から完全分離している自治体は1割弱だった。サポートが切れたウィンドウズXPをまだ使っている自治体もかなりある。マイナンバーの個人情報漏れを防ぐためには、各自治体で新しいパソコンを増やし、システムを更新しなければならない。しかし地方では予算がないから、国が支援する必要がある」
そういう理屈で予算をぶんどろうとしているのだ。
厚生労働省では、年金や健康保険の手続きでマイナンバーを利用するため全国300か所の年金事務所のシステムを構築する必要があり、巨額の費用がかかる。それに加えて労働基準監督署やハローワークでもマイナンバーを使おうと準備が進められている。
まだある。多くの天下りを受け入れていたことでかつて問題になった財団法人「地方自治情報センター」が、「地方公共団体情報システム機構」に組織改編された。予算書を見ると今年度700億円もの事業費を計上しており、うち500億円以上がマイナンバー関連事業とされている。同機構の副理事長と理事は、もちろん総務省出身の天下りだ。
内閣官房には、「政府CIO(チーフ・インテリジェンス・オフィサー)」なる聞き慣れない肩書きを持つ「内閣情報通信政策監」を長とする、「IT総合戦略室」という組織がある。ここにもマイナンバーを担当する班が存在する。
こう見てくると、“マイナンバー特需”に沸いているのは官僚たちだけだということがよく分かる。
今後、会社員は家族分を含めたマイナンバーを会社に提出し、2016年1月からは証券口座開設の際に番号を求められ、2018年からは預貯金口座のマイナンバー登録も始まる。企業には厳しい個人情報管理が要求され、従業員100人の企業のコスト負担は初期費用で1000万円、毎年400万円ほどになるという試算もある。
本当に〈国民の利便性を高め、公平・公正な社会を実現する〉仕組みになるか、監視が必要だ。